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遺伝子…


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last update: 20150916


■新着

◆小椋 宗一郎 2011/09 「「遺伝子差別」文献表、引用とコメント」

■本サイト内関連頁



遺伝子…・2001遺伝子…・2002
遺伝相談
遺伝子検査(と雇用・保険)
遺伝子治療
クローン
遺伝学
優生学  ◆genetic supermarket|遺伝子のスーパーマーケット
◆遺伝子プール gene pool(↓)


出生前診断

◆遺伝子がかかわる病・障害
 ◆ADA欠損症 428
 ◆血友病 267,431,436
 ◆ダウン症
 ◆テイ=ザックス病 439
 ◆ハンチントン(舞踏)病 315,316,365,372,438,440
 ◆フェニルケトン尿症

 ◆遺伝子組換え作物

■新?着(ではありません)

瀬戸山 晃一 20020320 「遺伝子情報異質論の批判的検討:遺伝子情報の特殊性と他の医療情報との区別可能性――果たして遺伝子情報は独自の特質を有しているのか?」
 『医療・生命と倫理・社会』Vol.1 No.2
 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/eth/OJ1-2/setoyama.htm
◆2001/01/25 日本衛生検査所協会、遺伝子検査の倫理指針まとめる(↓)
◆2001/05/31 日本人類遺伝学会・遺伝子診断専門医制度設置へ
◆2001/10/04 <遺伝子>病気のかかりやすさ左右するSNPを15万カ所特定(↓)
◆2001/11/05 喘息発症しやすい体質 遺伝子型を発見 佐賀医科大 創薬にらむ
 『日本経済新聞』2001年11月5日(月)朝刊
◆2001/11/07 <鹿大>使用禁止の献血血液を遺伝子解析研究で使用
 毎日新聞ニュース速報
◆2001/11/21 文部科学省
 生命倫理に関わる諸問題に関する研究開発動向及び社会的合意形成に関する調査
 ヒトゲノムの研究開発動向及び取扱いに関する調査及び、生命倫理に対する
 社会的合意形成の手法及びインフォームド・コンセントのあり方に関する調査
 (委託先:三井情報開発(株)総合研究所)
 科学技術振興調整費ニュース 225号
 http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/chousei/news225.htm
◆2001/12/20 「ヒト20番染色体」解読
 NHKニュース速報


◆20001220
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」に関する御意見の募集について

 

◆20001124
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(原案)について

 

◆20000926
 Johannes Reiter教授講演会「ヒトゲノム解読と遺伝子治療」 於:早稲田大学
◆20000922
 Johannes Reiter教授講演会「ヒトゲノム解読と遺伝子治療」 於:芝浦工業大学

 

◆20000802

 通産省:人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の研究や利用をめぐる倫理問題を検討するため、化学品審議会に「個人遺伝情報保護部会」(部会長・勝又義直名古屋大医学部長)を設置。同省で初会合。
 「遺伝子の倫理問題を扱う審議会組織は、厚生省、文部省、総理府(科学技術庁)にあり、これで四省庁に四つもできたことになる。
 同部会は今後、四省庁が共同で年内にまとめる、ヒトゲノム解析研究の倫理指針の議論を他の審議会と連携して進めるほか、遺伝情報が産業利用される場合の倫理問題について、年内に中間報告をまとめる。
 このうち、ヒトゲノム研究をめぐる倫理指針は、九月中に厚生省が中心に運営する検討委員会で原案をまとめ、それについて四つの審議会が同時並行的に審議を進めるという。  十月中旬に一般から意見を求めた上で、十二月中旬には指針を最終決定したい考えだ。  国としての倫理指針は、科学技術会議生命倫理委員会が六月、「憲法」に当たるヒトゲノム研究基本原則をまとめているが、民間を含むすべての研究を対象にした具体的指針がまだないことから、四省庁が共同で策定することになった。」(共同通信ニュース速報 [2000-08-02-18:09]より引用)

 

◆200007 サミット共同宣言・「生命科学」の「(ヒトゲノム)」
 「生命科学の前進は、我々の生活の質を継続的に改善する。医療において新境地を開くことは、人類の利益にとって前例のない機会を示すものであり、生命倫理の原則を考慮に入れつつ達成されなければならないものである。
 ヒトゲノムのほぼ完全な解析がなされたことは、それ自体が極めて重大な発見であり、このような発達の更なる劇的なかつ歓迎すべき一歩をなすものである。
 我々は、この解析は全人類にとって決定的に重要であると考えており、人間のDNA配列そのものに関するすべての基礎的な生データの迅速な公開が更に行われるよう要請する。我々は、また、ゲノム配列解析に続く研究を多数国間の協力に基づいて追求することの重要性を強調する。
 我々は、遺伝子に基づく発明について、可能な限り共通の慣行及び政策に基づいた、均衡のとれた衡平な知的所有権保護が必要であることを認識する。我々は、バイオテクノロジー関連発明についての特許政策の幅広い調和を達成するための、関連する国際的なフォーラムにおける更なる努力を奨励する。

 

◆20000718

 解読したヒトの全遺伝情報(ゲノム)を順番通り並べ直し、染色体の約六割の領域をカバーしたデータベースを理化学研究所と東大医科学研究所が作成、十八日からインターネットのホームページで公開。
(共同通信ニュース速報[2000-07-17-17:53]他)

 

◆200006 ヒトゲノム特許化に反対 世界医師会が声明へ
 日本医師会など七十一カ国の医師会が加盟する世界医師会は二十九日までに、解読された人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の特許化の動きについて「特定企業に独占的な利益をもたらす結果になりかねない」として反対する方針を決めた。……
 共同通信ニュース速報[2000-06-29-18:03]等

 

