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自殺


last update: 20130524

*『現代思想』2013年5月号特集関連について目次に移動&増補しました(20130524)
*関連リンク集の「研究(個人)」一人だけ増補しました(20130524)

■目次

 ■先端総合学術研究科・gCOE・生存学研究センター関係者の業績
 ■論文・記事検索
 ■過労死・過労自殺/過労自死(別ページ)
 ■日本語文献(別ページ)
 *以下,作成者の備忘録のようなものです
  ◆本(著者名アルファベット順A-M)
  ◆本(著者名アルファベット順N-Z)
  ◆論文・その他書かれたもの(著者名アルファベット順A-J)
  ◆論文・その他書かれたもの(著者名アルファベット順K-M)
  ◆論文・その他書かれたもの(著者名アルファベット順N-R)
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 ■外国語文献(別ページ)
 *以下,作成者の備忘録のようなものです
  ◆本(著者名アルファベット順A-L)
  ◆本(著者名アルファベット順M-Z)
  ◆論文・その他書かれたもの(著者名アルファベット順:別ページ)
 ■関連リンク集
  ◆電話相談
  ◆相談(法律:多重債務等)
  ◆相談(労働・生存)
  ◆相談(経営)
  ◆相談(精神保健)
  ◆遺族支援
  ◆生活保護情報
  ◆研究(団体)
  ◆研究(個人)
  ◆行政
 ■引用@:死の自己決定について
 ■引用A:自殺の社会学的研究のはじまり
 ■引用B:ネット自殺/ネット心中について
 ■引用C:自殺(および関連する)統計を読んでみると(1)戦後日本における自殺の第1の波(1950年代)
 ■引用D:自殺(および関連する)統計を読んでみると(2)戦後日本における自殺の第2の波(1980年代)
 ■引用E:自殺(および関連する)統計を読んでみると(3)戦後日本における自殺の第3の波(1998-現在)
 ■引用F:とりあえず自分も他者も生きることのできる社会を構想する
 ■引用G:自殺の公的統計をめぐる議論――公的統計の意義・限界・使い方
 ■関連項目(arsvi.com内)


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■先端総合学術研究科・gCOE・生存学研究センター関係者の業績(新着順)

・本(共著・編著・雑誌特集含)
◆20130501,『現代思想』41(7)(2013年5月号)特集:自殺論――対策の現場から
 →◇雨宮処凜川口有美子,20130501,「対談 死なせないための,女子会」pp. 51-67.
 →◇天田城介,20130501,「老いらくの自殺――ポスト経済成長時代の超高齢社会から排除される人たち」pp. 98-109.
 →◇藤原信行,20130501,「自殺対策の推進における家族員の責務とその上昇をめぐって」pp. 129-139.
 →◇橋口昌治,20130501,「『就活自殺』とジェンダー問題」pp. 140-9.
 →◇大谷いづみ,20130501,「『理性的自殺』がとりこぼすもの――続・『死を掛け金に求められる承認』という隘路」pp. 162-77.
 →◇小泉義之,20130501,「モラリズムの蔓延」pp. 204-14.
濱本真男,20110530,『「労動」の哲学――人を労働させる権力について』河出書房新社. ISBN-10: 4309245498 ISBN-13: 978-4309245492 \2100 [amazon][kinokuniya] ※ w01 s01-ow
浅野弘毅岡崎伸郎編,20090525,『自殺と向き合う(メンタルヘルス・ライブラリー24)』批評社. ISBN-10: 4826505043 ISBN-13: 978-4826505048 \1890 [amazon][kinokuniya] ※ s01
 →◇立岩真也雨宮処凜岡崎伸郎浅野弘毅,20090525,「座談会 自殺をどうとらえるか」pp. 13-54.
 →◇藤原信行,20090525,「自殺(予防)をめぐる『物語』としての精神医学的知識の普及と自死遺族」pp. 119-28.
立岩真也村上慎司橋口昌治,20090910,『税を直す』青土社. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 \2310 [amazon][kinokuniya] ※
 →◇橋口昌治,20090910,「格差・貧困に関する本の紹介」pp. 241-311.

・論文・その他書かれたもの
藤原信行,201212**,「スポーツ新聞記事にみる死者への自殺動機付与とカテゴリー執行――〈女子アナ〉のあるべきキャリア/述部をめぐって」『箕面学園福祉保育専門学校研究紀要』4: **-**. ISSN: 18842801
藤原信行,20121030,「自殺動機付与・責任帰属活動の達成と、人びとの方法と/しての精神医学的知識」『ソシオロゴス』36: 68-83. ISSN: 02853531
藤原信行,20120630,「非自殺者カテゴリー執行のための自殺動機付与――人びとの実践における動機と述部の位置」『ソシオロジ』174: 125-40. ISSN: 05841380
田中慶子, 20120331,「社会問題の医療化――過労自殺に対する行政施策を中心として」『Core Ethics』8: 257-66. ISSN: 18800467 [PDF]
濱本真男,20110331,「『電通事件』判決の黙示――労働時間・精神医学診断・被害者家族」『Core Ethics』8: 341-50. ISSN: 18800467 [PDF]
藤原信行,20120331,「自殺動機付与/帰属活動の社会学・序説――デュルケムの拒絶,ダグラスの挫折,アトキンソンの達成を中心に」『現代社会学理論研究』6: 63-75. ISSN: 18817467
藤原信行,20110325,「『医療化』された自殺対策の推進と〈家族員の義務と責任〉のせり出し――その理念的形態について」『生存学』生活書院,3: 117-32. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 978-4903690728 \2310 [amazon][kinokuniya] ※
岩間優希,20100427,「メディアとしての焼身――1963年,ティク・クァン・ドックの事件をめぐって」『表象』4: 222-38. ISBN-10: 4901477641 ISBN-13:978-4901477642 \1890 [amazon][kinokuniya]
藤原信行,20090225,「自死遺族による死者への自殺動機付与過程の『政治』――意味ある他者の死にたいする自殺動機付与にたいする逡巡のなかで」『生存学』生活書院,1: 55-69. ISBN-10: 4903690350 ISBN-13: 978-4903690353 \2310 [amazon][kinokuniya] ※
藤原信行,20090130,「自死遺族が自らの経験を語ることの困難――傷(wounds)が真実性を担保する時代のなかで」有馬斉天田城介『生存学研究センター報告5――特別公開企画「物語・トラウマ・倫理――アーサー・フランク教授を迎えて」』立命館大学生存学研究センター,152-69. ISSN: 18826539 ※
Fujiwara, N, 2009, "Suicide Survivors' Difficulties in Telling Their Own Experiences; Regarding Our Society Twisted Relationship between Wounds and Truth," Arima, H. & J. Amada eds., Report Issued by Research Center Ars Vivendi of Ritsumeikan University, No. 5, 189-207. ISSN: 18826539 ※
藤原信行,20070331,「近親者の自殺,意味秩序の再構築,動機の語彙」『Core Ethics』3: 301-13. ISSN: 18800467 [PDF] ※
天田城介,2003****,「老夫婦心中論(1)――高齢夫婦介護をめぐるアイデンティティの政治学」『立教社会福祉研究』22: 1-17. ISSN: 03865797
[外部リンク]機関リポジトリで全文閲覧可.PDFファイル)


・学会報告等
桐原尚之・白田幸治,20121028,「自殺を阻止するための強制的介入は正当化できるか(素描)――措置入院に反対する『精神病』者運動の思想から」第20回生命倫理学会大会自由報告,於:立命館大学衣笠キャンパス.
藤原信行,20111203,「自死遺族による『不幸のレトリック』の実践と死因にたいする疑問の隠蔽」社会構築主義の再構築プロジェクト研究会 2011年度第2回研究会合プログラム自由報告,於:東京大学本郷キャンパス.
田中慶子, 20110528,「電通過労自殺事件をめぐる社会問題の構成」第62回関西社会学会大会自由報告,於:甲南女子大学
藤原信行,20100516,「医療化された自殺対策の行為記述水準での局所的達成と責任帰属」第36回日本保健医療社会学会,於:山口県立大学.
藤原信行,20081005,「自ら死を選ぶに値する者とは誰か?――死因を自死と噂された,ある事故死者の遺族による語りから」日本社会病理学会第24回大会自由報告,於:大阪府立大学.
藤原信行,20070930,「遺族による近親者の自死の意味づけとその困難――精神医学的言説が参照されたとき」日本社会病理学会第23回大会自由報告,於:東京女学館大.


