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『生存学』創刊号

雑誌『生存学』創刊号表紙
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  ■目次
  ■書誌情報
  ■紹介・言及
  ■個々の論文等に対する言及

■立命館大学生存学研究センター 編 2009/02/25 『生存学』1,生活書院,414p. ISBN-10: 4903690350 ISBN-13: 978-4903690353 \2310 [amazon][kinokuniya] ※

■生活書院のHPより http://www.seikatsushoin.com/bk/ritsumei.html

☆<生の技法>の歴史・現在・未来を、調べ、記述し、展望する学問的営みの結実と提示。ここに創刊!立命館大学生存学研究センター【編】
生存学 Vol1〈創刊号〉

A5変形判並製 384頁(予定) 2200円(予価)
死・高齢者・終末期・医療福祉の現在をどう読み解くか?
立岩真也・大谷いづみ・天田城介+小泉義之・堀田義太郎による創刊記念座談会<生存の臨界>の他、三つの特集、国際研究調査報告で編まれた、「生きて在るを学ぶ」学術誌、創刊


 
 
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■目次


座談会 生存の臨界

I 立岩真也・大谷いづみ・天田城介+小泉義之・堀田義太郎

 『良い死』『唯の生』『流儀』〜時間稼ぎのためにも、歴史を見る〜捉え難さ〜存在/属性、分配/承認〜分配/心配、差異/アイデンティティ〜「普通の人」の生存の臨界cf.『良い死』『流儀』『唯の生』


II 大谷いづみ・天田城介・立岩真也+小泉義之・堀田義太郎

 生命倫理と死生学の再審へ〜決定・線引きの余白で死生学が効くということ〜死に惹かれることと死なせること〜存在の不安、死への傾斜、死への駆動〜承認/分配論争を死をめぐって再演する〜命あっての物種?

III 天田城介・大谷いづみ・立岩真也+小泉義之・堀田義太郎

 <老い衰えゆくということ>から〜介護の<しんどさ>――「感情労働」「燃え尽き」「福祉マインド」「寄り添い」「各種療法」〜何に応じて介護労働(者)を分配するのか、介護労働(者)はナンボのものなのか〜どうして介護の社会化であったのか〜<現在>の起源/前史はどこにあるのか〜再び<老い衰えゆくこと>へ〜施設/在宅〜現在の動向が向かうところ

特集1 生存の臨界

1.有馬斉 「安楽死する自由と差別について」 cf.安楽死・尊厳死安楽市・尊厳死 2009
2.坂本徳仁 「三途の川の船賃くらいケチんなくたっていいんじゃない?――高齢者医療と終末期医療の経済分析」
3.藤原信行 「自死遺族による死者への自殺動機付与過程の「政治」――意味ある他者の死にたいする自殺動機付与にたいする逡巡のなかで」 cf.自殺
4.橋口昌治 「働くこと、生きること、やりたいこと――「新時代の日本的経営」における〈人間の条件〉」
5.遠藤彰 「多細胞生物体の迷路――死とともに生きること」


特集2 臨界からの生存

1.堀田義太郎・有馬斉・安部彰・的場和子 「英国レスリー・バーグ裁判から学べること――生命・医療倫理の諸原則の再検討」 cf.Leslie Burke 裁判
2.西田美紀 「独居ALS患者の在宅移行支援(1)――二〇〇八年三月〜六月」
3.長谷川唯 「独居ALS患者の在宅移行支援(2)――二〇〇八年六月」
4.山本晋輔 「独居ALS患者の在宅移行支援(3)――二〇〇八年七月」
5.堀田義太郎「独居ALS患者の在宅移行支援(4)――課題・要因・解決方策」 cf.ALS・2008ALS・2009

特集3 90‐00年代の変動

1.堀田義太郎「介護の社会化と公共性の周辺化」
2.安部彰「ケア倫理批判・序説」 ケア
3.有吉玲子「医療保険制度―― 1972 年・1973 年の政策からみるスキーム」
4.田島明子「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」
5.三浦藍「アスペルガー症候群の医療化」
6.野崎泰伸「障害者自立支援法の倫理学的分析」
7.北村健太郎「侵入者――いま、〈ウイルス〉はどこに?」cf.http://www.livingroom.ne.jp/kk/virus.htm


