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安楽死・尊厳死:2009年

安楽死・尊厳死 -1970's 1980's 1990's 2000- 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009


■出来事など

◆2009/12/18 日本宗教連盟第4回宗教と生命倫理シンポジウム・「尊厳死法制化」の問題点を考える
 於:東京・ホテルグランドヒル市ヶ谷
◆2009/11/02 安楽死問題韓日国際セミナー
 於:韓国・ソウル市・国会議員会館,
◆2009/09/06 死生学と生存学――対話・1
 於:東京大学(本郷)
大谷 いづみ 2009/09/06 資料「パッケージ化される「よき死」の作法」[PDF] 「死生学と生存学」 於:東京大学
◆2009/03/29 安楽死・尊厳死法制化を阻止する会3.29シンポジウム
 於:東京・文京シビックセンター
◆2009/02/26 第36回日本集中治療医学会学術集会合同シンポジウム1
 於:大阪国際会議場,

イタリア延命中止事件:2009
スイス自殺幇助クリニック Dignitas: 2009年
知的障害者の不可解な死:2009年
オランダ:自殺幇助団体の会長逮捕(2009)
韓国
ピーター・シンガー“Why We Must Ration Health Care”およびコメント

◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 [amazon][kinokuniya] ※ et.

■文献・番組など

立岩 真也・雨宮 処凛・岡崎 伸郎・浅野 弘毅(司会) 2009/01/25 「自殺をどうとらえるか」(座談会),『精神医療』53:8-33
◆上野 千鶴子・立岩 真也 2009/02/01 「労働としてのケア」,『現代思想』37-2(2008-2):38-77
◆20090202 NHKクローズアップ現代「“私の人工呼吸器を外してください”――「生と死」をめぐる議論」
 http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2009/0902-1.html
◆川口 有美子 20090205 「2日の「クローズアップ現代」について」
 http://d.hatena.ne.jp/ajisun/20090205
川口 有美子 2009/02/14 「リヴィング・ウィルと尊厳死」懐疑的立場から
 講演1 17:30~18:10 日本尊厳死協会 中村年男、講演2 18:10〜18:50 日本ALS協会 川口有美子、討議 18:50〜19:30 於;からすま京都ホテル
堀田 義太郎 2009/02/14 報告「終末期におけるQOL」
 第2回「”QOL”を考える勉強会」
◆立岩 真也 2009/02/26 「良い死?唯の生」
 第36回日本集中治療医学会学術集会合同シンポジウム1 於:大阪国際会議場,
立岩 真也大谷 いづみ天田 城介小泉 義之堀田 義太郎 2009/02/25 「生存の臨界・T」(座談会)
 『生存学』1:6-22
坂本 徳仁 2009/02/25 「三途の川の船賃くらいケチんなくたっていいんじゃない?――高齢者医療と終末期医療の経済分析」
 『生存学』1:42-54
大谷 いづみ天田 城介立岩 真也小泉 義之堀田 義太郎 2009/02/25 「生存の臨界・U」(座談会)
 『生存学』1:112-130
堀田 義太郎有馬 斉安部 彰的場 和子 2009/02/25 「英国レスリー・バーグ裁判から学べること――生命・医療倫理の諸原則の再検討」
 『生存学』1:131-164
◆立岩 真也 2009/02/26 「良い死?唯の生」
 第36回日本集中治療医学会学術集会 於:大阪,
◆立岩 真也 2009/03/25 『唯の生』
 筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 [amazon][kinokuniya] ※ et.
◆2009/03/29 安楽死・尊厳死法制化を阻止する会3.29シンポジウム
 於:東京・文京シビックセンター
◆立岩 真也 2009/03/29 「近い過去と現在」
 安楽死・尊厳死法制化を阻止する会3.29シンポジウム 於:東京,
◆2009/04/15 井田良「[基調報告]終末期医療における刑法の役割」,「座談会」(井田良・今井猛嘉・有賀徹・原田國男・佐伯仁志・橋爪隆・山口厚(司会)) Jurist no. 1377:80-85
◆立岩 真也 2009/05/25 「『唯の生』」(医療と社会ブックガイド・94)
 『看護教育』50-5(2009-5):462-463(医学書院),
◆立岩 真也 2009/06/00 「良い死/唯の生――発言と応答」
 (財)日本宗教連盟シンポジウム実行委員会編『いま、いのちを考える――脳死・臓器移植をめぐって』,日本宗教連盟第3回宗教と生命倫理シンポジウム報告書,pp.4-8,25, 28-30,35-39,41-42,
◆立岩 真也 2009/06/25 「『良い死』」(医療と社会ブックガイド・95)
 『看護教育』50-6(2009-6):554-555(医学書院),
◆立岩 真也 2009/07/25 「『良い死』『唯の生』続」(医療と社会ブックガイド・96)
 『看護教育』50-7(2009-7):646-647(医学書院),
◆立岩 真也 2009/08/10 「人工呼吸器の決定?」
 川口 有美子・小長谷 百絵編『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル――暮らしと支援の実際』,医歯薬出版,pp.153-166,
◆2009/09/06 死生学と生存学――対話・1
 於:東京大学(本郷)→記録
◆立岩 真也 2009/09/06 「論点と論点はあるが通過されるという現況について」
 死生学と生存学――対話・1 於:東京大学(本郷),
◆立岩 真也 2009/11/02 「死の代わりに失われるもの――日本での動向の紹介に加えて」
 安楽死問題韓日国際セミナー 於:韓国・ソウル市・国会議員会館,
◆立岩 真也 2009/11/08 「良い死?/唯の生!」
 大阪青い芝の会定期大会 於:大阪市浪速区,
◆立岩 真也 2009/11/10 「良い死/唯の生」
 『ICUとCCU』33-11:1-6(医学図書出版,特集:集中治療における終末期医療:新たな提案),
◆立岩 真也 2009/11/15 「尊厳死・安楽死――いのちとはなにか 立岩真也さんに聞く・1」
 『Fonte』278:2,
◆橋本 操(日本ALS協会副会長) 2009/11/27 「死の尊厳よりもまず生きること」
 『中日新聞』『東京新聞』2009-11-27夕刊,「あの人に迫る」
◆立岩 真也 2009/12/01 「尊厳死、家族の判断――いのちとはなにか 立岩真也さんに聞く・2」
 『Fonte』279:2,
◆石谷 邦彦 編/日本臨床死生学会 監修 20091215 『安楽死問題と臨床倫理――日本の医療文化よりみる安らかな生と死の選択』,青海社,152p. ISBN-10: 4902249456 ISBN-13: 978-4902249453 2520 [amazon][kinokuniya] ※ et. et-t. d01.
◆立岩 真也 2009/12/15 「あらゆる生を否定しない立場とは」
 石谷編[2009:18-28]
◆2009/12/18 日本宗教連盟第4回宗教と生命倫理シンポジウム・「尊厳死法制化」の問題点を考える
 於:東京・ホテルグランドヒル市ヶ谷
◆立岩 真也 2009/12/18 「良い死?/唯の生!」
 日本宗教連盟第4回宗教と生命倫理シンポジウム・「尊厳死法制化」の問題点を考える
◆立岩 真也 2009/12/22 射水市民病院事件不起訴についてのコメント
 『読売新聞』2009-12-22富山県版,
◆2009/12/26 "Physician-Assisted Suicide: A Perspective From Advocates For People With Disability", Disability and Health Journal(安部彰 訳)