◆20000410

 「人間の全遺伝子情報(ヒトゲノム)の解読に取り組む世界の研究者でつくる「ヒトゲノム解析組織」(HUGO、本部ロンドン)は十日、バンクーバーで開会中の年次総会で、民間の営利企業がゲノム研究の成果を利用して得た利益の1〜3%を、途上国の病院建設などにあてるべきだ、と求める声明を発表した。」
 (読売新聞ニュース速報、他)

 

◆遺伝情報での差別禁止…米大統領令
 『読売新聞』2000-02-09
 「【ワシントン8日=大塚隆一】クリントン米大統領は八日、連邦政府機関が職員の採用や昇進に際し、遺伝子情報に基づいて差別的な扱いをすることを禁じた大統領令に署名した。
 遺伝子診断の発展により、がんや糖尿病を含む、多くの病気の発症の危険性が予測できるようになった。その一方で、遺伝子情報が悪用され、就職や医療保険加入の際の差別が広がりかねないという懸念も強まっている。
 大統領はこうした危惧(きぐ)はすでに現実のものになりつつあり、遺伝子の検査をためらっている人も多いと指摘。人間の全遺伝子情報の解読が間近に迫った中、政府が率先して「遺伝子プライバシー」の保護に乗り出す必要性を強調した。
 大統領令では、遺伝子情報に基づく差別的な待遇だけでなく、職員に遺伝子の検査を受けさせたり、その情報の提出を求めたりすることも禁じている。
 大統領はまた、民間企業に同様の差別を禁じた、審議中の法案への支持を表明し、議会にすみやかな可決を求めた。
 大統領は「遺伝子情報に関するプライバシーを保護しなければ、遺伝子研究の恩恵も人々に行き渡らなくなる」と述べた。
 米科学誌サイエンスが一九九六年に行った調査によると、米国では遺伝子の異常に関係する病気にかかるリスクのある人の15%が、就職面接の際、遺伝病について質問された。また、13%の人は、本人または家族が発病の可能性を理由に、採用を拒否されたり、解雇されたりしたことがあると答えたという。
 また、別の調査では、米国人の63%が「雇用主が結果を知ることができる場合は遺伝子の検査を受けない」と答えている。」
 (2月9日13:48)

  cf.◇遺伝子検査(と雇用・保険)

●ロイター発、2000-02-08 Clinton Signing Order on Genetic Discrimination

WASHINGTON (Reuters) - President Clinton planned to sign an executive order
on Tuesday prohibiting the federal government from using genetic information
in any hiring or promotion decisions.
The move brings to the forefront a 21st century problem -- whether
employers should be allowed to use a person's genetic makeup in employment
decisions.
``This historic action will prevent the critical health information from
genetic tests used to help predict, prevent and treat diseases from being
used against them by their employer,'' the White House said.
Clinton was to sign the order at a midday event at the American Academy for
the Advancement of Science in Washington.
White House spokesman Joe Lockhart said the order looks down the road five
years when a person's genetic makeup may be more readily available.
Clinton, who often speaks of the potential benefits of the so-called Human
Genome Project, in which scientists are mapping every gene in the human
body, planned to endorse the Genetic Nondiscrimination in Health Insurance
and Employment Act of 1999.
It was introduced by Senate minority leader Tom Daschle, a South Dakota
Democrat, and New York Democratic Rep. Louise Slaughter in the House of
presentatives. The bill would extend genetic employment protections to the
private sector.
Clinton also planned to voice his concern about recent deaths as a result
of experimental gene therapy treatments.
A Senate subcommittee reviewing the government's overseeing of gene therapy
trials heard last week from Paul Gelsinger, of Tucson, Arizona, whose
18-year-old son Jesse died in September after University of Pennsylvania
researchers infused a gene-altered virus into his liver.
Clinton planned to ask Health and Human Services Secretary Donna Shalala to
instruct the Food and Drug Administration and the National Institutes of
Health to expedite their view of gene therapy guidelines and regulations.

●<遺伝子差別>米大統領が禁止の大統領令に署名
『毎日新聞』

毎日新聞ニュース速報
 【ワシントン8日瀬川至朗】クリントン米大統領は8日、遺伝病の有無やがんにかかる可能性を簡便に検査できる遺伝子診断の結果を連邦職員の採用や昇進に利用する「遺伝子差別」を禁止する大統領令に署名した。人間の全遺伝情報の解読を目指すヒトゲノム計画などで遺伝情報の解読が急ピッチで進み、遺伝子診断による発症前診断や遺伝子治療が現実のものとなる一方で、遺伝情報をもとにした新たな差別や人権侵害が生まれる恐れがあることから、大統領令はその負の側面に対する防止措置の意味が大きい。民間企業への波及も予想され、日本政府も今後、対応を迫られそうだ。
 今回の大統領令は(1)連邦職員の採用や手当給付の条件に遺伝子テストを要求してはならない(2)保護された遺伝情報を利用して連邦職員を分別し、彼らの昇進チャンスを奪ってはならない(3)治療や医学研究に使われる遺伝情報のプライバシー保護を強力に推進する――の3項目が中心だ。
これは計約280万人の連邦職員や今後の新規採用者を対象としたものだが、クリントン大統領は同時に、こうした遺伝情報の保護が民間企業にも適応されることを要望し、昨年、民主党が提出した民間対象の遺伝子情報禁止法案を強く支持する声明も発表した。
 さらに昨年、遺伝子治療の臨床治験で死亡者が出たことが米メディアで大きく報じられていることに対応し、クリントン大統領は米食品医薬品局(FDA)と米国立衛生研究所(NIH)に対し、遺伝子治療のガイドラインと規制策の見直しを要請した。
 ホワイトハウスの発表によると、1996年の米国の調査で、遺伝病が進行している人のうち15%が、採用試験で遺伝病についての質問を受けたと回答している。また13%の人は、自分自身や家族のだれかが遺伝病の素因を理由に就職できなかったり、職を解雇された経験を持つといい、すでに遺伝子差別が静かに広がり始めたともいえる。
 クリントン大統領は「プライバシーという神聖な壁がいま危機にさらされている」と指摘し、今回の大統領令が遺伝情報のプライバシー保護に向けて大きな前進になると強調した。
 国内では血液などを提供した人のプライバシーを守るため、科学技術会議や厚生省などが研究者が遺伝子解析を行う場合の倫理指針の作成を進めている。すでに大学病院や一部の民間企業などは、遺伝病の有無やがんのなりやすさなどを遺伝子から解析する検査を行っており、日本人類遺伝学会は検査結果を本人以外に伝えてはならないなどとするガイドラインを定めている。
 [2000-02-09-12:44]