国際研究調査報告

1.田島明子「渡英の準備段階でのこと」
2.櫻井浩子「第11回世界乳幼児精神保健学会世界大会(WAIMH)に参加して」
3.小杉麻李亜「フィールドの極意――調査地、資金調達、苦しい時の対処法」
4.永田貴聖「生存戦略としての身近な人々によるグローバライゼーション」
5.青木慎太郎 「啓蟄の北京を訪ねて」
6.韓星民「初めての中国、初めての英語での研究発表」
7.佐藤量「植民地都市大連からグローバル都市大連へ」
8.寺下浩徳「国境と国交のあいだで」
9.岡田和男「スリランカ――平和構築NGOの活動調査」
10.森下直紀「アメリカ合衆国における史料調査について」
11.山本由美子「フランスで学ぶということ」
12.大野藍梨「バルバドス、マルチニックにて」
13.中倉智徳「Le fond de Gabriel Tarde調査報告およびTarde/Durkheimカンファレンス参加記録」

 
 
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■書誌情報

立岩 真也大谷 いづみ天田 城介小泉 義之堀田 義太郎 2009/02/25 「生存の臨界・T」(座談会)
 『生存学』1:6-22
有馬 斉 2009/02/25 「安楽死する自由と差別について」
 『生存学』1:23-41
坂本 徳仁 2009/02/25 「三途の川の船賃くらいケチんなくたっていいんじゃない?――高齢者医療と終末期医療の経済分析」
 『生存学』1:42-54
藤原 信行 2009/02/25 「自死遺族による死者への自殺動機付与過程の「政治」――意味ある他者の死にたいする自殺動機付与にたいする逡巡のなかで」
 『生存学』1:55-69
橋口 昌治 2009/02/25 「働くこと、生きること、やりたいこと――「新時代の日本的経営」における〈人間の条件〉」
 『生存学』1:70-83
遠藤 彰 2009/02/25 「多細胞生物体の迷路――死とともに生きること」
 『生存学』1:84-111
大谷 いづみ天田 城介立岩 真也小泉 義之堀田 義太郎 2009/02/25 「生存の臨界・U」(座談会)
 『生存学』1:112-130
堀田 義太郎有馬 斉安部 彰的場 和子 2009/02/25 「英国レスリー・バーグ裁判から学べること――生命・医療倫理の諸原則の再検討」
 『生存学』1:131-164
西田 美紀 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(1)――二〇〇八年三月〜六月」
 『生存学』1:165-183
長谷川 唯 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(2)――二〇〇八年六月」
 『生存学』1:184-200
山本 晋輔 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(3)――二〇〇八年七月」
 『生存学』1:201-217
堀田 義太郎 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(4)――課題・要因・解決方策」
 『生存学』1:218-235
天田 城介大谷 いづみ立岩 真也小泉 義之堀田 義太郎 2009/02/25 「生存の臨界・V」(座談会)
 『生存学』1:236-264
堀田 義太郎 2009/02/25 「介護の社会化と公共性の周辺化」
 『生存学』1:265-278
安部 彰 2009/02/25 「ケア倫理批判・序説」
 『生存学』1:279-292
有吉 玲子 2009/02/25 「医療保険制度―― 1972 年・1973 年の政策からみるスキーム」
 『生存学』1:293-307
田島 明子 2009/02/25 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」
 『生存学』1:308-347
三浦 藍 2009/02/25 「アスペルガー症候群の医療化」
 『生存学』1:348-361
野崎 泰伸 2009/02/25 「障害者自立支援法の倫理学的分析」
 『生存学』1:362-372
北村 健太郎 2009/02/25 「侵入者――いま、〈ウイルス〉はどこに?」
 『生存学』1:373-388
田島 明子 2009/02/25 「渡英の準備段階でのこと」
 『生存学』1:389-391
櫻井 浩子 2009/02/25 「第11回世界乳幼児精神保健学会世界大会(WAIMH)に参加して」
 『生存学』1:391-392
小杉 麻李亜 2009/02/25 「フィールドの極意――調査地、資金調達、苦しい時の対処法」
 『生存学』1:392-394
永田 貴聖 2009/02/25 「生存戦略としての身近な人々によるグローバライゼーション」
 『生存学』1:394-396
青木 慎太郎 2009/02/25 「啓蟄の北京を訪ねて」
 『生存学』1:396-398
韓 星民 2009/02/25 「初めての中国、初めての英語での研究発表」
 『生存学』1:398-399
佐藤 量 2009/02/25 「植民地都市大連からグローバル都市大連へ」
 『生存学』1:399-401
◆寺下 浩徳 2009/02/25 「国境と国交のあいだで」
 『生存学』1:401-402
岡田 和男 2009/02/25 「スリランカ――平和構築NGOの活動調査」
 『生存学』1:402-404
森下 直紀 2009/02/25 「アメリカ合衆国における史料調査について」
 『生存学』1:404-405
山本 由美子 2009/02/25 「フランスで学ぶということ」
 『生存学』1:405-407
大野 藍梨 2009/02/25 「バルバドス、マルチニックにて」
 『生存学』1:407-409
中倉 智徳 2009/02/25 「Le fond de Gabriel Tarde調査報告およびTarde/Durkheimカンファレンス参加記録」
 『生存学』1:409-412