□新聞報道など

◆2009/02/26 「延命中止:68医師 救急医学会のガイドライン適用」
毎日新聞(阿部周一) 2月26日
http://mainichi.jp/select/science/news/20090227k0000m040152000c.html
◆2009/02/27 「医療:「延命治療中止」/68医師/福岡大病院は昨年実施/学会の指針適用/救急医アンケート」
毎日新聞(阿部周一) 2009年2月27日 2時30分(最終更新 2月27日 2時45分)
http://mainichi.jp/seibu/news/20090226sog00m040011000c.html
◆2009/03/09 トム・シェイクスピア 自殺幇助についての主張
BBC Ouch!(disability) Opinion http://www.bbc.co.uk/ouch/opinion/death_by_nonsense.shtml
◆2009/03/16 李 啓充・池永 満 「対談「患者の権利」はどこまできたか 」
週間医学界新聞 第2822号 2009年3月16日
◆2009/05/20 「[社説]尊厳死法制度化の時がきた」
東亜日報 2009年5月20日
◆2009/10/13 「「死にたい」妻殺害容疑で夫逮捕 難病の息子殺害後、うつ病に」
『47News』2009年10月13日18時37分(共同通信配信)
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101301000668.html
◆2009/10/13 「難病の息子殺害の妻を刺殺の疑い、夫を逮捕 神奈川」
『日経新聞』(Web版)2009年10月13日23時01分
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091013AT1G1303F13102009.html
◆2009/10/13 「難病息子殺害から5年、死願う妻を「殺した」夫自首」
『読売新聞』(Web版)2009年10月13日14時11分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091012-OYT1T00572.htm
◆2009/10/14 「夫、妻の自殺ほう助?「これで楽に」と妻の遺書」
『読売新聞』(Web版)2009年10月14日09時26分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091014-OYT1T00006.htm?from=nwla
◆2009/12/05 「呼吸器外し「依頼された」が2割 難病ALS治療で医師」
 2009/12/05 18:37 共同通信
 http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120501000560.html