●遺伝情報による差別禁止、連邦政府対象に米大統領令
 朝日新聞ニュース速報

 クリントン米大統領は8日、連邦政府職員の採用や昇進に当たり、遺伝情報による差別を禁止する大統領令に署名した。遺伝子研究の進歩は、病気の治療法を大きく変える一方で、病気に関係する遺伝子を持っていることを理由に解雇されるなどマイナス面が社会問題になり始めている。大統領は「プライバシー保護が徹底しないと、せっかくの進歩の恩恵を受けられない人が出る」と述べ、民間に対しても同様の差別を禁ずる法律の早期成立を議会に求めた。
 遺伝子の解析は急速に進み、がんなどいくつもの病気について発病確率などを調べる遺伝子検査が行われている。即日発効した大統領令は連邦政府に対し、(1)採用の際、遺伝情報や遺伝子検査を要求してはならない(2)昇進や任地の選定に、遺伝情報を用いてはならない(3)職員の遺伝情報を得たり公開してはならない、としている。
 大統領は、米議会に提出されている、こうした遺伝子差別の禁止を民間に対しても求める法律の制定を促すとともに、遺伝子を理由に保険加入を断られるのを防ぐ法律の制定も急ぐよう求めた。団体加入保険については、遺伝情報の要求を禁止する法律が1996年に成立しており、個人加入の保険が次の課題となっている。
 遺伝子差別をめぐる1996年の民間の調査では、病気に関係する遺伝子を持つ人の15%が採用などの際に遺伝情報を求められ、13%が本人や家族が解雇されるなどの差別を受けた、と答えている。97年の別の調査では、63%の人が雇用者に結果が知られるなら遺伝子検査を受けない、とも答えている。
 大統領はあわせて、ボストンの病院などで遺伝子治療で死者が出たことに強い懸念を表明、厚生省に対し、遺伝子治療の指針などの見直しを急ぐよう指示した。遺伝子治療については、患者に危険に関する正しい情報が伝えられていないなどの多くの問題点が出ている。
 [2000-02-09-11:05]

●政府機関で遺伝子情報に基づく差別を禁止 米大統領令
 NHKニュース速報

 アメリカでは、実際には病気にかかっていないのに発病するおそれを示す遺伝子を持っていることを理由に、就職や昇進を拒否されるケースが相次いでおり、クリントン大統領は八日、政府機関に対して遺伝子情報に基づく差別を禁止する大統領令に署名しました。
 遺伝子研究が進んでいるアメリカでは、個人の遺伝子情報を調べることで、どのような病気にかかりやすいのか、あらかじめ知ることができるようになり病気の予防に役立てられています。
 しかし、その一方で検査の結果、特定の病気にかかるおそれがあることを示す遺伝子を持っていることがわかると、実際には発病していないにもかかわらず、企業側から採用や昇進を拒否されるケースが相次ぎ、新たな社会問題となっています。
 これについて、クリントン大統領は八日、政府機関が、遺伝子検査の結果を職員の採用や昇進の判断基準とすることや、医療機関などを通じて、個人の遺伝子情報を取り寄せることを禁止する大統領令に署名しました。
 また、クリントン大統領は、今後、議会に対して民間企業への就職や昇進、そして健康保険への加入に際しても、遺伝子情報に基づく差別を禁止する新たな法律を制定するよう、促していく考えを表明しました。
[2000-02-09-10:50]

●本人の利益以外使用せず 究極のプライバシー保護
 共同通信ニュース速報

 【ワシントン8日共同】米連邦政府職員の雇用などの際に遺伝子情報を利用することを禁じた八日のクリントン米大統領令は「究極のプライバシー」ともいわれる遺伝子情報を「本人の利益以外には使わない」ことを確認したものだ。
 遺伝子解析技術の進歩で、現在は特定の遺伝病に限らず、がん、糖尿病、心臓病など一般的な病気に関係する三百種以上の遺伝子異常が検出できる。米国では成人患者の遺伝子を診断、病気の発病確率を算出する専門医も登場。予防医療への貢献が認められる一方で、企業の採用、保険加入などの際、遺伝子診断を求める例が増え、新たな差別も生まれた。
 米政府の一九九六年の調査によると、遺伝子診断で何らかの病気の潜在性が判明した人の一三%が「就職を断られるなど差別を受けた」と答えている。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は九七年に遺伝子情報に関し、個人の秘密保持、遺伝的特徴による差別禁止などを国際倫理指針として定めた。
 日本では特定の家系で多発するがんなどを研究する医師らの組織、家族性腫瘍(しゅよう)研究会が九七年に遺伝子診断のガイドラインを示しているが、遺伝子診断そのものがまだ一般的でなく、医学会全体における倫理基準は未整備の状態だ。
 [2000-02-09-10:17]

