イタリア延命中止事件:2009
■新聞報道・他
◆20090115 「イタリア:延命中止、手伝わぬ…州政府が協力拒否」
『毎日新聞』2009年1月15日 11時01分(最終更新 1月16日 10時09分)
http://mainichi.jp/select/world/news/20090115k0000e030026000c.html
◆20090207 「伊政府が延命停止防ぐ緊急政令、意識不明の女性の安楽死問題」
『CNN.co.jp』2009.02.07 Web posted at: 12:41
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200902070003.html
◆20090207 「38歳女性の延命停止に「待った」――イタリア政府動く」
『朝日新聞』2009年2月7日11時50分
http://www.asahi.com/international/update/0207/TKY200902070065.html
◆20090207 「延命停止阻止で緊急政令――イタリア政府、植物状態女性に」
『京都新聞』 2009年2月6日(金)
http://kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009020600204&genre=G1&area=Z10
◆20090210 「植物状態のイタリア人女性死亡――延命停止後」
『京都新聞』2009年2月10日(火)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009021000027&genre=E1&area=Z10
◆20090211 「イタリア:安楽死の是非巡り二分――栄養補給減らし3日後、植物状態の女性死亡」
『毎日新聞』2009年2月11日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20090211ddm007030008000c.html
■記事引用等
◆20090115 「イタリア:延命中止、手伝わぬ…州政府が協力拒否」
『毎日新聞』2009年1月15日 11時01分(最終更新 1月16日 10時09分)
http://mainichi.jp/select/world/news/20090115k0000e030026000c.html
【ローマ藤原章生】イタリア最高裁(破棄院)で昨年11月、人工栄養中断による延命措置中止が認められた植物状態の女性(37)について、入院先の病院を管轄する州政府が「死なせるわけにはいかない」と延命中止への協力を拒否。女性の父親が州を相手取り、延命中止を認めた判決を尊重するよう求める行政訴訟を起こす準備を始めている。背景にはバチカンはじめカトリック信者の判決への猛反発があるようだ。
この女性はイタリア北部の町レッコのエルアナ・エングラロさん。92年に自動車事故で植物状態となった。99年、父ベッピノさんが、国を相手に人工栄養中止を求める訴えを起こし、最高裁が認めていた。
父親は昨年12月、最期をみとるためフリウリ・ベネチア・ジュリア州のウディネの病院にエルアナさんを移送した。栄養補給管を外して娘の死を迎えるつもりだった。
しかしフォルミゴニ州知事が「患者を助け、治療するのが(病院など)州の厚生の任務。死を手伝う義務が我々にあるとの命令がない限り、実行できない」と協力を拒否した。
父親は訴訟を起こす構えだが、州側の上訴も考えられ、延命中止問題は長引きそうだ。
最高裁の判決について、カトリック信者らは「命を軽んじている」「どんな状態でも生は生だ」と強く反発していた。
◆20090207 「伊政府が延命停止防ぐ緊急政令、意識不明の女性の安楽死問題」
『CNN.co.jp』2009.02.07 Web posted at: 12:41
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200902070003.html
(CNN) イタリアで17年近く昏睡状態にある女性が裁判で争った末に安楽死を認められ、栄養補給チューブを外すため北部ウディネの民間医院に転院した問題で、イタリア政府は6日、延命停止措置を阻止する緊急政令を閣議決定した。
中道右派政権を率いるベルルスコーニ首相は閣議後の会見で「まだ生きている彼女の命を救うためすべての措置を取る。妊娠だって可能だ」などと語った。政令は、延命停止に強く反発するバチカンや一部カトリック団体を意識したものとみられる。緊急政令を受け、議会が今後数週間内に同様の法案をまとめるとみられる。
この女性はエルアナ・エングラロさんで、20歳だった1992年、自動車事故で脳に回復不可能な損傷を負って昏睡状態に陥り、父のベッピーノさんが娘の尊厳死を求めて裁判を起こしていた。ベッピーノさんによると、エルアナさんは交通事故に遭う以前、意識不明になった友人を見舞い、もし自分に同じことが起きたらこんな状態で生かされたくないと話していたという。
イタリアでは法律で安楽死が禁じられているが、家族が治療を拒否する権利は認められている。ベッピーノさんはこれを根拠に、治療を拒否することによる安楽死は認められるべきだと主張。イタリアの最高裁は昨年11月、下級審の判断を支持し、治療打ち切りを認める判決を言い渡した。
しかし実際に栄養補給チューブを外してくれる病院探しは難航。当初複数の病院が受け入れる姿勢を示したが、厚生省の圧力を受けて引き下がった。最終的に、ウディネにある民間医院が受け入れることになり、エルアナさんは2日夜、これまで入院していたミラノ北部の病院を出て、救急車でウディネの医院に搬送された。
判決で定められた条件に従って約3日以内に栄養補給チューブを外した場合、エルアナさんは約20日で絶命するという。