 
 
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■紹介・言及

◆2009/03/03 http://d.hatena.ne.jp/fugu1/20090303#

◆『読売新聞』2009年3月22日(日曜版・朝刊):22

 「生きづらさを感じる人が増える一方、死ぬことが奨励される傾向が強まっている。保険制度、医療経済、障害者政策、生命倫理、生物学など様々な視点から「生存」を論じる。文部科学省の研究費によるグローバルCOE「生存学」創成拠点(代表:立岩真也教授)をベースにした研究の報告集。多くは学術論文で文章が難解だが、全身が動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の在宅移行の実例調査や、研究者による対談も交え、個人の生死のとらえ方が、社会のありように大きく影響されていることを指摘する。(生活書院03・3226・1203、税別2200円)」

◆立岩 真也 2009/04/25 「『生存学』創刊号」(医療と社会ブックガイド・93),『看護教育』49-3(2009-3):-(医学書院)

◆立岩 真也 2009/04/25 「生存学という企み?」,『日本生命倫理学会ニューズレター』41:3

伊藤 智樹 2009/09/30 「研究者でもあり支援者でもある、ということ――書評:立命館大学生存学研究センター編『生存学』Vol.1」
 http://booklog.kinokuniya.co.jp/ito/archives/2009/09/_vol1.html

  「この本は、文部科学省によって国際的にも先端的で優れた成果が期待できるものとして採択された「グローバルCOEプログラム」(創成拠点:立命館大学)の成果報告として刊行されたものです。3つの特集(「1.生存の臨界」「2.臨界からの生存」「3.90-00年代の変動」)を主要な部分としており、生命・医療倫理を扱った論稿や、医療保険制度に関して政策・経済分析を行う論稿などをはじめとして、現代社会における生きにくさ、あるいはそうした生きにくい中を生き抜いていくことに関わる多様なテーマが収められた、非常に刺激的な一冊です。
  それらすべてのテーマについてコメントすることはできませんので、ここでは特に、独居ALS患者支援のケース・スタディを扱った諸論稿(「特集(2)臨界からの生存」)について述べてみます。
  取り上げられているのは、S(60歳男性)さんのケースです。Sさんは、一般企業に長年勤務していましたが早期退職、最後の職はタクシー運転手でした。10年ほど前から単身生活をしていましたが、2007年6月にALSと診断されました。人工呼吸器を装着しないと事前指示書にサインしていました(ALSを持つ人にとって人工呼吸器装着の有無が持つ意味については2008年12月の当ブログを参照)。事の発端となった出会いについて、論文の執筆者の一人である西田美紀さん(看護師であり、立命館大学の大学院生でもある)は次のように振り返っています。