 

◆20000110 セレラ社、ヒトゲノムの90%の塩基配列を解読したと発表

 
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■遺伝子プール gene pool


◇立岩[1997]第6章注24より(p.257)

「最も狭い意味で、優生学を、人間の遺伝子プールにおける病的遺伝子の頻度が増大することをおさえたり、これを積極的に排除することを指すものとする」(米本[1987b:38]、注43、第7章注08・312頁も参照のこと)。

◇立岩[1997]第7章注8より(p.312)

「このことが技術に危険性がないことの理由ともされる。「遺伝子という単位で才能の問題にアプローチするのは現実味を欠いている…。そこで多くの研究の結果、今のところ優れた人づくり(優れたという定義自体めんどうだが、ここではあまり厳密でなく使っている)に遺伝子の研究を応用することはできないとされている。」(松原・中村[1996:184])米本昌平は「遺伝子プールの改善」の効果は低い(から気にする必要はない)という指摘を度々している(米本[1980:61][1987b:313]等)。遺伝学者の笹月健彦の見解もほぼそのようなものである(笹月[1985])。他方で、木村資生のようにこれを気にする者もいる(第6章注44)」

◇立岩[1997]第9章注31より(p.442)

「「種の多様性が、人工物の意図的な増殖のなかで、性のみが保証する偶然の終りのなかで消滅するとき、おそらく人類の死がまっているだろう。」(Attali[1988=1994:520])この種の議論は多い。畦地豊彦[1987]について加藤秀一が次のように指摘する。  「「類的種族としての人間存在の認識」(畦地[1987:187])といった全体主義(「種」主義というべきか)は反差別運動の射程を根本から堀り崩す倒錯であるように、私には思われる。女性も障害者も、その解放運動の出発点は、自らを、他に置き換えのきかない一人の人間=個人として認めよという叫びではなかったか。個人は種内の遺伝子の多様性を保存するプールとして価値があるのではない、という思いに立ち帰ること――障害者運動とフェミニズム運動は、個人の尊厳の擁護というこの出発点を徹底して共有するところから、生命の質を一元化する優生思想に反対するという、原理的な共存を獲得できるはずだ。」(加藤[1991a])この箇所に付された注には、「より典型的な表現は同じ論集の中の山下恒男の文章にみられる。そこでは「個体と種を二つにして一つのもの」とみる今西進化論の「おおらか」さが称揚されている」とある。ここで加藤が言及しているのは山下[1987:388-389]。著書(山下[1977])にも同様の主張が見られる。
 本書を通して言おうとしたのは、これらと別の立場である。」

 
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■遺伝子のスーパーマーケット


◆立岩[1997]第9章注30より(p.441)

「……
 なお次の引用文中のグローバーはグラヴァーと同一人物であり、ノージックについては第2章2節、第4章注19、第5章3節で触れた。「グローバーは、一つの選択肢として、”遺伝子のスーパーマーケット”というアイディアを提案している。/グローバーが哲学者のロバート・ノジックのアイディアからヒントを得たという計画によると、これから親になろうという人たちが、遺伝に関する選択リストから、自分たちの子供のためにどんな特徴をとり、どんな欠点を矯正するかを、あたかもスーパーで買い物をするときのように、自由に選ぶことができるというものだ。/ある夫婦は自分の子供のために、音楽の才能とガンにかかりにくい体質という二つの遺伝子を選ぶかもしれない。別の夫婦は、彼らなりに考えた別の遺伝子を選ぶだろう。コントロール板によってすべての人間を統轄するような中央の管理方式さえなければ、遺伝子の多様性は減るどころか、むしろ増えるはずである。」(Shapiro[1991=1993:339-340])

◆櫻井徹『リベラル優生主義と正義』
 http://www.nakanishiya.co.jp/book/b134421.html

序章 リベラル優生主義の原理
第一節 現象学の捉え難さ
着床前遺伝子診断/生殖的クローン技術/遺伝子工学
第二節 現象学の「主題的概念」
「生殖の自由」のラディカルな拡張/治療と改良との道徳的等価性/遺伝子への介入と環境への介入との道徳的等価性/二つの補助的論点/リベラル優生主義と民主的選択/Eugenics の訳語についての補論

第一章 優生主義の由来
第一節 人類の遺伝的改良の試み
『最後にして最初の人間』/「遺伝学者有志のマニフェスト」
第二節 優生主義の歴史的淵源
フランシス・ベーコンにおける人間本性の科学的改造/トマス・R・マルサスの救貧法制批判/アルフレッド・R・ウォレスによる人間社会への自然選択説の適用/フランシス・ゴールトンの優生学の構想/ウィリアム・R・グレッグの「社会の退化」/グレッグにおける進化/チャールズ・ダーウィンの社会ダーウィニズム

第二章 二〇世紀における改革派優生主義
  ――J・B・S・ホールデーンとハーマン・J・マラー――
第一節 ゴールトンにおける人間の自己進化
優生学の定義/ゴールトンの優生学とナショナリズム/ゴールトンにおける世論と強制/ゴールトンの継承者たち
第二節 体外発生技術による改革派優生主義――J・B・S・ホールデーン――
『ダイダロス』における積極的優生主義/生物学的発明という「倒錯」
第三節 社会改革と精子選択――ハーマン・J・マラー――
『夜から逃れて』における改革派優生主義/「人間の生物学的退化」と社会的優生主義/人類による自己進化/マラーと遺伝子工学
第四節 マラーの優生主義が意味するもの
精子選択の継承者/精子選択の意味と問題点