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■論文・記事検索

・GeNii(国立情報学研究所)
文献検索にとって有用なツール.論文検索は[外部リンク]「CiNii」,本・雑誌の書誌情報は[外部リンク]「Webcat Plus」,文部科学省科学研究費補助金の成果は[外部リンク]「KAKEN」,分野別専門情報は[外部リンク]「NII-DBR」,教育・研究成果全般は[外部リンク]「JAIRO」で検索を.
[外部リンク]GeNiiホーム

・CiNii
本コンテンツの文献リストにある論文・記事のうち,以下のリンクのあるものは,CiNiiで無料・無登録で本文を閲覧できます(PDFファイル).著者名,論文名,収録雑誌名,ISSNコードなどで検索を.
[外部リンク]CiNiiホーム

・科学技術情報発信・流通総合システム(J-Stage)
本文献表に記載のある論文・記事のうち以下のリンクがあるものは,無料・無登録で本文を閲覧できます(PDFファイル).著者名・論文名,収録雑誌名,ISSNコードなどで検索を.上記HP内の「Jouranl@rchive」は,無料・無登録で本文を閲覧できる(PDFファイル)学術雑誌・紀要等のアーカイヴとなっています.
[外部リンク]https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/(ホーム)

・厚生労働科学研究成果データベース(厚生労働省)
厚生労働科学研究費補助金報告書(自殺にかんする精神医学・公衆衛生学領域の研究も多く含まれます)の検索・閲覧ができます(概要は1997年度,本文は1998年度より.PDFファイル).
[外部リンク]http://mhlw-grants.niph.go.jp/

・PubMed(U.S. National Library of Medicine:医療社会学・医療人類学もふくめた,自殺にかんする医学系文献を検索できます.一部無料・無登録で閲覧できる文献もあり.英語)
[外部リンク]http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=pubmed

・政府統計の総合窓口(e-Stat)
日本の自殺統計(人口動態統計・警察統計)も含めた公的統計を検索・閲覧できます.
[外部リンク]http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do


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■関連リンク集

(※「過労死・過労自殺/過労自死」のリンク集も参照)

◆電話相談
・よりそいホットライン(領域横断的・総合的な電話相談.自殺関連専用回線もあり)
 [外部リンク]http://279338.jp/
・日本いのちの電話連盟(e-mailでの相談も受付)
 [外部リンク]http://www.find-j.jp/
   [外部リンク]各都道府県の「いのちの電話」の連絡先(上記HP内)
・特定非営利活動法人国際ビフレンダーズ 東京自殺防止センター(相談活動.自殺予防活動関連冊子の頒付)
 [外部リンク]http://www.befrienders-jpn.org/index.html
   [外部リンク]全国の「自殺防止センター」への連絡先(上記HP内)
・特定非営利活動法人国際ビフレンダーズ 大阪自殺防止センター(相談活動.自殺予防活動関連冊子の頒付.季刊誌の発行)
 [外部リンク]http://www.spc-osaka.org/(※全国の「自殺防止センター」への連絡先がホームにあります)
・国際ビフレンダーズ(世界のビフレンダーズ協会の上部団体)
 [外部リンク]http://www.befrienders.org/(日本語をはじめとする各国語頁あり)
・英国サマリタン協会(Samaritans:イギリス・アイルランドにおける相談活動,メディア・ガイドライン等:英語)
 [外部リンク]http://www.samaritans.org/

◆相談(法律:多重債務等)
・日本司法支援センター法テラス(各都道府県の法テラスの案内,電話・Eメールでの情報提供)
 [外部リンク]http://www.houterasu.or.jp/

◆相談(労働・生存 ※下記「生活保護情報」のリンク,および「過労死・過労自殺/過労自死」のリンク集も参照)
・反貧困ネットワーク(生存のための各種相談窓口へのリンク.「反貧困資料室」など)
 [外部リンク]http://www.k5.dion.ne.jp/~hinky/
・フリーター全般労働組合(労働問題に関する相談:「生きのびるための労働法」手帳:「フリーターに役立つ法律知識」:全国の他の労働組合[→労働問題にかんする相談を受け付けている]へのリンク)
 [外部リンク]http://freeter-union.org/union/
・関西非正規等労働組合 ユニオンぼちぼち(労働問題に関する相談:「労働法の豆知識」:全国の他の労働組合[→労働問題にかんする相談を受け付けている]へのリンク)
 [外部リンク]http://rootless.org/botiboti/
・首都圏青年ユニオン(労働問題に関する相談:全国の青年ユニオンHP等へのリンク集あり)
 [外部リンク]http://www.seinen-u.org/index.html
・関連団体へのリンク([外部リンク]『研究会「職場の人権」』HP内:関西圏のコミュニティユニオン[→労働問題にかんする相談を受け付けている]へのリンク)
 [外部リンク]http://homepage2.nifty.com/jinken/link.html

◆相談(経営 ※上記「相談(法律)」のリンクも参照)
・NPO法人蜘蛛の糸(秋田県で活動:中小企業経営者・自営業者対象の相談活動.HP内の注意事項要確認)
 [外部リンク]http://www.kumonoito.info/
・全国商工会連合会(融資・信用保証等の斡旋,連鎖倒産防止相談の受付(→各都道府県の商工会連合会へ):下記HPから全国の商工会へのリンクを検索できます)
 [外部リンク]http://www.shokokai.or.jp/

◆相談(精神保健)
(※以下の団体が直接相談を受付けているわけではありません.あくまで各地の相談先へのリンクがある,ということです)
・全国精神保健福祉センター長会(各都道府県・政令市の精神保健福祉センター[→精神保健にかんする相談を受け付けている:遺族の集いがあるセンターもあり]へのリンク)
 [外部リンク]http://www.acplan.jp/mhwc/
・全国保健所長会(各地域の保健所[→精神保健にかんする相談を受け付けている]へのリンク)
 [外部リンク]http://www.phcd.jp/index.html

◆遺族支援(※上記「相談(精神保健)」のリンクも参照)
・あしなが育英会(遺児支援)
 [外部リンク]http://www.ashinaga.org/
・NPO法人自殺対策支援センター LIFE LINK(「全国自死遺族総合支援センター」:ライフリンク通信:全国の自死遺族の集いへのリンク:自殺対策関連情報へのリンク)
 [外部リンク]http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html

◆生活保護情報(※上記「相談(労働・生存)」のリンクも参照)
・生活保護110番(「生活保護110番運営委員会」:基本情報,「生活保護 Q & A」,関連書籍紹介,「生活を守る情報源〔関連リンク集〕」など.会員制掲示板あり)
 [外部リンク]http://www.seiho110.org/
・生活保護総合情報サイト(基本情報,「生活保護の質問・疑問Q & A」,全国の福祉事務所検索など)
 [外部リンク]http://seikatuhogo.info/
・全国生活保護裁判連絡会(e-mailでの相談を受付.「よくある質問と回答集」)
 [外部リンク]http://www7.ocn.ne.jp/~seiho/index.htm

◆研究(団体)
・国際自殺予防学会(International Association for Suicide Prevention:英語・スペイン語・中国語・フランス語:学会誌 Crisis: The Journal of Crisis Intervention and Suicide Prevention を発行)
 [外部リンク]http://www.iasp.info/
・アメリカ自殺学会(American Association of Suicidology:英語:学会誌 Suicide & Life Threatening Behavior を発行)
 [外部リンク]http://www.suicidology.org/
・国際自殺研究アカデミー(International Academy of Suicide Research:英語:学会誌 Archives of Suicide Research を発行)
 [外部リンク]http://iasr.mcgill.ca/
・日本自殺予防学会(学会誌『自殺予防と危機介入』を発行)
 [外部リンク]http://www.jasp.gr.jp/
・研究会「職場の人権」(労働にかんする研究会の開催:会誌の発行:労働および過労死・過労自殺にかんする相談先へのリンク)
 [外部リンク]http://homepage2.nifty.com/jinken/
・秋田県公衆衛生学会(『秋田県公衆衛生学雑誌』の閲覧:英国サマリタン協会の「自殺報道に関するメディア・ガイドライン」[邦訳]あり)
 [外部リンク]http://www.med.akita-u.ac.jp/~pbeisei/Akitasph.htm
・秋田大学自殺予防研究プロジェクト――高齢社会における自殺予防の学際的研究創出事業
 [外部リンク]http://www.med.akita-u.ac.jp/~pbeisei/suicide/index.html
・国立保健医療科学院(旧:国立公衆衛生院)
 [外部リンク]http://www.niph.go.jp/
・国立精神・神経医療研究センター(自殺予防総合対策センター:雑誌『精神保健研究』が49号より無料・無登録で閲覧できます[PDFファイル])
 [外部リンク]http://www.ncnp.go.jp/
・国立社会保障・人口問題研究所(統計,『季刊社会保障研究』『海外社会保障研究』『人口問題研究』等の閲覧)
 [外部リンク]http://www.ipss.go.jp/
・厚生労働統計協会(国内外の統計の紹介・リンク集,各種厚生労働統計のネット通販)
 [外部リンク]http://www.hws-kyokai.or.jp/
・厚生労働科学研究成果データベース(厚生労働科学研究費補助金研究成果報告書の検索)
 [外部リンク]http://mhlw-grants.niph.go.jp/about.html

