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『自立支援の実践知――阪神・淡路大震災と共同・市民社会』

似田貝 香門 編 20080208 東信堂,342p.


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似田貝 香門 編 編 20080208 『自立支援の実践知――阪神・淡路大震災と共同・市民社会』,東信堂,342p. ISBN-10:4887137974 ISBN-13:9784887137974 3800 [amazon][kinokuniya]s ※ v05. d10.

■内容

(「BOOK」データベースより)
被災者は「語り」支援者はひたすら「聴く」。そして被災者の苦しみと「居合わせた」支援者は自らも受難=受動の様相におかれ、被災者と「共同して」否応なしに自立支援に立ち上がっていく。震災以来12年間に及ぶ支援経験を持つ諸団体に関し、その活動に密着して調査を行ってきた研究者たちが、支援者らの体験に裏づけられた実践知(方法的自覚と思想的発展)を総括した本書は、我が国のボランティア活動発展に向け新たな地平を切り拓いた共同労作である。

(「MARC」データベースより)
阪神・淡路大震災以来12年間に及ぶ支援経験を持つ諸団体に関し、その活動に密着して調査を行ってきた研究者たちが、支援者らの体験に裏づけられた実践知(方法的自覚と思想的発展)を総括する。

■目次

序(はじめに) (@)
用語解説(各章別) (I@I)

1章 市民の複数性―現代の“生”をめぐる“主体性”と“公共性”
                  …………似田貝香門 (3)11 阪神・淡路大震災の思想的インパクトとそこから生成されたテーマ (3)
 1)生成されたテーマ――<受動性>から出発する≪新しい主体性論の構築≫ (8)
  (1)<身体性>という主体 (8) 
  (2)パテーマ(pathos: passion)論からの<主体>像の再検討 (8)
  (3)<可能性vulnerabilite>―ー「弱い存在」と受動的主体 (9)
  (4)<主体の位相の転位> (11)
2 ボランタリズムと<公共性> (13)
 1)ボランティアと「市民社会」の公準構築との関係 (13)
 2)主体の<生>の複数性――生は、「公共性」のいかような位相にかかわるか。(14)
  (1)住民運動論的<主体性>―<公共性> (14)
  (2)「弱さの存在」からの<主体性>―<公共性> (15)
  (3)<弱い主体>にとっての<生>の複数性をめぐる<公共性>と<生の共約可能な     commensurable 要素>の<公共性>の相互浸透に向けて (17)
3 残された問題 (20)
注 (22)
参考文献 (28)

2章 再び『共同行為』へ―阪神・淡路大震災の調査から………………似田貝香門 (31)
1 フィールドからフィールドへ (31)
 1)<調査者―被調査者関係> (31)
 2)再び<調査者―被調査者関係>の問い (33)
2 可能性 (34)
 1)<絶望>から<希望>へ (34)
 2)<未検証の可能性>または<未検証の行為> (35)
3 挑戦的現実 challenging reality (36)
 1)<リフレックス・ソシオロジー> (36)
 2)ボランティアと「市民社会」のリストラクチャリング (37)
4 ボランティアの諸相と時系列的展開 (39)
注 (43)
参考文献 (44)
3章 多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会
  ――被災地NGO恊働センターの活動展開から…………西山 志保 (47)
1 はじめに (47)
2 緊急救援NGOとしてのスタート (49)
3 なんでもありや!――既存の価値観の崩壊と多様なボランティア (51)
4 衝撃的な孤独死の発生――復興格差の深刻化 (54)
5 日常時におけるボランティア活動のゆらぎ (58)
6 「孤独な生」という現実 (60)
7 非営利事業への展開――ボランティア活動から有償事業へ (62)
8 「支えあい」が生み出す関係性 (65)
9 被災地発「もう一つの働き方」――コミュニティ・ビジネス (69)
10 おわりに――新しい市民社会を切りひらく (71)
注 (73)
参考文献 (74)

