2剤混合のマラリア治療薬発売へ‐DNDiとサノフィアベンティスが共同開発
仏製薬大手のサノフィ・アベンティスと非営利団体のDNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative:顧みられない病気のためのイニシアティブ)は、共同開発を進めてきたマラリア治療薬として、アルテスネートとアモジアキンの2剤を1錠中に含む「ASAQ」をサハラ砂漠以南のアフリカ地域で販売すると発表した。「ASAQ」は、2003年にDNDiが設立されて以来、初めて発売された医薬品となる。これまで非営利目的で開発を進めてきたプロジェクトの最初の成功例と言えそうだ。
マラリア治療については、アルテミシニン誘導体と他の抗マラリア薬の併用療法(ACT)を用いるべきことを、WHO(世界保健機関)は世界の多くの地域で推奨している。しかし、この治療法は未だに広く適用されていないのが現状。実際、毎年少なくとも4〜05億人がマラリアに感染しているにもかかわらず、ACTを受けている患者は8千万人以下と言われている。
ACTを広く普及させるためには、価格が大きなネックだったが、ASAQは、1日1回の投与で済み、低価格で使える点が大きな特徴。市販後も特許が適用されないため、価格は5歳未満の小児に対しては1日0.5ドル、5歳以上の小児と成人に対しても1日1ドル以下と、錠剤が2種類の場合と比較して40〜50%安価になる。今後、ASAQは、“non profit no less”の原則に基づいた価格で、公的機関やNGO、国際組織などに提供されていくことになる。
DNDiのベルナール・ぺクール事務局長は、「新しい混合薬は、服用方法が簡単であるため、患者ニーズに適っている。また、発売当初から安価で特許も適応されないことから、薬剤を入手するための大きな障壁が取り除かれたことは、将来的に顧みられない病気の新薬開発モデルになるだろう」と話している。
なお、ASAQは、Artesunate-Amodiaquine Winthropの販売名で発売される。
[地球の悲鳴]世界で大流行 マラリアの迫りくる脅威
マラリアが世界で猛威をふるい、幼い命を奪っている。ザンビアなどでの制圧に向けた懸命な取り組み、ワクチン開発の最前線などをレポートする。
マラリアは世界各地で猛威を振るっている。豊かな国の人々からみれば、この病気は身近な脅威というよりは、天然痘やポリオ(小児まひ)のように、すでにほぼ制圧された過去の感染症と思われがちだ。
ところが、現実には世界は今、史上最悪と言ってよい大流行に見舞われている。流行地域は106カ国に及び、世界の人口の約半分がそこに暮らしている。今年は5億人が感染し、少なくとも100万人が死亡するだろう。命を落とすのは大半が5歳未満の子どもたちで、その圧倒的多数がアフリカに集中している。 20〜30年前と比べて、年間の死亡者数は2倍以上に増えている。
マラリア禍が騒がれだしたのは、ごく最近のことだ。マラリアは貧しい人々の病気とみなされ、欧米や日本などの先進諸国ではあまり注目されることがなかった。豊かな国々にはほとんど無縁な感染症であることが、この病気の最も不幸な側面だと言う専門家もいるほどだ。私たちの知らないうちに、極貧にあえぐ地域では羽の生えた“死神”の群れが人々を脅かし、マラリアのせいで地域社会が崩壊しかねない事態になっている。
ここ数年、国際的な援助機関などがようやく、この問題に本格的に取り組みだした。世界保健機関(WHO)はマラリア対策を優先課題の一つに据え、マラリア対策専門の基金は2003年以降で2倍に増えている。中国の伝統薬や蚊帳から、最先端の多剤併用療法に至るまで、ありとあらゆる手段を駆使してマラリアを封じこめようというのである。制圧の決め手と期待されながらも一向にうまくいかない長年の難題、ワクチン開発に向けた研究も、日夜進められている。
こうした援助は主に、サハラ砂漠以南のアフリカに散らばる、マラリア流行の最も深刻な国々に注がれている。これらの国々がマラリアを克服できれば、地球規模の対策のお手本となるだろう。では、もし失敗したら?
この問いに、関係者は誰も答えたがらない。
アフリカ南部の肥沃な灌木地帯にある内陸国ザンビアは、代表的な流行国だ。マラリアがこの国にどれほど壊滅的な打撃を与えているかは想像を絶する。5歳未満の子どもの罹患率が常時30%を超す州もある。
患者数以上に厄介なのは、ザンビアで猛威を振るっているマラリアのタイプだ。人間に感染する4種のマラリア原虫のうち、ずば抜けて恐ろしいのが熱帯熱マラリア原虫だ。世界の感染例の約半数、そしてマラリアによる死亡の95%を引き起こし、脳症の原因となるのもこのタイプの原虫だ。アフリカでは、朝には元気にサッカーをしていた子どもが、その晩に熱帯熱マラリアで命を落とすことも珍しくない。
マラリアはしぶとい病気だ。ザンビアでは感染を10回以上繰り返す人も多く、程度の差はあれ、統計上は国民全員がマラリアにかかっている時期ができてしまうほどだ。この国が世界の最貧国に名を連ねているのは無理もない。経済を立て直すには、まず国民が健康を取り戻す以外に道はないだろう。ザンビア政府は今後4年間で、マラリアによる死者を 4分の1に減らす目標を掲げている。
100%を超す罹患率
ザンビアに重くのしかかるマラリア禍の実態を知るには、まず首都ルサカを出て、奥地に向かうことだ。車で一路北をめざし、緑の原野やバナナの大農園、ザンビアの主要な輸出品である銅の鉱山を過ぎ、アンゴラ、コンゴ(旧ザイール)との国境に広がる森林地帯に分け入っていく。ほとんど都市化が進んでいないこの北西州の辺地では、赤土の小道を歩く以外に、外部との交通手段がない村も多い。2005年に実施された全国規模の調査によれば、北西州に住む5歳未満の子ども1000人当たり、1353人のマラリア患者が発生している。年間の罹患率が100%を超すというこの数字は、決して統計の誤りではない。1年のうちに2回も3回も感染する子どもがたくさんいるのである。
北西州では、医療サービスも行き届いていない。2500平方キロ以上の未開地が広がる北部に点在する村々では、子どもが重いマラリアにかかった時に頼れる医療機関は唯一、カリーン伝道病院だけだ。古びたレンガの壁に錆びたトタン屋根、今にも崩れ落ちそうなその建物が、マラリアと人間との闘いの最前線基地となっている。顕微鏡が1台、看護師が二人、自家用のディーゼル発電機でたまに供給される電気、非常勤の医師が一人(ただし、抗マラリア薬の備蓄だけは十分にある)。たったそれだけで、人々の命を守っている。
キリスト教の伝道団が1906年に設立したこの病院で、100年余り繰り返されてきた光景がある。毎年、雨期の訪れとともに、病気の子どもを布でくるんで抱きかかえた親たちが、各地から集まってくるのだ。
ほとんどの人が歩いて来る。国境の山道をたどり、川の中を歩き、灌木地帯を抜けて、何日もかけて来る人たちもいる。ようやく病院にたどり着くと、子どもの名前をタイプしたカルテが、看護師詰め所の古い木箱に入れられる。
フローレンス、エリジャ、アシリ。この子たちの親は猛暑や雨に耐え、月明かりもない真っ暗な夜道を歩いてきた。ピューリティ、ワトソン、ミニバ。意識のない子もいれば、泣き叫ぶ子、ひきつけを起こしている子もいる。ネルソン、ジャフィアス、クーケナ。小児病棟は、幼いマラリア患者でいっぱいだ。ベッドが足りず、床の上や中庭に寝かされる子もいる。メチリン、ミルトン、クリスティン。小さな体で必死にマラリアに抵抗する子どもたち。病院に着いた時から、生きるための壮絶な闘いが始まる。
体内で爆発的に増える原虫
熱帯熱マラリア原虫は、ハマダラカの唾液腺から、宿主である人間の肝細胞にたどり着くまでは、おとなしくしている。感染後もしばらくは見たところ健康で、肝臓にも病変のきざしはない。だが、マラリア原虫がまんまと入りこんだ少数の細胞では大騒ぎが起きている。原虫が栄養をとりこみ、分裂と増殖を繰り返しているのだ。増殖はほぼ1週間、休みなく続く。原虫にとりつかれた肝細胞は、ついには中身を食い尽くされ、増殖した原虫でぱんぱんにふくれ上がる。原虫の数はこの段階で、体内に侵入した時の4万倍に増えている。
原虫でいっぱいになった肝細胞が破裂すると、30秒もしないうちに、血流に放出された原虫は再び細胞内に潜りこむ。今度の標的は血液中の赤血球だ。続く二日間、原虫は赤血球内でひそかに増え続ける。食い荒らされて原虫でいっぱいになった赤血球はまたもや破裂し、血液中に大量の原虫がどっと放出される。
人体はここで初めて、外敵の侵入を察知する。免疫反応の開始とともに、頭痛や筋肉痛といった初期の症状が現れる。だが初感染の患者では、この免疫反応には原虫をやっつける効果はほとんどない。原虫は素早く赤血球に潜入し、増殖してはいっせいに血液中に飛び出すというサイクルを繰り返すからだ。
