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災厄に向う――本人たち・後方から

立岩 真也 2013/01/27
シンポジウム「東日本大震災とマイノリティ――高齢者・障害者・外国人などに関して問わなければならないこと」
主催:日本学術会議社会学委員会・社会学系コンソーシアム分科会/日本学術会議社会学委員会・震災再建分科会 共催:日本学術会議社会学委員会 於:日本学術会議大会議室(乃木坂)

災害と障害者・病者:東日本大震災


  ◇どんな具合であるかについては土屋葉らが科研費による調査・研究をしている。また御存知のように、似田貝香門らのグループが阪神淡路の時から継続して調査を続けている。1月14日に渡辺克典らが企画したシンポジウム「災/生――大震災の生存学」で、土屋そして佐藤恵が報告してくれた。詳しくは、それらの報告をHP(「生存学」で検索)に掲載するからご覧いただきたい。
  ◇こうして、私たちがしてきたのは、一つ、後にいて、すべては無理だから、障害者・病者に関わって集まってくるものを集めて、公開していくことだ。2012年3月17日のメールマガジンの臨時号より。
  「このたびの大震災に際し、寄せられた情報をhttp://www.arsvi.com/d/d10.htm(3月14日新設)とそこからリンクされるページに掲載しています。生きるために、例えば人工透析人工呼吸器の利用者たちなど、水や電気をより切実に必要とする人たちがいます。この苦難に際し、多くの人たちが経験・知識・技術を役立てよう、役立ててもらおうとしています。頻回に更新するつもりです。ご覧ください。また情報をお寄せください。[…]」
  緊急の対応はしばらくすると終わった。その後、その秋に京都で催をして、呼吸のために電気がいる人たち他のためのマニュアル&報告書『医療機器と一緒に街で暮らすために――シンポジウム報告書 震災と停電をどう生き延びたか:福島の在宅難病患者・人工呼吸器ユーザーらを招いて』を作った。さしあたり(本当は)比較的簡単にできることもある。
  ◇それでも、逃げ遅れて死ぬことが多いというのは、実際調べてもそうなのだが、いくらか致し方ないようにも思える。ただ、だから山奥に集められて、安全に、ではないずだ。自分が居る(行く)ところに他人が付かざるをえないということ、そんな事情でつながりがあってしまうということは、ときにうっとうしいことでもあるのだが、事実それが存在するなら、人がいるならだが、そしていつもでも、いかなる場面ででもないが、かえって、このような大きな災厄においても、助かることにつながることがある。実際そんなこともあった。(そしてとくに田舎に手助けを要する人が多くいるというのはその通りだが、他の職が少ないこともあって、手助けできる人もまたたくさんいる。)
  ◇しかし、「避難」がそのまま見知らぬ場所の施設への「収容」になってしまうことがある。そのようでない暮らしを、その場に留まるにせよ、例えば原発から逃れ、別の場で暮らすにせよ、どのように可能にしていくか。どこにどんな人がいたはずで、どこに行ったのか、「個人情報保護」を理由に知らされないことから始まって、これは様々に難しい。けれどもそれを可能にしようという企てがある。こちらでは、大学やその人間科学研究所生存学研究センターの資金も使って、青木千帆子権藤眞由美が、手伝ったり調べたりしている。
  ◇そしていま東北でそんな活動をしている人たち、それを支援している人たちには、それぞれの過去があり、過去からのつながりがある。それは、この約40年の、さらに阪神淡路震災後の障害者運動――その一端を記した『生の技法』の第3版・文庫版を出してもらった――の継承・展開によって支えられているところがある。関西からも人が行き、阪神淡路を契機に立ち上がった金を集め配るところ(「ゆめ風基金」)が一定の役割を果たしている。実際にはそうそううまくはいかない、なかなかたいへんなのではある。しかしそれでも、引き継がれているものがある。そのことを記録し記憶することがある。有松玲他がその仕事をしている。阪神淡路のときの神戸大学附属図書館・震災文庫ほどのものは(資源不足で)できない。けれども、いくらかのことはしておこうと思う。

『医療機器と一緒に』表紙    『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版表紙』


◆安積 純子・尾中 文哉・岡原 正幸・立岩 真也 20121225 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』,生活書院・文庫版,663p. ISBN-10: 486500002X ISBN-13: 978-4865000023 1200+ [amazon][kinokuniya] ※

