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[講義]ジン・カルチャーとわたし――出会い・関わりとその周辺にあるもの

[Lecture] Zine Culture and Me: My Encounter and Engagement with That, and What Is Around That
June 26, 2018 (Tuesday) 10:40-12:10 *19→26に変更
滋賀県立大学人間文化学部2018年度前期科目「社会運動論」(担当:大野光明)第12回
As Part of the Class "Social Movement Theory" (Lecturer in Charge: ONO Mitsuaki)
in The University of Shiga Prefecture: School of Human Cultures
Guest Lecturer:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi

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last update: 20180703

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kiyoshi murakami(@travelinswallow)


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■参考資料(Reference Materials)

20180626「[講義]ジン・カルチャーとわたし」参考資料
[参考資料(個人的概念図)]*クリックで拡大
20180626「[講義]ジン・カルチャーとわたし」配布ジン
[当日配布したジン(A7; 8p)]
*クリックで拡大/PDFデータは→こちら

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■講義内容(Contents of Lecture)

1 私なりのFeminism+DIYカルチャーとの出会い[My encounter with feminism and DIY culture]

◇Electroclash(2000年前後)
‐ New Wave/Post-punk revival with feminism
Chicks on Speed / Le Tigre / Peaches / Robots in Disguise etc.
 *Chicks on Speed:DIY精神。諧謔的なユーモアによるメディア攪乱。同名レーベルで女性/クィア・アーティストのプロデュース。【映像】
 *Peaches:フェミニズムのワイルド・サイド
 *Le Tigre:から遡ってBikini Kill→Riot Grrrl
◇2002年、ベルリン滞在。インディペンデントなアーティストたちのコミュニティとそこでの相互扶助を体感。
◇クラブシーンのDIY文化を再発見[Rediscovering DIY culture of club music scene]
‐ 1990年代末〜2000年代初頭の東京のディープ・ハウス・シーン
‐ 2004年〜、関西のアンダーグラウンド・クラブシーン。
‐ 2000年代後半〜、海外の独立系ネットラジオへの接近。
◇独立系ラジオ・インディレーベル・ローカル音楽シーン・Zineシーン・社会運動の連動(LA・ロンドン・ベルリンなど)――DIYカルチャーの広さ・深さ・共時性

2 Riot Grrrl/Third-wave feminism


――“Girls to the Front”
――“Revolution Girl Style Now!”
――“Cry in Public”

◇Kathleen Hanna(Bikini Kill)【映像(Bikini Kill "Rebel Girl")】
◇Hanna, Kathleen, 1991, "The Riot Grrrl Manifesto", Bikini Kill 2 (Girl Power): 44.=2016,村上潔訳「ライオット・ガール・マニフェスト」 【映像】+【和訳読み上げ】
◇Part of the resources of Riot Grrrl movement is preserved in some university libraries.
〈The Riot Grrrl Collection at the Fales Library〉(New York University)
‐ The result of Riot Grrrl movement has come to be recognized academically and evaluated historically.
‐ The achievements of Riot Grrrl movement have significant impact on the present zine scene.
◇「ライオット・ガールはジャンルではない。ましてや歴史上のジャンルでもない。そうではなく、女たちがお互いに感情を喚起するために用いてきた一連の戦術だ。」(Julia Downes)●→Link
◇「私がライオット・ガール運動とビキニ・キルでの活動で学んだことが一つあるとすればそれは、フェミニストの意見の相違は弱さではなく強さだということ。」(Tobi Vail)●→Link
◇第3波フェミニズム[Third-wave feminism]
◇Riot Grrrlを「乗り越える」[Beyond the Riot Grrrl]
‐ ライオット・ガール・シーンへの批判=人種/階級の限定性[Criticism of Riot Grrrl scene = Race/Class restrictions]
‐ (ライオット・ガールに影響を受けた)近年の若い有色人種/労働者階級の女性/クィアによるジン(ジンフェスト/DIYフェスト)[Recent zines published by young WOC(Women of color)/working class women/queer]
◇継承
Girls Rock Camp
〈Girls Rock Tokyo〉
〈Grrrl Zines A-Go-Go〉
Princess Nokia 【映像】
◇日本語の基本文献
‐ 大垣有香 2005 『riot grrrlというムーブメント――「自分らしさ」のポリティックス』(遊動社パンフレット 3)*2000年12月に執筆した卒業論文をジンとして刊行したもの(現在入手できるのは新装版)
‐ Piepmeier, Alison, 2009, Girl Zines: Making Media, Doing Feminism, New York: New York University Press.=2011,野中モモ訳『ガール・ジン――「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』太田出版