第三章 リベラル優生主義の倫理的正当化
第一節 現代遺伝学におけるリベラル優生主義
シンポジウム「ヒト生殖細胞系列を設計する」/遺伝子工学による人間の自己進化
第二節 現代正義論におけるリベラル優生主義
ロナルド・ドゥオーキンの倫理的個人主義/ジョン・ロールズの「社会的資産としての遺伝的資質」/★ロバート・ノージックの遺伝子スーパーマーケット/リベラルな正義論にとっての人格とゲノム

第四章 リベラル優生主義への反論と応答
第一節 技術的反論
エヴリン・フォックス・ケラーにおける遺伝子の構造と機能/八ッバード、ルウォンティン、ホーによる遺伝子決定論批判/中央集権的遺伝子と分権的遺伝子/遺伝子への介入と環境への介入/遺伝子工学の長期的リスク/ヒト生殖細胞系列への損傷
第二節 政治的反論
社会的格差の拡大/援助減少論/表現主義的反論/社会協力枠組みの改革/「包摂される利益」と「最大化利益」/「障碍者を生む自由」と「障碍者を生まない自由」
第三節 哲学的反論
人権と生物学的人間本性/フランシス・フクヤマにおける道徳的秩序と人間本性/ユルゲン・ハーバーマスと「対称的承認関係の侵食」/ニコラス・エイガーの応答

終章 リベラル優生主義のゆくえ
  ――福音か災厄か――
第一節 遺伝子改良の原動力と自己規制
市場経済と生物学的欲求/「機会の平等」と遺伝子介入/市場原理に基づく遺伝子介入/「開かれた未来への権利」と遺伝子介入/リベラル優生主義とハーバーマス
第二節 リベラル優生主義の限界
肉体的改良/知的改良/道徳的改良
第三節 生殖における国家の役割と限界
国家は「将来世代の遺伝的福利の保護者」か/社会的目的のための道徳的改良
第四節 結び
ヒト生殖細胞系列遺伝子工学への懐疑の源泉/遺伝子改良は人間の「経験」を希薄にするのか/リベラル優生主義の進路をいかにコントロールすべきか

 

◆水頭症

 胎児水頭症は1000の出産に対して0.5〜2.0 単独の新生児水頭症は0.39〜0.89の率でみられる 進行すると脳脊髄液で脳が圧迫されて薄くなってしまい精神の発達が期待できなくなる 超音波診断によって 子宮内の胎児にシャント手術をする あるいは 肺機能が成熟するまで胎児が成長するのを待ってから(8週間)帝王切開をしてシャント手術をする(福間[1987:174-175])

 1000例中1例 原因には,神経管閉鎖不全,頭蓋内出血,子宮内感染,遺伝性(多因子性,伴性劣性,常染色体劣性遺伝) 伴性劣性遺伝による水頭症の頻度は全体の1%以下 妊娠中期の3カ月において,継時的超音波検査により出生前診断は多くの場合可能であるが,常に可能ではない。(Conner & Ferguson-Smith[1987=1991:])

◆Conner, J. M. ; Ferguson-Smith, M. A. 1987 Essential Medical Genetics,
 2nd ed., Blackwell
 =1991 清水信義・松尾宣武訳,『最新遺伝子医学』,講談社,234p. <432> ※

 ※は立岩研究室にあり。

 

◆THE HUMAN GENOME PROJECT: BENEFITING ALL HUMANITY

ホワイトハウスの広報資料

http://www.whitehouse.gov/WH/New/html/20000315_3.html

THE WHITE HOUSE
Office of the Press Secretary

--------------------------------------------------------------------------------

For Immediate Release March 14, 2000


THE HUMAN GENOME PROJECT:
BENEFITING ALL HUMANITY


"Later this year, researchers will complete the first draft of the
entire human genome, the very blueprint of life. It is important for
all our fellow Americans to recognize that federal tax dollars have
funded much of this research, and that this and other wise investments
in science are leading to a revolution in our ability to detect, treat,
and prevent disease."


President Clinton
January 27, 2000
"State of the Union"

At today’s Medals of Science and Technology awards ceremony, the
President will announce that he and Prime Minister Tony Blair have
agreed on a statement of principle to ensure that discoveries from
the human genome are used to advance human health. Their joint statement,
to be issued in the U.S. and U.K. today, applauds researchers who have
made their human genome sequence data freely available to the global
scientific community and calls upon others to follow their lead.
The statement also acknowledges the importance of intellectual property
protection as an incentive for the development of important, new
gene-based health care products.


ACCESS TO FUNDAMENTAL INFORMATION ABOUT THE HUMAN GENOME WILL IMPROVE HEALTH.

The United States and the United Kingdom are the leading partners in
Human Genome Project ? the international effort to map and sequence the
3 billion “letters” and to locate and identify the roughly 100,000
genes that make up the human genetic code.

This project will revolutionize the practice of medicine, providing
the means to custom tailor treatments to the needs of each patient,
and to prolong healthy life by predicting and preventing diseases.

Unencumbered access to the raw human sequence data will promote its
use by scientists all over the world in their efforts to understand
human biology and disease at the level of individual genes.

The single most important development in human biology in the short
term will be the completion of the sequencing of the human genome.
Government-funded research activities have made important contributions
to this result. The private sector has also made significant advances
in recent years.

The single biggest challenge to humankind will be to take this vast
storehouse of information and rapidly develop new products to diagnose
and treat human diseases. That process will require continued support
for government research. It will also require a suitable environment
for the private sector to develop new products, including appropriate
intellectual property protection.

The president’s budget calls for a $1 billion increase for biomedical
research at the National Institutes of Health (NIH), to nearly $18.8
billion. These funds will support merit-based, peer-reviewed research,
largely conducted by individual investigators. Biomedical research
continues to pave the way toward better diagnostics, treatments,
and cures. Recent breakthroughs have led to techniques that hold
promise for treating Parkinson’s disease, diabetes, heart disease,
and many other debilitating disorders. As new health risks arise,
prevention of disease also requires increased attention.