次の段階に入ると、体は外敵を熱で打ち負かそうとする。体温を上げるために筋肉がふるえ、悪寒が起きる。熱はぐんぐん上がり、患者はぐっしょり汗をかく。悪寒と熱と大量の汗。典型的なマラリアの症状だ。その間も原虫の爆発的な増殖は続く。分裂と放出のサイクルを繰り返すうち、血液中には何十億もの原虫がひしめく状態になる。
ここまで来ると発熱は限界に達し、体がもたないほどの高熱になる。文字通り死にもの狂いの抵抗だが、原虫には通用しない。それどころか、生き残るために宿主の細胞を操るという高等戦術までやってのける。熱帯熱マラリア原虫がとりついた赤血球の表面には、突起状の接着分子が生じることがある。こうした血球が脳の毛細血管に入ると、接着分子を介して血管の内壁に付着し、血流を妨げる。これに伴い、詳しい仕組みは不明だが、脳マラリアという最悪の症状が引き起こされる。
この時を境に、宿主の体は死に至る坂道を転がりだす。赤血球が大量に破壊され、生命維持に不可欠な酸素を運ぶ役割をほとんど果たせなくなるからだ。肺は呼吸しようとあがき、心臓は躍起になって血液を送り出す。血液は酸性になり、脳細胞は死滅する。患者の小さな体はなおも必死の抵抗を試み、激しくけいれんするが、最後は昏睡状態に陥る。
人類史に残るマラリアの足跡
マラリアはおかしな病気で、理屈や常識に合わない点が多い。
たとえば、ほぼすべてのマラリア患者を治療するのは、一人も治さないより悪い結果を招きかねない。これは、流行が一時的に収まると人々は免疫による抵抗力を失い、流行が再燃した時にはさらに多くの犠牲者が出てしまうためだ。湿地の保全が叫ばれる昨今だが、マラリアを防ぐには湿地などなくしてしまったほうがいい。鎌状赤血球貧血は、死に至ることも多い血液の重い病気だが、その遺伝子を受け継いでいると、熱帯熱マラリアにかかりにくいという利点がある。優秀な研究者が世界各地で新薬を開発中の今でも、最良のマラリア治療薬は、1700年前に見つかった薬草ともいわれる。
「マラリア原虫は、環境に適応してしぶとく生き残る天才です。人間は到底かないませんよ」と、米国立衛生研究所(NHI)のマラリア研究者ロバート・グワズは言う。
マラリア原虫は、現生人類であるホモ・サピエンスの誕生以前、初期人類の時代から私たちの体に寄生してきた。マラリア原虫もハマダラカも、はるか大昔からいた生物だ。マラリア原虫は、その長い進化の歴史を通じて、宿主の免疫系の弱点をたくみに突く手段を獲得してきた。宿主となる生物は人間だけではない。ネズミ、鳥、ヤマアラシ、キツネザル、サル、類人猿などのさまざまな動物をそれぞれの宿主とする、多様なマラリア原虫が存在する。
人類の歴史上、マラリアの魔手を逃れた文明はほとんどない。古代エジプトのミイラにはこの病気の痕跡があるし、古代ギリシャの医学の祖ヒポクラテスも特有の症状を書き残している。アレクサンドロス大王の死と大帝国の崩壊を招いたのも、フン族やチンギス・ハーンの軍勢の大遠征に待ったをかけたのも、実はマラリアだったのかもしれない。
マラリアという病名は、イタリア語のマル・アリア(悪い空気)に由来する。何世紀も流行が続いたローマでは、沼沢地から生じる毒気(瘴気)がその原因と信じられていた。
何人ものローマ法王がこの病気で命を落とし、イタリアの詩人ダンテの死因もマラリアだった可能性がある。通算すれば人類の半数はマラリアで死んだとみる研究者もいる。
[地球の悲鳴]世界で大流行 マラリアの迫りくる脅威(2)
マラリアが世界で猛威をふるい、幼い命を奪っている。ザンビアなどでの制圧に向けた懸命な取り組み、ワクチン開発の最前線などをレポートする。(2)
アンデスで見つかった特効薬
有名なマラリアの治療薬が初めて見つかったのは、現在のペルーとエクアドルにあたるアンデス地方だ。原料となるキナノキ(キナの木)はコーヒーと同じアカネ科の常緑樹。地元のインディオがキナキナ(樹皮の中の樹皮)と呼ぶ、この木の皮からとれる薬が「キニーネ」という名で世界中に広まった。
キナノキの種や苗木をヨーロッパに持ち帰ろうと、遠征隊が何度も派遣された。南米に渡った隊員たちはアンデスの山道をたどり、キナノキが生える雲霧林をめざした。過酷な行軍で命を落とす者も多く、なんとか持ち帰った苗木はほとんど根づかなかった。後にインド、スリランカ、ジャワの大農園で大規模な栽培が成功するまでの約200年間、マラリアの治療薬は原産地の南米から直接手に入れるしかなかった。
マラリア原虫の増殖サイクルを断ち切る作用をもつキニーネは、特効薬として、多くの命を救ってきた。だが、効き目が長続きせず、あまり頻繁に服用すると、時として聴力や視力の低下などの重い副作用が出るという欠点もあった。
1940年代になると、マラリア対策に役立つ画期的な新兵器が登場した。一つは、抗マラリア薬のクロロキンだ。化学的に合成できるこの薬は安価で安全、効果が長続きし、あらゆるタイプのマラリアを完全に治せるという、まさに奇跡の特効薬だった。
奇跡の発見は、もう一つあった。スイスの化学者パウル・ミュラーが、既知の化合物ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)がもつ殺虫効果を見いだしたのである。“史上最強の殺虫剤”DDTは病気を媒介する蚊やシラミなどの駆除に威力を発揮し、この功績でミュラーは1948年にノーベル医学・生理学賞を受賞する。わずかな量で何カ月も効果が持続するDDTを使って蚊を駆除することで、マラリア伝播のサイクルを断ち切れるようになった。
クロロキンとDDTという新兵器を得て、WHOは1955年に地球規模のマラリア撲滅計画に乗り出した。「10年間で一掃する」という目標を掲げて10億ドル(約1200億円)以上の資金を投入、蚊を駆除するために毎年何万トンものDDTが散布された。
撲滅に向けた地球規模の努力は一定の成果を上げた。カリブ諸国と南太平洋の多くの地域、バルカン諸国や台湾ではマラリアはほぼ制圧された。スリランカでは 1946年には280万件の感染例があったが、1963年にはわずか17件に減少。インドでも、マラリアによる死者は年間80万人からほとんどゼロにまで減った。
だが、WHOが掲げた目標の達成は、現実には不可能だった。熱帯の奥地にはなおもマラリアがはびこっていたが、資金がしだいに底を尽き、計画は1969年に打ち切られてしまった。当時、多くの国々は外国からの援助額減少や不安定な国内政治、貧困の深刻化に直面し、各国の公衆衛生当局は重すぎる負担に悲鳴を上げはじめた。
一度はほぼ根絶されたスリランカやインドでも、マラリアは再び勢力を盛り返した。サハラ砂漠以南のアフリカでは、そもそも撲滅計画が本格的に展開されることはなかった。
WHOの計画が破綻してまもなく、蚊の駆除に各地で活躍していたDDTが使えなくなった。マラリア対策のせいではなく、綿花などの栽培農家による使いすぎが問題となったのだ。安価なDDTを必要量の何倍も散布したことで、土壌への蓄積や、川や海の汚染が引き起こされた。
DDT は、ハヤブサやアシカ、サケには有害だ。1962年、DDTなどの農薬による生態系の破壊に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソンの著作『沈黙の春』が出版されると、これをきっかけに、農薬としてのDDTの使用はほとんどの国で禁止された。マラリア対策用には例外的に使用を認められたが、購入しようにも手に入らなくなった。
さらに追い討ちをかけるように、最悪の事態が起きた。各種の治療薬に耐性をもつ原虫の出現だ。マラリア原虫は猛スピードで増殖し、突然変異によりめまぐるしく進化を遂げる。クロロキン耐性をもつ原虫が偶然現れると、その遺伝子は後の世代に受け継がれ、薬剤にさらされるたびに、耐性をもつ原虫が増えていく。
マラリア対策では、どれだけ時間と資金と労力を費やしても、人間の手に負えない難題が立ちはだかる。絶えず突然変異を起こして環境に適応する寄生虫、マラリア原虫に生来備わった、そのしたたかな生き残り戦略だ。
ACT は強力な治療だが、いずれはこの薬にも耐性をもつ原虫が現れ、治療の手だてがなくなるのではないかと専門家は懸念している。DDTにしても、使用が禁止される以前にすでに、耐性をもつハマダラカの出現が各地で報告されていた。再び使われるようになった以上、DDT耐性の蚊が出現し、増えていくのは確実とみられる。しかも、地球温暖化がこのまま進めば、ハマダラカが今はいない高地や高緯度地域にまで、生息域を広げるおそれもある。
治療薬と殺虫剤と蚊帳という“三種の神器”だけでは、完全な制圧は望めそうにない。求められているのは、さらに決定的な武器だ。
※以上の記事は月刊誌「ナショナル ジオグラフィック日本版」特集からの抜粋です。
人類はマラリアとどう闘うか?
決め手を欠いた制圧策
* 2007年7月13日 金曜日
* 藤田 宏之
前回は、世界中で猛威を振るっているマラリアの実態について紹介した。では、予防や治療で、いったいどのような対策が進んでいるのだろうか?