◆研究(個人:いずれも強く「おすすめ」します)
・「森岡孝二のホームページ」(森岡孝二:過労死・過労自殺)
 [外部リンク]http://www.zephyr.dti.ne.jp/~kmorioka/
・「『草食系』のための日本的経営論」(大野正和:過労死・過労自殺)
 [外部リンク]http://www.geocities.jp/japankaroshi/index.html
・「心理学総合案内こころの散歩道」(碓井真史:「自殺と自殺予防の心理学」)
 [外部リンク]http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/
・「自殺サイト:自殺 臨床心理学」(末木新:自殺予防と自殺サイトの研究[ウェブログ])
 [外部リンク]http://d.hatena.ne.jp/sutare/
・「いじめと現代社会BLOG」(内藤朝雄:いじめ研究[ウェブログ])
 [外部リンク]http://d.hatena.ne.jp/izime/
・「データえっせい」(舞田敏彦:教育および〔自殺も含めた〕逸脱の研究[ウェブログ])
 [外部リンク]http://tmaita77.blogspot.jp/
・「木原活信のパーソナル・ページ」(木原活信:ソーシャルワーク研究・自殺予防と遺族のケア)
 [外部リンク]http://www.geocities.jp/kihara0918/
・「清水新二のホームページ」(清水新二:自殺予防と遺族のケア・アルコホリック研究.重要な論文がいくつか読めます)
 [外部リンク]http://shinji-stanford.sakura.ne.jp/

◆行政
・内閣府共生社会政策統括官自殺対策(自殺対策基本法,各都道府県の自殺対策担当部局へのリンク,調査報告,『自殺対策白書』など.[外部リンク]旧トップページも参照)
 [外部リンク]http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/
 →cf. [外部リンク]『自殺対策白書』
・厚生労働省(統計,自殺防止対策有識者懇談会議事録など)
 [外部リンク]http://www.mhlw.go.jp/
 →cf. [外部リンク]『厚生労働白書』・年次報告等
・美の国あきたネット(秋田県庁HP:自殺予防に関する資料集)
 [外部リンク]http://www.pref.akita.lg.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1139120837369&SiteID=0
・岩手県精神保健福祉センター
 [外部リンク]http://www.pref.iwate.jp/info.rbz?nd=422&ik=3&pnp=17&pnp=61&pnp=422
・警察庁(統計)
 http://www.npa.go.jp/
・総務省
 http://www.soumu.go.jp/



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■引用@:死の自己決定について

Foucault, M., 1979, "Un Plasir si simple," Gai Pied avril 1979.
(=19870515,増田一夫訳「かくも単純な悦び」『同性愛と生存の美学』哲学書房,184-190. ISBN-10: 4886790127 ISBN-13: 978-4886790125 \2446 [amazon]

 「死に方を教えると約束する知恵,またいかに死を想うべきかを語る哲学は,私を少しいらいらさせる.われわれに「その支度」を教えると主張するものは,私を無関心なままにする.死は,ひとつひとつ準備し,整え,作り出さなければならないものであり,それは生の最も微小な一秒間だけ私のみのために存在する.観る者のない作品とするために,最もよい要素を見つけ,想像し,選択し,忠告を求め,加工しなければならないものである.私はよく知っているが,生きている者たちは自(p.186)殺をめぐって惨めな痕跡,孤独,不器用さ,応えのない訴えしか見ない.彼らは,自殺についてしていけない唯一の問いだというのに,「なぜ」という問いを問わずにはいられない
 「なぜだって? 単に,私が望んだからだ」.[…]
 博愛主義者たちへの忠告がある.本当に自殺の件数が減ることをお望みならば,十(p.187)分に反省された,平静な,不確実さから解放された意志をもって命を断つ者しか出ないようにしたまえ.自殺を損ない,惨めな出来事にしてしまう恐れのある不幸な人々に自殺を任せてはならないのだ.いずれにせよ,不幸な者の方が,幸福な者よりも遥かにたくさん存在するのだから.
 ひとがこう言うのは,私には常に奇妙に思われた.すなわち,生と虚無の間にあって,死そのものは要するに何でもないのだから,死を恐れるにはあたらないと.しかしそのわずかなものは,賭けられるべきものではないだろうか? 何事かにすべきもの,しかも善き何事にすべきものではないだろうか?」(185-7; 太字はコンテンツ作成者による).

立岩真也,20010425,「死の決定について・1(医療と社会ブックガイド・4)」『看護教育』42(4): 302-3. ISSN: 00471895

安楽死に反対の立場で書かれた本の翻訳が昨年出た.『操られる死』.著者のヘンディンは自殺の研究を続けてきた精神医学者で「アメリカ自殺予防財団」の医療責任者だという.
〔中略〕
自発的に,自由意志によってなされているとされる安楽死が,実態としてそう捉えることができないことが指摘される.なぜ米国とオランダでこれが受け入れられているかの分析もある(第6章).ハンフリーやキヴォーキアンに対する,もちろん否定的な,言及もある(pp.39-44).
この本にも気になる部分はある.著者は上に記したような人だから,自殺を企図し,自殺幇助を求める状態は精神的な「抑うつ」の状態にあるという診断になる.そう簡単でもないだろうと私は思う.死を望む状態を必ずしも病理的な状態であると考えずになお何を言いうるか,私はそういうふうに考えたいと思う.

※上記で言及された文献
◇Hendin, H., [1997]1998, Seduced by Death: Doctors, Patients, & Assisted Suicide, Revised & Updated ed., New York: Norton. ISBN-10: 0393317919 ISBN-13: 978-0393317916 [amazon][kinokuniya]
(=20000330,大沼安史・小笠原信之訳『操られる死――〈安楽死〉がもたらすもの』時事通信社. ISBN-10: 4788799367 ISBN-13: 978-4788799363 \2940 [amazon][kinokuniya]

◆立岩真也,19970905,『私的所有論』勁草書房. (第4章 pp.132-133) ISBN-10: 4326601175 ISBN-13: 978-4326601172 \6300 [amazon][kinokuniya]

 「私自身は死ぬのは嫌だが,人の欲望のあり様は自分とは違うものとしてありうるのだから,人が自ら死を選ぶことの全てを止めはしない.AがBには理解しがたい信仰上の理由で,その信仰の成就のための手段として生命を差し出したとしても,そのような他者のあり方をBは認める.Aがa(それは他の者にとっては手段とすることを望まないものかもしれない)を手段として扱うことができ,それを譲渡してBからbを得ようとする時,それを認める◇11.だがなお抵抗がある.例えば借金に追われて自殺が「選ばれる」.あるいは腎臓を提供する.性を提供する.確かにその人はそれを選択し,自己決定した.腎臓よりお金を優位においた.死ぬ方がよかった.この事実を否定する必要はない.自殺だったら,生命という私達の大抵が大切にしているものが天秤の片方に乗っているからこれは大変だと思うかもしれない.けれど,天秤に乗るものの大切さの大きさ(重さ)が基本的な問題なのではない.お金よりも腎臓や性が大切なもののはずだと言うのではない.大切さは状況相関的に決まる.その者達にとっては確かに売って得られた生活,あるいは死んで避けることができたものの方が,売られたものより,死ぬことより価値が大きかった.大抵は生きていくことの方が「本当に」優先される.金がなければ金の方が大切だ.
 こうした決定は自己決定でないという主張があること,しかし私達の社会で用いられる言葉の使い方はこうした決定を自己決定としているのだから,この主張が不十分であることは第3章1節で述べた.しかし,私達は,結局のところAの行いを止めることはできなくとも,これらが悲惨なことだと考えるし,Bのすることを非道だと感じる.こうした悲惨さの感覚,非道だという感覚はどこから来ているのか.」

◆立岩真也,19970905,『私的所有論』勁草書房. (第6章注14 p.253) ISBN-10: 4326601175 ISBN-13: 978-4326601172 \6300 [amazon][kinokuniya]

出世の手段としての試験制度の弊害が一九世紀にはすでに指摘される.出生率の減少,また,農業従事者の減少がみられる.さらに青少年の自殺が増大する.こうした中で,脱落した青年者層を背景として,業績と平等という支配的な価値体系に反撥し,(教育熱心で,学業成績の優秀な) ユダヤ人を攻撃するナショナリズム運動,アクシオン・フランセーズが拡大していく.『自殺論』(Durkheim[1897=1985])でデュルケームの言う「アノミー」が,規範の弛緩,規範の解体というより,むしろ,このように新たに編成された規範に起因するものと考えられると桜井哲夫[1984]が述べているのが注目される.フランスにおける初等教育の進展について上村祥二[1985].