 
 
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◆上野 千鶴子・立岩 真也 2009/02/01 「労働としてのケア」,『現代思想』37-2(2008-2):38-77
 *2008年の読売新聞社・立命館大学の共同調査についての上野の言及

 「上野 […]私は今回立岩さんが読売新聞と一緒におやりになった終末期医療の調査はとてもよかったと思っています。メディアがキャンペーンをやっている終末期の過剰医療に対して、終末期に関しては過剰医療どころか家族の判断による医療抑制のほうがマジョリティだということをちゃんと経験的なマクロ・データで示した。ああいうデータをきちんと示していくと、過剰医療キャンペーンというのはやはりかつての生活保護不正受給キャンペーンのような非常に偏ったキャンペーンだということがよくわかる。終末期では本人はもう自己決定できないわけですから、医療現場と家族による、一定の節度のある、もしかしたら節度以下の、医療抑制が行われているというデータが出てきている。」(上野・立岩[2009:52])

cf.
◇2008/07/26 「終末期医療 全国病院アンケート」
 『読売新聞』2008-7-26朝刊:1・3
◇2008/07/27 「終末期医療 全国病院アンケート」(特集)
 『読売新聞』2008-7-27朝刊:14・15の15左上に掲載
◇立岩 真也 2008/07/27 「救命・延命 医療の責務」
 『読売新聞』2008-7-27朝刊:15

 
 
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◆20090202 NHKクローズアップ現代 「“私の人工呼吸器を外してください”――「生と死」をめぐる議論」
 http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2009/0902-1.html

 「私の病状が重篤になったら、人工呼吸器を外してください」。こう訴えるのはALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者、千葉県勝浦市で暮らす照川貞喜さん(68)。今は呼吸器を付けて生活しているが、病状が悪化して意志疎通ができなくなった時点が自分の死と考え、死を求める要望書をかかりつけの病院に提出したのだ。病院は倫理委員会を設置。1年間にわたって議論が行われ、去年「照川さんの意志を尊重すべき」という画期的な判断を示した。しかし、現行法では呼吸器を外すと医師が自殺幇助罪等に問われる可能性があり、波紋が広がっている。患者が望む「命の選択」を社会はどう受け止めるべきかを考える。(NO.2691)

スタジオゲスト : 柳田 邦男さん  (ノンフィクション作家)
スタジオ出演 : 篠田 憲男     (NHK首都圏センター・記者)

 
 
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◆20090205  川口有美子「2日の「クローズアップ現代」について」
 http://d.hatena.ne.jp/ajisun/20090205

「いくつかのMLに投稿した。内容は少しずつ変えている。

患者側からこういった意見が出てくるのは当然だろうと思われるが、取材された患者はいわゆる意思疎通不能の「当事者」ではなく、それを恐れている「当事者」だ。この関係は、呼吸器前の患者と呼吸器をつけた患者の関係性に近い。呼吸器の前後で患者の意識は大きく変わる。体験から学ぶからだが、呼吸器にも耐えられるという体験は、体験をした患者にしかわからない。意思伝達不能といわれている患者に発言の機会があったら、きっと怒りだしただろうと思うが、彼らはこんな俗世のごたごたからやっと解放されているのだから、そっとしておいてあげよう。

重度化を恐れて、もしそうなったら死にたいという患者に対して、それを「差別」と呼ぶ同病の患者もいる。

健常者が障害者に対してもつ偏見、「ああなったら耐えられない。死んだほうがまし」は、同じ進行性疾患の患者間にも存在するということだろう。偏見と言えるかどうかはわからないが、そういう見方があるということを「死にたい」患者も知っておいたほうがいいと思う。「死にたい患者」の気持ちを前向きな患者は理解できない、とはよく言われるし、家族も同様だがその反対もあるということだ。

死を恐れるように、患者はいつまでもその状況まで進行することを恐れる。先々のことを考えると、障害を恐れて死の恐れを忘れてしまう。だから、「ああなったらどうしよう」という患者に対する回答を他者が探し回ることになるのだ。

この話題は視聴率につながるし、一般の関心も高いから、取材も競争だ。病院もまた競争だ。どこの病院が最初にALSから呼吸器をはずすか。そして倫理学者もこの経緯を記録しておかなければならない。病いの周辺で、ALS患者の安楽死D−DAYに備えたレースは始まっている。