有名なマラリアの治療薬が初めて見つかったのは、現在のペルーとエクアドルにあたるアンデス地方だ。原料となるキナノキはコーヒーと同じアカネ科の常緑樹。地元のインディオがキナキナ(樹皮の中の樹皮)と呼ぶ、この木の皮からとれる薬が「キニーネ」という名で世界中に広まった。
キナノキの種や苗木をヨーロッパに持ち帰ろうと、遠征隊が何度も派遣された。南米に渡った隊員たちはアンデスの山道をたどり、キナノキが生える雲霧林をめざした。過酷な行軍で命を落とす者も多く、なんとか持ち帰った苗木はほとんど根づかなかった。後にインド、スリランカ、ジャワの大農園でキナノキの大規模な栽培が成功するまでの約200年間、マラリアの治療薬は原産地の南米から直接手に入れるしかなかった。
マラリア原虫の増殖サイクルを断ち切る作用をもつキニーネは、多くの命を救ってきた。だが、効き目が長続きせず、あまり頻繁に服用すると、聴力や視力の低下などの重い副作用が時々出るという欠点もあった。
1940年代になると、マラリア対策に役立つ画期的な新兵器が登場した。一つは、抗マラリア薬のクロロキンだ。化学的に合成できるこの薬は安価で安全、効果が長続きし、あらゆるタイプのマラリアを完全に治せるという、まさに奇跡の特効薬だった。
発見は、もう1つあった。スイスの化学者パウル・ミュラーが、既知の化合物ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)がもつ殺虫効果を見いだしたのである。“史上最強の殺虫剤”DDTは病気を媒介する蚊やシラミなどの駆除に威力を発揮し、この功績でミュラーは1948年にノーベル医学・生理学賞を受賞する。わずかな量で何カ月も効果が持続するDDTを使って蚊を駆除すれば、マラリア伝播のサイクルを断ち切ることができた。
クロロキンとDDTという新兵器を得て、WHOは1955年に地球規模のマラリア撲滅計画に乗り出した。「10年間で一掃する」という目標を掲げて10億ドル(約1200億円)以上の資金を投入、蚊を駆除するために毎年何万トンものDDTが散布された。
撲滅に向けた地球規模の努力は一定の成果を上げた。カリブ諸国と南太平洋の多くの地域、バルカン諸国や台湾ではマラリアはほぼ制圧された。スリランカでは1946年には280万件の感染例があったが、1963年にはわずか17件に減少。インドでも、マラリアによる死者は年間80万人からほとんどゼロにまで減った。
だが、WHOが掲げた目標の達成は、現実には不可能だった。熱帯の奥地にはなおもマラリアがはびこっていたが、資金がしだいに底を尽き、計画は1969 年に打ち切られてしまった。当時、多くの国々は外国からの援助額減少や不安定な国内政治、貧困の深刻化に直面し、各国の公衆衛生当局は重すぎる負担に悲鳴を上げはじめた。
一度はほぼ根絶されたスリランカやインドでも、マラリアは再び勢力を盛り返した。サハラ砂漠以南のアフリカでは、そもそも撲滅計画が本格的に展開されることはなかった。
WHOの計画が破綻してまもなく、蚊の駆除に各地で活躍していたDDTが使えなくなった。マラリア対策のせいではなく、綿花などの栽培農家による使いすぎが問題となったのだ。安価なDDTを必要量の何倍も散布したことで、土壌への蓄積や、川や海の汚染が引き起こされた。
DDTは人体への毒性は低いが、ハヤブサやアシカ、サケには有害だ。1962年、DDTなどの農薬による生態系の破壊に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソンの著作『沈黙の春』が出版されると、これをきっかけに、農薬としてのDDTの使用はほとんどの国で禁止された。マラリア対策用には例外的に使用を認められたが、購入しようにも手に入らなくなった。
さらに追い討ちをかけるように、最悪の事態が起きた。各種の治療薬に耐性をもつ原虫の出現だ。マラリア原虫は猛スピードで増殖し、突然変異によりめまぐるしく進化を遂げる。クロロキン耐性をもつ原虫が偶然現れると、その遺伝子は後の世代に受け継がれ、薬剤にさらされるたびに、耐性をもつ原虫が増えていく。
ザンビアは今まさに、国を挙げてマラリアの根絶に取り組んでいる。1985年には3万ドル(約360万円)しかなかった対策予算も、外国からの援助が加わり、現在では4000万ドル(約48億円)に達している。患者の多くは治療を受けていないため、マラリアの原因や症状を説明し、医師に診てもらうよう呼びかけるポスターが全国各地に貼られている。国民に正しい知識を広め、治療薬、殺虫剤、蚊帳を駆使してマラリアを撲滅するのが目標だ。
新たな治療方法の普及にも力を入れている。使われる新薬は、意外なことに、古くからの漢方薬をもとに開発された。キク科ヨモギ属の植物、クソニンジン(学名Artemisia annua)を用いた処方は、4世紀中国の医学文献にすでに記述があるが、漢方薬や中医学以外の世界では知られていなかった。
この薬草から生まれた薬アルテミシニンは、キニーネに匹敵する威力を発揮するばかりか、ほとんど副作用がなく、マラリア治療の“最後の砦”とみられている。
ほかの薬も引き続き治療に使われてはいるが、アルテミシニン以外のあらゆる薬(キニーネも含む)に対しては、すでに耐性をもつマラリア原虫が出現している。アルテミシニンに耐性をもつ原虫の出現を防ぐため、アルテミシニン誘導体と他の抗マラリア薬を併用する多剤併用療法(ACT)が開発されている。
ザンビア政府は殺虫剤も大量に購入し、流行の特に深刻な地域に提供して、毎年雨期に入る直前に各戸で散布するよう指導している。一定量の屋内散布に限ったうえで、DDTの使用も認めた。また、ハマダラカが人を刺すのは、夜寝ている時がほとんどなので、蚊帳も有望な対策の一つだ。実際に、殺虫剤を練りこんだ繊維でできた防虫蚊帳を配布している。
計画それ自体はさほど複雑ではなさそうだが、その遂行は一筋縄ではいかない。国民の多くは医療機関のない地域に住み、露店の売薬に頼っている。 ACT用の薬は1錠1ドル余りすることもあり、7割以上の国民が1日1ドル以下で暮らすこの国では高嶺の花だ。人々はしかたなく値段が6分の1程度のほかの薬を買うが、熱が下がって一時的に楽になるだけで、寄生虫の駆除にはほとんど役に立たない。
古くからの、さまざまな迷信も妨げになる。全土に配られた撲滅キャンペーンのポスターにはこう書いてある。「マラリアの原因は呪いではありません。汚い水を飲む、雨に濡れる、未熟なサトウキビをかじるといった行動も、マラリアとは無関係です」。
子どもが脳性マラリアの症状であるひきつけを起こすと、悪霊がとりついたと思って祈祷師に助けを求める親もいる。祈祷が効かず、病院に連れてきた時には手遅れというケースが後を絶たない。
蚊帳も、配布するだけで期待通りの効果が上がるわけではない。蚊帳が予防に役立つことには疑う余地がなく、最新の防虫蚊帳ならなおさらだが、予防効果を上げるにはまず、最も必要な人々の手に蚊帳がわたり、正しく使われる必要がある。
蚊帳の配布には政府軍まで駆り出されているが、各家庭に配られたからといって安心はできない。ただでさえ暑くて寝苦しい熱帯地域では、蚊帳を吊るとさらに暑さが増すような気がするため、人々はなかなか使いたがらない。蚊帳を吊っている家でも、子どもが寝返りを打って足が外にはみ出たり、蚊帳にほころびでもあれば、蚊に刺されるのは防げない。支給された蚊帳を、魚をとる漁網代わりに使っていた例もある。撲滅キャンペーンでは奥地の村々を劇団が巡回し、芝居仕立てで正しい蚊帳の使い方を村人たちに教えている。
治療薬と殺虫剤と蚊帳という“三種の神器”だけでは、完全な制圧は望めそうにない。求められているのは、さらに決定的な武器だ。
人間の寄生虫病を防いでくれるワクチンには、どんなものがあるのだろうか。実は「1つもない」が正解だ。細菌やウイルスに対するワクチンは開発されているが、寄生虫はこれらの病原体ほど単純な生物ではない。
たとえば、ポリオウイルスは11個の遺伝子から成るが、熱帯熱マラリア原虫の遺伝子は5000個以上。しかもこの原虫は、捜査を逃れる犯人のように“潜伏先”をころころ変えるため、ワクチンの設計は困難を極めているのが実情だ。
予防策の決め手はなかなかみつからない。しかし、完全制圧に向けた懸命の努力は続けられている。先進国からの人的、経済的支援は、文字通り命綱となっている。
(藤田 宏之=『ナショナル ジオグラフィック日本版』編集長)
マラリア対策など学ぶ アフリカから研修員
八重山毎日新聞 (2007-09-07 09:46:26)
マラリアやHIVなどの予防対策をテーマにした独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年研修に参加しているアフリカからの研修員16人が6日に石垣入りした。8日までの3日間、マラリア対策などについて研修している。
研修に参加しているのは、ガーナとケニア、ザンビアの保健衛生当局の感染症対策担当者や医師、助産師など。先月27日から来月13日までの1カ月半、沖縄で行われてきたマラリアや結核、寄生虫などの対策について歴史的な推移や現状、課題について研修している。
研修員は6日午後、市役所で大浜長照市長と面談。マラリアなどの医療対策やごみ処理、上水道の現状などについて質問していた。
マラリア:新薬を開発、09年臨床試験へ…岡山大チーム
岡山大大学院医歯薬学総合研究科の綿矢有佑教授(薬学)のグループが20日、薬剤耐性のあるマラリアに有効な物質の開発に成功したと発表した。09年から臨床試験を実施する。マラリアには世界で年間3億〜5億人が感染し、150万〜270万人が死亡しているとされる。この物質を使った新薬が開発、量産されれば、1錠数十円程度での提供も可能という。
マラリアは熱帯・亜熱帯のハマダラ蚊を媒介してマラリア原虫が体内に入り、発熱や貧血などを起こす感染症。重症化すると死亡する。治療には「クロロキン」などの特効薬があるが、1955年ごろから、薬剤耐性を持つマラリアが現れるようになった。
綿矢教授らは、5000の化合物で実験した際、炭素、酸素、水素が結びついた「環状過酸化化合物」の一種に、マラリア原虫を死滅させる効果があることを確認。薬剤耐性を持つマラリアに感染させたネズミなどで実験したところ完治し、副作用もみられなかった。
綿矢教授は「被害はアフリカなどの発展途上国に多い。少しでも安価な治療薬の開発につなげたい」と話している。【植田憲尚】
毎日新聞 2007年9月20日 22時18分
マラリアの新薬、乳児にも安全かつ効果大
開発中のマラリア・ワクチンが、乳児対象の臨床試験で感染率を6割以上下げるのに成功した。
ウォールストリート・ジャーナルによると、マラリア・ワクチンは英グラクソスミスクライン(GSK)とPATHマラリア・ワクチン計画が開発しており、今回の試験は最もマラリアにかかりやすい1歳未満の乳児に対する安全性を確認するために実施された。
