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Mill, John Stewart

J.S.ミル


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 「人類が、個人的にまたは集団的に、だれかの行動の自由に正当に干渉しうる唯一の目的は、自己防衛…である。すなわち、文明社会の成員に対し、彼の意志に反して、正当に権力を行使しうる唯一の目的は、他人に対する危害の防止である。彼自身の幸福は、物質的なものであれ道徳的なものであれ、十分な正当化となるものではない…自分自身にだけ関係する行為においては、彼の独立は、当然、絶対的である。彼自身に対しては、彼自身の身体と精神に対しては、個人は主権者である。」(Mill[1855=1967:224-225])
 *立岩『私的所有論』第2章に引用

". . . the sole end for which mankind are warranted, individually or collectively, in interfering with the liberty of action of any of their number, is self-protection. That the only purpose for which power can be rightfully exercised over any member of a civilized community, against his will, is to prevent harm to others. His own good, either physical or moral, is not a sufficient warrant. . . In the part which merely concerns himself, his independence is, of right, absolute. Over himself, over his own body and mind, the individual is sovereign." (Mill 1855:=1967:224-225)

 「◆19 第2章冒頭(34頁)に引用した部分に続いてミルは言う。「たぶん、いうまでもないことだが、この理論は、成熟した諸能力をもつ人間に対してだけ適用されるものである。われわれは子供たちや、法が定める男女の成人年齢以下の若い人々を問題にしているのではない。まだ他人の保護を必要とする状態にある者たちは、外からの危害と同様、彼ら自身の行為からも保護されなければならない。同じ理由から、われわれはまだ民族自身がまだ未青年期にあると考えられるおくれた状態にある社会は、考慮外においてよいだろう。」(Mill[1855=1967:225])もちろんこうした記述は「時代的制約」であり、今ならこんな野蛮なことは言わない、と私達は思う。しかし、どんな人達が自己決定の主体から除外されるかという範囲の問題は別として、私達もまたこうした行いから逃れられているわけではない。問題の本体は残っている。この箇所は、ミルがパターナリズム(第3章注14)を一方で是認していることを示す箇所とされる。」
 (立岩『私的所有論』第7章注19)

  ◆パターナリズム (paternalism)

●嫉妬

 「残酷な性向、悪意と底意地の悪さ、すべての感情の中で、もっとも反社会的でもっともいとわしい嫉妬、偽装と不誠実、十分な理由なしに怒りを発したり刺激に不つりあいに憤慨すること、他人を支配するのを好むこと、過分な利益を奪おうと欲すること〔ギリシア人のいわゆる貪欲(プレオネクシア)〕、他人の零落から満足を得る傲慢、自分と自分に関係あるものを他の何ものよりもたいせつだと考えて、すべての疑わしい問題を自分に有利なように決定する自己中心主義──これらはすべて、道徳的悪であり、不正な、いとうべき道徳的性格を形成する。これらは、さきに述べた一身上の欠点とは異なっている。一身上の欠点は、本来不道徳ではなく、どんなに極端におしすすめられても邪悪となるものではない。」(Mill[1859=1967:305]、同じ箇所はMill[1859=1971:158]では「……すべての激情の中で最も反社会的なまた最も忌まわしい感情である嫉妬…」)

●…人口…

「一人の人間を実存させるようにするという事実その(p.215)ものが、人間生活の範囲内において最も責任のある行為の一つである。この責任を引き受けることは、──呪いであるかも知れず、祝福であるかも知れない一つの生命を付与するということは、──もしもこの生命を付与されようとしている存在が、少なくとも、望ましい生存を営める見込を普通程度にももっていないとすれば、その存在に対する一つの犯罪であるといわねばならない。また、人口過剰や人口過剰の恐れのある国においては、限られたごく少数の〔産児の〕限界を超えて子供たちを生み出すことは、彼らの競争によって労働の報酬を低減させる結果を伴い、労働の報酬によって生活しているすべての人々に対して、重大な犯行となるのである。大陸の多くの国々においては、結婚当事者が家族を扶養しうる資力をもっていることを証明できない限り、結婚を許可しないこととしているが、このような法律は、国家の正当な権力を逸脱するものではない。」(Mill[1859=1971:215-216]、Mill[1859=1967:340]」

 

●文献

◆関 嘉彦 責任編集 19670819 『ベンサム J.S.ミル』(世界の名著38),中央公論社,542p. 480 三鷹080/松本080
◆Mill, John Stuart 1859 On Liberty=1967 早坂忠訳,「自由論」,関嘉彦編[1967:211-348],19711016 塩尻公明・木村健康訳,『自由論』,岩波文庫
◆Mill, John Stuart 1861 Utilitarianism=19670819 伊原吉之助訳,「功利主義論」,関嘉彦編『世界の名著38 ベンサム/J.S.ミル』:459-528
◆Mill, John Stuart 1865 Conisderations on Representative Gouvernment, 3rd edition=19670819 山下重一訳,「代議政治論」,関嘉彦編『世界の名著38 ベンサム/J.S.ミル』:349-458

■関連文献(発行年順)

◆関 嘉彦 19670819 「ベンサムとミルの社会思想」 関嘉彦編『世界の名著38 ベンサム/J.S.ミル』:5-68
◆水田 珠枝 198408 『ミル「女性の解放」を読む』 岩波書店,岩波セミナ-ブックス 9,341+17p. 1900
◆和光大学経済学部 198603 『ミル・マルクスとその時代』 白桃書房,489p. 4000
◆Gray, John and Smith, G. W. eds. 1991 J. S. Mill, On Liberty in Focus, Routledge=20001210 泉谷 周三郎・大久保 正健 訳,『ミル『自由論』再読』,木鐸社 214p. ISBN:4-8332-2303-1 3000 ※ *
◆四野宮 三郎 19970610 『J.S.ミル思想の展開I──二十一世紀へのメッセージ』
 御茶の水書房,249+8p. 3000 松本331
◆四野宮 三郎 19981125 『J.S.ミル思想の展開II──土地倫理と土地改革』
 御茶の水書房,263+7p. 3000 松本331
◆ ジョナサン・ライリー 1998 =20020330 渡辺幹雄訳,「ミル」,Boucher & Kelly eds.[1998=2002:61-89]*
* Boucher, David & Kelly, Paul eds. 1998 Social Justice: From Hume to Walzer, Routledge=20020330 飯島昇蔵・佐藤正志他訳,『社会正義論の系譜──ヒュームからウォルツァーまで』,ナカニシヤ出版,391p. 4200 ※


UP:? REV:20030606,0728,1222 20040316, 20120512
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