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震災弱者にされてしまわないために――調査・連携・提言

立岩 真也 2011/10/07申請→10/26採択
東日本大震災 復興のための『私たちの提案』――教職員の取り組み受付(第2次募集)


@企画概要:企画の目的・企画の背景にある問題意識や経緯等について

 例えば人工呼吸器を必要とする人にとって電気は、他の人々以上に欠かせない。停電は命に直接に関わる。今回の震災が明らかにしたのは、そうした事態に対する対応体制・態勢の脆弱性だった。そのことは、東京都や千葉県に居住し、重度障害者の支援に当たっている、申請者が指導している大学院生たちによっても報告されている。一つに個人情報保護を理由に、緊急対応を要している人の所在がわからない、わかっても対応する態勢が事前にないために対応がなされないといったことが起こった。電源であれば、予備のバッテリーが必要だが、それを有している人は多くなかった。またそのバッテリーもいざという時に使えないといったことが起こった。また充電のための発電機を屋内で使用するのは危険だが、そうした様々が知られていないことがわかった。こうしたことは電気に限らないが、電気不足の問題は全国に起こる。私たちも協力し9月に京都でシンポジウムが開催されたが、230人を超える参加者を得た。不安感・危機感は大きい。

A企画内容:想定している実施方法や取り組みの中身、企画の対象となる人や組織、地域等について

 とくに困難な状況にある福島での諸団体の活動を調整しつつ活動している「被災地障がい者支援センターふくしま」等、福島県他の組織やその関係者と申請者は長い関係を有してきた。先述したように停電、計画停電下での困難にさらされたウェルドニッヒホフマン病、筋ジストロフィー、ALS(筋萎縮性側索硬化症)等の人たちやその家族を支援する人たちも大学院生にいる。そして京都・大阪・兵庫で、東北への支援、東北から避難する人たち受け入れにも関わりながら、地域で活動している組織・人がおり、またとくに組織には属していないが介助やコミュニケーション支援で大学院生たちが関わっている人たちがいる。その人たちに、聞き取り他で被災時の実態や日常的な備えの様子について、行政や民間組織との関係やそれらに対する不満・期待・要望を知り、準備や対応がどのようであればよいかを知り、それを提言する。
 とくに京都においてはその傾向が強いのだが、人一人ひとり・各家族が孤立した状態は危機を増大させる。 先述した9月の催(呼びかけ人は京都市在住のALS・筋ジストロフィーの2人で後者は立命館大学の卒業生、私たちの資金は既に尽きているので大学院生・申請者がボランティアで協力、NHK、毎日新聞、読売新聞、京都新聞等で報道された、詳細はHP「生存学」「東日本大震災」)も、日常的な交流、情報交換を行うつながりを作るきっかけにと企画したものでもあった。私たち自身の、ここ7年ほど近畿・京都で築いてきた関係を生かし、とくに京都においてそうしたつながりの形成・維持に協力する。

B企画の意義:期待される成果、企画が大学や社会にどのような効果をもたらすかについて

 もちろん、第一義的には、災害時に障害者・病者が置かれる脆弱性の――根絶は困難であるとしても――軽減が目的であり、そしてそれは十分に可能なことを示せるはずである。例えば屋外に置いて使える発電機が一定の距離内に準備され、自宅に置かれる数個の予備バッテリーに対する公費の支援がなされ、その定期的な点検が必要であることが周知されるだけでも随分違ってくる。災害時に情報開示を希望・許容する人の名簿を作り、対応を事前に決めておくことも有効である。得られた知見・技法を全国に発信する。同時に、この企画は、当初から実践的な目的を有する立命館大学の研究組織生存学研究センターが継続的に取り組む研究・実践の一部ともなり、当事者とのづながりをより広く強くしてくきっかけ、日常的な接点ともなる。
C今回の予算が必要な理由:予算活用により、取り組みがどのように発展可能かについて
 次頁にも記すように、これまで今回の企画に関わる部分の活動については、ほぼすべてを自己負担で行ってきた。予算が得られるのであれば、経済的な余裕のない人に交通費(と必要な場合には宿泊費等)を支給し依頼して調査をしてもらうこと、また(時に遠方からの)ゲストに話をしに来ていただくこともできるようになる。その活動はより容易になり、その結果、より速く――この活動は速くなされねばならない――その活動を前に進めていくことができるだろう。そしてそれはこれまで京都になかった当事者の交流の場――私たちも関係した幾度かの催やこの10月の企画はそのきっかけにはなったが、実現まではもう一歩というところである――の形成の一助にもなるはずである。

