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終末期医療全国病院アンケート 読売新聞社・立命館大共同調査 1

『読売新聞』2008-7-26朝刊:1,3 http://www.yomiuri.co.jp


 ※今後の研究・報告のために、紙面の文字部分を再録しました。表・グラフは掲載していません。入力ミスのための誤りのある可能性があります。
 ※調査結果は、ここに採録した2006年7月26日朝刊1・3面の他、7月27日14・15面に特集記事として掲載されました→別に掲載しています。

■延命中止・不開始31% [大きな見出し 縦]
 「医師だけで判断」4割 [その左・二番目に大きな見出し 縦]
 主要病院本社調査 [以上の下 横]
 『読売新聞』2008-7-26朝刊:1,3 http://www.yomiuri.co.jp

 「終末期医療の現状について、読売新聞社は全国の主要病院に調査を実施した。人工呼吸器など延命処置の中止・不開始が最近1年間にあったのは回答施設の31%に当たる117病院で、事例は少なくとも1902件にのぼった。これらの病院の4割は終末期の方針を通常、医師だけの判断しており、厚生労働省の指針が求める多職種でのチーム判断が確立していなかった。医療費削減など国が進める政策のあおりで十分な医療やケアを提供できない実態も明らかになり、終末期医療に問題があるとした病院は91%に及んだ。<関連記事3面、詳報は27日掲載予定>

 調査は、立命館大の「生存学」創成拠点と共同で、300床以上の1191病院(精神病主体の施設を除く)にアンケート。379病院(32%)の回答を得た。
 厚労省が「終末期医療の決定プロセスに関する指針」を公表したのは昨年5月。その前後から約1年の状況を聞いたところ、人工呼吸器や栄養・水分の補給、人工透析、輸血など生命の維持に必要な延命措置の中止は86病院、それらを行わない「不開始」は90病院が経験していた。いずれかがあったのは117病院。具体的な件数を答えた施設だけで中止は計395件、不開始は計1507件あった。
 これらの病院で、終末期の方針の決め方に関する回答を見ると、19病院(16%)は単独の医師、28施設(24%)は複数の医師の判断が一般的だった。プロセス指針は、医師だけの判断を避け、看護師やソーシャルワーカーなど多職種のチームでの検討を求め 調査では、関連する医療制度にも焦点を当てた。高齢者を中心にした医療費の負担増では、39%の病院が「必要な医療が受けられない患者が出ている」、療養病床の削減では、46%設が「行き場に困る患者が出てきている」と回答した。
 全国病院調査
◆医療費抑制策 終末期に足かせ [一番大きな見出し 横]
◆患者 行き場なし 病院 余裕なし [一番大きな見出し 縦]

 医療費削減を狙って新たに導入された医療制度が足かせになり、終末期に力点を置いた医療を推進したくても積極的に展開できない医療現場の実態が、本紙と立命館大学が行った調査で浮かび上がった。加えて、国の終末期医療に関する指針(プロセス指針)が示した、医療チームでの判断、緩和ケアの態勢も、いまだ十分とは言えない。(東京科学部、医療情報部、本文記事1面)