  (*2008年)三月二十二日 デイケアのフロアに涙目で顔を歪めているSがいた。声をかけると「体が…体が…どんどん動かなくなっていく」「痛くて…痙攣も強くて…眠れなくて」と泣き崩れた。数分後、Sはこれまでの経過や現在の生活について話し出した。(略)事前指示書のサインについては、「一人暮らしやし、家族には頼れないから、迷惑かけたくないから…あー書くしかなかった。仕方ない…」(略)「あの…Sさんは仕方ない、と思ってるんですか? 介護する人がいないから? いたらどうですか? 生きられる環境があれば?」(筆者)。「そりゃー生きたいわ、誰でも生きたいやろ」(S)、「独居だろうが、誰だって生きる権利はあるんじゃないでしょうか」(筆者)(『生存学 Vol.1』、168ページ)。

  こうして、立命館の大学院生を中心とする支援者たちが集まり、Sさんの独居に向けて活動が展開されます。しかし、そのプロセスは決してスムーズではありませんでした。Sさんは、転倒を繰り返し、在宅生活の再構築のために入院します。しかし、退院の期日が迫っても、ケアプランがなかなか十分なものにはなりませんでした。この本では、そうしたプロセスについて詳細に報告されています。
  詳しい経過については是非この本をお読みいただきたいのですが、ここでは、なぜスムーズに運ばなかったのか、私なりに理解したことを整理してみたいと思います。
  第一に、現在の支援制度には、難病を持つ人にとってまだまだ細やかでない点があるようです。Sさんは、手は右手のみが辛うじて動く程度で、歩くのも困難であり、何度も転倒していました。在宅で安心して暮らすには、常に見守って、動く時に手を貸せる人が付いていなければなりません。Sさんの場合は独居ですから、周囲に見守ってくれる人はいません(同居家族がいる場合は、その家族が役目を果たすこともできますが、そうすると今度は家族の肉体的・精神的な負担が問題になってきます)。この課題をクリアするには、介護保険によるサービスでは足らず、障害者自立支援法による介護給付(重度訪問介護)も併用する必要がありました。障害者自立支援法を利用するためには、認定調査を受けて障害程度区分の認定を受ける必要がありますが、Sさんの場合、認定調査から障害程度区分の認定が出るまで約2か月かかっています。その間に退院の期日も迫り、Sさんは不安な日々を送らねばなりませんでした。さらに、Sさんに限らず病状の進行スピードが速い人の場合、せっかく調査を受けても、認定が出た時点では既にその人の状態を精確に反映した障害程度区分ではなくなっている、という問題も生じえます。これらの問題は制度の運用に関わる問題の例ですが、Sさんについてのケース・スタディからは、その他の点も含めて支援制度が、進行性の難病を生きる人々にとって、必ずしも細やかに行き届いたものになっていないことをうかがい知ることができます。
  第二に、利用すべき複数の制度が、いわゆる<畑違い>同士であることによる問題があります。介護保険は高齢者福祉として整えられた制度であり、障害者自立支援法は障害者福祉としての制度です。これらの制度を横断して使いこなすには、それぞれの<畑>の専門家(ケアマネージャーやソーシャルワーカー、福祉事務所や行政など)に何度も相談したり問い合わせたりしながら、自分が使える支援制度にはどのようなものがあり、どのような準備と手続きが必要なのかという情報を手元に整えていくことが必要になってきます。そのような意味で、患者(あるいはその家族)が精神的にタフで、情報収集に積極的であることが求められます。ところが、そもそも患者は(家族も)病気になったことで精神的にダメージを受けており、そう簡単にタフで活動的になれるものではない、というところが問題です。Sさんの場合、そうした落ち込んだ部分を(立命館大学の大学院生を中心とする)支援者たちが積極的にカバーして、24時間介護のもとでの独居を実現させようと奔走します。しかし、そうした中で、他の支援者である医療・福祉の専門家たちとの間で、Sさんの現状に対する見方や支援のあり方に関する見解の違いがあらわになり、支援者同士の間であつれきが生じてしまいます。
  そして第三に、支援制度の構成要素となるべき社会資源がそもそも不足していることがあります。例えば、障害者自立支援法による重度訪問介護を実際に受けるためには(重度訪問介護に従事する)ヘルパーを派遣してくれる事業所を見つけることが必要になりますが、重度訪問介護の報酬は低く、ヘルパーも人員的に不足しているので、そのような事業所は少ないのが現状です。Sさんの場合、同じように独居を実現させた先行例(K氏)に対応した経験を持つ事業所が隣の市にあり、幸いにもその事業所がSさんにも対応してくれることになりました。また、K氏やSさんの場合、友人・知人の輪を通じて、あるいは大学生の有償ボランティアを募るやり方によって、支援者を集め、重度訪問介護従事者養成講座を受けてヘルパー登録をしてもらう、という人員獲得の努力が行われています。このように、現状においては、それぞれの地域や個人の状況に応じて、不足する社会資源をいかにカバーするか、ということを考えていかなければならないわけです。
  ところで、このSさんのケース・スタディにおいては、研究と支援活動との区別はなされず、両者はむしろ一体となっています。このような手法は「アクション・リサーチ」と呼ばれます。伝統的な社会学の調査研究のスタイルにおいては、研究者はあくまでも記述し、分析し、説明する存在であり、研究対象の営みそのものに介入したり影響を与えたりするべきではない、と考えられてきました。しかし、アクション・リサーチの場合、研究者はむしろ積極的に研究対象の活動ないし営みにコミットしていきます。Sさんのケース・スタディも、アクション・リサーチの一種といえるのではないかと思います。
  研究=支援者が対話の相手となって積極的に関わることによって(「Sさんは仕方ない、と思ってるんですか? 介護する人がいないから? いたらどうですか? 生きられる環境があれば?」)、Sさんの生存への意思は、はっきりとした<声>になっていきます(「そりゃー生きたいわ、誰でも生きたいやろ」)。このように積極的に関わることで初めて、Sさんの<声>はかき消されずにすんだといえるかもしれません。しかしその一方で、他の支援者である医療・福祉の専門家たちの中からは、「本人の思いを直接聞いていない」「生への誘導のように感じる」といった疑問の声が挙がります(同書176ページ)。つまり、研究対象の<声>の形成に深く関与するような研究(=支援)のあり方は、生存の可能性に対して直接的に寄与する反面、どこまでが病いを持つ自身の<声>でどこまでが支援者の<声>なのかという疑義に対して傷つきやすく、そうした病いを持つ人の意思に関する信憑性の揺らぎが、支援者間のあつれきや温度差の温床になりやすいのではないか、と考えられるのです。
  もちろん、どのような関わり方が良い/悪いという問題ではありません。大切なことは、このように長短を洞察することで、同種のアクション・リサーチにおいて何に留意しておくべきなのか、という教訓を得ることだと思います。
  このように、詳細な事例の記述を通して、後続する実践にとっても、また研究方法の観点からも、豊富なインプリケーションをもった研究報告だということがおわかりいただけるかと思います。この本の他の論稿にも、すぐれて現代的なテーマに挑戦するものや、現代史上の出来事や推移を詳細に追ったものなど、魅力的なものが含まれており、一読をお勧めできます。」(全文)