言っておくと、

あの患者さんは「死にたい」のではない。できるだけ長く生きたいし、治りたいのは疑いもない。家族も死なせなくなどないし、みんなが悪化を恐れ、そして今でも生きる尊厳があると信じている。個人的な支援と理解の輪の中で生きてきた。少数の承認者によって長年守られてきた患者だから、自分が社会的には認知されていない存在であることなど、思いもつかないかもしれない。視聴者の多くは、今現在の彼の生きる価値など認めていない。

放映を観た人々が思い描いたのは、とにかく恐ろしい病いがあるということ、ALSの恐怖だ。もっとも伝わったのは「ああは絶対になりたくない」だったのは疑いもない。そして、彼の死が達成されるのを待っている。死を応援するつもりだ。こうなると、あの患者さんは死によってこそ存在が社会的に認知され、今まで以上に理解されることになるから、呼吸器をはずして死ななければ、かっこうがつかないかもしれない。

この先、彼の主治医や家族が、変な支援者に囲まれて励まされたりしないことを願っている。患者をヒーローにするために安楽死させることだけは、やめてほしい。

放映は一般市民に誤解が生じてしまう内容だったし、一患者を死の自己決定運動の主人公にしてしまった。しかし、自己決定どころではないのは、後に書いたとおりである。今回の報道は、何も知らない人たちに「死なせてほしい患者もいる」とだけ、伝えてしまったことになる。NHKの責任は大変に重い。

■ 「良い死」「障害学」のMLに投稿(2月2日)

NHKの番組が話題になっているようなので、患者の家族の立場から少しコメントをします。仕事が溜まっているので言いっぱなしになるかもしれませんが、ご容赦ください。

ALS患者の照川さんを番組で拝見して、すでに意思伝達困難な病態が、よくわかりました。
ご家族の卓越した介護力によって支えられ、意思が伝えられていることもわかりました。
たぶん、一般の人には、すでに意思疎通不能と思われるかもしれません。
ご本人はまだ大丈夫だと思っておられるかもしれませんが。
多くの患者さんは、照川さんみたいに恵まれた療養環境にはいません。

今日、橋本みさおさんと厚労省に行き、経営困難な介護施設の支援をお願いしてきました。
もし潰れたら、そこに入院中の呼吸器をつけた患者さんは路頭に迷ってしまいます。
家族介護が破たんし行先を失ったために、そこに永久入院しているのですが、わがままは言えません。在宅独居を達成した患者も片手で足りるほどしかいないのです。

献身的に介護してくれる人がいなければ、ALSは呼吸麻痺で死ななければならない病気であることは今も昔と変わりありません。
しかし、いまは法律によって守られています。呼吸器を外せないのでいったん呼吸器をつけてしまえば、死なずに済むから、医療やケアをする側に改善を要求することができるので。

先ほど拝見した照川さんが、もし長期入院中なら看護師次第でとっくにトータリーロックトインにできるとおもいます。

そして、もし、事前指示により呼吸器が外せるのなら、施設の都合で呼吸器は外されてしまっているかもしれませんし、病院の倫理委員会も事前指示書があれば、家族に訴えられないので迷いなく外すと思います。

番組ではまるで、患者の従前の自己決定による治療停止の容認について問題提起しているかのように見られましたが、患者がTLSになってから呼吸器を外すということは実際は、ケアを行う者のケア(のなさ)によって、呼吸器を外すことになります。

たぶん、ALSのケアをよく知らない人が作った番組なのでああなったのでしょうが、番組が投げかけているのはALS患者だけの死ぬ権利ではなく、障害者の安楽死です。
重度障害者の安楽死がテーマです。

意思伝達が困難な重度障害では

・コミュニケ―ションとは、伝える者よりも読み取る者の努力によって成立している。
・介護する者が読み取りを止める時が、本人の意思が伝えられなくなる時

これはALSだけでなく「重度障害者全般に共通」しています。

だから、この番組のテーマはALSだけの問題ではなく、意思伝達困難な障害者やどんどん悪くなる進行性難治性疾患の者の「安楽死をどうしよう」という話になってしまっています。

そう言った意味では、今回の番組は以前と同様に残念ながら勉強不足ですし危険なものでした。
またしても、何も知らないALS当事者や関係者の恐怖をただあおってしまったとおもいます。
それに、障害者とのコミュニケーションのことなど考えたこともない一般市民は、照川さんみたいには絶対に なりたくないと思ったことでしょう。
今この時を生きている彼の尊厳も、家族の読み取りの努力も今夜の番組からは伝わらなかったと思います。
いつかやってくる暗闇を想像させてしまいました。
でも、患者会内部では、照川さんの訴えを真摯に受け止めてもなお、彼の意思は死ぬまで読み取られるだろうという意見が多いです。