※上記で言及された文献
Durkheim, É., [1897]1960, Le suicide: etude de sociologie, Paris: Presses Universitaires de France. ISBN-10: 2130563309 ISBN-13: 978-2130563310 [kinokuniya]
(=19850910,宮島喬訳『自殺論』中央公論新社(中公文庫). ISBN-10: 4122012562 ISBN-13: 978-4122012561 \980 [amazon][kinokuniya]
桜井哲夫,19751205,「民主主義と公教育――フランス第三共和制における『業績』と『平等』」『思想』618 : 72-92.
◇――――,19841220,『「近代」の意味――制度としての学校・工場』日本放送出版協会(NHKブックス). ISBN-10: 4140014709 ISBN-13: 978-4140014707 \914 [amazon][kinokuniya]
◇上村祥二,198509**,「二月革命と初等教育」阪上孝編『1848――国家装置と民衆』ミネルヴァ書房.ISBN-10: 4623016250 ISBN-13: 978-4623016259 \5250 [amazon][kinokuniya]
 
◆立岩真也,20001010,「死の決定について」大庭健鷲田清一『所有のエチカ』ナカニシヤ出版,149-171. ISBN-10: 4888485909 ISBN-13: 978-4888485906 \2310 [amazon][kinokuniya]

「死の自己決定権」について,他者の手を借りて自らの死を選ぼうとする「安楽死」について考える★01.考えるにあたり,小松美彦の本(小松[1996])をとりあげる.「自己決定」を言いさえすればそれで済んだ気になる人達がいるとして,第一に,彼は少なくともそんな人ではなく,むしろその人達に反論を試みようとしている.しかし第二に,私は小松と同じ考えではない.両方の理由から,その論をとりあげる.そして小松が(小松も)述べていること自体から,その論を否定する.すなわち,別の場に立つのではなく,同じところから出発して別のところに着こうとする.
その後に別のことを述べる.述べることは二つである.[…]

※上記で言及された文献
小松美彦,19960620,『死は共鳴する――脳死・臓器移植の深みへ』勁草書房. ISBN-10: 4326153199 ISBN-13: 978-4326153190 \3150 [amazon][kinokuniya]

堀田義太郎,20061201,「決定不可能なものへの倫理――『死の自己決定』をめぐって」『現代思想』34(14): 171-187.ISBN-10: 4791711572 ISBN-13: 978-4791711574 \1300 [amazon][kinokuniya]

過去の「人格の利益」が,その人間の人格が変貌した後に同一身体に対して行なわれる行為や出来事によって,遡及的に影響を受けるという見解は,それ自体としては成立し得ない(183).

一ノ瀬は,「死ぬ権利」が「欺瞞的概念」(一ノ瀬2003: 56)であるという点を,「権利」という語に関する検討から示している.問題は,「「権利」という概念は,それを行使してその結果を享受できるということを含意している」が,「死ぬ権利」の場合その結果を「享受できるものが存在しない」(ibid:57)という点にある(185).

※上記で言及された文献
◇一ノ瀬正樹,20030325,「死ぬ権利の欺瞞」『死生学研究』1: 36-68.
[外部リンク]機関リポジトリで全文閲覧可.PDFファイル

◆立岩真也,20060105,「他者を思う自然で私の一存の死・2」『思想』981:80-100. 目次・文献表

 8 再び選択について
 あること,例えば自死・自殺について,そのすべてがあらゆる場合に問題なのではなく,止めにはいってしまうのは限られた事態に限られるといった場合がある.私は,一方でその人の決定が尊重されるべきだと述べた.他方で,それを与えた,少なくともそれに関わる社会の側がどんな条件を用意しているか,またそこにどんな価値があるかが問題とされるのだと述べた.基本的には本人が決めることを認めた上で,そのことに関わる事情を問題にするということだったから,それは全般的な禁止といった方策にはすぐにつながらない.ここでの主題に即するなら,自分で死ぬことはあるだろう,しかしその時,事情や理由のいかんにかかわらずどうぞ,とはならないということだった.とすると両者はどのように関係し,そして調停されるのか.(実際には,安楽死・尊厳死の以前に,いくらでも思想・心情・行動の自由を制約することがなされている.より容易に認めてしまえるようなことが制限されている.過大な干渉,不要な制限があって,その方から片づけていけばよい,と思うのはもっともであり,私自身もそのように考える.順序を間違えていると思う.ただ,ここではこの主題に即することにはしよう.)
 一つの案は,複数に,少ない場合には二つに分ければよいというものである.つまり,どちらでもよいというのでどうか.よくない理由によるものとそうでないものとを分ければよい,あるいは,いったん基本的には認めるとした上で,個々の条件を検討すればよいというのである.例えば自殺を認めた上で,自殺にも様々あって,借金で首がまわらなくなってのことであるとすれば,それは本人も死にたくはなく,死ななくてよい死であるのだから,それとして対応しようというのである.
 自己決定主義の強さもまたそこにあった.それは「寛容」を言う.選択がもう一度呼び出される.
 […]
 詳しくは次の稿に委ね,この項で述べたことを繰り返し,少し進む.まず,安楽死・尊厳死のかなりの部分について,なされるのはつまりは自殺であり,許容が求められていることは,自殺を助けることであることは認めるべきである.そして広義の自殺幇助については,それを禁止あるいは制限するもっともな理由があるとしよう.また,誰かの助けを借りずに行われるにしても,その行いが完遂する前に介入することは認められるはずであるとしよう.他方で,自殺はほとんどの場合に可能であり,法的な規制をしたとしても,その規制は実効性をもたない.とすれば禁ずるか禁じないかといった議論にどれほど意味があるかとも思われるのだが,禁ずることではないとしよう.死が抑止されているとしても実際には可能であることで,どちらでもあってよいではないかという主張は実質的には実現されている.事態は概ねこのようになっている.しかし,こうしてほとんどの場合には人は死のうと思えば死ねるのに,自分で死ねず人の手を借りなければならない人だけが――その場合でも,手助けする人が刑に服するつもりがあれば,死ぬこと,死なせることは可能ではあるのだが――容易に死ねず,不利益を被る.このような現実,そして主張に対してどのように言うか.その前提として確認しておくべきことはほぼ確認した.次の稿で,この時代に何が起こっているのかをもう一度考えながら,続きを続ける.

◆立岩真也,20060205,「他者を思う自然で私の一存の死・3」『思想』982: 96-122.  目次・文献表[了:20060106]

 第七に,きまりについて.なされる行ない(あるいは行なわないという行ない)は,基本的に自殺であり,自殺を助けることであると考えるしかない☆12.自殺幇助は依然として罪に問われてよい.誰にでもこの行ないを頼むことができないとなれば,依頼する相手は関係者であることが多く,その関係者は利害関係者でもあり,死を望む人たちでもありうる.他方,関係者でないなら,たいていの人たちはこのような行いについて気が進まないだろうから,手伝おうとするのはそうした営みに喜びを感じる人であるかもしれない.あるいは人の生死などあまり気にしない人であるかもしれない.となると,いずれにせよ死の方に向かう力はかかりやすい.これは,中立というより死の方に人を傾かせる.態度として,基本的に生の側につくのがよいなら,なおこれは支持されない.
 安楽死・尊厳死の正当性を主張したいなら,この行ないが自殺を助けることであることを認め,さらに自殺を助けることが原則的に許容されるべきだと主張するとよい.あるいは,自殺幇助全般を認めるのでなく,限定して自殺幇助を認めることが主張されるなら,その状況は,他の場合と異なり,死んでも仕方がない状況だと認めるべきだと主張しているということである.だからその理由を示すべきである.
 私たちは壊れやすい身体でできているのだから,多く,死ぬのは簡単なことである.しかし助けがないと死ねない人もいて,その人たちにとっては,幇助が禁じられ,結果として自殺できないことは不公平なことではある.しかし,死ぬ方向に巻き添えをくう人の側に立って,死ねない人には我慢してもらうことにする.そしてどうしてもできないわけではない.どうしても死ぬことを手伝いたいのなら,それは可能である.罪に問われるが,それはそのぐらいの覚悟があっての行いであってよい.
 ☆12 例えば人工呼吸器がないと呼吸ができない人から人工呼吸器を外すことと殺すことがまったく違った行ないであるというのは詭弁である.当人がそれを外すことを自殺でないと言うこと,当人が外せない場合にそれを手伝うことを自殺を手伝うことではないというのもおかしなことである.このことについては立岩[二〇〇四b].また呼吸器を外すことと呼吸器をつけないことの間にも,思われているほどの違いはない.ただ,次第に呼吸が困難になっていって意識が混濁していくといった場合には,どの時点で生命が決定的な危機に瀕するのかわからない.この場合と違って,呼吸器を外す場合には,これから死ぬことがはっきりとわかる.私は川口有美子からこの点に留意を促されたのだが,この違いはたしかに大きい.なお,「(積極的)安楽死」という場合には薬物なりを他人が投与するが,「医師に幇助された自殺」という場合には渡された薬物なりを自分で飲むといった区別がなされることがある.