 神奈川県海老名市の海老名総合病院(467床)は平均入院日数が12日の急性期病院だ。同市と周辺2市(人口計約33万人)の救急医療を担っている。
 内山喜一郎院長(57)は「終末期を迎えた患者を慢性期病院に引き受けてもらおうにも、受け入れてくれない。在宅、老人保健施設も足りない。特に人工呼吸器や(おなかに管を入れ胃に栄養を送る)胃ろうの患者は断られることが多い」と話す。医療ソーシャルワーカー(MSW)が受け入れ先を探すのに、1か月かかることもある。7人いたMSWは4人が燃え尽きて辞めた。
 行く場のない患者は病院で一生を終えるが、スタッフには「これが患者の幸せなのか」との悔いが残る。
 同病院は昨年2月、療養病床のある近隣の関連病院に慢性期の患者を送る体制を始めた。しかし、この病院には、いまだ看護師らスタッフがそろわず、稼働していない病床もある。
 同じ急性期を担う大阪府岸和田市立岸和田市民病院(400床)も、状況は似ている。瀬戸嗣郎院長(57)は「我々に余裕はなく、患者や家族に十分な心のケアができないのはもどかしい」と話す。
 今回の全国調査で、9割以上の病院が、「終末期医療の現状に問題がある」と回答した。具体的な課題として76%が「在宅や福祉施設でのサポートが不十分」を挙げ、59%が「看護や介護などのケアが不十分」と指摘した。医療費抑制政策によって患者の落ち着き先が確保できず、終末期医療に力点を置くことが難しいという、医療現場の訴えだ。
 こうした状況に追い打ちをかけるのが今年度から本格化した療養病床の削減計画だ。厚労省は25日、計画の緩和を決めたが、「社会的入院」を減らすのが狙いの療養病床の大幅な削減に46%の病院が「行き場に困る患者が出ている」と答えた。医療行為の回数にかかわらず、診療報酬が定額になる「包括払い」も療養病床、入院90日を超える高齢者、高度医療を行う病院にも広がっている。この影響で44%が「患者に転退院を求めざるを得ない」と答えた。
 国は2006年度から「在宅療養支援診療所」という制度を作り、看取りの場を自宅に移行させる施策を始めた。調査では、30%の病院から「在宅での看取りをもっと増やすべきだ」との答えがあった。「在宅ホスピス」普及の動きもあるが、道半ばだ。

◆人材不足 緩和ケアも不十分 [左下 三番目に大きな見出し 縦]

 国の指針が重要性を示した、緩和ケアを取り巻く環境もさびしい。世界保健機関(WHO)は「がんによる痛みの80〜90%は、患者が受け入れられる程度まで緩和できる」としている。死を前にした精神的な苦痛も、心理的ケアや薬物を使うことで改善が可能だ。
 こうしたことから、「緩和ケアを適切に行えば、『安楽死』や『尊厳死』と呼ばれてきた事件は起きえない」という医師もいる。
 国内でもがん診療連携拠点病院を中心に緩和ケアが広がる。今回の調査でも49%の病院で、緩和ケアのための専従チームが置かれていた。WHOや日本緩和医療学会の指針に沿い緩和ケアができるスタッフがいる病院も28%あったが、チームがある病院の61%が、緩和ケアが不十分と思われる例があると回答した。
 延命治療の中止・不開始した病院のうち15%が、緩和ケアの体制が不十分とした。最大の理由は、人材不足で医療現場に余裕がないからだ。
 今年度の診療報酬改定では、緩和ケア専従チームのある病院に300点の診療加算が認められたが、複数の病院から「一般病棟より低い加算点数では、充実は難しい」との声も上がった。

◆「チーム判断」浸透まだ先  [下 三番目に大きな見出し 横]

 東京都青梅市の青梅慶友病院には、他の医療機関から転院してくる高齢者が多い。前の病院で、人工呼吸器と点滴チューブをつながれてベッドに拘束されていた90歳代の女性に対し、同病院の医療チームは「輸液は減量すべきだ」と判断した。女性は一時、車いすで家族と散歩できるまで回復した。
 大塚宣夫理事長は「末期患者には、不必要な治療はしない。しかし、必要な場合は、90歳であっても積極的に治療する」と語る。
 こうした医療も医師だけでなく、看護師の意見を尊重するからこそできる。
 関東地方の病院は、最近1年間に4人の患者で、人工呼吸器の使用をやめた。判断は医師を含む13人の緩和ケアチームで行った。
 緩和ケア科部長の医師は「書面だけのやりとりではなく、普段から患者、家族との距離を近く保つこと。満足のいく看取り」になる」と強調する。
 国の指針は、こうした医療チームによる判断の徹底を求めている。だが、調査では、指針の浸透度があまりに低いことも明らかになった。指針の存在を知らなかった病院は4%だったが、「読んだが院内では対応していない」との答えは43%、「存在は知っているがよく読んでいなかった」も15%あった。

◆患者や家族の苦悩 社会全体で共有を [中の囲み]

 立命館大学産業社会学部、大谷いづみ教授(生命倫理学)の話「医療費削減政策の中で、医療現場が抱える苦悩が伝わってくる。その一方で、自由記述欄には『死生観を育む教育を』といったコメントが目立つが、これは、『医療費には限りがあるのだから、死に方は自分で決めよ』と患者・家族に迫っているに等しい。患者・家族が直面する苦悩や迷いを、社会全体で共有してねばり強く考えていくことが、終末期医療が充実する第一歩となるはず。ケアや福祉が軽視されている現状にも、気付くべきだ」