◆20090207 「38歳女性の延命停止に「待った」――イタリア政府動く」
『朝日新聞』2009年2月7日11時50分
http://www.asahi.com/international/update/0207/TKY200902070065.html
【ローマ=南島信也】イタリアで17年前の交通事故で植物状態になった女性、エルアナ・エングラロさん(38)の延命措置停止をめぐる問題で、同国政府は6日、延命措置停止を止める緊急政令を決めた。ただナポリターノ大統領が署名を拒否したため政令は発効せず、与党側は同じ内容の緊急法案を数日中に可決させる方針だ。
ANSA通信などによると、エングラロさんが入院している同国北東部ウディネの病院は同日、栄養補給チューブから送られる栄養と水分を減らし始めた。チューブを外すと約2週間で死に至る。
これに対し政府は、医療従事者が栄養補給チューブを外す行為を禁じる緊急政令を閣議決定した。
エングラロさんの父親は、彼女の生前の意思を根拠に治療の打ち切りを求め提訴。昨年11月に最高裁が延命措置停止を認める判決を下していた。緊急政令は最高裁判決に反するが、憲法で緊急事態に対処するものは認められる。しかしナポリターノ大統領は「緊急事態の条件を満たしていない」と署名を拒否した。
世論調査では58%が延命措置停止を容認しているが、政府は延命停止に反発するローマ法王庁や一部カトリック団体に配慮したとみられる。
◆20090207 「延命停止阻止で緊急政令 イタリア政府、植物状態女性に」
『京都新聞』 2009年2月6日(金)
http://kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009020600204&genre=G1&area=Z10
【ウディネ(イタリア北東部)6日共同】17年前の交通事故で植物状態となったイタリア人女性、エルアナ・エングラロさん(38)の家族が回復の可能性はないとして延命措置の停止を求めていた問題で、同国政府は6日、同措置停止を阻止するための緊急政令を閣議決定した。ANSA通信が伝えた。
エングラロさんが入院している北東部ウディネの病院は同日、栄養補給管から送られる栄養と水分の量を減らす延命停止処置を開始したが、政令は医療従事者などに対し今後、栄養補給管を外すことを禁じている。
延命停止をめぐっては、ローマ法王庁(バチカン)が猛反発。イタリアでは世論を二分する騒ぎとなったが、中道右派ベルルスコーニ政権はバチカンや一部カトリック団体の意向に配慮、特定の事案に対する政令という異例の措置に出た。
病院は政令決定前、数日中に栄養管を完全に抜く方針を表明。その場合は、約2週間で絶命するという。
◆20090210 「植物状態のイタリア人女性死亡――延命停止後」
『京都新聞』2009年2月10日(火)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009021000027&genre=E1&area=Z10
【ローマ10日共同】17年前の交通事故で植物状態となり、家族の要請で今月、延命措置を停止されたイタリア人女性、エルアナ・エングラロさん(38)が9日、北東部ウディネにある入院先の病院で死亡した。延命停止をめぐっては、ローマ法王庁(バチカン)を抱える同国の世論を二分していただけに国民は衝撃を受けている。
入院先の病院は既に栄養補給管からの栄養と水分の補給を止めていた。直接の死因は不明だが、延命停止処置が影響したとみられる。
延命停止を求める家族の訴えは昨年、最高裁で認められた。中道右派ベルルスコーニ政権は、事実上の安楽死として反発するバチカンなどの意向に配慮し、延命停止を阻止するための緊急政令を閣議決定した。
しかし、左派出身のナポリターノ大統領は政令に署名せず無効になったため、同政権はあらためて延命停止阻止の法案を国会に提出、審議が始まっていた。
◆20090211 「イタリア:安楽死の是非巡り二分――栄養補給減らし3日後、植物状態の女性死亡」
『毎日新聞』2009年2月11日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20090211ddm007030008000c.html
【ローマ藤原章生】イタリア最高裁(破棄院)により昨年、人工栄養補給の停止を認められた植物状態の女性(38)が9日、北部の町ウディネの病院で死亡した。栄養補給を減らし始めてから3日後だった。「安楽死は罪」としてベルルスコーニ政権が特別法で阻止を試みる一方、ナポリターノ大統領が「立ち入るべきでない」と反論し、死ぬ権利を巡り国を二分する議論になっていた。
女性は20歳の時に交通事故で植物状態となったイタリア北部レッコ出身のエルアナ・エングラロさん。「娘を解放してやりたい」と、父親が99年に国を相手取り、栄養補給管を外すことを認めるよう求める訴えを起こした。9年にわたる裁判の末、昨年11月、最高裁で勝訴した。
だが、サッコーニ保健相が「昏睡(こんすい)状態の患者への栄養補給を止めてはならない」と全国に通達し、長く受け入れる病院がなかった。
今月初め、ウディネの病院が独自の判断でエルアナさんを迎え、6日から栄養、水補給を段階的に減らしていた。
この問題を議論していたローマの上院に訃報(ふほう)が届くと、保健相が「彼女は死んだのではない。殺されたのだ」と叫び、野党議員が「政府は人の命を政治の道具にした」と批判し、騒然となった。
マントバノ内務次官はこれに先立ち「イタリアは1948年以来初の『死刑』を執行することになる」と強い語調で病院や家族を批判していた。
娘の死について、父親は地元の記者団に「何も言いたくない。今は一人にしてほしい」と話した。
*作成:堀田 義太郎+安部彰
*このファイルは生存学創成拠点の活動の一環として作成されています(→計画:T)。