モザンビークで乳児214人を対象に、一方のグループにはマラリア・ワクチン、別のグループにはB型肝炎ワクチンを3回接種したところ、3カ月後の新規マラリア感染率はマラリア・ワクチンを接種したグループの方が65%少なかった。すべての乳児の家庭には殺虫加工された蚊帳が配布され、自宅への殺虫剤散布が2回行われた。以前に行われた1〜4歳児対象の試験では、ワクチン接種でマラリア感染は45%減少した。
マラリアは蚊を介して感染し、年間100万人以上が死亡、そのほとんどが子供となっている。慈善団体や製薬会社はワクチンの開発予算を増やしており、GSKとPATHのワクチンはその中で最も開発が進んでいるが、発売は早くても2011年以降となる見込み。
PATH計画には、マイクロソフト会長夫妻が創設したビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金が多額の資金援助をしている。
【やばいぞ日本】第5部 再生への処方箋(3)「網の目」広げマラリア制圧
2007.12.6 02:35
かつて生活の必需品だった蚊帳を家庭で見ることはもう、わが国ではほとんどない。だが、日本の代表的な総合化学メーカー、住友化学ではいま、その蚊帳こそが「企業の顔」ともいうべき重要な製品に位置づけられている。
東京都中央区新川の同社本社を訪れると、少女と蚊帳の写真の巨大パネルが受付に掲げられていた。
≪マラリア防圧へ。私たちが開発した防虫蚊帳が、アフリカの子供たちを守っています≫
ホームページにも、真っ先に「アフリカのマラリア防止」の見出しで≪防虫剤を練り込んだ蚊帳「オリセットネット」を開発し、WHOが推進するキャンペーンに協力しています≫と書かれている。
同社の大庭成弘専務(64)はオリセットネットについて「100億円強のビジネスなので、住友化学全体からすれば0・5%から0・6%。事業規模は大きくない」という。
ただし、貢献度は金額だけでは測れない。マラリアは、病原体のマラリア原虫に感染した人の血を吸った蚊が媒介して広がる感染症で、年間3億人が発症し、100万人が死亡する。エイズ、結核と並ぶ世界3大感染症であり、アフリカでは子供の死因の1位。住友化学が開発した蚊帳により、そのマラリアの制圧に希望が出てきたのだ。
「ハエ、カ、ゴキブリなどの駆除は住友化学50年来のビジネス。事業規模は小さいが、いわば本業の分野での社会貢献が企業のブランド価値を高め、社員や家族も会社に誇りを持っている」と大庭専務は強調する。
半ば忘れられかけていた本業を生かすことが、地球規模の課題に対する貢献につながり、企業全体の士気を大きく高める。その経験はこれからの日本にとっても教訓的である。
そのオリセットネットの開発者で、同社ベクターコントロール部の伊藤高明・技術普及課長(59)に話を聞いた。
伊藤さんは1973年に入社した技術者で、夜間操業の工場用に防虫網戸の研究をしていた85年当時、「蚊帳に殺虫剤処理すると蚊の駆除に有効である」とする論文が世界で相次いで発表されたことから、殺虫剤を染みこませた素材で蚊帳を作る研究をこつこつと進めていた。
当時の殺虫剤処理をした蚊帳は洗うと薬が流れてしまい、半年に1回、殺虫剤溶液に蚊帳を浸し直す再処理作業が必要だった。先進国の援助で大量に蚊帳の提供を受けても再処理費用までは手が回らず、途上国では結局、宝の持ち腐れである。
一方、工場用の防虫網戸にはポリエチレン樹脂に殺虫剤を練り込み、それを糸にして網戸を作る技術が確立されていた。最低5年は効き目が持続、この間は再処理の必要もない。網戸の技術を転用することで素材の樹脂の売り上げも伸ばせるのではないか。そんな計算もあった。
だが、ポリエチレン樹脂の蚊帳は、通気性の面でアフリカでは実用に適さない。平たく言えば、暑くて眠れないのだ。伊藤さんは実験と観察を繰り返し、決断した。
「網の目を広げよう」
◇
■「利他の精神」本業を生かす
殺虫剤を練り込んだオリセットネットの網の目は4ミリ幅。家庭用に使われる一般の蚊帳が2ミリ幅ということだから、面積では4倍の大きさになる。マラリア原虫を媒介するハマダラカは2ミリの穴だと通れないが、4ミリ幅なら通過できる。
だが、蚊の習性として、網目をすっと通り抜けてはいかない。ネットにぽんぽんと突き当たるように飛んでき、そこに殺虫剤が練り込んであるので蚊帳の中に入る前に落ちていく。実験を重ね、通気性と蚊帳の機能の両方を追求したぎりぎりの選択が4ミリだった。
住友化学は2000年、世界保健機関(WHO)から(1)オリセットネットの増産(2)アフリカへの技術移転−を依頼された。製品評価の結果、WHOがマラリア対策の有力な武器として認めたからだ。無償の技術移転にも「当時は社内的認知度が低く、ビジネスとしてはゼロに近かったので、貢献してもいいだろうということになった」と伊藤さんは振り返る。
アフリカではマラリアが治っても、また次の年に蚊に刺され発病する人が多い。貧困がマラリアの流行を促す環境を生み出し、マラリアがさらに貧困の悪化に拍車をかける。
そうした負の循環が蚊帳によって変わり、米国のNGOのニュースレターではタンザニアの農家の写真が紹介された。荒廃していた裏庭がオリセットネットの支給から1年後には、豊かな作物が実る畑になっていたという。
「アフリカの蚊の原虫保有率は4%。月に100回蚊にかまれると4回感染する計算です。蚊に刺される機会を減らし、感染する人が減れば、蚊の原虫保有率も下がる」と伊藤さんは説明する。
オリセットネットの工場は中国とベトナムに各1、タンザニアに2。タンザニアの1カ所は現地企業に技術を供与し、もう1カ所は現地企業と住友化学のジョイントベンチャーだ。原料の殺虫剤を練り込んだ樹脂ペレットは日本で製造し、海外4工場で糸にする。
その糸を縫製して蚊帳に編む工程に人手がかかるので、住友化学はエチオピアなどでも新しい縫製工場の開設準備を進めている。
タンザニアのアリューシャという町ではオリセットネットの工場が3000人から4000人の雇用を創出し、物流などへの波及効果も大きい。技術供与をきっかけに住友グループ各社でアフリカに小学校を造る社会貢献事業も生まれた。
「アフリカに行くと、日本への信頼が厚いことを感じる」と大庭専務はいう。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)の存在も大きい。2000年の九州沖縄サミットで日本は、世界の3大感染症と闘うには途上国に新たな追加的資金の支援が必要だと呼びかけ、2年後に発足。コンセプトは日本が作ったといまも評価される。
先進国の拠出金が世界基金を通じて途上国の感染症対策に生かされることで、途上国が自力では購入困難だったオリセットネットのマーケットが出現し、住友化学も最小限のビジネスモデルを維持しつつ国際貢献を果たすことができる。
オリセットネットの年間生産量は3000万張。需要はアフリカだけで8000万張以上。「住友の創業の精神は自利利他、公私一如。企業は自分だけがもうけるのではなく、社会に貢献しなければならない」と大庭専務は話す。
蚊帳の開発に必要だったのは最先端技術ではない。素材部門と害虫駆除の部門がそれぞれ持っていた技術を横断的に結びつけることで新たな飛躍があった。
大切なのは必要性をつかむ想像力である。(宮田一雄)
2008/02/27-11:56 ナイジェリアのマラリア予防を支援=米エクソンモービル〔BW〕
【ビジネスワイヤ】米エクソンモービル財団は、アフリカでマラリア予防に取り組む団体「ネッツフォーライフ」のナイジェリアにおける予防活動を支援すると発表した。それにより、長期使用に耐える殺虫処理済みの蚊帳100万枚のナイジェリア国内での配布活動を後援する。マラリアは、同国最大の健康問題の一つで、2005年に報告された患者は260万人を超えており、そのうち110万人強が年齢5歳以下の子供。またマラリアは、乳児の死亡原因のほぼ25%に上り、子供の死亡原因の30%を占めている。エクソンモービルは、2000年以来、アフリカの地域社会プロジェクトに1億2000万ドル以上の寄付を行っている。エクソンモービルのマラリア予防活動の詳報は、同社ウェブサイト(www.exxonmobil.com/malaria)へ。
【注】この記事はビジネスワイヤ提供。英語原文はwww.businesswire.comへ。
アフリカ 縮む巨大湖、蚊の巣窟に マラリアが高地にも
2008年03月09日03時24分
アフリカ最大の湖、ビクトリア湖。水位が下がり、係留されていたはずのボートが陸に上がってしまっていた。ところどころできた水たまりにはボウフラが泳ぎ、いわば蚊の巣窟(そうくつ)。アフリカで子どもの主な死因である感染症マラリアを媒介するハマダラカの幼虫だ。マラリアは、非流行地だったケニア西部の高地にも多発するようになった。気候の変化がマラリアを広げ、幼い命を危険にさらしていた。
ケニア西部のスバ県ビタ。ビクトリア湖岸に幅10〜20メートルの草地が続く。長崎大熱帯医学研究所ケニアプロジェクト拠点の現地スタッフが、ひしゃくで水たまりの水をすくうと、細長く白いハマダラカの幼虫が数匹見つかった。
湖畔で直径30センチほどの穴を見つけた。夜、湖にすむカバが草を食べに陸に上がり、湖岸の湿地を歩き回った後にできた足跡だった。ここも水たまりとなり、蚊の繁殖地になっていた。
数年前まで湖水はこの付近まであった。皆川昇・長崎大教授(生態学)は「湖岸の他の場所でも蚊の繁殖地ができている可能性がある」と話す。
米航空宇宙局(NASA)などの衛星データによると、ビクトリア湖の水位はピークの98年から1.5メートル下がった。90年代の平均と比べても50センチ低い。降雨量の減少、そして下流にあるダムへの過剰な流出が原因。01〜04年の年間平均降雨量は50〜00年と比べて4.2%減っていた。
一方、標高千数百メートルを超すケニア西部の高地でも、20年ほど前からしだいに流行し始めた。「高地マラリア」だ。雨期の3〜5月にマラリア患者が増える。グチャ県では97年に異常な長雨があり、その後マラリア患者が急増した。
気温が20度を下回ると、病気の原因になるマラリア原虫は蚊の体内で成長できない。気温が上昇すると、蚊の繁殖サイクルも短くなり血を吸う回数が増え、繁殖できる期間も延びる。雨が降れば水たまりができ繁殖地も広がる。気温の上昇が、高地にまでマラリアを押し広げた原因の一つと考えられる。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)も、昨年まとめた報告書で温暖化でエチオピアやケニアなどの標高の高い非流行地に、50年までにマラリアが侵入、80年までに感染に非常に適した地域になる、と予測している。
皆川さんは「気候変化や人為的な環境変化により蚊の数が増え、マラリア患者が増える可能性が十分にある」と話す。