それは、ご家族の介護力のすごさや地域医療との連携ができていることを知っているからです。信頼関係があるからこそ将来こうなったら殺せと言える。殺されないこと、つまりそうならない未来もあるだろうと思えるからではないでしょうか。
「クローズアップ現代」が、重度障害者や患者の安楽死ではなく、そういった患者の治療に対する自己決定を支持するつもりなら、「いつまでも意思を読み取れる体制を作れ」「家族に頼るな」「療養環境を整えろ」 という主張を、今後は繰り広げていただきたいです。

番組中、「神様がくれた命だから粗末にできない」という患者さんも出てきましたが、それでは呼吸器をはずしたくない患者や反対している者は、あたかも宗教が理由のように思われてしまいますね。
アメリカの状況を意識して意図的に信仰の厚い患者を出したのかもしれないですが。

以前、脳波スイッチ「MCTOS」のトレーナーで有名な仙台の坂爪先生にインタビューしたとき、ALSの安楽死賛成論を「まず意思を読み取るほうが先」と一言で片づけられました。
「意思」は「本音」でもあると思いますが、これはまったくそのとおりでしょう。
私たちがすべきことは、患者を殺してあげることではなく、最後までその意思(本音)を読み取ることを諦めないことだと教えてくれました。

そして、明石のMCTOSユーザーの少年やALSでトータリロックトインの患者さんたちは何か意味のある言葉のやりとりだけが、人間のコミュニケーションではないこと、言葉など適当でもコミュニケーションは可能だと教えてくれました。
どなたもみなバイタルもよく、ゆったりと過ごしています。
深い海の底に沈んでいく、、という恐ろしいイメージは所詮健常者の想像の範囲でしかないのでしょう。
私も最初はそうだろうと思っていましたが、長期療養のおしまいのほうを生きている患者さんは、ほとんど一日中寝ていますし、もう文字板もとられませんが、その姿はむしろ、あらゆる煩悩から解放されて、ALSからも自由になった印象を与えてくれます。
穏やかな老衰のような感じで静かに休んでおられます。
長くなりましたが、障害の視点から、コミュニケーション困難な者からの呼吸器外し、つまり、重度障害者の安楽死に反対する意見が盛り上がることを祈っています。

■ 患者会のMLに投稿(2月4日)

脳波スイッチ「MCTOS」のトレーナーで有名な仙台の坂爪先生にインタビューしたときも、ALSの安楽死論を「まず意思を読み取るほうが先」と一言で片づけられました。
「意思」は「本音」でもあると思いますが、私たちがすべきことは、患者を安楽死させることではなく、最後までその意思(本音)を読み取ることを諦めないことだと教えてくれました。

番組ではまるで、患者の従前の自己決定による治療停止の容認について問題提起しているかのように見られましたが、患者が意思疎通ができなくなってから呼吸器を外すということは実際は、ケアを行う者のケア(のなさ)によって、呼吸器を外すことになります。

ALSのコミュニケーションについては、言うまでもなく「読み取る側」が諦めたその時が、「意思疎通ができなくなる瞬間」で、「患者が自分で決められることではない」。
ケアする側が決定することです。照川さんの様子を拝見して療養場所によってはすでに意思伝達不能になってしまうのではないかと思います。
まだ、大丈夫と思えるのは意思を読み取ってくれるご家族がいて信頼できる家庭医もいて、そこで療養しておられるからでしょう。
照川さんは信頼関係が築けているから「そうなったら」「死なせてほしい」といえる。うちの母もそうでした。
うちの母の場合も、「そうなったら」そうしようということになっていて、実際に、だんだん「そうなった」んですが、いつ「そうなった」かがわからなかったので、そのまま最期の日までのんびりと過ごしました。
もし安楽死が法制化されていたら、家族や医者は大変に厳しい選択を迫られていたと思います。

意思伝達不可能といえば、患者家族の恐怖をあおると思いますが、一日のうち寝ている時間がどんどん長くなるので閉じ込められるというよりも老衰に近い感じでした。

多くの患者さんが、照川さんやうちの母みたいに恵まれた療養環境にはいません。
一昨日、協会として厚労省に行き、経営困難に陥ってしまった介護施設の支援をお願いしてきました。
もしも潰れたりしたら、そこに入院中の呼吸器をつけた患者さんは路頭に迷ってしまいます。
家族介護が破たんし行先を失ったために、そこに無期限で入院しているのです。
献身的に介護してくれる人がいなければ、ALSは呼吸麻痺で死ななければならない病気であることは今も昔と変わりありません。
しかし、いまは法律によって守られています。呼吸器を外せないので医療やケアをする側に改善を要求することができるのです。
疾病対策課はすぐに動いてくれました。何とかできるといいなと思いますが、これもまだ、呼吸器をはずして死なせることができないから、手が打てるのです。