3 Zines/Zine Culture

◇有志による非営利・少部数の自主制作出版物
◇「ジン=パーソナル・ポリティカル・パワフル」(ZINES @fanzines)●→Link
◇ウーマンリブ運動[Women's liberation movement](第2波フェミニズム[Second-wave feminism])のスローガン:「個人的なことは政治的なこと」[A slogan: "The personal is political"]
‐ 「Zineを誰かと交換することは、あなたの魂のカケラをその人たちに見せているようなこと。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「Zineを作ることは明らかに政治的な活動だ」(zine nation)●→Link
‐ 「政治的でないジンなど存在しない。政治的でないジンなど存在しない。政治的でないジンなど存在しない。」(POC Zine Project)●→Link
◇ジンのありかたを規定する主な要素
@主体性・自律性にもとづく活動であること
A「誰にでも」手に入る形態で流通すること
B開かれたメディア(創造空間)であること
C送り手=受け手が対等であること
D親密性を担保すること(*ABと抵触する場合もある)
E作るだけでなく、シェアし、フィードバックすること。(ワークショップ/リーディング/ディスカッション)
F非営利であること
Gアマチュア文化であること
◇「ジンはビジネスモデルをもたないし、もつべきではない。」/「ジンは正式な文筆業の仕事を得るための踏み石ではない。」(Holly Casio)●→Link
◇ファンジン[Fanzine](differentiated from マガジン[Magazine])
‐ 「ジンはマガジンの略語ではない。」(Holly Casio)●→Link
◇パンク[Punk]
‐ 「ジン[Zine]が他のあらゆる種類の自主出版メディアと異なるのは、その背後にアナーコパンクのポリティクスがあるからだ。」(Jenna Freedman)●→Link
◇DIY[Do It Yourself]:倫理/精神/カルチャー
◇アナキズム[Anarchism]
◇女性解放運動/フェミニズム
‐ 「なぜなら、フェミニズム(FEMINISM)とジン(ZINES)は、こんにちその外の世界が備えているものよりもはるかに優れたものだから。」(Jenna Freedman)●→Link
◇アンダーグラウンドカルチャー[Underground culture]
‐ Duncombe, Stephen, [1997] 2017, Notes from Underground: Zines and the Politics of Alternative Culture, 3rd Edition, Portland: Microcosm Publishing. ●→Link
◇カウンターカルチャー[Counterculture]/抵抗運動[Resistance]
‐ 「あなたの抵抗運動/〔差別への〕反撃の一環としてジンを使って。情報を広める、組織化する、考えを広める、〔他者と〕つながる、そして希望を与えるために。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「ジンは、世界中のファシズムと差別に対する闘いにおける武器であってきたし、あり続ける。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「ファシズムと闘う方法はたくさんあるが、ジン(ZINE)を作ってアイデアを拡散することは、そのひとつだ。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「バーナード・カレッジとコロンビア大学の学生たちのあいだでは、ジンが運動の効果的手段を示してきた。」(Columbia Libraries)●→Link
‐ [ジン]『批判的抵抗としてのジン・カルチャー――コミュニティ関与と学生の学びを構築する実践的ワークショップ』(Zine Pavilion|2018/06/23)●→Link *企画案内
‐ 《Panel Discussion: Sites of Resistance》(Brum Zine Fest 2018)“This panel discussion will focus on libraries, zines and archives as sites of creative resistance and dissent.”●→Link