4章 被災者の固有性の尊重とボランティアの“問い直し”
  ――阪神高齢者・障害者支援ネットワークの持続 三井 さよ (77)
1 はじめに (77)
2 仮説住宅へ――活動の開始と背景 (80)
3 最初の限界/発見――開けられない<扉>/開けない<扉> (82)
4 「その人らしさがあってはじめてやる」――「生」の固有性 (86)
5 「生活している人間がいる」「人間が生活している」――生活の発見 (92)
6 「場づくりが人づくりになる」――<強さ>の生成 (96)
7 被災者の「自立」/ボランティアの「自立」 (101)
8 「取り残されていく」人々――<被害の重層化> (104)
9 「つなげていく」――固有な転換点への着目 (108)
10 「最後まで生きる」――支援ネットの持続戦略 (112)
11 「人」の発見/ボランティアの役割 (115)
12 おわりに (119)
注 (123)
参考文献 (128)

5章 職能ボランティアの成立と可能性
  ――ながた支援ネットワーク………………似田貝香門 (131)
1 専門職がボランティア化する意義 (131)
 1)はじめに (131)
 2)専門職のボランティア活動の経過 (135)
  (1)活動経過 (135)
  (2)震災直後の「法氏システム」としての福祉行政業務の停止
    ――緊急時の福祉福祉活動の状態 (136)
  (3)施設専門職のボランティア化
    ――緊急時の福祉領域のニーズの発見と職能ボランティアによる
      福祉行政の強行な再構築 (139)
  (4)職能ボランティアの脱施設――フィールド創設と支援活動 (140)
2 職能ボランティアの専門性の実践 (141)
 !)実践praxisの空間としてのフィールド――<隙間>の創出 (141)
 2)被災者との応答に対する<約束・関与=責任engagement>
―専門職の自省性reflexivity (143)
 3)被災者との応答に対する<責任看取(アンガジュマン)> (144)
注 (151)
参考文献 (154)

6章 “居住の論理”に基づくコミュニティ形成
  ――野田北部地区の復興まちづくり………………清水 亮 (157)
1 問題意識――震災復興まちづくりとコミュニティ形成 (157)
2 復興まちづくりの初期条件
  ――<居住の論理>に基づく震災以前のまちづくり (160)
3 「復興」の初動体制と<居住の論理>の確認 (163)
4 <居住の論理>の優先――土地区画整理事業区域内のまちづくり (166)
5 地区の空間的<一体化>と
  コミュニティ規範による<所有の論理>の乗り換え (170)
 (1)地区計画によるまちなみ形成 (170)
 (2)私的所有のコントロールとしての<専有=割当てAppropriation>
―現代版<コモンズ>の形成 (172)
 (3)社会規範の形成とコミュニティの成立 (175)
6 復興イベントによる精神的<一体化>――「コムスティ」構想 (177)
7 事業型まちづくりから持続型まちづくりへの転換
  ――復興事業後のまちづくり展開 (179)
8 インナーシティ問題と住宅再建の接合
  ――「復興」のまちづくり戦略 (182)
9 現代におけるコミュニティとまちづくりの展開可能性 (185)
 (1)「総合力」のまちづくりと協議会 (185)
 (2)<居住の論理>に基づくコミュニティとまちづくり (190)
注 (193)
参考文献 (203)

補論 まちづくりコンサルタントの活動とその職能 (197)
注 (202)
参考文献 (203)

7章 自立支援のリアリティ―被災地障害者センターの実践から
――被災地障害者センターの実践から………………佐藤 恵 (205)
1 はじめに (205)
2 被災障害者のヴァルネラビリティの先鋭化――被災障害者の多様性 (207)
3 被災障害者のヴァルネラビリティから能動性への転回 (214)
4 自立と支援 (218)
5 「分からなさ」を「聴く」ことと決定の留保――「分からなさへの定位」 (222)
6 オルターナティブな自立観――自己責任論を超えて (231)
7 問題解決に向けた「隙間の発見」 (231)
8 三者関係としての支援へ――異質な支援者間の補完性・相互依存性 (235)
9 おわりに (240)
注 (242)
参考文献 (245)

