HOME
>
生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築
>
全文掲載
>
【訳】ライオット・ガール・マニフェスト
[Translation] Hanna, Kathleen, 1991, "The Riot Grrrl Manifesto",
Bikini Kill
2 (Girl Power): 44.
訳[Translated by]:
村上 潔
(
MURAKAMI Kiyoshi
) 20160612
*改訂[Revision]:20180609/20201106
Tweet
last update: 20201106
ライオット・ガールであるのは……。
なぜなら。私たち女の子は、【私たちに】向けて語りかけてくれる、【私たちが】その世界に含まれていると感じる、そして自分たちなりに理解できる、そんな本・レコード・ファンジンを強く必要としているから。
なぜなら。私たちは、女の子たちがお互いの作品を見たり聞いたりすることを、もっと簡単にできるようにしたいから。それによって私たちは、戦略や批評・称賛をシェアすることができる。
なぜなら。私たちは、私たち独自の意味を創出するために、生産手段を接収(奪取)しなければならないから。
*“meanings”(意味)を“moanings”(うめき声/反対意見を表す声)としているテキスト(文字起こしされたもの)もあるが、ハンナ自身は読み上げで“meanings”と発音している。
なぜなら。私たちはいかにして現状に影響を与え、現状を反映し、永続させるのか、あるいはいかにして現状を【崩壊させる】のか、を理解しようとするならば、私たちの活動をガールフレンドたち・政治・現実生活と結びついたものとして見なすことが必要不可欠となるから。
なぜなら。私たちは、即席のマッチョな銃による革命幻想が、私たちに夢を叶えさせることなく、たんに夢見る状態のままでいさせるための実行不可能な嘘であることを知っているから。【だから】私たちは、ばかげたキリスト教資本主義者の物事のやりかたに代わるものを心に描き、生み出すことによって、一日一日の生活のなかで革命を創出しようと努める。
なぜなら。私たちはあらゆる不安に直面していて、さらに私たちに楽器を演奏するのは無理だと言ってくるビール腹少年のロックや、私たちのバンド/ジンその他はアメリカで最低だと言い、私たちの成果のいかなる評価/成功も女の子の時流に乗ったハイプだと片づける「権威」に立ち向かう状況にあって、私たちは互いに励まし、励まされることを望んでいるし、必要としているから。
なぜなら。私たちは、何が「良い」音楽/パンクロック/書き物かを判断する、他の誰か(男の子)の基準に同化したくないから。【だから】私たちは、私たち自身のヴィジョンを創造・破壊・定義できる場所(フォーラム)を創出する必要がある。
なぜなら。私たちのことを反動的な「逆性差別主義者」で真のパンクロック精神をもった改革運動者ではないとする主張に、たじろぎたくないから。自分たちこそが真のパンクロック精神をもった改革運動者であることを、【私たちは知っている】。
なぜなら。生きることは身体的生存以上のものであることを、私たちは知っているから。そして、パンクロックの「あなたはなんでもできる」という理念は、どこにでもいる女の子たち・女性たちの身体的・文化的な生を――私たちの、ではなく、彼女たち自身の表現によって――守ろうとする、怒れるガール・ロック革命の到来のために決定的に重要であることを、私たちははっきりと認識しているから。
なぜなら。私たちは、ヒエラルキーのない〔=階層的ではない〕存在のありかたを創造すること、【そして】音楽制作、友だちづくり、競争や良い・悪いの分類ではなくコミュニケーションと理解に基づいたシーンを構築することに関心があるから。
なぜなら。私たちの正当性を立証し、私たちの意欲をかき立てるようなクールな物事を実行する/読む/見る/聞くことによって、私たちは強さや共同体意識を獲得できるから。レイシズム・健常者中心主義・年齢差別・種差別(speciesism)・階級差別・体型差別・性差別・反ユダヤ主義・異性愛主義のようなくだらないものが、私たちの生活にいかに関わっているのかを解き明かすために、私たちはそれらを必要とする。
なぜなら。あらゆる種類の女の子のシーンと女の子のアーティストたちを育成し、サポートすることは、このプロセスにとって必要不可欠なことだと私たちは考えているから。
なぜなら。私たちはあらゆる形態において資本主義を憎んでおり、伝統的規範に従い冷淡であることで利益を得るのではなく、情報をシェアして生き続けることを主たる目標と見なしているから。
なぜなら。女の子=物が言えない(ばか)、女の子=悪い、女の子=弱い、と私たちに言い聞かせる社会に対して、私たちは怒っているから。
なぜなら。私たちは、自分たちのリアルな正当な怒りを、放散されたり、性差別の内面化を通して自分たち自身に投げ返してしまう――そうした傾向は、女の子が女の子に対してもつ嫉妬の特性や、女の子型の自滅的行為のなかに目撃される――ようなことを望まないから。
なぜなら。私たちが愛され/望まれていると感じられ、自分の価値を実感できるコミュニティに暮らしていれば、そう簡単に自滅的行為――コンドームなしで男の子と性交する、暴飲する、真の心の友であるガールフレンドを無視する、自分自身や他の女の子たちを軽視する、など――には及ばないだろうから。
なぜなら。本当に世界を変えることができる、そして変えるであろう革命的な魂の強さを、女の子たちは構成するし、そのことを私は全身全霊で信じているから。
*【 】内は原文の強調箇所
■Original Text (Web Pages)
http://dangerousminds.net/tag/The-Riot-Grrrl-Manifesto
http://onewarart.org/riot_grrrl_manifesto.htm *リンク切れ
■Reference Materials
"Bikini Kill's Kathleen Hanna : The Riot Grrrl Manifesto" on Vimeo (2013/06/05)
https://vimeo.com/67757523
大垣有香 2005 『riot grrrlというムーブメント――「自分らしさ」のポリティックス』(遊動社パンフレット 3)*2000年12月に執筆した卒業論文をジンとして刊行したもの
http://lilmag.org/?pid=2737397
(現在入手できるのは新装版)
*Web掲載版:P.W.A. by vegangrrrl
https://vegangrrrl.exblog.jp/
Darms, Lisa ed. (Introduction: Johanna Fateman / Contributor: Kathleen Hanna), 2013,
The Riot Grrrl Collection
, New York: Feminist Press.
