『「近代」の意味――制度としての学校・工場』
桜井 哲夫 198412 NHKブックス,218p.
last update:20090811
■桜井 哲夫 198412 『「近代」の意味――制度としての学校・工場』,NHKブックス,218p. ISBN-10: 4140014709 ISBN-13: 978-4140014707 欠品 [amazon]/[kinokuniya] i02 p0601
■内容
(「amazon」より)
われわれの身体は、二十世紀に入ってからというもの、とてつもない「速度」の中に投げ込まれてしまい、かつてのリズムなど静止したものと感じられるようになってしまった。
■目次
はじめに
序章 「近代」の意味するもの――均質化と群衆化
第一章 近代的学校制度の成立
第二章 近代的工場の時間と空間
第三章 テクノロジーのユートピア
第四章 日本の「近代」
終章 新しい「棲み方」のために
あとがき
■引用
「かくして、中世以来の情報と文化の諸機能を集中したイデオロギー装置たる「教会」は伝統的な家族制度と結びついてその支配を懸命に維持しようとし、これに対し全共和派はこの「反教権」という一点では一致して「教会」に戦いをいどんでいたのである。
そして、パリ=コミューンの崩壊の後、一八七一年にフランス第三共和制が発足する。この第三共和制こそが、反教権の旗印のもとに、「無償・義務・非宗教」の公教育を実現するのである。(…)
(…)
各地での論争や議会での激論を経て、公教育相をつとめていたジュール・フェリー(一八三二−一八九三)は、精力的に「無償・義務・非宗教」教育の実現をはかろうと努力をつづけた。その結果として、一八八一年六月一六日に「公立小学校の無償化」法案が成立し、つづいて一八八二年三月二八日には「初等教育の義務化、非宗教化」法案が成立することとなった。(…)
かくて、フランス革命以来の共和派の悲願であった「公教育」がようやく実現することとなった。それはとりもなおさず、子どもを媒介として家族そのものを国家の側に統合することを意味していたのである。(…)」(p.53-54)
「(…)フランスにおいて一八八〇年代に実現した「無償・義務・非宗教」の公教育制度は、子どもたちがすべて教育を受ける平等の権利があることをうたっていたのだが、そこででてきた難問こそ、知恵遅れ、「精神遅滞児童」の問題であった。学校に適応できない子どもたちが、「情緒不安定児童」、「知恵遅れ児童」、「精神薄弱児」と名づけられ、その処遇が問題化したのは、十九世紀の末からであったのである。そして、一九〇五年に発表された、アルフレッド・ビネ(一八五七−一九一一)とテオドール・シモンによる「知能検査」こそ、こうした課題から生みだされた選別の方法であった。この年の四月二八日にローマで開かれた第五回国際心理学会で「白痴、痴愚、魯鈍を診断する新しい方法」という論文が、アンリ・ボーニスによって代読され、大きな反響をよんだのである。さらに一九〇八年には、この知能検査の改訂版が出され、ビネ=シモンの知能検査は国際的な評価を受けるにいたった。そして、このビネとシモンの研究をうけて、ドイツのウィルヘルム・シュテルンが、一九一一年に、知能指数(IQ)の概念を提唱することとなったのである(…)。」(p.85)
■紹介・言及
橋口 昌治 200908 「格差・貧困に関する本の紹介」, 立岩 真也編『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社