8章 <ひとりの人として>を目指す―支援の実践知………………似田貝 香門 (249)
1 神戸の被災者支援の総括の原点 (249)
2 草地賢一さん、黒田裕子さん、大賀重太郎さん、村井雅清さんとの出会い (249)
3 支援活動の基本思想;「自分らしく生きる」――<生の固有性>へのこだわり (252)
4 新しいボランティア行為 (256)
5 黒田裕子の実践的言葉 (259)
 1)「瞬間を大事にする」・「瞬間旬かんんの必要性に目を向ける」 (259)
 2) 「聴く姿勢」 (261)
  (1)媒介の論理 (263)
  (2)約束・関与=責任engagement (254)
  (3)<出会うrencontre、rencounter> (266)
  (4)「変わり合い」(相互の自立)と共同の可能性(<共同出現>) (266)
  (5)<共に―あるetre-avec>、<共同出現>の実例 (268)
 3)「つなげていく」、「つなぐ」――主体の変様 (269)
  (1)主体の変様 (271)
6 大賀重太郎さんの実践的な言葉 (272)
 1)「隙間の混在」 (272)
 2)「セルフ・マネージメント」
    (自己決定から「セルフ・マネージメント」へ) (277)
 3)「関係をきらない」、「切るんやないよ」 (280)
 4)「アメーバのごとく多様な戦略」 (281)
7 村井雅清さんの実践的な言葉 (282)
 1)「わずらわしさ」 (282)
 2)「何でもありや!」 (284)
 3)「十人十色」 (285)
 4)「バラバラで、(なら)一緒!」 (290)
 5)「耐える」 (291)
8 神田裕さんの「他者との交わり」(「たかとり救援基地」、カソリックたかとり教会  司祭)――支援基地と根拠地としての空間 (294)
9 和田耕一さんの「ふれあい」と「モラル」(長田区「たかとり救援基地」) (295)
10 おわりに――「市民社会」 ;公共性・場所性・多様性 (299)
 1)「存在」――「現れ」の公共空間(ミクロ・マクロのパースペクティブとしての          「市民社会」)
 2)社会の仕組み作り――市民活動の場としての「市民社会」 (302)
 3)新しい支援の行為の特異性singularite――まとめに代えて (304)
  (1)<近傍からの接近>、<近傍に寄る> (304)
  (2)<『語る』−『聴く』>という相互的関係 (306)
  (3)<実践知>とは何か (307)
  (4)支援活動の特異性singularite (310)
  (5)今後の課題 (312)

注 (313)
あとがき (325)
索引 (333)
執筆者紹介 (341)

■引用

 「阪神淡路大震災におけるボランティア活動の日本社会に与えた思想的インパクト、およびその社会学的研究の主題の1つは、〈救済→生活支援→復旧→復興→社会再生〉の諸段階におけるボランティア活動中、特にボランティアが一挙に不在となった〈復旧→復興〉段階こそ、「ボランティア活動とはなんであるのか」、という真価が問われる」(「市民の複数性」p13)

 「たとえば、「ちびくろ救援ぐるーぷ」の中には、茶髪の元暴走族が、交通機関が麻痺するなか、住所・名前が記された紙と地図を持って、障害者の安否確認を行ったおかげで、多くの障害者の避難先がかくにんされた、という有名な話がある。安否確認といっても、住所地にいる障害者はほとんどいなかった。しかし見事に避難所や親せき宅、施設などに移動していた障害者を探し出した。」(「多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会」p53)

 「ライフ・ラインが復旧し、被災者が避難所から仮設住宅へと移動するようになった避難救援期になると、同じ避難所内でも、自力で生活再建できる人とできない人に分かれていった。次第に行政の持つ縦割り秩序や、日常時の価値やルールが回復するにつれ、能力主義や効率主義という価値観が再び優先的になっていったのである。またボランティア活動も非常時における緊急支援から、日常時における生活再建支援へと移行することが求められた。そこで被災者の救出、緊急医療、物質供給といった非日常時を対象とした救援ボランティアの多くは、3月末までには終了し、撤退に向かった。…」(「多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会」 p54)

 「仮設住宅には問題が山積し、避難所からの移動はなかなか進まなかった。…多くの仮設住宅は、被災地から離れた、商店や病院もない不便な遠隔地に建設されるという、場所上の問題を抱えていた。加えて、隣の物音が聞こえ、すきま風や雨がもれ、風呂や便所も高齢者や障害者向けの仕様になっていないなど、住宅この構造上の問題があった。そのため、被災者の痴呆症やノイローゼが生じ、精神病や入院する被災者が後を絶たなかった、という。」(「多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会」 p55)