[外部リンク]Amazonのカスタマーレビュー


好井 裕明 2011/05/** 「「生存学」という知的実践――障老病異と共に暮らす世界の創造」(くまさんの本の森19)、『そよ風のように街に出よう』81号.**-**.

 ※以下、好井裕明氏ならびにそよ風のように街に出よう編集部のご厚意によりホームページへの掲載を了解してしていただいています。

くまさんの本の森(19)
「生存学」という知的実践―障老病異と共に暮らす世界の創造        好井裕明(筑波大学)

 いま、「生存学」という知的実践が精力的に進められている。これは立命館大学大学院先端総合学術研究科の研究者と院生、研究員が中心となって創造されてきた新しい知的実践であり、いまは文科省グローバルCOEプログラム「「生存学」創成拠点―障老病異と共に暮らす世界の創造」として、積極的な活動が展開し、研究書、雑誌、論文報告集などが量産されてきている。
 多くの成果があるが、ここでは『生存学』(生活書院)という雑誌と最近編者の天田城介さんからいただいた分厚い編著を紹介しておこう。『生存学』は、まさに新たな知的実践につけられたタイトルそれ自体であり、この学は何をめざし、何を明らかにしようとするのかが、毎号、座談やロングインタビューで語られ、個別論文が詰まっている。
 第一号(二〇〇九年二月)は、生存の臨界をめぐり立岩真也さん、大谷いづみさん、天田城介さん、小泉義之さん、堀田義太郎さんが座談をし、その後、特集1「生存の臨界」では、安楽死を択ぶ自由と差別、高齢者医療と終末期医療の経済分析、自死遺族がいかに死者の動機付与を逡巡するのかをめぐる「政治」等、特集2「臨界からの生存」では、イギリス、レスリー・バーク裁判から生命・医療倫理原則を再検討し、独居ALS患者の在宅移行支援の報告、その課題や要因、解決方策の分析、特集3「九〇−〇〇年代の変動」では、介護の社会化と公共性の周辺化、ケア倫理批判、医療保険制度、「寝たきり老人」と/のリハビリテーション、アスペルガー症候群の医療化、障害者自立支援法の倫理学的考察、侵入者、<ウィルス>をめぐる考察など、数多くの論考が並んでいる。
 第二号(二〇一〇年三月)では、特集1「労働、その思想地図と行動地図」として、天田城介さんの他、小林勇人さん、斎藤拓さん、橋口昌治さん、村上潔さん、山本崇記さんという若手研究者が「生産/労働/分配/差別について」座談をし、「若者の労働運動」の歴史的位置づけ、女性労働と生活の桎梏にあえてむきあった「主婦性」は切り捨てられないという論考、同和行政が提起する差別是正の政策的条件という論考が続く。特集2「QOLの諸相―生存の質と量」では、終末期医療とQOLの臨界、新生児医療におけるQOLと「子どもの最善の利益」、「エンハンスメント」言説における「障害者」の生の位置、QOL再考という論考が続き、特集3「市民社会が知らない別の生きざま」では、日比間でトランスナショナルなフィリピン人たちをめぐる論考、現代モンゴルの地方社会における牧畜経営、「日系人」という生き方、顧みられない熱帯病・ブルーリ潰瘍問題における医療NGOの展開、韓国重度障害者運動によるパラダイムの変換、ALS患者会組織の国際的展開、「日系人」という法的地位、在日とは何か、と論考が続いている。
 第三号(二〇一一年三月)では、障害と社会、その彼我の現代史・1として、生存の技法、生存学の技法をめぐり、立岩真也さんに天田城介さんがロング・インタビューを行っており、後半は第四号に続いている。特集「精神」では、自閉者の手記にみる病名診断の隘路、ネオ・リベラリズム時代の自閉文化論、「医療化」された自殺対策をめぐる論考、テレビドラマにみる精神障害者像、わが国の精神医療改革運動前夜、心神喪失者等医療観察法とソーシャルワークとの親和性について、乱立するセルフヘルプグループの定義をめぐって、精神障害当事者が参画する社会福祉専門教育など、の論考が並んでいる。