 ☆01 それもまた一つの価値であり,信念でしかないという批判はあるだろう.しかし,そのような言い方に答えて書いたのである.つまり,個々に委ねることはよいことではあるが,しかしそれだけではないこと,そしてそれにはわけがあることを述べた.繰り返すが,私が述べたのが一つの価値であることは認めよう.当たり前である.しかし,それは人や人の価値が多様であることを認めながら,しかしそれだけでないことを言い,そして他の価値ではなくこの価値が基本にあるはずだと主張する一つの価値である.
 そのように言った上で,私は生死についての権利をその人から取り外してはいない.ただ,さらに,そもそも自らに自らの生死を決める権利があることを認めないと言ってしまうこともできなくはない.人の生き死には人が決めることではないとしてしまうのである.それは,乱暴なようではあるがそうわるい方法ではない.死んだらいけないのだと思えたらよいのだろうと思う人もいる.自分ではそう思うが,様々あって,自分のこととして言えないこともある.そんな時,ともかくそう決まっているとされるのはわるくない.よけいなことを考えずにすむ.
 それに対して私は,安楽死・尊厳死だけを問題にしてきた.それは,安楽死・尊厳死に自殺全般が問題であるとかないとかいうのと別の問題があるはずだと感じて考えてきたからである.自殺はだめだから,安楽死・尊厳死はだめなのだという論理と違うことが言えるし,言うべきだろうと思ってきたということである.ただ,いったん一般的に自殺はだめであるとした上で,安楽死・尊厳死についてはさらに別の問題が加わると捉えることは可能だから,いま述べた限りでは私は自殺否定論を積極的に否定しているわけでなく,否定できているわけでもない.
 ただ,自殺がいけないという論に付される理由にそのまま受け入れらない部分があると感じてはきた.理由も何も言わず,とにかく自殺はいけないとし,それを掟としてしまう以外に,そうでなく,いけない理由を言おうという人たちもいるのだが,そこに言われる理由でよいのだろうかと思うのだ.例えばその人たちは,死が「私秘的」なものとされてしまっていることを批判し,その代わりに共同性を言う.例えば小松[一九九六].それらの人たちは大切なことを言ってはいるが,そのままの言い方ではとれないと思った.それで立岩[二〇〇〇b]を書いたのでもある.
 一つ,死んではならない理由として言われるのは,報恩である.[…]
 もう一つ,あなたの死を悲しむ人がいる,生を望んでいるという言い方がある.[…]

※上記で言及された文献
◇小松美彦,19960620,『死は共鳴する――脳死・臓器移植の深みへ』勁草書房. ISBN-10: 4326153199 ISBN-13: 978-4326153190 \3150 [amazon][kinokuniya]
◇立岩真也,20001010,「死の決定について」大庭健鷲田清一『所有のエチカ』ナカニシヤ出版,149-171.ISBN-10: 4888485909 ISBN-13: 978-4888485906 \2310 [amazon][kinokuniya]
◇――――,20041115,『ALS――不動の身体と息する機械』医学書院. ISBN-10: 4260333771 ISBN-13: 978-4260333771 \2940 [amazon][kinokuniya]



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■引用A:自殺の社会学的研究のはじまり

◆Douglas., J. D., 1967, The Social Meanings of Suicide, Princeton: Princeton University Press. ISBN-10: 0691028125 ISBN-13: 978-0691028125 [amazon]

医学,とくに精神医学,および18世紀末から19世紀におけるさまざまな種類の公的統計の急速な発展にともない,自殺にかんする〔研究者の〕道徳的関心が統計数値の変動へと,次第に向かうようになった;またそれらの統計が,次第に自殺研究の“経験的”資料として扱われるようになった(7;〔〕内はコンテンツ作成者の加筆).

自殺は道徳的問題であるということが,あらゆる自殺研究者〔中略〕によって,暗黙のうちに仮定されていた.
この19世紀における量的統計的な調査および理論は,現在にいたるまで,ほとんどすべての自殺の社会学的研究と理論に決定的な影響を与えている(8).

Foucault, M., 1976, Historie de la sexualité 1: la volonté de savoir, Paris: Gallimard. ISBN-10: 2070295893 ISBN-13: 978-2070295890 [kinokuniya]
(=19860910, 渡辺守章訳『性の歴史I――知への意志』新潮社. ISBN-10: 4105067044 ISBN-13: 978-4105067045 \2520 [amazon][kinokuniya]

自殺が――かつては罪であった,というのも,地上世界の君主であれ彼岸の君主であれ,君主だけが行使する権利のあった死に対する権利を,まさに彼から不当に奪う一つのやり方であったからだが――十九世紀に,社会学的分析の場に入った最初の行動の一つであったというのは驚くに当たらない.それは,生に対して行使される権力の境界にあって,その間隙にあって,死ぬことに対する個人的で私的な権利を出現させたのだ.この死への固執という,いかにも奇怪だがしかしそれにもかかわらずその発現において極めて規則的かつ恒常的であり,従って単なる個人的特殊事情とか事故というのでは説明できないもの,それは,政治権力が自らの務めとして生を経営・管理することを掲げるに至った社会にとって最初の驚きの一つだったのである(175-6).



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■引用B:ネット自殺/ネット心中について

◆土井隆義,20080310,『友だち地獄――「空気を読む」世代のサバイバル』筑摩書房(ちくま新書). ISBN-10: 4480064168 ISBN-13: 978-4480064165 \756 [amazon][kinokuniya]

ネット集団自殺における「形」のなさについては,その特徴を二つの側面から考えることができるだろう.第一の特徴は,〔中略〕動機をめぐる不可解さである.
〔中略〕
ネット集団自殺における「形」のなさをめぐる第二の特徴は,ネットで募った赤の他人と一緒に自殺しようとするのはなぜかという,過程をめぐる不可解さである(179).

生のリアリティを希求する手段としてネット集団自殺を捉えなおすなら,それは現実「回避」の試みというよりも,むしろ現実「回帰」の試みといえる(191).

インターネットは,「虚構化された現実」から「より現実らしい現実」へと逃避する手段としては,もはや有効性を失ってきている.〔中略〕現実社会における「優しい関係」が,いまやネット上でも強く求められるようになっている.
〔中略〕
このような事態が進むなかで,生のリアリティの回復を願う人びとが,ネット集団自殺という手段を積極的に採用する根拠は薄まってきている.今後,ネット集団自殺が減っていったとしても,それは,現代を生きる若者たちの抱え込んだ生きづらさが解消されたからではない(220-1).

◆貞包英之,20051025,「浄化された死,あるいは情報の海」現代社会研究会編『未明からの思考――社会学の可能性と世界の相貌を求めて』ハーベスト社,140-72. ISBN-10: 4938551780 ISBN-13: 978-4938551780 \2520 [amazon][kinokuniya]

第二に事件に特徴的であったのは,死の私化――死を共同・社会的な場から切り離し,個人に純粋に帰属させる――というべき事態が現象していたことである.
〔中略〕 死を私的な出来事として個人に委ねること,このことは共同体・社会にとって当然の前提ではない.重ねられる死を再認・参照していくことで,共同体・社会は持続の時間を獲得していくのである.だが〔ネット自殺〕事件では,死が個人に委ねられる極限の志向が観察された.〔中略〕こうしたネットの場をとおして事件では,共同体や社会の介入を拒絶する死が積み重ねられていったのである(142; 〔〕内はコンテンツ作成者の加筆).

ネットはただ便利な道具として利用された側面があり,その介在がどこまで本質的な影響をあたえていたのか確認しがたい(143).

実際どれほど特異にみえようとも,〔ネット自殺〕事件にみられた死への嗜好は,この社会でけっして孤立したものではない.それはたとえば,九○年代後半より目立ち始めたいわゆる「自傷系」の者たちの欲望や,「実験系」の犯罪者たちの嗜好と連続の系列を構成している.〔中略〕彼・彼女たちの生きる日常は,死に至るまで恣意性を肯定する場としてあり,つまりここでの生は根底から浄化されているためである(170-1; 〔〕内はコンテンツ作成者の加筆).




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■引用C:自殺(および関連する)統計を読んでみると(1)戦後日本における自殺の第1の波(1950年代)

◆中久郎,19660410,「青年の自殺」高坂正顕・臼井二尚編『日本人の自殺』創文社,55-70. ASIN: B000JABC58 [amazon]

自殺した〔24歳以下の〕就業者の大部分は〔雇用条件・労働条件が良いとはいえない〕中小企業とか家族経営的な零細企業に働く青年であった.そのうえ,同じ大企業体の中ででも自殺者は主として〔職位や雇用条件において〕低階層に属する者であることが倉石氏の調査によっても確かめられている.
〔中略〕
〔中略〕雇用条件の企業別格差という特殊なわが国の就業構造は,就業者間の自殺傾向の差異にも明らかに反映されている(60-1; 〔〕内はコンテンツ作成者の加筆).