 「県は…自らの資力では住宅を確保できない高齢者や障害者といった弱者を優先的に入居させる10割有線方式を強く主張した。……
 しかしその結果として、仮設住宅には要援護者の割合の非常に高い、いわゆる「超高齢社会の縮図」が出現した。」(「多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会」 p56)

 「孤独死は、圧倒的に中高年層が多く、とりわけ老人福祉法の対象にならない40−65歳までの働き盛りの男性が中心になっている。しかも彼らの多くは、慢性の疾患を持病としており、無職もしくは低所得者である。つまり頼りにする家族も友人もいない、持病をもち、働きたくても働けず、交通費がかかるために病院にも行けない、さらに国からの社会保障も期待できないという貧困者であった。彼らは仮設住宅で他者とのかかわりがとだえるだけでなく、それにより生きる希望や自分自身の健康への関心を失い、アルコール依存や病気をさらに悪化させる、という悪循環に陥るケースが非常に多い。つまり、もともと何らかのハンディをもった被災者が医療機関もなく職場からも遠い不便な仮設住宅で暮らすようになった結果、社会から構造的に生み出された結果、孤独死が発生したといえる。」 (「多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会」 p57)

 「避難所から仮設住宅、そして仮設住宅から公営住宅へと、住む場所を何度も移動させられることはこれまで築き上げたコミュニティを解体し、再び新しいコミュニティをつくりあげるという重い負担を被災者に課すものであった。」(「多様なボランティアが切りひらく新たな市民社会」 p61)

 「たとえば、黒田さんはアルコール依存症の56歳の男性とのかかわりについて述べている。その男性は肝臓に支障を来しており、アルコールを摂取しつづけることは明らかに生命にかかわることだった。そこで黒田さんは繰り返し、その男性に対して「飲まないでよ」と訴えていたという。だが、何度そういっても、男性は飲酒を辞めようとはしなかった。黒田さんはなぜ飲酒をやめてくれないのかと悩んでいたという。………そうしたなかで、黒田さんは、男性に対する働きかけを大きく変えた。具体的にはまず、「飲まないでよ」というのをやめた。その上で「お酒おいしいの」と聞いたという。そうすると相手は「そりゃおいしいわいな」と答えた。これがその男性との会話の糸口になった。そして、「お酒飲みながら何かおつまみはされてるの」と聞き、「おつまみはめんどうくさくてせえへん」とこたえられると、「でも肝臓と胃袋が欲しがってるんとちゃうかな、一緒に作ろうか」と誘ったという。…こうしたことから黒田さんとこの男性のかかわりは始まった。」(被災者の固有性の尊重のボランティアとの〈問い直し〉p91)

 「住民のなかには高齢者や障害者であるために外出も困難であり、他の住民と結びついていくことが難しい人もいる。そうした人びとに対して「ふれあい喫茶」などの「場」を提供することは、ボランティアにも可能である。ボランティアが直接には「支え合い励まし合い助け合う」人になれない場合であっても、せめてそうした人に出会える機会を提供することは可能なのである。」(被災者の固有性の尊重のボランティアとの〈問い直し〉p100)

 「通常、被害は、たとえば被災した時点こそが最も重く、その後は徐々に改善されていくものだと思われがちである。だが、阪神・淡路大震災での経験は、特に「取り残されていく」人々にとっては、被害というものが時間の経過に伴って進行していくものでもあることを示している。」(被災者の固有性の尊重のボランティアとの〈問い直し〉p105)

 「若くて健康で経済的に豊かな人々であれば、同じ恒久住宅に知り合いがいなくても、遠方にいる知り合いに会いに行けばいい。だが、高齢者、障害者、経済的に困難な状況にある人々にとっては、遠方への移動は大きな負担であり、同じ恒久住宅に知り合いがいなければ、家に一人で閉じこもるしかなくなるのである。そのため、既に恒久住宅に当選し移転した高齢者のなかには「仮設に帰りたい」と涙声で電話してくる人もおり、また「仮設で死にたい。知らない場所に二度と行きたくない」と述べる仮設住民もいたという。(被災者の固有性の尊重のボランティアとの〈問い直し〉p107)

■書評・紹介

■言及


*作成:松村 菜摘子 
UP:20081126 REV:20110508
ボランティア  ◇災害と障害者・病者  ◇災害と障害者・病者:書籍  ◇自立・自立生活(運動)independent living movement  ◇似田貝 香門  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
 
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