 すべての論考や報告を列挙したわけではないが、こうした論考や座談のタイトルを見るだけでも、生存学の幅と奥行きの深さと到達せんとする目標の高さ(あるいは遠さ)が実感できるかもしれない。社会福祉学、福祉社会学、医療社会学、看護学、社会運動論、差別問題論、社会政策論などがこれまで個別に生きづらさ、生き難さを抱えた人々に対する調査研究を進め、実践的施策について考察を重ねてきた。しかし、まだまだ考えるべき問題や領域が放置されてきたという。「障老病異」とまとめて表記されているが、多様な違いをもつ人間がどのように生存できるのか、その臨界をめぐり歴史的に、実践的に考察を重ねていく。またこのプログラムには、違いをもっている当事者たちも集まり、調査研究し、生存学の知的実践を形作っているという。この点は、とてもユニークだろう。当事者性が反映された迫力ある研究もまた芽を出し始めているからだ。
 天田城介・北村健太郎・堀田義太郎編『老いを治める―老いをめぐる政策と歴史』(生活書院、二〇一一年)。腹帯のコメントには「高齢者が「少数者の中の多数派」「マイナーの中のメジャー」となっていく歴史的ダイナミズムを跡付ける」とある。生存学という広大な実践のなかで、老いを主題とした日本の政策と歴史をめぐる一つのまとまった成果といえよう。在宅介護福祉労働は、一九五〇年代後半から一九八〇年代の家庭奉仕員によっていかに担われてきたのか。一九八〇年代以降の高齢者に対する税制改正を伴った医療制度改革の現在はどのようなものであるのか。老いをめぐる政策と歴史、戦後日本社会における医療国家の経済学。日本のリハビリテーション学における「QOL」の検討、人工腎臓で生きる人々の運動と結実、一九七〇年代の血友病者たちの患者運動と制度展開、介護の社会化論とリベラリズムなどの論考が続き、「老いを治める」という主題については、「静寂な生」の統治、家族と高齢者の「折り重なる悲鳴」、世代間の争いを引き受け<ジェネレーション>を思想化すること、老年社会学は取り組むべき「日付と場所を刻印する社会を思考する」という課題、<老い衰えてゆく>当事者をめぐるいかに今一人の当事者である私は研究できるのか、あるいはすべきなのかという問い、など天田さんの優れた論考がおさめられている。分厚い論集だ。論集の序には、この成果がどのような研究会から始まり、学会報告など、院生たちの知的努力の積み重ねの結果、うみだされたことがまとめられている。先の『生存学』でも同じだが、この知的実践というか知的運動の中心的な主体は、当事者性も含みこんだ、若き院生たちであるようだ。「若き」というのは、学的実践のキャリアという点という意味であり、彼らにはすでに、自らの生存学を考える上で、多様な、そして奥深い経験を生きてきているはずだ。だからこそ、彼らの論考を読み、生硬な印象を受ける一方で、その生硬さを内側からぶち破っていき、自らの言葉や論理が紡ぎだされるとき、そこから放たれる迫力やエネルギーへのひそかな期待を感じてしまうのだ。
 いま、「生存学」という拠点から、膨大な質と量の言説が生み出されつつある。そこには概念の生硬さ、論理の濃淡、表現や言い回しの難解さなど、まさに玉石混交の論考が生み出されつつある。この学がどのように洗練され、どこへ向かうのか。立岩真也さんは「生存学は動いている」と語る。障老病異の生存の臨界を追求し、そこから「普通の人」の生存の臨界を考えるという主題、この主題を徹底して追求する「生存学」の営み。そこから何が今後もあふれでてくるのか。ずっと注視していきたい。