世界保健機関(WHO)などの推計では、マラリアの犠牲者はアフリカだけで年間100万人以上。その犠牲者の大半が、5歳以下の子どもとされている。
2008/04/02-09:00 開発目標達成に向け会合=国連
【ニューヨーク1日時事】2015年までの途上国の開発目標を定めた国連ミレニアム開発目標(MDG)達成に向けた取り組みを話し合う国連総会会合が1日、2日間の日程で開幕した。潘基文事務総長は冒頭、アフリカの開発の遅れなどを念頭に「MDG達成レースは中間点を過ぎたが、多くの国が横道にそれたままだ」と警告した。
この日はまた、CNNテレビの創設者で国連活動を支援する民間組織「国連財団」の会長を務めるテッド・ターナー氏が、アフリカのマラリア対策に充てるため2億ドル(約200億円)を集めるキャンペーンを始めると発表。テーマ別パネル討論では、名古屋大の北村友人准教授が貧困脱出に向けた教育振興策を論じた。
第1回野口英世アフリカ賞(医学研究部門)を英国のブライアン・グリーンウッド博士が受賞
2008年04月02日
アフリカに関する医学研究及び医療活動を顕彰する国際賞として2006年に創設された野口英世アフリカ賞の第一回受賞者が3月26日、英国のブライアン・グリーンウッド博士とケニアのミリアム・ウェレ博士に決定しました。
グリーンウッド博士は1938年英国生まれ。1968年、英ケンブリッジ大学にて医学博士号を取得。現在は英ロンドン熱帯医学研究所臨床熱帯医学で教鞭を執っています。受賞式は、5月28日横浜で行なわれ、受賞者には賞状と賞牌および賞金1億円が内閣総理大臣から授与されます。
グリーンウッド博士はアフリカ大陸において脅威が広がるマラリア制御のための独創的な研究を行い、この難病をめぐる悲観的な状況を一変させる不可欠な手段と知識の開発を大きく促し、同博士の業績により、ごく最近まで絶望的と見られていたマラリア対策に希望が見え始めています。主な受賞業績には、30年以上にわたる現場に密着した先駆的なマラリア研究、熱帯医学の領域の拡大と変質、若いアフリカ人研究者の育成などといったアフリカとの研究パートナーシップが挙げられています。
詳細については内閣府のホームページをご覧ください。
アフリカ医療の現状知って 会津大で講演
アフリカの医学研究や医療活動に貢献した人に贈られる「野口英世アフリカ賞」の第1回受賞者が決まり、賞を受けた研究者2人を招いての講演会が今月30日、会津若松市の会津大で開かれる。ガーナで黄熱病のため亡くなった福島県猪苗代町出身の野口英世博士にちなんだ賞の創設を記念し、博士の地元を受賞者に知ってもらうとともに、県民らにアフリカ賞を紹介する機会が設けられた。
第1回受賞者となったのは、医療研究分野が、アフリカのマラリア対策に貢献したブライアン・グリーンウッド博士(69)=英国=、医療活動分野が、東アフリカで基礎医療サービスの向上と保健問題に取り組んでいるミリアム・ウェレ博士(68)=ケニア=。
講演会では、2人がそれぞれスピーチをするほか、テレビキャスターの福留功男氏をコーディネーターに対談を予定。2人の研究成果や活動ぶり、人柄などを分かりやすく紹介する。
同賞は、小泉純一郎元首相の発案で2006年に創設された。授賞式は5年に1度行われ、受賞者には賞金1億円が贈られる。
グリーンウッド博士は現在、英ロンドン熱帯医学研究所教授。30年以上にわたってアフリカに密着してマラリアを研究し、予防対策を開発して普及させ、現地の研究者の育成にも努めた。
ウェレ博士は、公衆トイレの設置拡大や乳幼児の予防接種率引き上げなど、実践的な保健サービスの向上に長年尽力。ケニアの国家エイズ対策委員長としてエイズ問題にも取り組んでいる。
2人は、横浜市で28日に開かれる第4回アフリカ開発会議での授賞式に臨んだ後、翌29日に来県。野口英世記念館を視察したり、歓迎行事に参加したりして地元住民らと交流する。
講演会は午前10時開始。入場無料だが事前申し込みが必要。締め切りは20日(必着)。定員は先着400人。連絡先は福島県国際課024(521)7183。
2008年04月30日水曜日
マラリア死の半減目指す 日米首脳会談で協調へ
2008年7月5日15時0分
北海道洞爺湖サミット直前の6日に開かれる日米首脳会談で、福田首相とブッシュ大統領がアフリカに焦点を当てた感染症対策で協調する方針を打ち出す。マラリアについては、アフリカ約30カ国での死者数を半分に減らすようサミット参加国(G8)にも協力を求める。
日米関係筋によると、ブッシュ大統領は周辺に「50年後の気候問題も大切だが、今この瞬間のアフリカの子供たちの命も心配だ」と語っているという。
両首脳は、今後5年間に集中的にアフリカで医師や看護師らを増やしていくため、人材育成を優先的に行うことでも一致する見通し。日本側はすでに5月の第4回アフリカ開発会議(TICAD)で、今後5年間に医師ら約10万人の保健労働者を対象に人材育成や技術協力をする方針を発表している。
今回の会談では、ポリオやマラリア、眠り病などの「無視された熱帯病」(NTD)と呼ばれる疾病への対策も取り上げる。特にマラリアについては、投薬治療のほかに高品質な蚊帳の現地での製造や利用を進めて死者数を減らしたい考えだ。外務省幹部は「自衛隊の活動を伴うものは憲法上の制約があるが、こういう協調は日本も大いにできる。日米協力の新たなフロンティアになる」と話している。(丹内敦子)
マラリア対策に30億ドル拠出へ、国連のハイレベル会合
* 2008年09月26日 06:30 発信地:ニューヨーク/米国
【9月26日 AFP】国連(UN)で25日、各国首脳らが参加する貧困撲滅に向けたハイレベル会合が開催され、全世界のマラリアによる死者を大幅に減らすため、約30億ドル(約3200億円)の資金を拠出することが決定された。
この資金は、マラリア対策の行動計画「Global Malaria Action Plan(GMAP)」の迅速な実施を支援するために使用される。30億ドルのうち11億ドル(約1200億円)は世界銀行(World Bank)が負担する。
世界銀行のロバート・ゼーリック(Robert Zoellick)総裁は、今回資金拠出が決定したことにより、今後数年で「マラリアによる死者や関連疾病が大きく減少する」との見方を示した。
GMAPの予測によると、この行動計画が実施された場合、2008-2015年に420万人以上の生命を救え、マラリア撲滅に向けた長期的な取り組みが可能になるという。国連関係者によると、全世界で109か国、33億人がマラリア感染の危険にさらされており、1年間で約100万人が死亡しているという。
米ソフトウエア大手マイクロソフト(Microsoft)の創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏とその慈善財団ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)は、次世代のマラリアワクチンの研究のため、マラリアワクチン・イニシアチブ(Malaria Vaccine Initiative)に1億6870万ドル(約180億円)を寄付する意向だという。
マラリアに悩まされているすべての国で、医療制度を強化するなどの方法でマラリアを完全に制御するためには、2009年にはおよそ53億ドル(約 5600億円)が必要になるという。さらに、2010年には62億ドル(約6600億円)、2011-2020年には毎年51億ドル(約5400億円)が必要になるという。(c)AFP
世界基金の第18回会議で、わが国のエイズ、結核症防御プロジェクトを承認
DATA: 2008-11-25
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(略称:GFATM)の第18回理事会が、2008年11月7日〜8日、インドのニューデリーで行われた。わが国の衛生部、中国疾患予防制御センター、またソロモン諸島及び西太平洋地域の代表などは、西太平洋地域理事代表団を組織して、本会議に出席した。
会議は理事会議長のラジャ・グプタ氏(Rajat Gupta)と副議長のエリザベス・マタカ氏が共同で主宰した。20の理事会メンバー代表団、世界衛生組織、国連エイズ合同計画、世界銀行の代表および国連事務局長結核症特使など、約300人が今回の会議に出席した。
会議ではGFATMの第8回のプロジェクトの申請を承認し、94のエイズ・結核・マラリア予防制御プロジェクトを承認した。これらのプロジェクトの最初の2年の経費は27.53億ドル、5年間の総計で58.4億ドルとされた。会議は、第8回プロジェクトの募集がとても大きな成功を得、申請数、申請額、評議委員会(TRP)が推薦したプロジェクトの数と割合ともにGFATM創立以来の歴史的記録を超えたと指摘した。それぞれの申請国家と地域は三つの病気の防御の必要を最大限に表し、パートナーの強力な支持のおかげで、プロジェクト申請書の質は大いに向上した。現在の世界金融情勢の変化により、金融危機がもたらした次回資金調達への圧力は増大し、現在の資金調達の規模から見れば、第8回に承認したプロジェクト次期の資金は25%不足する。理事会はプロジェクト資金の使用効率の向上を呼びかけ、プロジェクトの契約審査する段階で10%の予算削減を求めている。
わが国が中国世界基金プロジェクト国家協力委員会(CCM)の名義で申し込んだ「中国の七つの省が展開する、ゆるやかに流動する人々へのエイズ予防とキャンペーン活動」というエイズプロジェクトと「中国国内の弱者層と特定病院へのDOSTサービス提供」の結核プロジェクトは承認され、プロジェクトの5年間周期予算はそれぞれ4413万ユーロと8766万ユーロになる。
会議は第9回のプロジェクト申し込み期限を2009年6月1日まで延長することを決定し、理事会は2009年11月の第20回理事会で第9回のプロジェクトを審議、承認する。
会議では、GFATM理事会の2009年活動予算、負担可能な抗マラリア薬供給システムの初歩的な試験、GFATM基金の資金援助制度の変更、エイズに関わる旅行制限、性別平等対策などの問題について話し合われた。また会議では、少数のアフリカ国家でも負担が可能な抗マラリア薬の供給システムの初歩的な試験と試験実施後の評価実施について; GFATMの資金援助モデルの変更、すなわち「一つの疾病に一つの執行機関(PR)」に原則的同意し、この援助モデルを2010年から実施に移すべきこと;開始段階にある実施国は戦略的計画プロジェクトを申請すること;GFATMは申請国の3種疾病抑制のための国家計画支援のために最大限に使われることを決定した。会議はまた、GFATMのエイズ、結核およびマラリアの性別平等対策を承認し、その主旨はプロジェクト申請書の中で女性、児童と性的少数派の人々への援助を強化し、疾病の蔓延を阻止することを採択した。
スプーン1杯の砂糖でマラリアの子ども数千人を救える可能性も!?