◇マージナライズされた人々の抵抗のツール
‐ 「周縁化された人々のグループが抵抗する力を強化するために印刷物を活用していた歴史は、現在私たちがどこにいるのかを理解するのに重要な意味をもつ。」(Synchronise Witches)●→Link
‐ 「恐怖が高まり不確実な今の時勢において、ジンは強力なツールとなる。ジンは社会によって周縁に追いやられ、虐げられている人々に、声(発言権)を与えてくれる。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「《Dear Diary Zine Fest》A:マージナルな声を増幅させること、パーソナル・ジンを通して個々人の物語を語る行為がもつ癒しと変革の力をたたえること、を目標とする。変わり者、クィア、オンライン上にいない人、フェストに出られないシャイな人…たちのためのジンフェスト。」●→Link
‐ POC (People of Color) / WOC (Women of Color) / Queer / QTPOC
*文化領域における白人男性中心主義
*思考を脱植民地化[decolonize]する
‐ 「自主制作出版は、周縁化された声がきわめて白人中心の印刷文化とDIYシーンを打ち破ることを、いかに可能にするのか。」(Tender Hands Press)●→Link
‐ 「アメリカとイギリスにだけ焦点を当ててZineの世界やジン・カルチャーのことを書くのはやめて。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「盛況なジン・シーンは、世界中に存在する。メディアは白人の、欧米のジン・カルチャーにしか注目しないけれど、それよりずっとたくさんあるんだ。」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「いちばん最初のジンは1920年代のSFのジンだと言うことも、還元的でレイシスト的だ。それが何? アイダ・B・ウェルズ(1862-1931/アメリカの黒人女性解放運動家)の自主刊行物は最高じゃないっていうの?」/「ジンとは何であるか/どうありうるかについてのあなたの定義を脱植民地化してみたらどう?」(POC Zine Project)●→Link
《Decolonise Fest》“We are the DIY Diaspora Punx collective and we organise Decolonise Fest in London”
◇「持たざる者」の表現/連帯手段
‐ 「万国のジンスタよ、団結せよ!」(ZINES @fanzines)●→Link
‐ 「ジンの核心は、できる限り安く作ること、そしてできる限り安く流通させることだ。」/「ジンのきわめて根本的な理念は、自分のアイデアをシェアすること、すばやく何かを創り出すこと、そしてとにかく安価であること、だ。」(Holly Casio)●→Link
◇アマチュアリズム[Amateurism]
‐ 「Zineは誰でも作れるし、シェアすることができる。ライターとかアーティストである必要なんかない。ただ作ればいいだけ。」(LB Public Library)●→Link
‐ 「これ〔私のZineワークショップ〕は、絵や文章をうまく描(書)くための企画じゃないよ。Zineは自己表現のためのものだから。誰だって作れるものなんだよ。」(Gina Murrell)●→Link
◇反消費主義/反資本主義
‐ シェア[Share]・トレード[Trade]・スワップ[Swap]・ドネート[donate]>売り買い
‐ 「ジン・スワップ(交換)という技法は、ジン・カルチャーの主要な慣行だ。ジンスタは自身のジンを他のジンスタとオープンに無料で交換する。あなたはそれを採算の合わない行為として捉えるのではなく、あなたのアイデアを交換していると捉えればよい。それはジンの真の核心だ。」(Holly Casio)●→Link
‐ 「ジン[Zine]は、事実上ただの〔=非営利でやりとりされる〕、自主制作出版の一形態です。それはつまり、邪悪な資本主義的思考に邪魔されることなくアートと革命に意識を集中することができる、ということです。」(Shirley-Anne McMillan)●→Link
‐ 「もしあなたがビジネスを始めたいのなら、それはすてきなことだけど、ジンをその反資本主義的ルーツから引き剥がすことは、ジンを本来ある姿でなくするようなものだ。」(Northwest Zinefest)●→Link