 
 
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■個々の論文等に対する言及

有馬 斉 2009/02/25 「安楽死する自由と差別について」
 『生存学』1:23-41
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360[amazon][kinokuniya] ※ et.
 「また、本章では諸外国の動向が知られ、その知識が用いられたいくつかの場面を見ていくことになるが、その知られ方についてもずいぶんとむらがある。法学者によって法律や裁判の紹介はよくなされているが(ホームページにリストを掲載)、それまでもまだまだ知っておくべきことがある。やはり私たちが進めている共同研究の成果として以下(とホームページ上のファイル)がある。的場・堀田・有吉・末岡[2007]「延命治療の差し控え/中止に関するガイダンス:紹介――英国General Medical Council編:延命治療の差し控えと中止:意思決定のよき実践のために」、的場[2007]「治療を中止させない権利についての一考察――英国Leslie Burke裁判をめぐって」、的場・藤原・堀田[2007]「英国における尊厳死法案をめぐる攻防1――2003−2006」、安部・大谷・的場[2007]「英国における尊厳死法案をめぐる攻防2――議会外キャンペーンの様相」、堀田・的場[2007]「英国における尊厳死法案をめぐる攻防3――英国Leslie Burke裁判Munby判決の再評価」、堀田・有馬・安部・的場[2009]「英国レスリー・バーグ裁判から学べること――生命・医療倫理の諸原則の再検討」。そしてそれらを受け、それらととともに考察がなされる。有馬[2009]他。」(立岩[2009:]、第3章註2)