自分がALSの方の介護事業をしているので、実感しますがもし、呼吸器を外せるようになれば、ケアする側は今ほどは、がんばらなくなると思います。
うるさい患者に「死にたい」と言わせるためには、病棟の看護が意地悪でも黙認されるでしょう。
へンディンという人が書いた本には、安楽死が法制化されたオランダやアメリカのオレゴン州で、重度障害者や高齢者がケアをしてもらえなくなっていく模様がありありと描かれています。患者家族には是非、読んでいただきたい本です。
長くなりましたが、番組が投げかけていたのは、個別事例では済まず障害者の安楽死に広がる話です。
意思伝達ができない、できなくなる障害や病気は山ほどありますから、そうなったら死なせる、ということは、他者による重度障害者の安楽死がテーマです。

照川さんの投げかけているのは、死ぬ時期は信頼できる他者に任せてもよいという話で、これまでは、ケースバイケースでおこなわれており、これがルール化されると重度障害の患者にとっては大変に危険なのですが、国の医療経済に貢献できる話ではありますから、患者がそれでもよいというのなら、一般市民には歓迎されると思います。」

 
 
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◆2009/02/26 「延命中止:68医師 救急医学会のガイドライン適用」
毎日新聞(阿部周一) 2月26日
http://mainichi.jp/select/science/news/20090227k0000m040152000c.html

 死期が迫った救急患者に対する延命治療を巡り、日本救急医学会が08年に全国の救急専門医に実施したアンケートで、回答した医師715人中68人が「学会がまとめたガイドライン(指針)を適用してよかった」と答えていることが分かった。同学会は07年11月、回復見込みがない終末期救急患者への延命治療中止基準を記した指針をまとめており、指針を適用して救急患者への延命治療を中止する行為が相次いでいることが浮き彫りとなった。【阿部周一】
 アンケートは08年8〜9月に実施し、全国の医師2764人に質問した。回答を寄せた医師715人中96人が「ガイドラインを適用しようとした事例があった」と答え、うち68人がガイドラインに従って実際に延命治療を中止した。
 一方、適用しようとしながら実際に延命治療を続けた医師に理由を尋ねたところ▽法的な問題が未解決▽家族らの意見がまとまらなかった▽終末期の問題について社会の合意が得られていない−−などの意見があったという。

 【ことば】終末期救急医療のガイドライン
終末期を「脳死と診断された場合や治療を続けても数日以内の死亡が予測される場合」と定義し、終末期と判断された場合は医師が家族に病状を説明。家族が治療を望めばこれに従うが、本人の事前の意思表示や家族の同意があれば延命治療を中止する。

 
 
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◆2009/02/27 「医療:「延命治療中止」/68医師/福岡大病院は昨年実施/学会の指針適用/救急医アンケート」
毎日新聞(阿部周一) 2009年2月27日 2時30分(最終更新 2月27日 2時45分)
http://mainichi.jp/seibu/news/20090226sog00m040011000c.html

 死期が迫った救急患者に対する延命治療を巡り、日本救急医学会が08年に全国の救急専門医に実施したアンケート調査で、回答した医師715人中68人が「学会がまとめたガイドライン(指針)を適用してよかった」と答えていることが分かった。同学会は07年11月、回復の見込みがない終末期の救急患者への延命治療中止基準を記した指針をまとめており、指針を適用して救急患者への延命治療を中止する行為が相次いでいることが浮き彫りとなった。
 アンケートは08年8〜9月に実施し、全国の医師2764人に質問した。回答を寄せた医師715人中96人が「ガイドラインを適用しようとした事例があった」と答え、うち68人がガイドラインに従って実際に延命治療を中止した。一方、適用しようとしながら実際に延命治療を続けた医師に理由を尋ねたところ▽「法的な問題が未解決」▽「家族らの意見がまとまらなかった」▽「終末期の問題について社会の合意が得られていない」などの意見があったという。
 福岡市城南区の福岡大学病院(内藤正俊院長)では08年、急性呼吸不全で入院した男性患者(68)に対し、人工心肺装置を外して延命治療を中止した。家族立ち会いの下で装置を取り外し、男性は間もなく死亡した。指針に基づいた措置だったという。
 26日の日本集中治療医学会で報告された発表資料によると、男性は急性呼吸不全で同院救命救急センターに搬送された。集中治療室で人工呼吸器と人工心肺装置を使って治療を続けたが、入院後21日目に回復が困難と判断。ガイドラインに基づいて家族と話し合った結果、延命治療中止を決めたという。【阿部周一】
 終末期救急医療のガイドライン 終末期を「脳死と診断された場合や、治療を続けても数日以内の死亡が予測される場合」と定義し、終末期と判断された場合は医師が家族に病状を説明。家族が治療を望めば、これに従うが、本人の事前の意思表示や家族の同意があれば延命治療を中止する。