‐ 「ブランドが「ジン〔と称するもの〕」を発行しだしたら、私たちはそれにブルシットと言う。」(ZINES @FANZINES)●→Link
‐ 「ジン・カルチャーや「zine」という言葉は、それを使って信用度や利益を得ようとするセレブや企業によって盗用されようとしている。だから私たちは、彼らに闘いを挑もう!」(ZINES @FANZINES)●→Link
‐ 「Zineは企業の雑誌に対する対抗手段であって、その代替品ではない。」(zine nation)●→Link
‐ 「多くのウェブサイト・新聞が光沢仕上げの高価なカラー雑誌を「zines(ジン)」と呼んでいるのを見かける。それ、ちがうから。それらはマガジン(雑誌)であって、それでいいから。」(ZINES @FANZINES)●→Link
‐ 「《Dear Diary Zine Fest》@:高価なアート・ジンの多さと粗末な切り貼りでできたジンの少なさに失望し、ジンフェストの現状にうんざりしたイースト・ベイのジンスタ2人が新たに立ち上げたジンフェスト。」●→Link
‐ 「Zineは商業的になる運命にはない(Gina Murrell)」●→Link
‐ [ジン]『ラディカルになった人への反資本主義DIY療法』(Decolonise Fest)●→Link
◇反権威主義[Anti-authoritarianism]
‐ 「特別な存在になるな。ジンスタであることとは、あなたを他の誰よりクールにすることではない。」(POC Zine Project)●→Link
*ジンスタ:“Zinester”(not “Zinestar”)――スター/カリスマ/ヒエラルキーを作らない
‐ 「すてきなジンを作って世間に公表するために、ニューヨークやロサンゼルスに住まなくたっていいんだよ。それがメディアの注目を浴びるかどうかなんて、誰も気にしないよ。」(POC Zine Project)●→Link
‐ 「どんな黒人・POCのジン制作者がメディアの注目を浴びるのかに注意を払って。そのほとんどはたいてい、大学教育を受けた人か、すでに「影響を与える人」であるから。」(POC Zine Project)●→Link
‐ 「階級的な、また教育上の特権をもたないBIPOCのジンだって、〔その特権をもつ人のものと〕同じように価値あるものだ。生きた知識も〔学問的な知識と〕同じだけ価値がある。そういう問題意識を持ち続けて。」(POC Zine Project)●→Link
‐ 「「私はジンを作った」というのは、「私は自分の創造行為に許可や権限を授けてくれる誰かを待ったりしない」ということ。」(POC Zine Project)●→Link
‐ 「学校はジン・カルチャーへの主要な入り口/導入部でありうる。でもあなた自身のジン・カルチャーとのつながりは、アカデミアの外部で発展させなさい。」/「アカデミアはジンを保存し称賛するのと同時に、多くの場合、ジンの歴史の体系化において反黒人主義・白人至上主義を永続させる。」(POC Zine Project)●→Link
‐ 「私たちは「ジン・アワード」を支持しない。まずジンを競争的な言葉にはめ込むことは、ジンの精神の対極にある。」(Zine Nation)●→Link
‐ 「私たちは「ジン・アワード(ジンを表彰する)」という発想を好きになれない。ジンを競争的な意味の言葉にはめ込むこと、またそれに参加するための〔エントリーの〕代金を請求することは、ジンの精神と対極にあるから。」(Zine Nation)●→Link
‐ 「ある個人や組織が自らを「ジン[ZINE]・コミュニティ」全体の代表だと主張する、もしくは全体を代表して話をしたりするとき、私たちはそれに疑い深くあります。」(Zine Nation)●→Link
◇社会正義[Social Justice]
‐ 「ジンは、社会正義の理念/理想に基づき社会変革を追求する実践でもある」(Adela C. Licona)●→Link
‐ 《Action For Equality: poster & zine making workshop》(2018/06/14|Partisan Collective)“we're holding a drop-in workshop where we invite you to produce posters/zines based on your experiences with sexism.”●→Link
◇ライブラリー[Zine Library]
〈Salford Zine Library〉