With the increase requested for FY 2001, NIH plans to focus on the
following four themes: exploiting the power of genomics, reinvigorating
clinical research, harnessing the expertise of allied scientific and
engineering disciplines that contribute to biomedical research, and
reducing disparities in health.

The increase will support research in areas such as diabetes, brain
disorders, cancer, genetic medicine, disease prevention strategies,
and development of an AIDS vaccine.

R&D Budget -- a Bold Course of Strategic Growth and Prosperity Through
Discovery. The President and the Vice President remain unwavering in
their support for science and technology as crucial investments in
our future. These investments enable our nation to compete aggressively
in the global marketplace, protect our environment and manage our
natural resources in a sustainable manner, safeguard our national
security from emerging threats, and spur the technological
innovation that has contributed so much to our economic prosperity
and quality of life.

The FY 2001 budget for R&D continues the important R&D trends
established by the President and Vice President:

This is the eighth consecutive year that the President and Vice
President have proposed increased investments in civilian
research and development. Civilian R&D is up 43% since they
have taken office.

It boosts funding for basic research by 7% ? a $1.3 billion
increase. Funding for basic research is up 52% since 1993.

R&D support to Universities increases 8% ? a $1.3 billion
increase. R&D support to Universities is up 53% since 1993.

Perhaps most important, this budget presents a balanced R&D
portfolio, which recognizes the interdependence among the
scientific disciplines. Gains in one field are often dependent
on advances in others.



HUMAN GENOME PROJECT FACT SHEET
March 14, 2000

Benefiting All Humanity. The Human Genome Project (HGP), an
international effort formally begun in October 1990, was planned
to last 15 years, but rapid technological advances have accelerated
the expected completion date by at least two years. The project’s
are to discover all of the approximate 100,000 human genes
(the human genome) and make them accessible for further biological
study and to determine the complete sequence of the 3 billion DNA
subunits (bases). As part of the HGP, parallel studies are being
carried out on selected model organisms such as the bacterium E.
coli to help develop the technology and interpret human gene function.
The HGP is also the first large scientific undertaking to address
the ethical, legal, and social issues that may arise from such a
project. The National Institutes of Health's National Human Genome
Research Institute (NHGRI) and the Department of Energy’s Human
Genome Program together make up the U.S. Human Genome Project,
the world's largest centrally coordinated biology research project
ever undertaken. The U.K.’s Wellcome Trust, a private philanthropy,
also contributes to the global initiative and supports one of the
five principal large-scale human genome sequencing centers.

Longer Lives and Better Health. The project will reap enormous
benefits for humankind, some that we can anticipate and others that
will surprise us. Biologists and researchers will have access to
detailed DNA information that is key to understanding the structure,
organization, and function of DNA in chromosomes. Genome maps of
other organisms will provide the basis for comparative studies that
are often critical to understanding more complex biological systems.
Information generated and technologies developed will revolutionize
future biological explorations. Technology and resources generated
by the Human Genome Project and other genomics research are already
having a major impact on research across the life sciences. For
example, the HGP has produced detailed maps that can be used to
help pinpoint genes associated with particular diseases, leading
to better treatment and prevention methods. A prime example is
that families at risk of hereditary colon cancer can now be screened
and lessen their chances of dying from this illness with surveillance
and dietary measures. The potential for commercial development of
genomics research also presents U.S. industry with a wealth of
opportunities, and sales of DNA-based products and technologies
in the biotechnology industry are projected to exceed $45 billion by 2009.

Strong Administration Support for Human Genome Research. During the
past eight years, President Clinton and Vice President Gore have
increased the funding for this ambitious project by 165%, providing
over $2.6 billion in federal funds to the HGP.


Clinton/Gore Administration
U.S. Human Genome Project Funding History
($$ in Millions)



Year NIH DOE Total
1993 $106.1 $63.0 $169.1
1994 127.0 63.3 190.3
1995 153.8 68.7 222.5
1996 169.3 73.9 243.2
1997 188.9 77.9 266.8
1998 218.3 85.5 303.8
1999 283.6 89.8 373.4
2000 335.9 88.9 424.8
2001
Request 357.7 90.3 448.0

93-01
Total $2,641.9


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◆<遺伝子>病気のかかりやすさ左右するSNPを15万カ所特定
 毎日新聞ニュース速報

 科学技術振興事業団と東大医科学研究所は4日、病気へのかかりやすさなどを左右する遺伝子の個人差、SNP(スニップ)を15万カ所特定したと発表した。政府のミレニアム・プロジェクトの一環として実施されてきた研究で、当初の予定より6カ月早く目標を達成した。個人個人に適したオーダーメード医療や遺伝子情報を利用した創薬に役立つと期待される。
 人間の遺伝情報を担う遺伝子の塩基配列の大部分は人類に共通だが、個人によって異なる部分がある。このような個人差の一つがスニップで、特定の病気へのかかりやすさや、薬の副作用の表れ方などに関係していると考えられている。
 東大医科研の中村祐輔教授らは、24人の日本人のDNAを用いて15万カ所のスニップを発見した。このうち約8割が新しく発見されたスニップだった。【青野由利】
[2001-10-04-20:30]

 