* 2009年02月21日 01:19 発信地:パリ/フランス
【2月21日 AFP】スプーン1杯分の湿らした砂糖を舌下投与するだけで、マラリアで低血糖症になった数千人の子どもたちの命を救える可能性があるとする、新たな臨床研究の結果が発表された。
世界保健機関(World Health Organisation、WHO)によると、マラリアによる死亡者は年間100万人以上で、このうち80万人はアフリカの5歳以下の子どもたちだという。また現在、数億人単位で罹患(りかん)しているという。
重症のマラリアの場合、急激な血糖値の低下が頻繁に伴うが、アフリカのへき地に住む子どもたちの多くは、低血糖症の治療法として証明されているブドウ糖の静脈投与を受けに病院にたどり着く前に命を失っている。
フランス人医師のHubert Barennes氏は、サハラ以南のアフリカ諸国で公衆衛生サービスに携わっていた1987-2002年の間、突然の低血糖による深刻な影響を毎日のように目撃してきた。
同氏は、わずかな糖分の舌下投与で、少なくとも命を脅かすような症状を緩和できる可能性があると判断し、その考えを実行に移すことを決意。1990年代後半、ニジェールで地元の医師の協力のもと、砂糖による治療を開始した。それは効果が現われているようだった。
その後、さまざまな公衆衛生当局に砂糖による治療への資金援助を呼び掛け、2006年になってようやくマリで、同氏率いる十数人の研究チームが臨床研究を開始。スプーン1杯の砂糖で実際に命を救えることを初めて実証した。(c)AFP/Marlowe Hood and Christine Courcol
【DNDi・ペクール事務局長】顧みられない病気の新薬開発に向け、政府と産学の一体支援を
顧みられない病気の新薬開発を進める非営利団体「DNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative)」では、最も忘れ去られた病気と言われるアフリカトリパノソーマ症(眠り病)、シャーガス病、リーシュマニア病に焦点を当て、2014年までに6〜8種類の治療薬を提供するため、取り組みを加速させている。代表を務めるベルナード・ペクール事務局長は、本紙インタビューに応じ、「日本は政府のイニシアチブ、製薬企業の豊富な専門知識の両方を持ち、非常に可能性が高い」と期待感を示し、「金銭的なメリットはないが、世界的な評価が得られるという意味でも、ぜひ顧みられない病気の共同開発に一層の協力をお願いしたい」と訴えた。
DNDiは、07年3月に仏サノフィ・アベンティスと共同開発を進めたマラリア治療薬の合剤「ASAQ」を発売。08年4月には、ブラジルでマラリア治療薬の多剤混合剤「ASMQ」の承認を取得し、相次いで成功例を生み出した。
今年5月には、眠り病の新たな治療選択肢として、ニフルチモックスとエフロルニチンの併用療法(NECT)がWHOの必須医薬品リストに追加され、眠り病の患者に使えるようになった。既に、独バイエルがニフルチモックス、サノフィ・アベンティスがエフロルニチンをWHOに寄付することが決まっている。
ペクール氏は「これまで眠り病には、メラルソプロールという薬剤が第一選択として使われてきたが、非常に毒性が強かった。それをNECTで代替できるようになったことが重要だ」と意義を強調している。
同じく5月には、DNDiが創薬段階から関わった初の化合物で、眠り病が進行した第二期に有効なフェキシニダゾールについて、サノフィ・アベンティスと開発、製造、販売に関する協力協定を締結した。09年内には第I相試験をスタートできる見通しで、眠り病の治療法開発は一気に進み始めている。
一方、探索研究に関しては、韓国パスツール研究所と契約を締結し、リーシュマニア病の化合物スクリーニング施設を立ち上げた。世界的にリーシュマニア病患者が多いインドでは、中央医薬品研究所(CDRI)と共同でリード化合物の最適化を進めているところだ。
ペクール氏は「日本の製薬企業と知的財産保護や秘密保持に関する契約を締結した上で、化合物ライブラリーをスクリーニングさせていただき、有望な化合物があった場合には、一緒に共同開発を手伝ってほしい。金銭的なメリットはほとんどないが、国内外からの評価や社員の意識向上など、製薬企業として得るものは大きい」と協力に理解を求めた。
未だ低い認知度‐日本の役割大きく
昨年の北海道洞爺湖サミットでは、G8首脳宣言で顧みられない熱帯病の支援で合意したことが盛り込まれるなど、国際的な政府レベルでの関心は高まっている。ペクール氏は「シャーガス病、リーシュマニア病については、決して対策は十分とは言えないし、国際政治の中で大きな話題とはなっていない」と指摘。「まず、こうした(眠り病やシャーガス病などの)病気が存在し、われわれのような非営利組織が新薬開発を進め、解決策を試みていることを知ってもらうことが大切だ」と強く主張する。
その上で、ペクール氏は、日本の北里研究所で発見されたイベルメクチンが、米メルクからの無償提供を受け、広くアフリカでオンコセルカ症の特効薬として使用されてきたことを挙げ、「日本発の医薬品がアフリカの顧みられない病気に大きく貢献し、多大な恩恵をもたらした実例がある」と強調し、「顧みられない病気の新薬開発について、日本に一層の協力をお願いしたい」と訴えている。
特にペクール氏は、1997年のデンバーサミットで、故橋本龍太郎元首相が寄生虫症の国際的対策の重要性を訴えた「橋本イニシアティブ」、00年の九州・沖縄サミットで発表された「沖縄感染症対策イニシアティブ」など、日本政府の積極的な取り組みを高く評価。「今後も継続して具体的な対策を進めていただくようお願いしたい」と要請した。同時に、製薬企業や大学、研究機関とのパートナーシップの重要性を強調。「政府の支援、産学協力の両方があってこそ、顧みられない病気の新薬開発を促進できる。その意味で、非常に高い可能性がある日本に大きな期待を持っている」と期待感を示した。
2009.08.04 Web posted at: 19:32 JST Updated - CNN
悪性マラリア、起源はチンパンジーと 米独研究
(CNN) 米国やドイツの研究者が3日、マラリアの中で一番悪性の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の起源はチンパンジーだとする研究結果を、米科学アカデミー紀要(PNAS)電子版に発表した。
マラリアは世界で年間約5億人が感染し、100─300万人が死亡する感染症。熱帯から亜熱帯に広く分布し、蚊が原虫を媒介して感染する。特に、サハラ以南のアフリカ諸国で多くの死者が出ている。
また、原因となる原虫の中でも、熱帯熱マラリア原虫による症状が最も重いことで知られる。
米マサチューセッツ大学アマースト校とスタンフォード大学、カリフォルニア大学アーバイン校、ドイツ・コッホ研究所などの研究者は、熱帯熱マラリア原虫の遺伝子を解析。同時に、アフリカ中央部カメルーンとコートジボワールに生息するチンパンジーに感染するチンパンジー・マラリア原虫(Plasmodium reichenowi)の遺伝子を分析し、比較した。
その結果、両者は共通の祖先を持ち、約500─700万年前に熱帯熱マラリア原虫が分岐し、進化したと推定できるという。
マラリア、起源はチンパンジーの可能性=米研究
(ロイター - 08月05日 13:45)
[ワシントン 3日 ロイター] 米研究チームが3日、マラリアはエイズと同様に、もともとチンパンジーからヒトに感染した可能性があると報告した。カリフォルニア大学アーバイン校のフランシスコ・アヤラ氏のチームが「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表した。
研究チームでは、ほとんどのマラリア感染例の原因となっている寄生虫がチンパンジーにみられる寄生虫と遺伝子的に類似しているという証拠を発見。遺伝子分析の結果、ヒトの寄生虫はチンパンジーの寄生虫から直系の派生であることが示されたという。
また、このマラリアの原因となる寄生虫がチンパンジーからヒトへと伝染した時期については、約1万年前と推定している。
同チームでは、研究結果がマラリアの予防ワクチン開発につながることを期待している。
【星薬発ベンチャー「シンスター・ジャパン」】国際貢献を旗印に起業‐日本発の熱帯病薬を開発へ
星薬科大学発ベンチャーのシンスター・ジャパンは、マラリア等の熱帯病治療薬の開発を目指して立ち上がった。科学技術振興機構(JST)の支援を受け、見捨てられた途上国の患者を救う国際貢献を旗印に、定年を迎えた大学、企業の有機合成研究者が一肌脱ごうと結集した。既に、マラリア治療薬として有望な候補化合物のベンゾフェノキサチン誘導体を見出し、スイスの非営利組織「メディシン・フォー・マラリア・ベンチャー(MMV)」の開発プロジェクトに支援を申請。臨床試験の実施に向け、採択されるかどうか大きな関門に差しかかっている。代表取締役社長の伊藤勇氏は、「われわれが強みとする合成技術によって、何とか日本発の国際貢献を果たしたい」と意気込みを語っている。
シンスター・ジャパンは、井原正隆星薬科大学特任教授(東北大学名誉教授)の研究成果を背景に設立された。共同設立者には、富士フイルム出身の伊藤氏が代表取締役として名を連ね、同僚だった阪之上清以紀氏が取締役、富樫博之氏が科学アドバイザーとして参画。いずれも定年を過ぎた研究者が、国際貢献の旗の下に結集した。
同社がターゲットとするのは、未だ有効な治療薬が存在しないマラリア、リーシュマニア病、アフリカ睡眠病などの原虫疾患治療薬。日本の合成技術で治療薬を開発し、途上国の患者に貢献することを目的に掲げる。伊藤氏は「もともと利益を追求する気持ちはないが、公的資金だけではやっていけないのも事実」と言う。そこで、有機合成研究者が集まる強みを生かし、受託合成で収入を確保することにした。自ら開発資金を調達し、熱帯病治療薬の開発に充てる方針だ。
これまでに、経口マラリア治療薬の候補化合物「ベンゾフェノキサチン誘導体」の合成に成功した。既に動物実験は、非GLP試験まで実施し、既存薬に比べて高い活性を示すことが分かっている。こうした成果をもとに、MMVの開発プログラムとして支援申請を行った。現在、開発支援が得られるかどうか回答待ちの状況にあるが、MMVの支援が得られることになれば、同社にとって大きなマイルストーンを達成することになりそうだ。伊藤氏は「この関門を超えなければ前に進めない」と力を込める。
マラリア治療薬には、市場拡大の見通しもある。世界保健機関(WHO)は、数年後にはマラリア治療薬市場が約1000億円規模に拡大すると予想。伊藤氏は「地球温暖化でマラリアを媒介する蚊が沖縄まで来ていることを考えると、先進国でもマラリアが大きな問題になる可能性がある」と、ビジネスの可能性も指摘する。
さらに、マラリアの撲滅は、途上国に大きな経済効果をもたらすと見られ、貧困と熱帯病の負の連鎖を断ち切るために、日本の合成技術が貢献できる部分は少なくない。その一つが同社の目指す熱帯病治療薬の開発と言える。伊藤氏は、「本当はもっと若い人が関心を持ち、飛び込んできてもらいたいが、現状ではリスクが大きくて難しい。そのためにも、命を救うという尊い目的に対し、政府や製薬企業からの資金提供をお願いしたい」と支援を訴えている。
一方、井原教授は、リーシュマニア病を完治させる可能性がある新規候補化合物「ロダシアニン誘導体」を開発。医薬基盤研究所の委託研究として、星薬科大学でロダシアニン誘導体の研究を進めている。スイスの非営利組織「DNDi(顧みられない病気のための新薬開発イニシアチブ)」への相談も進めており、リーシュマニア病治療薬の開発に向けた道筋も探り始めている。
当面の課題は、マラリア治療薬のベンゾフェノキサチン誘導体が、MMVのプロジェクトとして採択されるかどうかになる。もし順調にいけば、来年にもMMVの支援を受け、非臨床試験、さらに臨床試験へと開発を進めたい考えだ。
野口英世賞英博士が基金、アフリカ医療人材育成
政府の「第1回野口英世アフリカ賞」を昨年受賞したロンドン大学教授、ブライアン・グリーンウッド博士(71)が、同賞の賞金1億円を全額寄付し、アフリカ医療のリーダーを育成するための「アフリカ・ロンドン・ナガサキ(ALN)奨学基金」を創設した。