2、企画の実施体制について

@実施メンバーについて
[…]
A協力機関や協力者について:企画実施の上で連携を行う組織や関係者があればお書きください。
氏名・組織名等/連携や協力の内容について
被災地障がい者支援センターふくしま/実地・実態調査における協力・連携
佐藤 謙(NPOユニ*理事長)*筋ジストロフィー者等への介助者派遣等/立命館卒 京都における実状についての情報を得、意見交換、今後について協議
増田英明(日本ALS協会近畿ブロック幹事) 京都における実状についての情報を得、意見交換、今後について協議

■企画の実施計画(スケジュール)

※取り組みの実施内容と時期予定について簡潔に記入してください。

経費支出予定額
※左記の研究活動に伴う経費支出予
定額をご記入ください。(例えば、宿泊費○○○円、旅費○○○円など)

○記したように、活動は継続的に行われる。11月から3月にかけて、福島・千葉・東京他で、京都・滋賀他についてはほぼ毎週、調査を行う。出来る限り経費をかけずに行う。関東に居住する大学院生もいるので、その人たちについてはその分安く抑えることができる。規定通りこれらの活動に謝金は支払わない。事態は刻々と変わり、現地の人たちができる調査にあえて私たちが赴くことはない。その部分は京都を拠点とし適宜連絡をとりあう。それでも、京都・福島市往復が[…]約4万円で、延20人・回――1回あたり2人ほどの派遣――は必要であり、それだけで80万円ほどになり、それに宿泊費が加わる(地域の組織に無料で泊まらせていただく場合もある)。既に幾度も訪問しているが、助成が得られればさっそくその予算を使わせていただく。年度末まで継続する(その後も継続する)。
より重要と考えているのが、京都・滋賀他、近畿・関西における継続的な調査である。1回あたりの交通費は場合により異なるが、京都市外で相当遠いところにも頻繁にうかがう。自家用車を使うことが多くなるはずだが、その費用は基本的には自己負担となろう。この訪問も以前より行っており、そうして作ってきた関係ゆえに今後の調査・話合いも可能になる。年度末まで継続する(その後も継続する)。
 さらに、障害者・病者とその関係者が集って、語り、議論する機会を作る。そのための交通費(福祉タクシー等を利用)等も必要になる。(いずれにせよ旅費(宿泊費含む)・交通費は(下記のゲストの招聘に関わる経費も含め)*万円を越える。足りない部分は、基本的には、自己負担になる。予想される額の約半額を申請する。10月の催の記録を一定整理し、 情報公開してからになるので、初回は年末となる。月1度ほどを予定している。

○そうした集いに医療機器のメーカー、報道機関、NPOの関係者等を招聘し講演、情報提供をしていただく。その場で意見交換を行い、具体的な改善策を検討する。人やその人の住む場所により異なるが、通常の講師謝礼より低く抑えさせてもらう。*万円を計上する。

○場所はできる限り学内施設を用い、経費を掛けないようにするが、交通の便がよくないため、市内の施設を用いることがある。

○実践的なマニュアル・提言を含む報告書を作成する。冊子の作成とHP掲載の両方を行う。通常私たちが刊行している生存学研究センター報告(通常1000部印刷)にかけている経費は70万円程だが、費用をかけない形式・体裁のものとし、*万円を計上する。できるだけ急ぎたいが刊行は年度末になるだろう。ただし、HP上での報告・情報掲載は随時行い、更新していく。

* 実際にかかる費用をこの助成でまかなうことは無理であることは承知している。震災関連では別に助成を申請しており、獲得しているものもある(ただし主題的には今回のものと直接に重ならない)。本来ならグローバルCOE「生存学」創成拠点の予算が使われるべきであり、これまで関連情報の(HPを主な媒体とする)提供等に関していくらかは支出してきたが、国のCOE予算全体の減額のため、本COEの予算全体がすでにほぼ枯渇しており、使用することはできない。こうした状況のもとで、これまでも志をもつ各々の自己負担で研究活動、ボランティアとしての支援、また私たちが協力し、また協力も得てきた民間団体への寄付活動をしてきたし、これからも活動していく(HP「生存学」→「東日本大震災関連」を参照のこと)。いくらかでもその活動が容易になるように、「可能な範囲での」助成を是非お願いしたい


UP:201110 REV:
災害と障害者・病者:東日本大震災  ◇東日本大震災:本拠点の活動関連 
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