※上記で言及された文献
◇倉石精一,19660410,「産業別・職業別にみた日本人の自殺」高坂正顕・臼井二尚編『日本人の自殺』創文社,144-52. ASIN: B000JABC58 [amazon]

◆中久郎,19660410,「女性の自殺」高坂正顕・臼井二尚編『日本人の自殺』創文社,71-82. ASIN: B000JABC58 [amazon]

日本では有業女性の自殺率は戦前から〔1960年にいたるまで〕かなり高かった.〔中略〕ただし,有業者の中でも農林漁業従事者は比較的低率である.しかし,これを除く有業女子の自殺傾向は非常に高い(77).

◆中久郎,19660410,「老人の自殺」高坂正顕・臼井二尚編『日本人の自殺』創文社,83-97. ASIN: B000JABC58 [amazon]

せめて,北欧諸国のように,老人福祉の諸制度が充実されていたならば,自殺した老人の多くは,自殺にまで追い込まれる必要はなかったにちがいない.つきつめて考えれば,結局は,老人に対する日本の社会保障の未熟さが,自殺率をかくも異常に高めている主因である.
よく,社会保障の発達した国々でも老人の自殺は多いといわれるが,その発生率は日本とくらべてかなり低率なのである.それは,すでに本章の第一表でも明らかな通りである(97).




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■引用D:自殺(および関連する)統計を読んでみると(2)戦後日本における自殺の第2の波(1980年代)

◆塩原秀子,19870215,「自殺死亡と家計における消費支出構成比との関連について」『厚生の指標』34(2): 20-5. ISSN: 04526104

経済的なゆとりやゆたかさがみられ,家事の外部化,サービス化現象が家庭生活の中に進んでいる状況をあらわす生活の都市化の程度において〔統計上の自殺率の差を生むような〕地域間格差は存在しているものと考える.そしてその生活の都市化をはばんでいる要因と考えられる〔統計上の自殺率の高い地方における〕地域生活の後進性(その社会の体制に起因している古い因習や生活にまつわる古いしがらみなどの他,地域の生活環境のたちおくれなど)が,中年層をふくんだ男の世帯主の〔自殺に象徴される〕健康障害の重大な要因と関連があるのではないかと考える(25; 〔〕内はコンテンツ作成者の加筆).

◆山本努,19960905,『現代過疎問題の研究』恒星社厚生閣.ISBN-10: 476990827X ISBN-13: 978-4769908272 \3360 [amazon][kinokuniya]

これらの高齢者の自殺を規定するのは,イエ機能の解体(ないし変容)と家族規範の同時存在といえた.すなわち,過疎・農村地域(の家族)は,イエ制度の機能面での解体(ないし変容)と規範面での残存という葛藤的同時存在の中で,高齢者の自殺を生み出している.
これは,マートンのいう社会解体状況と言ってよい.〔中略〕.
日本では伝統的には,家族が高齢者を支えてきた.しかし,そのことが,社会福祉や社会保障の発達を阻害した(福武,1986A,215-303頁).いま,それが,日本の伝統的な家族福祉に依存することの多い農村・過疎地域の部分で,自殺の問題として出てきている.まさに,「「イエ」制度の「強み」が,逆に「弱み」となって」(福武,1986B,176頁)現れている(44-5).

以上から分かるのは,過疎地や職業階層の下層といったいわば,社会的に弱い部分で自殺圧力(疎外)が増大しているということである.先に見たように,デュルケームは,「自殺は,社会の気分のありかたを表現している」と言明した(デュルケーム,1985,470頁).ここから考えれば,この十数年で日本社会は,弱者に厳しい社会に向かって変化したといえる.これが,本章での現状分析の結論である.
デュルケームは,自殺は「正常」な社会構造の一部であるという〔中略〕自殺がそのような「正常」なものによって生み出されるにしても,その自殺が,社会的に弱い部分にセグリゲートするのはやはり,問題といわざるを得まい.何故なら,「自己犠牲の精神」にせよ「個人化」にせよ,それらが,社会的に弱い部分において,作動しやすいのは,明らかに正義に反するからである.
ただし,これは,あるいは,日本社会全体が,そのような文化を持っているのかもしれない.すなわち,弱い層に自殺を押しつける文化がそれである(68-9).

※上記で言及された文献
Durkheim, É, [1897]1960, Le suicide: etude de sociologie, Paris: Presses Universitaires de France. ISBN-10: 2130563309 ISBN-13: 978-2130563310 [kinokuniya]
(=19850910,宮島喬訳『自殺論』中央公論新社(中公文庫). ISBN-10: 4122012562 ISBN-13: 978-4122012561 \980 [amazon][kinokuniya] ※)
◇福武直,[1983]1986A,『福武直著作集 第11巻――社会保障論断章』東京大学出版会. ISBN-10: 4130540823 ISBN-13: 978-4130540827 \4725 [amazon][kinokuniya]
◇福武直,1986B,『福武直著作集 補巻――社会学四十年以後』東京大学出版会. ISBN-10: 4130540831 ISBN-13: 978-4130540834 \4725 [amazon][kinokuniya]
◇Merton, R. K.(森東吾・森好夫・金沢実・日高六郎訳),[196911]20050510,『社会理論と機能分析』青木書店. ISBN-10: 425020507X ISBN-13: 978-4250205071 \7875(※日本国内での編訳) [amazon][kinokuniya]




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■引用E:自殺(および関連する)統計を読んでみると(3)戦後日本における自殺の第3の波(1998-現在)

◆安藤仁朗,20040215,「成人男性自殺率の現状と推計――ベイズ型コーホートモデルによる3効果の分離」『厚生の指標』51(2): 17-23.ISSN: 04526104

人口減少に伴って自殺数こそ減少するものの,〔日本人男性の〕自殺率はさらに上昇し,2030年には〔人口10万人あたり〕50人を越え,過去最高となる.以降,自殺率は50人程度で持続する.
〔中略〕現状の〔すなわち2000年代前半における政治経済的な〕傾向が続くと,今後,成人男性全体の自殺率は上昇を続け,現在よりもさらに深刻な事態になることが危惧される(22; 〔〕内はコンテンツ作成者の加筆).

◆清水新二,20041228,「中高年男子うつ病対策を越えて――もう一つの自殺問題」『臨床精神医学』33(12): 1539-46.ISSN: 0300032X

女子の自殺率は〔中略〕長期トレンドとしては男性とは逆に減少傾向にあったといえる(前出図2参照).その結果,平成10年には自殺率性比は約3倍と開き,以前にもまして自殺は男子に圧倒的に多いという事態が惹起されている.こうした長期トレンドおよび性比の拡大傾向に反した形で,平成10年の女子自殺率が急増しているのである(1542).

多くの女子も〔中略〕なんとか経済的環境悪化の影響を最小限にくい止める努力を積み重ねてきた〔中略〕そうした女子が有する対処資源の活用能力さえもが平成10年には枯渇したかのように,女子自殺率も一気に上昇してしまったのではないかと推測される(1543).

日本社会に比較的安定的に組み込まれてきた暮らしを守る安全性システムと神話が次第に崩壊し,これらにとってかわり「自己責任」ならびに「競争と効率」神話の構築が進行していく.ごく一部の者を除いて,こうした“展望のない”閉塞的な問題状況と認識が国民全体の間に一気に拡散した,それが平成10年だった〔中略〕(1543).

◆与謝野有紀,20110729,「格差・信頼とライフチャンス――日本の自殺率をめぐって」齋藤友里子・三隅一人編『現代の階層意識[3] 流動化のなかの社会意識』東京大学出版会,293-307. ISBN-10: 4130551337 ISBN-13: 978-4130551335 \4800+税 [amazon][kinokuniya]

ところで,格差は人々の労働意欲の源泉になり,結果,人々のライフチャンスを拡大させるという議論がある.本章で示してきたことはこれと対極的なものであり,格差の拡大は,信頼感を破壊し,結果〔自殺というかたちで〕人々の生命をも脅かすような社会状況を生み出すというものであった〔中略〕「格差がどのように拡大しようとも,それは効率ある社会運営のための競争の結果であり,人々の幸福の実現のためにはやむをえない」という想定は明らかに間違っている(304; 〔〕内コンテンツ作成者加筆).

格差のある社会では,他者を信頼し,他者と共同する基礎が脅かされると結論することができる〔中略〕平等は人々のライフチャンスの増大の基礎となる信頼生成の十分条件にはならないが,信頼生成の必要条件となっており〔中略〕信頼感が低い社会は,人々の命を守る共同が少ない社会であるとさえいうことができるだろう(305).