 
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 HP上の記事

■終末期の延命治療、病院3割が中止・不開始…読売調査
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080726-OYT1T00032.htm
 *記事本文は新聞掲載のものといくらか異なります

 「終末期医療の実態や課題について、読売新聞社が全国の病院を対象に実施した調査で、最近1年間に末期患者への人工呼吸器の装着などの延命治療の中止・差し控えをしたのは回答施設の31%に当たる117病院で、事例は少なくとも1902件に上った。
 これらの病院の40%が医師だけの判断が多いとし、昨年5月公表の国の終末期医療に関する指針が求める、複数職種による検討が確立していないことがわかった。国が進める医療費削減などのあおりで十分な医療ができず、終末期医療に問題があるとした病院は91%に達した。
 立命館大学と共同で行った調査は、全国の300床以上の1191病院を対象とした。379病院(32%)の回答を分析した。
 人工呼吸器や人工透析、栄養補給などの延命治療を中止したのは86病院、それらを行わない「不開始」は90病院が経験した。いずれかがあったのは117病院。件数を答えた施設だけで中止は計395件、不開始は計1507件あった。これらのうち、単独の医師による判断が多かったのは19病院(16%)、複数の医師は28病院(24%)だった。
 高齢者を中心にした医療費の負担増については「必要な医療が受けられない患者が出ている」とした病院が39%に上った。長期療養患者のための療養病床削減では、46%の病院が「行き場に困る患者が出ている」と回答した。」
(2008年7月26日03時06分 読売新聞)

■延命中止・不開始31%…読売病院調査
 過去1年、1900件超す
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080726-OYT8T00259.htm
 *記事本文は新聞掲載のものといくらか異なります

 「終末期医療の実態や課題について、読売新聞社が全国の病院を対象に実施した調査で、最近1年間に末期患者への人工呼吸器の装着などの延命治療の中止・差し控えをしたのは回答施設の31%に当たる117病院で、事例は少なくとも1902件に上った。
 これらの病院の40%が医師だけの判断が多いとし、昨年5月公表の国の終末期医療に関する指針が求める、複数職種による検討が確立していないことがわかった。国が進める医療費削減などのあおりで十分な医療ができず、終末期医療に問題があるとした病院は91%に達した。
 立命館大学と共同で行った調査は、全国の300床以上の1191病院を対象とした。379病院(32%)の回答を分析した。
 人工呼吸器や人工透析、栄養補給などの延命治療を中止したのは86病院、それらを行わない「不開始」は90病院が経験した。いずれかがあったのは117病院。件数を答えた施設だけで中止は計395件、不開始は計1507件あった。これらのうち、単独の医師による判断が多かったのは19病院(16%)、複数の医師は28病院(24%)だった。
 高齢者を中心にした医療費の負担増については「必要な医療が受けられない患者が出ている」とした病院が39%に上った。長期療養患者のための療養病床削減では、46%の病院が「行き場に困る患者が出ている」と回答した。」
(2008年7月26日 読売新聞)


■言及

◆上野 千鶴子・辻元 清美,20090722,『世代間連帯』岩波書店.(岩波新書 新赤番1193)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004311934/ryospage03-22

(上野)「それに終末期医療にカネがかかるというのは実はウソ。「スパゲティ症候群」とか言いふらしてカネのかかりすぎる終末期医療を抑制しようとしているけれど、事実にもとづかないプロパガンダよ。/二〇〇八年、立命館大学GCOE「生存学」創成拠点と読売新聞が共同調査した結果では、終末期に医療過剰があるのは事実だけど、医療抑制がおこなわれている現実も浮かび出た。それも家族の意向でね。こういうことはきちんとエビデンスにもとづいて議論してもらわないと(「終末期医療全国病院アンケート 福祉やケア不足 延命 苦悩の現場」『読売新聞』二〇〇八年七月二七日)。」(上野・辻元 2009: 131-132)


UP:20080929 REV:20090801
安楽死・尊厳死 2008  ◇安楽死・尊厳死
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