https://www.feministpress.org/books-n-z/riot-grrrl-collection
Larkin, Rosemary, 2016, "Riot Grrrl's Legacy: The Medium is the Message," BYU English Symposium 2016: Feminist Criticism.
https://scholarsarchive.byu.edu/english_symposium/2016/FeministCriticism/2/
Wright, Lindsay, 2016, "Do-It-Yourself Girl Power: An Examination of the Riot Grrrl Subculture,"
James Madison Undergraduate Research Journal
3(1): 52-56.
http://commons.lib.jmu.edu/jmurj/vol3/iss1/6/
■言及
◇近藤真弥 20190227
「〈「女性とPUNK」の歴史〉に関するさすがにアレな記事を読んでしまった」
(note)
■参考
◇村上潔 20160331 「解題:いまフェミニスト・ジンについて考えること」(特集3:フェミニスト・ジンの現在),立命館大学生存学研究センター編[2016:188-194]*
◇西山敦子(DIRTY)×村上潔 20160331 「ジンを「わたしたち」のものとして生かすために――フェミニスト・ジンへのアプローチとその潜在的可能性」(特集3:フェミニスト・ジンの現在),立命館大学生存学研究センター編[2016:196-226]*
*立命館大学生存学研究センター編 20160331
『生存学 Vol.9』
,生活書院,326p. ISBN-10: 4865000518 ISBN-13: 9784865000511 2200+
[amazon]
/
[kinokuniya]
◇神戸市外国語大学2016年度前期科目《ジェンダー論入門》
“Grrrl/Queer/Feminist Zines”
(担当:村上潔)
◇Murakami, Kiyoshi, 20160409-0807,
"[Serial Publication] Notes on Grrrl/Queer/Feminist Zines"
(1)〜(15)
◇神戸市外国語大学2017年度前期科目《ジェンダー論入門》
「女性がつくる自律的文化シーン――メディア・空間・アクティヴィズム」
(担当:村上潔)
◇Murakami, Kiyoshi, 20170417-0731,
"[Serial Publication] Notes on Women's Autonomous Cultural Scenes"
(1)〜(14)
◇村上潔 2017/04/23
「[Talk]ジンとフェミニズムの古くて新しい関係」
17:00〜19:00 於:art space tetra
*《Garden #07 For Zine》の企画
◇20170111 「【訳】ライオット・ガールはジャンルではない。ましてや歴史上のジャンルでもない。そうではなく、女たちがお互いに感情を喚起するために用いてきた一連の戦術だ。」(Julia Downes)
●→Link
◇20180215 「私がライオット・ガール運動とビキニ・キルでの活動で学んだことが一つあるとすればそれは[…]」(Tobi Vail)
●→Link
◇村上潔 2018/06/26
「[講義]ジン・カルチャーとわたし――出会い・関わりとその周辺にあるもの」
10:40〜12:10 滋賀県立大学人間文化学部2018年度前期科目「社会運動論」(担当:大野光明)第12回
◇村上潔 20190425
「アナーカ・フェミニズム」
,『現代思想』47(6): 170-173
*2019年5月臨時増刊号《総特集=現代思想43のキーワード》
◆村上潔 20191107
「ジン[Zine]についての簡潔な解説【第7稿】」
◆村上潔 20191216−
「ジン[Zine(s)]――その世界の多様性と可能性」
(事項ページ)*随時更新
◇村上潔 20200130 「ジン(Zine)」,社会文化学会編[2020:69;116-117]*
*社会文化学会編 20200130
『学生と市民のための社会文化研究ハンドブック』
,晃洋書房,140p. ISBN-10: 4771032793 ISBN-13: 978-4771032798 1500+
[amazon]
/
[kinokuniya]
◇村上潔 20200227
「アナーカ・フェミニズムにおけるジン――ジンが教育/スペースであること」
,『現代思想』48(4): 160-168
*2020年3月臨時増刊号《総特集=フェミニズムの現在》
◆村上潔:
《翻訳》
*作成:
村上 潔
(
MURAKAMI Kiyoshi
)
UP: 20160612 REV: 20180609, 0627, 20190917, 20201106
◇
フェミニズム (feminism)/家族/性…
◇
社会運動/社会運動史
◇
生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築
◇
全文掲載
TOP
HOME (http://www.arsvi.com)
◇