アフリカで博士とともに診療にあたった弟子の長崎大熱帯医学研究所(長崎市)の有吉紅也(こうや)教授(50)らが共同で運営する。
グリーンウッド博士は、西アフリカのナイジェリアとガンビアで約30年間、臨床医として診療を続けながらアフリカ人が最も感染を恐れるマラリアを研究し、数多くの論文を発表してきた。四輪駆動車で各地の村を回り、殺虫剤を染み込ませた蚊帳の効果を証明して普及させるなど、世界保健機関(WHO)や国連児童基金(ユニセフ)の政策にも大きな影響を与えた。アフリカ医療に現場で尽くした姿は「現代のシュバイツァー」とも呼ばれる。
有吉教授は感染症学が専門で、1992年から4年間、ガンビアにある英国の研究所で博士と共に診療にあたるなど親交がある。昨年5月、野口英世アフリカ賞授賞式のため来日した博士に賞金の使い道を尋ねたところ、博士は「アフリカ医療に貢献する人材育成に充てたい」と打ち明け、基金創設の話が持ち上がった。
有吉教授は「発展途上国での医療を志す日本の医師たちにも博士の存在を知ってほしい」と考え、日本の大学と連携した制度を提案したという。
基金はこの2人のほか、アフリカ人らも加わり計7人で運営する。毎年、アフリカ人研究者4人に最高で各500万円の奨学金を支給し、ロンドン大の遠隔教育か長崎大に留学する形で熱帯医学を学んでもらう。
今月9日から基金のホームページで募集を始めたところ、既に500件を超える応募が寄せられた。12月まで募集し、来年1月に選考、採用者は10月に長崎大かロンドン大に入学する。
(2009年11月25日 読売新聞)
2010.03.20 Web posted at: 17:23 JST Updated - CNN
マラリアを媒介する「蚊」を使って「ワクチン接種」に成功
(CNN) 毎年100万人の死者を出す原虫感染症「マラリア」を媒介する「蚊」を使って、マラリアの「ワクチンを接種する」研究が進んでいる。マウスを使った実験では、ワクチンの媒介役として成功したと、自治医科大学の吉田栄人准教授が英国の昆虫分子生物学専門誌に研究成果を発表した。
世界保健機関(WHO)によると、世界では毎年、約2億5000万人がマラリアに感染し、約100万人が死亡。アフリカでは子供の死因の2割がマラリアとなっている。
吉田准教授の研究チームは、マラリアを媒介するハマダラカを遺伝的に操作。マラリア原虫の増殖を阻害する物質を作らせたり、唾液腺に別の遺伝子を組み込んで発現させることに成功している。
蚊の唾液にワクチンを発現させることができれば、蚊に刺されることで病原菌ではなく、ワクチンを体内に注入することができるようになる。
吉田准教授は、遺伝操作した「蚊」による「ワクチン接種」は痛みもなく、費用もかからない手法だとして、実用化を目指している。
Twitterで著名人がつぶやくマラリア撲滅キャンペーン ビル・ゲイツ氏も参加
ビル・ゲイツ氏やヨルダンのラニア王妃などの著名人が、総勢5000万人のTwitterフォロワーにマラリア撲滅のための寄付を呼び掛ける。(ロイター)
2010年04月22日 13時38分 更新
元米国務長官のコリン・パウエル氏、米Microsoft会長で億万長者のビル・ゲイツ氏、ヨルダンのラニア王妃らは今週、自らの知名度を生かして、マラリア撲滅のためのTwitterキャンペーンに参加する。
このキャンペーンにはほかにも、俳優のアシュトン・カッチャーや人気司会者のライアン・シークレストなど、ハリウッドの著名人たちが参加を表明している。4月21日から始まるこのキャンペーンでは、参加者はTwitterに「つぶやき」を投稿し、アフリカにおけるマラリア感染防止のための蚊帳の購入費用の寄付を呼び掛ける。
またゲイツ氏は21日、マラリアをはじめ、各種の疫病対策を推進するためのテレビのチャリティ番組「Idol Gives Back」にも出演する。
Twitterを使った今回の資金集めキャンペーンの主催者は、国連マラリア特使のレイ・チェンバーズ氏とも協力している。
「このキャンペーンは、1人の子どもの命を救うために蚊帳代10ドルの寄付を募るという、これまでに何度か行われてきた募金活動の一環だ。今回は、わたしがこれまでに見てきたほかのどのキャンペーンよりも大きな手応えを感じている」とチェンバーズ氏はReutersの取材に応じ、語っている。
世界では年間100万人以上がマラリアで死亡しており、特にアフリカで深刻な問題となっている。
国連は2015年までにアフリカでのマラリアによる死者数をゼロに近付けることを目指している。これまでのところ、マラリア撲滅のために40億ドル以上の資金が集められており、その大半は、世界銀行、各国政府機関、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からのものという。
国連はアフリカの8億人の人たちを蚊帳によってマラリア感染から守りたい考えだが、そのために約5000万張の蚊帳を購入するには資金がまだ足りない、とチェンバーズ氏は言う。 フォロワーは総勢5000万人
全米ナンバーワンの視聴率を誇る人気オーディション番組「American Idol」では21日、米国の貧しい人たちや子供たちのためのチャリティー企画「Idol Gives Back」が放送され、この番組でも、マラリア撲滅のための寄付が呼び掛けられる。
同番組のスポンサーには、News Corp.、Ford Motor、Exxon Mobil、AT&T、Coca-Colaなどの企業が名を連ねている。
なお、今回のTwitterキャンペーンにはこのほか、バスケットボールのスター選手シャキール・オニールやトークショーの人気司会者ラリー・キング、歌手のジョーダン・スパークス、英国のゴードン・ブラウン首相の妻であるサラ・ブラウン夫人なども参加する予定という。
「まず気付くことが行動の必須条件だ。何か不公平な状況があっても、そのことを知らないままでは、問題解決のために戦うこともないだろう」とブラウン夫人はReutersの取材に応じ、メールで語っている。
今回のTwitterキャンペーンは、そうした関心を高めるための方法となる。なにしろ、参加者全員を集めればTwitterのフォロワー数は総勢5000万人にものぼる。
主催者によると、このキャンペーンを通じてどのくらいの寄付が集まるかは分からないという。また、このキャンペーンを思い付いたのは、1年前に俳優のアシュトン・カッチャーと米テレビ局CNNが「どちらが先にTwitterのフォロワー数が100万人を超えるか」を競い合っていたのがきっかけとのこと。
この競争に勝利したあと、カッチャーはマラリア撲滅に取り組むNGO団体「Malaria No More」に10万ドルを寄付した。Malaria No Moreは今回のTwitterキャンペーンでも恩恵を受ける見込み。
またCase Foundationは今年、このキャンペーンで集まった寄付金と同額の寄付を2万5000ドルを上限に行うことになっている。
「この取り組みによって、蚊帳を必要としている人たちのために実際に蚊帳を購入するための資金が集められるということだ」とTwitterの共同創業者ビズ・ストーン氏は語っている。今回のキャンペーンでは、同氏もつぶやきを投稿する予定。
「始まりはほんの小さなつぶやきでも、それが現実社会に実に大きな変化をもたらすことになる」とさらに同氏。
今回のTwitterキャンペーンは、世界マラリア・デーである4月25日まで続けられる。年内に再度実施も予定されている。
[サンフランシスコ 22日 ロイター]
2010/08/23 11:48:22
「アフリカに愛の蚊帳を」
22日夜、ソウル広場で、マラリアの恐怖と背中合わせで生きているアフリカの人々を思い、支援するためのキャンペーン「ナイト・イン・アフリカ−セーフ・フロム・マラリア」が行われた。写真は、発光ダイオード(LED)のライトをともし、蚊帳で過ごす人々。
これは、アフリカで一日平均3000人の子供たちがマラリアにより命を奪われていることをを世界に伝え、予防のため蚊帳を送ろうという、国連財団のキャンペーンの一環だ。
NEWSIS/朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/news/20100823000042
精子の無いオスの蚊、マラリア感染防止に効果 英研究
2011年08月10日 08:14 発信地:ワシントンD.C./米国
【8月10日 AFP】アフリカを中心に年間80万人近くが犠牲になっているマラリアは、媒介するハマダラ蚊(カ)に精子の無いオスを導入することにより、感染拡大を防げるとする研究成果が、8日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。
英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究チームは、ハマダラ蚊の卵に精巣の発達を妨げるたんぱく質を注入し、精子を持たないオスの蚊を100匹作製。実験室の中で交尾活動を観察した。
するとオスは精液を生産し、メスもこれらのオスと交尾した。メスは通常通り、交尾のあと、生まれてくる幼虫の栄養分として血を吸い、卵を産んだ。卵は無精卵で、幼虫が生まれてこなかったにもかかわらず、メスは再び交尾しようとはしなかった。
ハマダラ蚊のメスは生涯に1度しか交尾しないため、以上の発見はマラリアに対して大きな意味合いを持っている可能性を示唆しているという。(c)AFP
世界のマラリア死者、10年で38%減 対策団体「撲滅が視野」
2011/9/14 10:00
マラリア対策の蚊帳は日本の住友化学が殺虫剤を繊維に練り込むことで効果が長く続く製品を開発。アフリカで広く使われている。
エクソンモービル、世界石油会議世界大会で技術・社会開発部門の優秀賞を受賞
発表:Exxon Mobil Corporation
2011-12-07 15:56:00
(カタール・ドーハ)- (ビジネスワイヤ) -- 数千フィートの水および岩盤の下に蓄積された石油・ガスを直接検知する方法の改良と、アフリカのマラリア流行地域での蚊帳使用拡大に向けた革新的キャンペーンにより、エクソン モービル コーポレーション(NYSE:XOM)は本日、カタールのドーハで開かれた世界石油会議世界大会で2つの優秀賞を受賞しました。
The WPC Excellence Awards were presented by His Excellency Abdullah bin Hamad Al-Attiyah, Deputy Prime Minister and Chairman of the Administrative Control and Transparency Authority, and accepted by Rex W. Tillerson, Chairman and Chief Executive Officer of Exxon Mobil Corporation. (Photo: Business Wire)
この技術開発と社会的責任に関する賞は、副首相兼行政管理透明局長のアブドラ・ビン・ハマド・アル・アティーヤ閣下からエクソン モービル コーポレーションのレックス・W・ティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)に贈呈されました。
技術開発の賞は、ExxonMobil Upstream Research Companyが開発した特許技術のR3M(Remote Reservoir Resistivity Mapping)に対して贈られました。
音波を使用する地震探査技術とは異なり、R3M技術は人工的な電磁エネルギーを利用して海底下のさまざまな層の抵抗率を検知します。そのため、R3Mは小型の電磁波源で最適な性能を維持することができます。
R3Mは、試掘井1本に1億米ドル以上の費用がかかる深海での海洋探査活動の成功率向上に向けて開発されました。過去10年間にエクソンモービルはR3M技術を用いた海洋調査を70件以上実施し、その70パーセント以上で予測された地質環境が正確に確認されました。
詳細な安全性試験が実施され、海洋生物への影響は観察されていません。
