『遺伝子操作と法――知りすぎる知の統制』
保木本 一郎 19940130 日本評論社,322p.
last update:20160912
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保木本 一郎 19940130 『遺伝子操作と法――知りすぎる知の統制』,日本評論社,322p.
ISBN-10: 4535581541 ISBN-13: 978-4535581548 5500+税
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[kinokuniya] g01 gc be eg wl l05 r10 ※
■内容
本書では、遺伝子操作研究を中心に、優生学的思考回路が織りすいくつかの領域について、主として憲法学の角度から批判的検証を試みる。
遺伝子工学の法的統制論序説、科学技術の公法的統制論などで構成する。
■目次
はしがき
序章 はじめに――現代科学技術と法
第一節 技術の導入とアセスメント
第二節 住民参加による価値の選択
第三節 行政手続と住民参加
第四節 生命倫理と技術者の社会的責任
第五節 小括
第一章 遺伝子工学の法的統制論序説――憲法学的アクセス
第一節 問題の所在
第二節 「モデル概念」としてのクローニング
第三節 クローンのケース・スタディ
第四節 修正一四条のプライバシーの権利
第五節 修正一三条と「遺伝的束縛」(genetic bondage)
第六節 臓器のスペア銀行としてのクローン
第七節 結語
第二章 いのちと法――出生・生存・死をめぐる選択とバイオ・エシックス
第一節 はじめに
第二節 人工授精の諸問題と生命倫理
第三節 ネオ優生学の台頭
第四節 生殖技術と生命倫理の衝突
第五節 クローンと臓器移植
第六節 Wrongful Life Action(生まれてこなければよかったという訴訟)
第七節 脳死をめぐる法的問題とパターナリズム
第八節 正義と平等をめぐる法哲学上の問題
第九節 医師と患者の三つの関係タイプ
第一〇節 市民参加による生命工学の統制
第三章 科学技術の公法的統制論――遺伝子工学を中心とする知の自己統制
序節 現代における生活危険と知の状況
第二節 ヒトゲノム解明と知のマーケット
第三節 研究の自由と憲法的統制
第四節 遺伝子工学の実体的統制
第五節 法的統制の限界とその超克
結語 知の自己統制
第四章 ドイツにおけるゲノム解析をめぐる憲法論
第一節 序説
第二節 基本権とゲノム解析
第三節 ゲノム解析と自己情報決定権
第四節 基本権の放棄
第五節 立法行為の必要性
第六節 結びにかえて――遺伝的決定論(Genetic Determinism)
第五章 人間・胎児を被験者とする人体実験と法
第一節 問題設定
第二節 論点
第三節 治療目的の実験
第四節 治療目的を欠いた人体実験
第五節 同意の必要性とその操作
第六節 同意の許容性の制限論
第七節 同意の許容性の緩和論
第八節 胎児研究の問題点
第六章 遺伝病スクリーニングと知りすぎる知の統制
第一節 問題の所在
第二節 論争概念としての三つのケースの設定
第三節 遺伝相談の人権的論点
第四節 遺伝学をめぐる基礎知識と先天異常
第五節 胎児スクリーニングと道徳的ディレンマ
第六節 客観的であり続けることの困難さ
第七節 知る権利
第八節 カウンセリングの将来の人間の生命に関する効果
第九節 遺伝子大量集団スクリーニング
第一〇節 強制スクリーニングか自発的か
第一一節 ハンチントン舞踏病のスクリーニング:知ることの悲劇
第七章 遺伝子治療(gene therapy)と人間改造(euphenics)
第一節 はじめに
第二節 遺伝的負債(genetic liability)
第三節 危険と同意
第四節 個体の利益と種の利益
第五節 人間の操作(manipulation)
第六節 決定の社会的コンテクスト
第七節 優生学・人間改造計画とそのインパクト
第八節 優生学の投げかける問題
第九節 遺伝子操作と倫理
第一〇節 現代優生学と道徳問題
第八章 遺伝子・胚子操作研究の憲法的統制
第一節 問題の所在
第二節 研究の自由をめぐる憲法上の問題状況
第三節 実定法による研究規制とその問題点
第四節 遺伝子操作研究と人間の尊厳
第五節 結語
終章 知の新しい在り方への展望
索引
■関連書籍
◆Wexler, Alice 1995 Mapping Fate: A Memoir of Family, Risk and Genetic Research, University of California Press =20030925
武藤 香織・額賀 淑郎 訳,『ウェクスラー家の選択――遺伝子診断と向きあった家族』,新潮社,361p.
ISBN:4-10-543401-2 欠品 [amazon]
/[kinokuniya] ※
cf. http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1990/9500wa.htm
■引用
第六章 遺伝病スクリーニングと知りすぎる知の統制
第二節 論争概念としての三つのケースの設定
一 若い夫婦の最初の子供が血友病(hemophilia)に罹患していた。この病気は、ほぼ男のみに発病し、
どんなに小さな傷であっても血液が凝固せず出血が続くという伴性X連鎖遺伝病(sex-linked hereditary disease:X染色体の上に連なっている遺伝子による病気)である。
彼らのホームドクターは、二人の将来の子供が同様の病気にかかる可能性があるかどうかについて、遺伝病カウンセラーに相談するように推奨した。
女の胎児は、血友病の原因となる遺伝子のキャリヤーであっても、女性には病気は発現しないと教示された。その後、妻が再び妊娠したので、カウンセラーに再度相談に行った。
カウンセラーは、胎児が男性がどうかについて羊水穿刺(amniocentesis)の検査を受けることを勧めた。
このテストはその時点では、病気を探知することはできないが、性別判定のみ可能であることを告げた。結果は、胎児は男性であった。
カウンセラーは母に対して、胎児の罹患率は五〇パーセントであることを告げた。
そして、危険を侵すよりは中絶をすれば、健康な子供を生むことができると示唆した(intimate)。彼女はこのアドバイスに従った。
ここでは、血友病に罹患していない可能性のある胎児が、その生命を抹殺されたことになる。(p.197)
*「血液が凝固せず出血が続く」という記述は不正確。血友病者も出血は凝固するが、「凝固に長い時間がかかる」困難がある。
■言及
◆北村 健太郎 20140930 『日本の血友病者の歴史――他者歓待・社会参加・抗議運動』,生活書院,304p.
ISBN-10: 4865000305 ISBN-13: 978-4-86500-030-6 3000+税
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■書評・紹介
*作成:北村 健太郎