堀田 義太郎有馬 斉安部 彰的場 和子 2009/02/25 「英国レスリー・バーグ裁判から学べること――生命・医療倫理の諸原則の再検討」
 『生存学』1:131-164
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360[amazon][kinokuniya] ※ et.
 「また、本章では諸外国の動向が知られ、その知識が用いられたいくつかの場面を見ていくことになるが、その知られ方についてもずいぶんとむらがある。法学者によって法律や裁判の紹介はよくなされているが(ホームページにリストを掲載)、それまでもまだまだ知っておくべきことがある。やはり私たちが進めている共同研究の成果として以下(とホームページ上のファイル)がある。的場・堀田・有吉・末岡[2007]「延命治療の差し控え/中止に関するガイダンス:紹介――英国General Medical Council編:延命治療の差し控えと中止:意思決定のよき実践のために」、的場[2007]「治療を中止させない権利についての一考察――英国Leslie Burke裁判をめぐって」、的場・藤原・堀田[2007]「英国における尊厳死法案をめぐる攻防1――2003−2006」、安部・大谷・的場[2007]「英国における尊厳死法案をめぐる攻防2――議会外キャンペーンの様相」、堀田・的場[2007]「英国における尊厳死法案をめぐる攻防3――英国Leslie Burke裁判Munby判決の再評価」、堀田・有馬・安部・的場[2009]「英国レスリー・バーグ裁判から学べること――生命・医療倫理の諸原則の再検討」。そしてそれらを受け、それらととともに考察がなされる。有馬[2009]他。」(立岩[2009:]、第3章註2)

西田 美紀 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(1)――二〇〇八年三月〜六月」
 『生存学』1:165-183
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360[amazon][kinokuniya] ※ et.
 「無責任であるしかないのではありながら、「支援」することになってしまった人たちもいて、その記録もある(西田[2009]長谷川[2009]山本[2009]堀田[2009])。実際に私たちはものを論ずるなどということの手前にいる。このことがわかる。」(立岩[2009:]、あとがき)
◆立岩 真也 2009/**/** 「人工呼吸器の決定?」川口 有美子・小長谷 百絵編『人工呼吸器ポケットガイド―呼吸器生活者の暮らしと支援の実際』(仮),医歯薬出版

長谷川 唯 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(2)――二〇〇八年六月」
 『生存学』1:184-200
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360[amazon][kinokuniya] ※ et.
 「無責任であるしかないのではありながら、「支援」することになってしまった人たちもいて、その記録もある(西田[2009]長谷川[2009]山本[2009]堀田[2009])。実際に私たちはものを論ずるなどということの手前にいる。このことがわかる。」(立岩[2009:]、あとがき)
◆立岩 真也 2009/**/** 「人工呼吸器の決定?」川口 有美子・小長谷 百絵編『人工呼吸器ポケットガイド―呼吸器生活者の暮らしと支援の実際』(仮),医歯薬出版

山本 晋輔 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(3)――二〇〇八年七月」
 『生存学』1:201-217
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360[amazon][kinokuniya] ※ et.
 「無責任であるしかないのではありながら、「支援」することになってしまった人たちもいて、その記録もある(西田[2009]長谷川[2009]山本[2009]堀田[2009])。実際に私たちはものを論ずるなどということの手前にいる。このことがわかる。」(立岩[2009:]、あとがき)
◆立岩 真也 2009/**/** 「人工呼吸器の決定?」川口 有美子・小長谷 百絵編『人工呼吸器ポケットガイド―呼吸器生活者の暮らしと支援の実際』(仮),医歯薬出版

堀田 義太郎 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(4)――課題・要因・解決方策」
 『生存学』1:218-235
◆立岩 真也 2009/**/** 「人工呼吸器の決定?」川口 有美子・小長谷 百絵編『人工呼吸器ポケットガイド―呼吸器生活者の暮らしと支援の実際』(仮),医歯薬出版
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360[amazon][kinokuniya] ※ et.
 「無責任であるしかないのではありながら、「支援」することになってしまった人たちもいて、その記録もある(西田[2009]長谷川[2009]山本[2009]堀田[2009])。実際に私たちはものを論ずるなどということの手前にいる。このことがわかる。」(立岩[2009:]、あとがき)


UP:20090129 REV:20090204, 05, 23, 26, 0806, 1027, 1104, 1107, 1110, 1111, 1112, 1201, 20100207, 0324, 1026, 20110331, 0502, 20120221 20150703
雑誌  ◇BOOK  ◇身体×世界:関連書籍 2005-
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