 「そしてCILもいろいろだ。これまでの章でも多様性については書いてきた。ただ、一九九〇年前後に私たちが関わったのは主に東京近辺の幾つかの組織だった。地域によっても形や「乗り」がずいぶん違う。例えば兵庫の「メインストリーム協会」はとても大きな規模の事業をしているが(常勤のスタッフが二〇人はいると聞いた)、東京の「ヒューマンケア協会」とはすこし雰囲気が違う。比べて緩い感じがある。それらがどんな具合に機能しているのか。どのように利用しているのか。どのように働いているのか。例えばさきにあげた前田・渡邉の本が示しているのは、全国で起きていくことでもあるが、その土地のその組織や人たちのことでもある。その上で、各地にできてきたつながり、そのつながりのつながりが、機能している。例えば阪神・淡路大震災の時、常に機能的に機能しているというわけでないそのつながりがあってなんとかなったところがあった。その人たちは新しい組織も作り、「ゆめ・風基金」を設立し金も集め始めた。そして東日本大震災の直後に東北に向かった人たちにメインストリーム協会の人たちもいたと聞く。そして福島で「被災地障がい者支援センターふくしま」の代表をしているのは、第1章の安積の先輩で盟友であった、そして全国青い芝の代表を務め(●頁)、神奈川県相模原市に「くえびこ」といを場を作りグループホームを運営した後、福島に戻って活動を続けてきた白石清春(一九五〇〜)であり、その活動の支援に、かつて兵庫の青い芝の会にいて(後に解散させ)、その全国組織でも白石と一緒だった(そしてたぶん対立もあったはずの)古井(旧姓:鎌谷)正代(一九五二〜)が駆けつけたりもした☆07。
 突然の災厄もあり、凡々とした毎日もある。[…]」(第10章より)

 「☆07 ごくごく簡単な報告として[12A]。HPに「東日本大震災」の頁があり、関連頁につながっている。阪神淡路大震災の時・その後のことについては似田貝編[06][08]佐藤[10]にいくらか記されている。そして、これらの本にも出てくる大賀重太郎(一九五一〜)――彼もまたものを言わず傍にいて支えてきた人たちの一人だった――がこの章を書いている年になくなった。」(第10章・注より)

■関連して立岩が書いたもの話したこと(ほとんど同じです)

◆2012/07/06 「災厄に向かう――災害と障害者・病者支援・2012」,2012年度立命館大学人間科学研究所研究所重点プログラムプロジェクト予算申請書→採択
◆2012/05/30 「後ろに付いて拾っていくこと+すこし――震災と障害者病者関連・中間報告」,『福祉社会学研究』09:81-96(福祉社会学会
◆2011/10/09 「書評:中沢新一『日本の大転換』」,『東京新聞』『中日新聞』2011-10-9
◆立岩 真也(代表) 2011/10/07申請→10/26:採択 「震災弱者にされてしまわないために――調査・連携・提言」,立命館大学・東日本大震災 復興のための『私たちの提案』――教職員の取り組み(第2次募集)
◆2011/09/30 「災厄に向かう――災害と障害者・病者支援」(応募書類),2011年度立命館大学人間科学研究所研究所重点プログラムプロジェクト予算申請書→2011/10採択
◆2011/09/19 シンポジウム・震災と停電をどう生き延びたかにおける取材に応えて,『読売新聞』2011-09-19朝刊
◆2011/09/18 シンポジウム・震災と停電をどう生き延びたかにおける取材に応えて,NHK京都放送局・京都府のニュース/NHK滋賀放送局・滋賀県のニュース
◆2011/07/29 「悲惨から新しい社会をと、言わない」,フォーラム「マイノリティ/他者の人文学――3.11以降に問い直す」,於:神戸大学
◆2011/07/25 「後方から」『おそい・はやい・ひくい・たかい』62 [原稿送付:20110519]
◆2011/07/25 「もらったものについて・7」『そよ風のように街に出よう』81:38-44 [原稿送付:20110409]
◆2011/07/10 「まともな逃亡生活を支援することを支持する」『別冊Niche』3:61-70 [原稿送付:20110531]
◆2011/07/09 「災厄は続く→その後方で何ができるか」(報告),グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム 於:京畿[キョンギ]大学 ソウルキャンパス・韓国
◆2011/06/30 「考えなくてもいくらでもすることはあるしたまには考えた方がよいこともある」,河出書房新社編集部編『思想としての3.11』,河出書房新社,pp.106-120
◆2011/06/08 「震災について・続報」『生存学 E-mail Magazine・韓国語版』12
◆2011/05/31 「この度の震災に際して」Ars Vivendi E-mail Magazine No.50 (May 31, 2011)
Japanese Page
◆2011/04/25 「センター長からのメッセージ」『立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点メールマガジン』13(通巻22)
◆2011/03/17 震災関連情報提供開始他,『「生存学」創成拠点メールマガジン』臨時号[通巻19号]


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