〈UK and Ireland Zine Librarians〉“Sharing resources, information, and support with anyone in UK and Ireland working with zine collections.”
《Zine Librarians (un)Conferences》“The Zine Librarians (Un)Conference, a.k.a. ZLuC, is an inspirational, informative, and fun gathering of people who care deeply about zines, their preservation, and their ability to change lives for the better.”
《Zine Pavilion》“The Zine Pavilion is a space on the exhibit floor at ALA Annual to display zines, meet zine librarians, and talk about how zines can fit in your library.”
‐ 「ジン[Zine]は、通常受け入れてもらえないようなアイデアを人々が探求し、表現することを可能にする。ジン・ライブラリーは、人々がこうしたジンにアクセスするための、また他ではできないイベント/ワークショップのための、すばらしい機会を提供する。」(mel)●→Link
‐ 「2017年7月の〈テート・ブリテン〉・〈ビショップスゲート・インスティテュート〉によるZineに関するワークショップ」●→Link
◇アクセシビリティ[Accessibility]
‐ 「アクセシビリティなくして、図書館やジン[Zine]のラディカルな可能性はない。」(Glasgow Zine Library)●→Link
‐ 「[連載]都市空間と自律的文化へのアプローチ――マンチェスター・ジン・シーン・レポート(全4回)」[…]の第4回で言及した、ソーシャル・スペース〈パルチザン〉@PartisanCollect のアクセシビリティに関する取り組みですが、着実に進展しています。」●→Link
‐ 「POC/クィア/ノンバイナリー/トランスのジンスタたちにテーブル確保の資金を提供する「ペイ・イット・フォワード」の提案。」/「障害をもったジンスタ、を追加するよう修正します。もしそれ以外に、補助金を受けたテーブルを使えば減らせるであろうテーブル確保の障壁があると感じたら、私たちに知らせてください。」(「【訳】〈Northwest Zinefest(@nwzinefest)〉による2018年フェスト開催に先立つ「ペイ・イット・フォワード」実施の提案」)●→Link
‐ ジンフェストのケータリング:ヴィーガンフード[Catering to Zine Fest: Vegan food]
‐ 会場:車いす[Wheelchair]/ジェンダー・ニュートラル・トイレ[Gender-neutral toilet]
◇セーファー・スペース・ポリシー[Safer Space Policy]
‐ 「《NIJO Zine² Fest》は、多様な属性・背景をもった人々の参加を歓迎します。私たちは、性差別・人種差別・障害者差別・ホモフォビア(同性愛嫌悪)・トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)をはじめとする、あらゆる差別ならびにハラスメント行為を容認しません。もしそうした被害にあったり、何らかの点で居心地の悪い思いをされた場合は、会場内の主催者メンバーにお知らせください。」(NIJO Zine² Fest - Safer Space Policy)●→Link
◇アジアでの展開
‐ Murakami, Kiyoshi, 2016, "Report: ASIAN ZINESTER ASYLUM (September 13, 2016 / Shinjuku, Tokyo)"●→Link
‐ ジャカルタ(インドネシア)のシーン:ライオット・ガールにインスパイアされたフェミニスト・ジン・コレクティブ――"Inspired by Riot Grrrl, these women in Jakarta use zines to talk about sex, dating and 'the f-word'"(CBC Arts|2017/10/20)●→Link 【映像】
‐ バンドン(インドネシア)のシーン:《Lady Fast #2》(by Kolektif Betina|2017/04/29-30)●→Link 【映像】