◆2001/01/26 09:45 ◇遺伝子診断に業界団体が倫理指針◇
朝日新聞ニュース速報
 がんや高血圧、肥満になる可能性などを調べる「遺伝子診断」のための検査を病院などから受注する際に守るべき倫理指針を、検査会社でつくる公益法人「日本衛生検査所協会」が25日、まとめた。同日開かれた理事会で了承された。遺伝子診断については、カウンセリングなしに実施した診療所が問題になったほか、将来の病気を確率で診断することの是非などの議論や検証が尽くされていない。業界が自主的な指針を作成したことによって、遺伝子診断が安易に広がりかねないとの懸念も指摘されている。
 国が作成中の遺伝子解析の倫理指針は、対象が研究分野に限られており、遺伝子診断に関する指針は初めて。
 同協会には、病院などから臨床検査を請け負う450社が加盟。年間2万件以上の遺伝子検査を実施している。
 今回まとまった自主指針は、医療機関が一定の倫理を守っているかどうかを確認し、担当医師の署名を受けたうえで検査を実施するよう規定。医師が受診者に対して、(1)検査精度の限界や、本人だけでなく、その血縁者の病気まで予測してしまうものであること
を説明しているか(2)検査を受ける人が、自主的な意思で申し出たことを、文書で確認しているか(3)関連学会の指針に基づいたカウンセリングをしているか――などを点検するとしている。
 検査会社として個人情報を漏らさないことや、検体に個人名を付けずに記号化してから検査作業に入るよう体制を整えることも求めている。
 遺伝子診断をめぐっては、診断によって分かる遺伝情報が生命保険などの加入制限や保険料算定などに利用されかねない危険性や、根本治療が不可能な病気を知らせることの倫理的な問題、周囲への差別に発展する可能性などが指摘されている。
 また、がん、高血圧など生活習慣がからむ病気については、遺伝子検査の結果はあくまで確率でしかない。カウンセリングできる専門医も不足している。専門家の間では、病気ごとに遺伝子診断に適するかどうかの区分けがまず必要だといった意見がある。
 協会は、この指針を加盟検査会社に近く通知するという。厚生省を通じて都道府県などにも通知し、同協会に加盟していない検査会社などにも指針を守るよう要望するという。
 

◆2001/11/05 喘息発症しやすい体質 遺伝子型を発見 佐賀医科大 創薬にらむ
 『日本経済新聞』2001年11月5日(月)朝刊

 佐賀医科大学と京都大学、理化学研究所の研究グループは、ぜんそくを発症しやすい体質を示す遺伝子レベルの個人差(SNP=一塩基多型)を見つけた。治療薬開発につながるため特許出願するとともに、ぜんそく分野で初めてゲノム(全遺伝子情報)に基づく創薬に乗り出すため製薬企業と交渉を進めている。
 佐賀医科大の出原賢治教授らは、小児ぜんそく患者ではぜんそく発症に関係するたんぱく質(IL-13)を構成する112個のアミノ酸のうち一つだけ違っていることを見つけた。健康な人では110番目のアミノ酸はアルギニンであることが多いのに対し、患者はグルタミンに置き換わっていることが多い。
 IL-13は呼吸などでアレルギー原因物質が体内に入ってくると、免疫細胞から放出されるたんぱく質。グルタミン型IL-13は気管支の上皮細胞や平滑筋にある「α(アルファ)1」という受容体たんぱく質と結合し、痰(たん)のもとになる粘液を分泌させたり平滑筋を収縮させて気道を細くするなど、ぜんそく特有の症状を引き起こす。
 これに対しアルギニン型のIL-13は「α2」という別の受容体と結合し、細胞内に取り込まれて分解されるため、血中に高濃度で存在することはない。 出原教授はIL-13の血中濃度を下げる物質を開発すれば有効な治療薬になるとみて、SNPの物質特許とSNPを利用して治療薬を開発する用途に関する特許を出願した。

 

◆2001/11/07 <鹿大>使用禁止の献血血液を遺伝子解析研究で使用
毎日新聞ニュース速報

 日本赤十字社が各医療機関に使用禁止を通知している献血血液を使った遺伝子解析研究を、鹿児島大医学部の「遺伝子解析研究に関する倫理委員会」(委員長、村田長芳・医学部教授)が承認していたことが分かった。倫理委が通知を知らず、鹿児島県赤十字血液センターも昨年9月の禁止措置以前に血液提供したことを忘れていたため。一部は既に研究に使用されていた。鹿大倫理委と県センターの生命倫理に対する意識の薄さが浮き彫りになった。
 県センターによると、鹿大医学部の吾郷(あごう)一利講師らから昨年3月「DNAの型の分布を調べ親子鑑定などの基礎データに使用する」と譲渡申請があり、センターは輸血用として使用期限が切れた約150人分の献血血液を提供した。吾郷講師は今年6月、倫理委に解析研究を申請、倫理委は10月に審査し「個人が特定されないよう配慮されている」として承認した。
 遺伝子解析を目的にした献血血液については日赤が昨年9月、「提供者の同意の範囲を超えている」と使用禁止を各県血液センターを通じて医療機関に通知した。倫理委の承認を知った県血液センターは鹿大に研究の中止を申し入れたが、研究グループは一部を既に解析に使用していた。
 倫理委の村田委員長は「日赤の通知は知らなかった。(日赤の)了承を得ているという前提で審査していた。再審査し、承認を取り消すことになるだろう」と話し、吾郷一利・講師は「同意を得た血液でやり直したい」と話している。
 一方、県赤十字血液センターの川嶋望所長は「(譲渡を)失念していた。当時は通知が出る前で、認識が不足していた。献血はあくまで善意に頼っており、献血者の誤解を受けないようにしたい」と話している。 【須藤孝】
[2001-11-07-03:05]