 
 
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◆2009/03/29 安楽死・尊厳死法制化を阻止する会3.29シンポジウム

 
 
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◆2009/05/20 「[社説]尊厳死法制度化の時がきた」
 
東亜日報 2009年5月20日

ソウル大学病院は19日、末期のがん患者や家族の同意がある場合、尊厳死を許可すると明らかにした。07年に末期がん患者656人のうち85%の436人が延命治療を中止して死亡したという関連資料もともに公開した。延命治療の中止が広範囲に行なわれていたという事実は驚くべきだが、ソウル大学病院がこれを公開したことも異例のことだ。末期がん患者およびその家族の切実な現実についていっていない尊厳死関連法制度に対する告発というわけだ。
昨年、セブランス病院が、植物人間状態の金某さん(77)に対する1審裁判の尊厳死認定判決を不服として上告した時は、尊厳死に対する社会的合意が十分だと言えなかった。回復不可能な患者と保護者の苦痛を減らさなければならないという現実論に劣らず、反倫理的な生命放棄を正当化する恐れがあるという反論が少なくなかった。しかし、2月に延命治療をせずに安らかにこの世を去った金寿煥(キム・スファン)枢機卿の逝去後、尊厳死に対する社会的ムードが変わった。

米国や欧州では、末期エイズ患者に対する尊厳死を認めている。台湾も00年から末期患者が事前に宣言書を書く場合、心肺蘇生術を行なわない。日本でも、判例によって回復の代案がなければ、治療を中止することができる。

韓国では、延命治療中止の行為に対して患者家族が告訴すれば、医師が処罰される。04年には、経済的理由を訴えた家族の意思によって、脳出血患者の退院を許可したソウル・ポラメ病院の医師に、殺人幇助罪が適用され、有罪判決が出たことがある。

医療現場で、患者または家族の同意と医師の判断によって、心肺蘇生術や人工呼吸器を使わない消極的安楽死が行なわれたケースは、ソウル大学病院だけではないだろう。現実がそうなら、尊厳死の法制化をただ先送りにすることはできない。21日の最高裁判所の尊厳死最終判決には、このような現実が反映されるものと予想される。

生命は何よりも尊いものだが、「幸せに生きる権利」同様、「品位をもって死ぬ権利」も重要だ。患者が無意味な生命延長を拒否する時の消極的安楽死は受け入れても、回復の可能性がない病気だからといって、患者の生命を人為的に短縮させる積極的安楽死は、原則的に禁止しなければならない。国会は、延命治療の中止などに関する基準と手続き、方法などを規定する立法を急ぎ、社会的混乱を阻止しなければならない。


 
 
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相模原事件(関連報道)
・2009/10/13 「「死にたい」妻殺害容疑で夫逮捕 難病の息子殺害後、うつ病に」
『47News』2009年10月13日18時37分(共同通信配信)

  神奈川県警相模原署は12日、「死にたい」と願う妻を包丁で刺して殺害したとして、殺人容疑で相模原市宮下本町1丁目、無職菅野幸信容疑者(66)を逮捕した。
  同署幹部によると、妻の初子さん(65)は、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)だった長男=当時(40)=を自宅で介護していた2004年8月、長男の求めで人工呼吸器の電源を切って窒息死させ、自らも自殺を図ったとして、05年2月に嘱託殺人罪で懲役3年、執行猶予5年の判決を受けた。
  菅野容疑者は「妻は事件後からうつ病になり、『死にたい』と言い続けるのをずっとなだめていた。『死にたい』と言うので刺した」と供述している。自宅からは「これで楽になれる」との書き置きが見つかり、同署は初子さんの遺書とみて調べている。
  逮捕容疑は12日午後2時半ごろ、自宅の寝室で、初子さんの首を包丁で刺して殺害した疑い。菅野容疑者は約1時間後に相模原署に自首した。