4 ジンと呼ばれることはないもの――だけれど

◇「「ジン(zine)」という言葉が使われるようになる以前も、人々は自分なりのやりかたで出版活動をしていたことを忘れないで。」(Synchronise Witches)●→Link
◇「抵抗・アート・交易、そして自己実現としてのインディー出版物という、私たちの先人の遺産から力と希望を引き出して。」(「【訳】ジンの歴史とその教育に関する〈POC Zine Project(@POCZineProject)〉のツイート(April 10, 2017)」)●→Link
◇女性運動史研究――運動資料(機関誌など)の再検討:新たなポテンシャルの発見
◇京都のリブ運動との出会いから
‐ 村上潔「[連載]京都の女性運動と「文化」(全3回)」*リンクは下記
◇無名の主婦たちが残した言葉
‐ 第76回西荻ブックマーク:「女子と作文・主婦と労働」(近代ナリコ・村上潔|2014/01/26|於:今野スタジオマーレ)●→Link
 *村上潔「対談にあたって」「「女子と作文×主婦と労働」文献案内」
‐ 村上潔「[トークショー]別府のローカル文学サークル誌を読み直す――初期『文礫』における女性作者の生活者意識を中心に」(2015/09/12|於:P3/BEP.lab)●→Link
◇地域における主婦の学習/サークル活動――の記録の掘り起こし
◇書かれなかった言葉を読む(キャッチする)
‐ 村上潔 20160424 「西山敦子「震える指先」に寄せて」●→Link
‐ 村上潔 20180514 「中村佑子「私たちはここにいる――現代の母なる場所[第2回]」を読んで」●→Link

5 まとめ

◇ジンの力――個人的(親密さ)・政治的(社会的抵抗)――を実感し、その功績・痕跡を歴史的に掘り起こし、位置づけ、現在に重ねていくことの大切さ。
◇DIYメディアは複合的で領域横断的。ローカルで/グローバルにゆるいつながりがある。その線をさらも増やしてより強いネットワークとして機能させていく。その流れにおいては、ローカルな/グローバルなジンのやりとりとコミュニティ形成が大きな役割をもつ。
◇多様性・クィア性を称揚すること。コンフリクトに意味を見出す。そして同時に連帯を諦めない。
◇自分(自尊心・アイデンティティ)を守る・立て直す/誰かを支える(支えあう)ためにジン(のネットワーク)を活用する。見えない、しかしきっといる誰かの見えない言葉を「読む」。
◇自分の創造力(クリエイティヴィティ)は何者にも誰にも譲り渡さない。でもできたものや考えたことは可能な限りシェアする。

――「人々があなたの創造性に押しつけるパラメーターを解体し、抵抗せよ。断絶を再建し、再定義せよ。」(POC Zine Project)●→Link
――「創造のために時間を割く選択をすることは、〔誰もがもつべき〕権利としてある。よって、ほかの誰かの創造的な追求をサポートすることは、革命的行為でありうる。」(POC Zine Project)●→Link
――「私たちは、アクティヴィズム・アート・物質性に横断して存在する資源が織りなすタペストリーの、ほんの1本の糸なんだ。〔だから〕みんな、それらすべてを活用して、自由になろうよ。」(POC Zine Project)●→Link

Ending Theme

◇Robots in Disguise "DIY" in the album Robots In Disguise (2001)

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■ゲスト講師によるレポート(Lecturers' Reports)

kiyoshi murakami(@travelinswallow)

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■受講者のコメント+質問・回答(Participants' Comments and Questions/Answers)

受講者のコメント(コメントシートから抜粋)

質問・回答(質問はコメントシートから抜粋)