社会的責任の賞は、エクソンモービルとラレラ・プロジェクトの協力によりマラリア・ノー・モアが構築したナイトウオッチ・プログラムに対して贈られました。このプログラムでは、蚊が飛び始める午後9時に、アフリカで最も人気のある有名人による蚊帳使用の呼び掛けがテレビやラジオで放送され、ショートメッセージが送られます。アフリカで最も有名な20人以上のミュージシャン、地域リーダー、運動選手が参加し、参加国で900万人以上にメッセージを届けています。
ナイトウオッチ・プログラムは、2010年にセネガルとタンザニアで始まり、現在はカメルーンとチャドで実施しています。
この優秀賞は、石油・ガス業界で最も権威ある賞の1つです。世界石油会議が3年ごとに開かれる世界大会の期間中に贈呈しているこの賞は、優れた成果を上げているプロジェクトや技術革新に対して、公共・民間の企業や団体を表彰しています。今年、世界石油会議世界大会の優秀賞には100件を超える応募がありました。
ExxonMobil Upstream Research Companyのサラ・オートワイン社長は、次のように述べています。「エクソンモービルは、エネルギー資源の発見を助け、エネルギーの有益な利用法を見つけて経済成長と環境を支えるための研究開発に年間10億米ドルを超す投資を行っています。R3Mは、何十年にもわたり継続的に利益をもたらす当社の人間・技術投資の一例です。」
エクソンモービル基金のスザンヌ・マッキャロン理事長によれば、エクソンモービルはマラリアとの戦いに2000年以来1億ドル以上を投資しています。
マッキャロンは、次のように述べています。「2007年からマラリア・ノー・モアの主要パートナーを務めているエクソンモービルは、このマラリア予防に取り組む団体に1400万米ドルを寄付しています。ナイトウオッチは毎晩、数百万人のアフリカ人に対してマラリアが予防・治療可能な病気であることを伝えています。」
エクソンモービルについて
国際的石油・ガス上場企業として最大のエクソンモービルは、世界の増大するエネルギー需要に対応するため、テクノロジーとイノベーションを活用しています。エクソンモービルは、業界トップクラスの資源在庫を保有する最大の製油業者かつ石油製品の販売業者です。その系列化学企業は世界最大の企業の1つです。詳細情報についてはexxonmobil.comをご覧ください。
マラリア・ノー・モアについて
マラリア・ノー・モアは、2015年までにアフリカでのマラリア死をなくすことに注力している非営利団体です。マラリア・ノー・モアはインパクトの強い啓発活動を活用し、運動を加速するために指導力や戦略的投資の結集を世界中に呼び掛けています。
写真とマルチメディア・ギャラリーはこちらをご覧ください:http://www.businesswire.com/cgi-bin/mmg.cgi?eid=50094769&lang=ja
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+1-713-656-4376 Houston
マラリア予防の新ワクチン、蚊に刺されたのと同じ効果で 米研究
AFP BB News
2013年08月09日 17:19 発信地:ワシントンD.C./米国
【8月9日 AFP】蚊に刺された時と似た効果によってマラリアを予防する新しいワクチンの研究報告が8日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。このワクチンを接種した数十人に100%の予防効果がみられたことから、研究の初期段階で確実性の高い効果が示された。
この新ワクチンは、米メリーランド(Maryland)州に本社を置く製薬会社サナリア(Sanaria)が製造した実験用ワクチン「PfSPZ」。蚊の唾液腺から採取した生きたマラリア原虫を使用している。
スポロゾイト(種虫)として知られるこの原虫は、蚊の唾液腺の外では弱体化するので病気を発症させることはない。これをワクチンに注入し、約1か月の間隔を空けて数回、人の血管に注射して投与する。
同じワクチンを使った2年前の臨床試験では、多くのワクチン接種と同様に皮下注射によって投与したが、被験者44人中で2人にしか効果がなかった。
一方、最新の試験では、ワクチン接種1回ごとのスポロゾイト投与量を最大の13万5000匹とし、それを被験者6人に5回にわたって静脈注射したところ、全員にマラリア予防効果があったという。
同様に最大の投薬量を4回にわたって注射した他のグループでも、9人中6人にマラリアへの完全な予防効果があった。
世界保健機関(World Health Organization、WHO)によると、マラリアのワクチンは市場に流通しておらず、2010年には世界で約2億2000万人がマラリアに感染し、うち66万人が死亡している。死亡者のほとんどはアフリカに住む子供だという。
研究を主導したサナリアのスティーブン・ホフマン(Stephen Hoffman)氏は、放射線で弱体化させた熱帯性マラリアの原虫に1000回以上刺された被験者の9割にマラリア予防効果があったとする1970年代の研究結果に着目していたという。
ホフマン氏によれば、ワクチンの予防効果は接種後6〜10か月。その他のマラリア原虫でも同じ予防効果があるのか、まだ確認が必要だ。タンザニア、ドイツ、米国での小規模な臨床試験を経て、4年後には市場で流通させたいとしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN
マラリア予防の新ワクチン、蚊に刺されたのと同じ効果で 米研究
マラリア予防ワクチンで「画期的成果」、米衛生研など
cnn.co.jp
2013.08.09 Fri posted at 10:42 JST
(CNN) 米国立衛生研究所(NIH)などの研究チームは8日、蚊が媒介するマラリア予防ワクチンの臨床試験で画期的な成果が出たと発表した。
臨床試験では被験者数十人に、2011年10月から12年10月にかけてワクチンを数回にわたって静脈内投与した。その結果、ワクチンを5回投与した6人は全員が、マラリアの原因となる寄生原虫の熱帯熱マラリア原虫にさらされても発症しなかったという。研究チームはこの結果について、マラリアワクチンの臨床試験として初めて100%の確率で感染を予防することに成功したとしている。
一方、ワクチン投与が4回だった9人の中では3人が発症した。ワクチンを投与しなかった被験者は12人中11人が発症したという。
ワクチンは米製薬会社のサナリアが開発したもので、熱帯熱マラリア原虫に放射線を照射し、凍結させて製造した。臨床試験はNIHや米陸軍、海軍などの研究機関が実施。特許はサナリアが保有している。
今後さらに対象を広げて臨床試験を実施する必要はあるが、今回の結果は非常に有望だと研究チームは解説する。この研究結果は8日の科学誌サイエンスに掲載された。
マラリアは世界で年間2億人以上が感染し、2010年だけで約66万人が命を落としている。
サナリアなどは、3〜4年以内にワクチンの効果を科学的に実証し、認可を得て流通準備が整うとの見通しを示している。一方で、今回の治験にかかわっていない別の専門家は、流通までには8〜10年はかかると予想した。
★アフリカビジネスニュースより★
マラリア媒介蚊、殺虫剤への抵抗力獲得メカニズムが明らかに
2014年3月10日 16:00
●リバプール熱帯医学校のチーム解明
亜熱帯・熱帯地域に多く、迅速かつ適切な対処をしないと、短期間で重症化あるいは死亡に至る危険性がある疾病「マラリア(Malaria)」。旅行者の疾患でも多いこの病気は、蚊が媒介していることが明らかになっている。
このため、マラリア予防のためにDDTやその他の殺虫剤で蚊の駆除が行われてきたが、時間の経過とともに、蚊が耐性を持ち始めている。こうした状況を受け、蚊がどのように殺虫剤への抵抗力を獲得したか、リバプール熱帯医学校のCharles Wondji氏の研究チームが仕組みを解明した。
●分子レベルで破壊し、毒性を無効に
専門誌ゲノム・バイオロジー(Genome Biology)に掲載された研究論文によると、「GSTe2」と呼ばれる代謝に関する遺伝子が突然変異することで、蚊が殺虫剤を分子レベルで破壊し、毒性を無効にすることができるようになるという。
研究チームは、アフリカ・ベナンに生息する、殺虫剤に抵抗力がある蚊のゲノムを解析。抵抗力がない蚊と比較し、さらに他地域に生息する抵抗力のある別の蚊も調査し、「L119F」と呼ばれる突然変異が共通項になっていることを突き止めた。
DDTについては、環境に悪影響を与えることを理由に、多くの国が数十年前から使用を禁止しているが、貧困国では依然、蚊を駆除するための重要な手段となっている。
マラリアの原因解明へ…変異速度80倍の原虫作製
The Yomiuri Shimbun
2014年03月27日 10時40分
群馬大大学院の平井誠講師(分子寄生虫病学)らの研究グループは26日、通常の約80倍の速さで突然変異を引き起こす特殊な「マラリア原虫」の作製に成功したと発表した。マラリアの原因解明、治療法確立のスピードアップに役立つことが期待されるという。
マラリアはハマダラカという蚊が運ぶ「マラリア原虫」が引き起こす感染症。高熱や下痢、頭痛などの症状が出て、年間約200万人が死亡すると推計されている。
研究グループは、ネズミに感染するマラリア原虫の一部を遺伝子操作。原虫が持っている修復機能を部分的に低下させた上で、実験用マウスに感染させた。投与を繰り返すと、従来のマラリア薬が効かないマウスが出てきた。解析した結果、遺伝子操作を施した原虫は、通常より約80倍のスピードで突然変異を引き起こしていたことがわかった。
平井講師は「マラリア原虫が、薬に対する耐性を獲得するメカニズムを、短時間で再現することが可能になる。新薬開発に貢献できる」と期待している。
2014年03月27日 10時40分
マラリア判定、精度99% シスメックスが新技術
nikkei.com
2015/3/13 23:22
■シスメックス 世界三大感染症の一つであるマラリアに感染したかどうかを99%の精度で判別する技術を開発した。血中の細胞を染色し、青色のレーザー光を使って分析する。同社が得意とする血球などの計測技術を応用した。2016年度にもアジアやアフリカの新興国向けに装置を販売する。
2分程度でマラリアの種類や重症度を高精度で測定できる。従来は判定の難しかった致死率の高い「熱帯熱マラリア」も血液から簡単に自動検出できる。マラリアは年間約2億人が罹患(りかん)し、年58万人が死亡するとされる。従来の診断技術は精度が低く、マラリアの種類によっては判定できないケースがあった。
中国人薬学者の屠ユウユウ氏は博士号も留学もない「三無教授」だった…中国で“偽物”じゃないと称賛の嵐
The Sankei Shimbun
2015.10.6 09:00
【北京=川越一】今年のノーベル医学・生理学賞に中国人として初めて女性薬学者の屠ユウユウ氏(84)が選ばれ、中国国内で反響が広がっている。
中国人では最近、2010年に民主化活動家の劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞。12年には作家の莫言氏が文学賞を受賞した。しかし、中国本土の科学者がノーベル賞を受賞できない状況に、「中国に真の科学者はいない」といった自虐的な声が挙がっていた。
屠氏の受賞が伝えられると、中国のネット上には「屠ユウユウは中国籍で、真の中国人だ。偽物の洋鬼子(西洋人)ではない」「本当の意味での、初めての中国人の受賞だ」などと称賛する書き込みが殺到した。
屠氏は1930年、浙江省寧波市に生まれた。北京大医学院で、中国では人気が低かった生物薬学を学んだ。漢方薬などを研究し、中国中医科学院の主席科学者に就任したが、博士号や海外留学経験を持たず、学士院会員でもない「三無教授」として知られていた。
文化大革命の時代に、ベトナム戦争の戦地や中国南部でマラリアによる死者が増加。屠氏は、古来より伝わる中国全土の漢方薬を試し、1600年前の文献からマラリアに効果がある調合法を見つけ出した。
2011年に、米国で最も権威ある医学賞でノーベル賞の登竜門ともいわれるラスカー賞を受賞した際、屠氏は「幼い頃、民間の中国医が患者を救う姿を目の当たりにした」などと、受賞の喜びを語っていた。
※ユウは「口へんに幼」