 →cf. 20120217,「自殺総合対策大綱の見直し(改正)に向けての提言 第二次案(日本社会学会)」
  [外部リンク]自殺予防総合対策センター(国立精神・神経医療研究センター)HPで全文閲覧可.PDFファイル
  (改正版「大綱」〔20120828〕→[外部リンク]内閣府HPで読めます.PDFファイル)




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■引用F:とりあえず自分も他者も生きることのできる社会を構想する

◆立岩真也,20060710,『希望について』青土社. ISBN-10: 4791762797 ISBN-13: 978-4791762798 \2200+税 [amazon][kinokuniya]

例えば,私たちが新型肺炎で騒いでいる間に,世界中で一日に約八○○○人の人がエイズで亡くなっている.とくにアフリカ南部に多い.それは不可避の悲劇ではない.安く供給しようと思えば供給できる薬を使えば死なずにすむのに,供給されないから亡くなっている.それが悲劇なのだ.
それに比べればこの国で生じていることはもう少し見えにくいかもしれない.〔中略〕ただ,交通事故死よりははるかに多い数の自死の背景には,失業や倒産,仕事絡みの疲労がある.〔中略〕実際に人が生きていくことのできる物も,何もかもがこの社会に既にある.その意味で,どこにも危機がなく悲惨があるはずがないにもかかわらず,こうなってしまっていることが悲惨なのだ
どんな生き方がよいか知らない.ただの生がたんに肯定されればよい.それを消耗させようとしないことだ(302; 下線はコンテンツ作成者の加筆).

◆松本良夫,20060925,「日本における自殺の近況――社会学的分析」『現代の社会病理』21: 59-72. ISSN: 1342470X

「失業〈即〉生活難→自殺・犯罪」という連鎖を緩和する施策はあり得るし,その対策を考えねばならない.たとえば,安易な便乗リストラや就労条件の切下げに対する〈規制〉などである.〈規制緩和〉大合唱のなかで,〈必要な規制〉までもがかき消してはならない.昨今「生活の安心・安全!」が社会的な〈合言葉〉になっているが,その際,どこまで〈失業・就職難・生活難に由来する絶望〉が考えられているのか(71-2).

◆舞田敏彦,20090330,「性別・年齢別にみた自殺率と生活不安指標の時系列的関連」『武蔵野大学政治経済学部紀要』1: 145-57.

女性の場合,〔1975年以降〕どの年齢層でも,失業率は自殺率と関連を持っていない.代わって注目されるのは,離婚率と自殺率の負の関連である(30代,40代,60代以上).とくに,40代と60代以上では,離婚率が下がることが,自殺率を上昇せしめる最大の要因となっている(155; 下線はコンテンツ作成者の加筆).

男性とは違って,女性にすれば,離婚は自殺の抑止因になっている.このことは,家族生活が,女性(とくに中高年女性)にとって苦痛をもたらすものであることを含意する.確かに,昨今,虐待やDVなど,家庭生活のトラブルが頻発している.このような問題の解決と共に,より一層,女性の社会参画を促す政策的努力が肝要であると思われる(156; 下線はコンテンツ作成者の加筆).

◆内藤朝雄,20010715,『いじめの社会理論――その生態学的秩序の生成と解体』柏書房. ISBN-10: 4760120882 ISBN-13: 978-4760120888 \2415 [amazon][kinokuniya]

筆者の構想はノージックと根幹的な論理がかなり共通している.ただし決定的に異なるところから,別々の道へと分岐していく.
〔中略〕自由な選択のためのライフチャンスを万人に確保するのは,アメリカ的なリバタリアン政府ではなく,ヨーロッパ(たとえばオランダ,フランス,ドイツ,デンマーク)的なリベラル政府の方である.低所得者層が医療を受けられずに死んだりホームレスになったりする(あるいはその不安が日々の生活をおおいつくす)レーガン式の小さな政府で,個人の自由な選択のためのライフチャンスが実質的に確保されるとはとうてい考えられない(259).

一人一人が自由に生き,さまざまな善い生のスタイルときずなが殲滅し合うことなく発展を遂げるためには,しっかりした社会的インフラストラクチャーが必要である.このインフラの役割は,他のスタイルを生きる人に対する攻撃を禁止し,個人の選択と移動の自由を実質的に保障するといったことだ.
〔中略〕構造的な力関係によって人格的な隷属を引き起こしやすい社会領域学校・会社・家族・地域社会・宗教団体・軍隊……)に対して,個の自由と尊厳を確保しやすくするための制度的な介入のしくみをはりめぐらせるまたさまざまな人々がさまざまなライフチャンスにアクセスする権利を保障しなければならない〔中略〕.
〔中略〕
その意味で〔内藤の構想する〕自由な社会は,次のようなタイプの人には都合が悪い社会である.たとえば,自分を中心とした勢力の場に他人を巻き込んだりコントロールしたりして,強大なパワーを感じたい人がいる.こういう権勢欲の人たち,自分が苦労して牛耳った集団のノリの中で浮き上がったまま堂々としている個人をみると攻撃せずにはいられない.あるいは,人間はかくあるべきという共通善に関する思い込みをもっていて,その信念に反する人々が存在するのを目にすること自体が耐え難いと言う人がいる.こういう人は,若い人がチャパツで学校や街を歩いていたり,電車の中でキスしていたりするのを見かけるだけで,被害感と憎悪でいっぱいになる.こういう人たちには不快な思いをしてもらうことになる(263-4; 〔〕内と下線はコンテンツ作成者の加筆).

※上記で言及された文献
Nozick, R, 1974, Anarchy, State, & Utopia, New York: Basic Books. ISBN-10: 0465097200 ISBN-13: 978-0465097203 [amazon][kinokuniya]
(=199411,嶋津格訳『アナーキー・国家・ユートピア――国家の正当性とその限界』木鐸社. ISBN-10: 4833221705 ISBN-13: 978-4833221702 \5775 [amazon][kinokuniya]

◆内藤朝雄,20071110,『〈いじめ学〉の時代』柏書房. ISBN-10: 4760132198 ISBN-13: 978-4760132195 \1680 [amazon][kinokuniya]

ところで今,地域における共同体の再生が急務だとする意見が,左右問わず多くの人に叫ばれています.いわく「今まではそれぞれの地域にあった共同体が解体され,薄れてきてしまったから日本はおかしくなってしまったのだ.だからもう一度それを作り直さなくては.再評価しなくては」という意見です.
〔中略〕
私はこうした風潮を,好ましくないと思います.中間集団の内側に働く圧力のことを一貫して研究してきた私には,彼らが誉めそやす「郷土愛」や「共同体」は,とても手放しで賛成することはできないからです.
〔中略〕
国家による圧制が怖いのは言うまでもないことですが,しかし中間集団に働くファシズムがある意味で国家全体主義以上に怖い点は,地域に住む我々自身が,それを命じられることなく勝手に代行してしまうところにあります.
「郷土愛」を叫ぶ人は,それがいかに危険なものなのか分からないままに,「必要だ.再生だ」と叫んでいるのではないでしょうか?(210-12).

◆内藤朝雄,20090320,『いじめの構造――なぜ人が怪物になるのか』講談社(講談社現代新書). ISBN-10: 4062879840 ISBN-13: 978-4062879842 \798 [amazon][kinokuniya]

大切なことは,群れた隣人たちが狼になるメカニズムを研究し,そのうえでこのメカニズムを阻害するような制度・政策的設計を行うことだ.このような政策を,学校,地域,職場組織,民族紛争地域といったあらゆる領域で実施することで,多くの人々が共同体的専制から救われる(252; 下線部はコンテンツ作成者の加筆).

中間集団全体主義社会において,人々を直接的に苦しめる主要な力は〔中略〕「生活の細部にまで浸透し,霊魂そのものを奴隷化する」(J・S・ミル)ローカルな秩序の作用である.つまり,身近な関係のなかで起こる迫害やそれに対する不安,さらには自分自身を嫌悪してしまいそうなしかたで自分を変えてしまう場の変形力といったものだ(261).

※上記で言及された文献
Mill, J S, [1859]1985, On Liberty, Harmondsworth: Penguin. ISBN-10: 0140432078 ISBN-13: 978-0140432077 [amazon][kinokuniya]
(=197110,塩尻公明・木村健康訳『自由論』岩波書店(岩波文庫). ISBN-10: 4003411668 ISBN-13: 978-4003411667 \819 [amazon][kinokuniya]


◆土井隆義,20090605,『キャラ化する/される子どもたち――排除型社会における新たな人間像』岩波書店(岩波ブックレット). ISBN-10: 4000094599 ISBN-13: 978-4000094597 \504 [amazon][kinokuniya]

間接自殺の亜種ともいうべき一連の無差別殺傷事件が私たちに突きつけているのは,この〔目先の,自分たちだけの安心のために,生活圏を物理的・心理的に閉ざすことを志向する新自由主義的な〕排除型社会の仕組みとそれを支える心性を克服できなければ,いずれ最後には,自分自身を自分から排除せざるを得ない結末が待っているという「宿命」なのです(63; 〔〕内コンテンツ作成者の加筆).