・2009/10/13 「難病の息子殺害の妻を刺殺の疑い、夫を逮捕 神奈川」
『日経新聞』(Web版)2009年10月13日23時01分
  妻を包丁で刺して殺害したとして、神奈川県警相模原署は13日までに、相模原市宮下本町、無職、菅野幸信容疑者(66)を殺人の疑いで逮捕した。自宅からは妻から娘あての遺書とみられる書き置きも見つかっており、同署が詳しい経緯を調べている。
  同署幹部などによると、妻の初子さん(65)は2004年8月に難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)のため自宅で介護していた長男(当時40)の求めで人工呼吸器を止めて窒息死させ、自らも自殺を図った。05年2月に嘱託殺人罪で懲役3年、執行猶予5年の判決を受けていた。
  同署によると、同容疑者は初子さんと2人暮らし。「5年ぐらい前からうつ病で日ごろから『死にたい』と言っていたので刺した」と供述している。また同署は初子さんの死因を失血死と発表した。逮捕容疑は12日午後2時半ごろ、自宅寝室で初子さんの首を包丁で刺して殺害した疑い。約1時間後に同容疑者が自首した。

・2009/10/13 「難病息子殺害から5年、死願う妻を「殺した」夫自首」
『読売新聞』(Web版)2009年10月13日14時11分
  神奈川県警相模原署は12日、同県相模原市宮下本町、無職菅野幸信容疑者(66)を殺人容疑で緊急逮捕した。発表では、菅野容疑者は同日午後2時半頃、自宅1階の寝室で、妻の初子さん(65)の首を包丁で刺して殺害した疑い。
  同署幹部によると、菅野容疑者が同署に自首し、署員が菅野容疑者宅でベッドに倒れている初子さんの遺体を発見した。ベッド脇に包丁があった。
  初子さんは2004年8月、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症だった長男(当時40歳)を自宅で介護していた際、長男に懇願されて人工呼吸器の電源を切って窒息死させ、自らも自殺を図ったとして、翌05年2月に嘱託殺人罪で懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受けた。
 同署幹部によると、菅野容疑者は「妻は事件後からうつ病になり、有罪判決の後も『死にたい』と言うのをなだめてきたが、あまりにも言い続けるので殺した」と供述しているという。
 また、近所の主婦の話では、初子さんは足が悪く、菅野容疑者の車で病院や買い物に出かけるなどし、最近も「毎日、仏壇に息子の好きだった料理を供えている」と語っていたという。



 
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・2009/10/14 「夫、妻の自殺ほう助?「これで楽に」と妻の遺書」
  『読売新聞』(Web版)2009年10月14日09時26分 読売新聞)
神奈川県相模原市で無職菅野幸信容疑者(66)が妻の初子さん(65)を刺殺したとして殺人容疑で逮捕された事件で、初子さんが2人の娘にあてた遺書が寝室から見つかったことが13日、相模原署の調べで分かった。
  初子さんの首に自分で切ったとみられる傷があることから、同署は菅野容疑者が自殺しようとした。初子さんに頼まれて刺した可能性もあるとみて、菅野容疑者を14日に殺人容疑で送検した上で、嘱託殺人罪や自殺ほう助罪の適用も視野に慎重に調べる方針。
  同署幹部によると、2通の遺書には「息子と一緒に楽しく暮らします。これでやっと楽になれます。息子の七回忌をやっていないのが心残りです」などと書かれていた。



 
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◆2009/12/05 「呼吸器外し「依頼された」が2割 難病ALS治療で医師」
 2009/12/05 18:37 共同通信
 http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120501000560.html

 「全身の筋肉が動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の治療に関する北里大の全国調査で、「いったんつけた人工呼吸器を外してほしい」と患者側から依頼された経験のある医師が、回答者の5人に1人に当たる284人に上ることが5日、分かった。
 人工呼吸器を外せば殺人罪などに問われる可能性があり、依頼された医師のほとんどは「外さなかった」と答えた。9人は「外した」としたが、時期や経過の設問がないため詳細は不明。条件次第では「外していい」と考える容認派は約850人と回答者の50%を超えた。
 ALS患者からの呼吸器外しの依頼の有無や対応を医師に尋ねた大規模な調査は異例。中心になった北里大の荻野美恵子講師(神経内科学)は「少なくない医師が患者や家族の切実な願いに直面して悩んでいる。社会的な議論が必要」としている。
 調査はことし3月、日本神経学会の専門医約4500人を対象に実施、約1500人から匿名で回答を得た。」(全文)


*このファイルは生存学創成拠点の活動の一環として作成されています(→計画:T)。
UP:20090204 REV:20090212, 0213 0214, 18, 25, 0301, 0316, 17, 20, 0502, 0503, 0520, 1015, 1126, 20100101, 04, 0405
安楽死・尊厳死  ◇老い:2009
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