◆質問-1:「“ジン”として出されたものが、オシャレで魅力のあるものとして企業が目をつけて営利目的に利用される場合、ジンを通して社会に訴えたかったことが広がりより大きなムーブメントや集団形成につながる営利目的でのジンの利用は、ジンをつくった本人にとって必ずしもマイナスなこととなるのか。」
【回答(村上)】営利目的のメディア(ファッション雑誌など)であっても、一つ/いくつかのジンのことを正しく――それが「ジン」として刊行されている事実と、その内容の趣旨や意義について――紹介しているのであれば、それ自体は問題ないですし、その記事を通じて当該のジンが広く知られるようになることは、(作者がそれを望んでいるのであれば)基本的にはよいことだと思います(こちら ●→Link の第4段落を参照)。これは「利用」ではありません(ジャーナリズムがそれなりの仕事をしている、ということです)。「利用」というのは、たとえば、オシャレな装丁のジンのカラー写真(だけ)を誌面に並べて、「いま、ジンがクール!」のような特集を組み、ジンに少し興味のある読者にその号を買わせることです。これは明らかに、そこで取り上げたジンを自誌の売り上げのために利用しています。そこで掲載されたジンは、たんなるイメージとして消費される――さらに、その掲載雑誌がクールな印象を獲得することに(無償で)貢献させられる――かたちで利用されています。それを当該のジンの作者個々人が一様に「マイナス」と受け取るかどうかはわかりませんが、これは明らかにジン・カルチャーに対する攻撃です。したがって(その事例の当事者であるかどうかを問わず)ジンスタ[zinester]たちはそうした「利用」の実態/動向を絶えず批判・検証していく必要があります。それとは別に、大手の出版社が「あなたのジンの内容はすばらしい。もっと社会に知られるべきだ。だから当社で書籍化して出版したい」という提案をあるジンの作者にしたような場合は、作者が自らそのメリット/デメリット(と自らのDIY精神)を勘案したうえで判断すればよいと思います。ただ、もしその話の乗る場合は、本として出版される際に、それがもとはジンであることと、どういう経緯のもとに書籍化され商業出版されるに至ったかを、何らかのかたちで明記/公表することが望ましいでしょう。そうでないと、最初から書籍化して商業出版することを目的に(大手出版社からデビューすることを狙って)ジンを作ったのではないかと誤解される可能性もありますし、その事例を見て「出版社に売り込むためのジンを作ろう」と思う人が出てきてしまうかもしれません。ジンと商業出版は異なる位相のメディアだということを、ジンスタは意識的にアピールしていく必要があります。
◆質問-2:「Zineという文化が日本ではあまり有名ではないので、Zineを作っても、その狭いコミュニティだけで完結してしまうのではないか?」
【回答(村上)】たしかに日本のジン・シーンは大きくありません。しかし、そのなかであっても、驚くほど多様なジンが存在します。たとえば毎年12月に開催されている《TOKYO ZINESTER GATHERING》に行ってみると、それを実感できるでしょう。また、これは重要なことですが、ジン・シーンは国家単位で隔離された、閉鎖的なものではありません(参照:●→Link)。アジアには強力なディストリビューションのネットワークがあり(参照:●→Link)、また日本各地のジン・シーンには、世界の様々な場所からやってきたジンスタやアーティスト・研究者たちが――多くの場合、一時的な滞在期間内という制約はありますが――関わっています(私がファシリテーターを務める《Morning Zine Circle》にも、これまで海外――ドイツやニュージーランド――から来た人が何人も参加しています。その際、私たちが運営するジン・ライブラリーに自身のジンを寄贈してくれた人もいます)。たとえば滋賀でジンのサークルを立ち上げたら、移住者や移民の人たちと交流するきっかけになるかもしれません。シーンの規模の大きさよりも、その内外での多様性や関係性のほうが重要だということを意識してもらえたら、と思います。[I hope you (everyone) recognize that the diversity and relationship within and between zine scenes are more important than the scale of each scene.]