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■引用G:自殺の公的統計をめぐる議論――公的統計の意義・限界・使い方

◆Douglas, J. D., 1967, The Social Meanings of Suicide, Princeton: Princeton University Press. ISBN-10: 0691028125 ISBN-13: 978-0691028125 [amazon][kinokuniya]

自殺の公的統計には,少なくとも5つの重大な信頼性の欠如――自殺の社会学理論を検証するにあたってバイアスを与える――が存在する:(1)社会学理論を検証するにあたって選択される公的統計の種別に起因する信頼性の欠如;(2)自殺隠蔽の試みにかんする下位文化集団ごとの差異に起因する信頼性の欠如;(3)社会的統合度の差異に起因する,公的統計の作成・維持にかかわる信頼性の欠如;(4)社会的に付与される自殺動機の重大な差異に起因する信頼性の欠如;(5)把握している人口集団にたいしてどれほど網羅的・専門的にデータ収集がなされれているかに起因する信頼性の欠如,である(203).

(3)〔中略〕死者が彼/彼女の属する地域共同体――役人も含めた――との統合度/絆が強ければ強いほど,死者と意味ある他者への配慮により,医師,検死官,その他死の原因を判定する責任を負う役人たちは〔死因の判定において〕意識的・無意識的に死者・遺族らを有利にせしめんとする影響を,より一層こうむることとなる(213; 下線部原文イタリック体;〔〕内コンテンツ作成者の加筆).

(4)無作為に抽出した自殺ないし不慮の事故死にかんする検死官の報告を一瞥すれば,〔死因判定における〕担当の役人たちによる自殺動機付与の重要性が明らかとなる〔中略〕.
自殺統計に存在しうるきわめて重要なバイアスは,社会的に分有された自殺動機である〔中略〕たとえば,孤独/社会的孤立は人を憂うつ・抑うつ的にする傾向があり,ゆえに孤独/社会的孤立は自殺企図を助長する,という昔ながらの根拠のない思い込みが存在する〔中略〕.
もし人がある人物の死を自殺だと類別しているならば,彼/彼女は当該人物が「不幸」であったこと――ことに当該人物が「憂うつそうだった」「抑うつ的だった」かどうか――をほぼ確実に「知っている」(216-7; 下線部原文イタリック体;〔〕内コンテンツ作成者の加筆).

(5)農村部における人口に占める医師の割合の低さなどの諸要因は,全般的に都市部と比較して非効率な統計管理機構を生じさせるだろう.さらに言えば全般的に,都市化・産業化・富裕化とのあいだの関係は,密接かつ直接的であろう.そしてこれら3つの変数と統計管理機構の効率性とのあいだの関係もまた,密接かつ直接的であるように思われる.都市部では,公的機関の職員が移動させられる距離はより短い〔ので時間もかからないから〕一つ一つの死ごとに死因を特定することは,それほどコストのかかることではないだろう.死因をそのような状況のもとで効率よく統計に収集することを求められている専門職員がより余裕をもつ可能性が,都市部ではまさに確実に存在する. 〔中略〕都市部において〔より良好な編集〕機構を維持している公的統計が,農村部よりもより効率的〔に収集・編纂されるの〕であり,したがって自殺の公的統計は都市部とくらべて農村部においてより低い率が出るような方向づけという強力なバイアスがかかる傾向にあるだろう〔中略〕(224).

公的統計の利用にかかわるもっとも重大な誤りは,理論それ自体が生み出される場合と同じ誤りだ;すなわち,『自殺的行為』は西洋世界の隅々にいたるまでの必要かつ十分な単次元的意味をもっている〔=西洋世界のどこに行っても,だれでも同じように理解し記述するだろう〕,という思い込みである.この思い込みは,公的機関の職員たちが理論家たちと同じ定義を上手に利用するにちがいないという思い込み(ないしは議論)の裏にも隠れている.それは『自殺』とある死をカテゴリー化することが,あらゆる社会集団,階層そして諸個人にとって同じことを意味するだろうということ,よって公的統計に関係するあらゆる行為(たとえばその死にかんする事実を隠そうと試み,よってその死が自殺であるとカテゴリー化されないかも知れないこと,など)が考慮に入れられる社会の隅々にいたるまで等しく配分されているという,(ほとんど明白になることすらない)思い込みの裏にも隠れている.重要なことに,この思い込みが,『公的機関』の職員による死因のカテゴリー化はあらゆるほかの社会構成員によるその死のカテゴリー化と同様に『議論』の最終的結果としてある,とみなしそこねていることの裏にも隠れている(229).


◆Bernard, Ph., 1976, "Anti- ou anté-durkheimisme?: contribution au débat sur les statistiques officielles du suicide," Revue française de sociologie, 17(2): 313-41. ISSN: 00352969
(=19880915,杉山光信訳「反デュルケム主義か前デュルケム主義か――自殺の公式の諸統計に関する議論への寄与」杉山光信・三浦耕吉郎訳『デュルケムと女性,あるいは未完の「自殺論」――アノミー概念の形成と転変』新曜社,221-63.)

届出されない死因についていえば,死亡全体の中の自殺の比率と死因の届出のないものの比率とのあいだに考えられる相関関係を研究することもできよう〔中略〕アルプ=マリティーム県(*)は伝統的に死因不詳(届出なしと死因不明)の多さのレコードを保持している.死因の特定される死亡にたいする自殺の比率は,この県では全国平均を上まわる.もちろん,この指標は他のものにより補完されねばならないが,死亡原因の届出のないものが自殺隠蔽の頻繁にみられる様式であるとはほとんど考えられない.隠蔽は,公立の病院のなかで生じる死亡よりも自宅で生じた死亡についての方が,より容易にできるであろう.しかしながら,この二つのカテゴリーのあいだで死因届のない死亡の比率についていえば,ちがいは感知されないし,恒常的にあるものでもない(259-60).
(*)Alpes-Maritimes:フランス南西部の県.県庁所在地はニース.映画祭で有名なカンヌを含む.
 →[外部リンク]地図
 →[外部リンク]県公式HP(フランス語)


◆Best, J., 2004, More Damned Lies & Statistics: How Numbers Confuse Public Issues, Berkeley: University of California Press. ISBN-10: 0520238303 ISBN13: 978-0520238305 [amazon][kinokuniya]
(=20071031,林大訳『統計という名のウソ――数字の正体,データのたくらみ』白揚社. ISBN-10: 4826901399 ISBN-13: 978-4826901390 \2730 [amazon][kinokuniya]

20世紀終わりごろにアフリカ系米国人のティーンエイジャーの間で自殺が増えたという報告を考えてみればいい.一九九八年に米国疾病対策予防センター(CDC)が報告したところによれば,10歳から19歳までのアフリカ系米国人の自殺率が一九八○年から一九九五年の間に倍以上に増え,この増加は白人の青少年の間での増加よりはるかに大きいということだった〔中略〕.
CDCの報告に目をつけた記者たちは,この動向を説明しようと,精神医学者や臨床心理学者に連絡をとった.普通こうしたことに関する専門家と考えられている人々だ.権威の方々は「心的外傷後奴隷症候群」に触れた〔中略〕.また,この人たちは「家族の崩壊,経済的な機会の乏しさ,診断されていない鬱状態,認識されていないが,近隣で起こった暴力事件について悲しみを覚えていること,さらには,中産階級の一員になろうとすることからくるストレス」を挙げた.「社会的地位を上昇させる黒人家庭には伝統的な家族と地域社会の支えが欠けている」というのだった〔中略〕(149-50).

しかし,この増加が,黒人青少年の行動の変化ではなく,当局がこの人たちの死を処理する仕方の変化を反映しているということもありうる〔中略〕. 〔中略〕20世紀の終わりごろに〔10-19歳のアフリカ系米国人の〕自殺件数が上がるにつれて,原因が特定されていない死亡の件数は下がっているのだ〔中略〕(150-2; 〔〕内コンテンツ作成者の加筆).

言い換えれば,10代のアフリカ系米国人の自殺が増えたのは,それほど謎めいてはいないかもしれない〔中略〕10代の黒人の死はかつては比較的重要でないこととして扱われたかもしれない――事故死や原因不明の死として片付けられたかもしれない――が,今では当局者はもっと注意深く調査を行い,もっと下しにくい,自殺という判断にいたるかもしれない(153-4).

要するに,どんな数字についても――どんなに権威があるように見えるものについても――問うべきことは,「本当か」という問いではない.むしろ,何より重要な問いは,「どのようにつくりだされたのか」だ.ほかより権威ある数字があるとしたら,それは,そういう数字が生まれるプロセスに私たちが信頼を置いているからである.しかし,私たちが抱える問題について何らかの数字が魔法のように回答を示してくれると想像すべきではない(163).


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うつ/鬱
 ◆抗うつ剤関連

 ◆安楽死・尊厳死
 ◆過労死・過労自殺/過労自死
生活保護
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*作成:藤原 信行
UP: 20060824 REV: 1212 20070502, 0726, 0817, 20080324, 0408, 20090526, 1206, 20100122,0413, 0823, 1212, 15, 20110106, 0306, 0401, 0607, 0730, 20120424, 0503, 0910, 1118, 20, 20130505, 24
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