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■関連情報(Related Information)

◇村上潔:《翻訳》
◇村上潔 2014 「[連載]京都の女性運動と「文化」(全3回)」Webマガジン『AMeeT』(一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団):[第1回(2014/05/05)][第2回(2014/07/08)][第3回(2014/09/26)]
◇村上潔 20160331 「解題:いまフェミニスト・ジンについて考えること」(特集3:フェミニスト・ジンの現在),立命館大学生存学研究センター編『生存学 Vol.9』生活書院,188-194.
◇西山敦子(DIRTY)×村上潔 20160331 「ジンを「わたしたち」のものとして生かすために――フェミニスト・ジンへのアプローチとその潜在的可能性」(特集3:フェミニスト・ジンの現在),立命館大学生存学研究センター編『生存学 Vol.9』生活書院,196-226.
◇神戸市外国語大学2016年度前期科目「ジェンダー論入門」“Grrrl/Queer/Feminist Zines”(担当:村上潔)
◇行司千絵(記者) 20161012 「自身の思いつづる「ZINE」――歴史的背景や意義探る:中京で14日」,『京都新聞』朝刊23〔地域〕面
 *村上潔への取材記事
◇2016/10/14−(毎月第2金曜日) 《Morning Zine Circle》
 10:00〜11:00 於:Cafe Phalam(カフェパラン)
◇2016/11/20 「[Lecture & Workshop]ZINEを通して学ぶこと・できること――思いをシェアする/運動を知る/文化をつくる」
 14:00〜17:00 於:ナゴヤ駅西 サンサロ*サロン
◇2017/01/29 「[Lecture & Workshop]アクティヴィズムとZINE――マージナルな立場からの発信とその共有」
 14:00〜16:00 於:京都YWCA
◇2017/02/04 「[Talk]ZINE・ラジオ・都市空間――DIY文化の「場」」
 20:15〜20:45 於:LOSER
◇神戸市外国語大学2017年度前期科目「ジェンダー論入門」“Women's Autonomous Cultural Scenes: Media, Space, and Activism[女性がつくる自律的文化シーン――メディア・空間・アクティヴィズム]”(担当:村上潔)
◇2017/04/13 「[Lecture]Zine制作ワークショップ運営にあたって注意すべきいくつかの事柄」
 13:10〜14:40 於:同志社大学今出川キャンパス クラーク記念館CL25教室
◇2017/04/23 「[Talk]ジンとフェミニズムの古くて新しい関係」
 17:00〜19:00 於:art space tetra
◇2017/05/20 [Zine Talk]「イギリスにおけるジン・フェスト/ジン・ライブラリー/ジン関連プロジェクトの概要」
 16:00〜16:30 於:三島市民生涯学習センター5F手芸室
◇行司千絵(記者) 20171021 「顔見える相手と思い交換――市民がつづる小冊子「ジン」 28日に中京で展示:海外でイベント盛ん、京でも」,『京都新聞』朝刊17〔暮らし〕面
 *村上潔と余座潤美さん(〈カフェパラン〉オーナー)への取材記事
◇2017/10/28 《NIJO Zine² Fest》
 12:00〜19:00 於:Cafe Phalam(カフェパラン)
◇余座潤美(Cafe Phalam オーナー)×村上潔(Morning Zine Circle ファシリテーター) 2017/10/28 「[Talk]食とZineとフェミニズムと――ここで何を伝えようとしているのか」
 17:00〜17:30 於:Cafe Phalam(カフェパラン) 【配布資料(PDF)】(作成:村上潔)
◇20180129− 「[連載]都市空間と自律的文化へのアプローチ――マンチェスター・ジン・シーン・レポート(全4回):関連情報」
◇Casio, Holly, 20170309, "The Economy of Zines", Cool Schmool.=20180620 村上潔訳「ジンの経済」
◇20180627 「今年の《Bradford Zine Fair》のテーマは「隠された歴史とアクティヴィズム」」
◇20180630 「《Brum Zine Fest》のパネルディスカッションのテーマは「抵抗の場」」
◇20180630 「クリエイティヴな自主制作出版やスモールプレスの世界の多様性[diversity]をはっきりと示す機会は必要」
◇20180703 「アカデミックな空間にジン・アーカイヴを置くことは抵抗の行為なのだろうか?」


*作成:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
UP: 20180602 REV: 20180612, 14, 16, 18, 21, 25, 26, 28, 0702, 03
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