◆2001/11/07 <献血血液>610検体に禁止の遺伝子解析 鹿児島大など
 毎日新聞ニュース速報

 日本赤十字社が各医療機関に使用禁止を通知している献血血液を使った遺伝子解析研究について、鹿児島大医学部の研究グループが昨年3月に鹿児島県赤十字血液センターから提供を受けた150人分の検体とは別に、97年から昨年3月まで460検体の提供を受け、計610検体すべての遺伝子解析を実施済みだったことが分かった。
 同学部「遺伝子解析研究に関する倫理委員会」の村田長芳委員長(医学部教授)が7日、学内で記者会見して明らかにした。村田委員長によると、鹿大の研究グループは99年夏ごろから現在まで、遺伝子内にある型の出現比率を調べる研究などで検体の遺伝子解析をしていた。提供を受け始めたころは遺伝子解析についての国の倫理指針がなかったため、倫理委もなく、研究グループの申請もなかった。
 倫理委は今年10月に研究を承認していた。村田委員長は「審査の過程で(日赤の)通知を見落とした。事実認識に甘さがあった」とミスを認め、陳謝した。その上で「今後の倫理委で研究を不承認とする。献血者に不安を与え、全国的に献血量が減るような事態になってはいけないという、日赤の懸念に配慮した」と述べた。
 また、研究にあたった医学部の小片(おがた)守教授も会見に同席し「認識不足だった。献血が何に使われるか分からないという献血者の不安は理解できる。今後は同意を得た研究が大原則だと思う」と話した。 【須藤孝】
[2001-11-07-13:20]

◆2001/11/07 <鹿大>別の460検体も遺伝子研究に
 毎日新聞ニュース速報

 日本赤十字社が禁じた献血血液の遺伝子解析研究を倫理委員会が承認していた鹿児島大医学部で、研究グループが97年〜昨年3月にも460人分の検体を鹿児島県赤十字血液センターから提供され、遺伝子解析していたことが分かった。また昨年3月に提供され、日赤の禁止通知(昨年9月)後の今年10月に倫理委が承認した150人分も、すべて遺伝子解析を実施済みと分かった。
 医学部「遺伝子解析研究に関する倫理委員会」の村田長芳委員長(医学部教授)が7日、記者会見で明らかにした。
 村田委員長によると、研究グループは99年夏ごろ、遺伝子内にあるDNA型の出現比率を調べる研究などで献血血液の遺伝子解析を始めた。提供を受け始めたころは遺伝子解析についての国の倫理指針がなかったため、倫理委もなく、研究グループの申請もなかった。
 一方、150検体の遺伝子解析を承認したことについて、村田委員長は「審査過程で(日赤の)通知を見落とした。事実認識に甘さがあった」と陳謝した。その上で「今後の倫理委で研究を不承認とする。献血者に不安を与え、全国的に献血量が減る事態になってはいけないという日赤の懸念に配慮した」と述べた。
 研究にあたった医学部の小片(おがた)守教授も会見に同席し「認識不足だった。献血が何に使われるか分からないという献血者の不安は理解できる。今後は同意を得た研究が大原則だと思う」と話した。 【須藤孝】
[2001-11-07-20:35]

◆2001/11/07 03:05 毎: <鹿大>献血血液の使用 解説
 毎日新聞ニュース速報

 鹿児島大医学部の倫理委員会でいったん承認された献血血液の遺伝子解析研究が中止される見込みになったことは、遺伝子研究が進む中、チェック体制の危うい一面を露呈したと言える。
 日本赤十字社が献血血液を遺伝子解析に使用することを禁止したのは、昨年3月に神奈川県鎌倉市の民間研究所が献血血液を提供者に無断で解析していたのがきっかけ。日赤では採血時に「輸血の有効性、安全性向上などのために使用する場合がある」と献血者に説明していたが、「これで遺伝子解析研究の同意を得たことにはならない」として禁止した。
 国も今年4月、提供者の同意を原則とした倫理指針を出し、それ以前に提供された血液などの試料について(1)試料の匿名化(2)提供者に不利益が及ぶ可能性が極めて少ない(3)他の方法では研究ができない――などの条件を盛り込んだ。
 国の指針を検討した委員の一人、宇都木伸・東海大法学部教授(医事法)は、指針ができる以前に同意を得ずに提供を受けた遺伝子試料が他の大学などにも大量にあることを指摘し「日本には各倫理委が知っているべき情報を共有する仕組みがない。個別の倫理委や研究者の問題というよりシステムの問題だ」と警告。「倫理委は指針を守るだけでなく、指針の精神を理解してほしい」と話している。
 鹿大の倫理委や研究グループは、日赤が通知した献血血液の使用禁止を誰も知らなかった。提供は日赤の通知前だったとはいえ、個人情報と遺伝子解析を巡る論議が高まる中、慎重さが必要だった。 【須藤孝】
[2001-11-07-03:05]

◆2001/11/07 鹿児島大、禁止された献血血液の遺伝子解析承認

読売新聞ニュース速報

 鹿児島大医学部の「遺伝子解析研究に関する倫理委員会」(委員長・村田長芳教授)が、日本赤十字社によって使用禁止が通知されている献血血液を使った遺伝子解析を承認し、研究に使っていたことが7日明らかになった。
 問題の血液は昨年3月、吾郷(あごう)一利講師(法医学)らの研究グループが「DNAの型の分布調査を行い、実務に必要な基礎資料を作成する」として鹿児島県赤十字血液センターに提供するよう申請。同センターは同月、使用期限が切れた約150人分の血液を提供したという。
 吾郷講師らは今年6月、倫理委に同様の趣旨の審査申請を行い、倫理委は10月、「個人の特定ができないよう配慮されている」として承認した。
 日本赤十字社は昨年9月、献血血液を遺伝子解析目的に使わないよう全国の医療機関に通知していたが、倫理委はこの通知を把握していなかった。村田委員長は「早急に倫理委を招集し再審査する。認めない方向で判断することになるだろう」と語った。
 川島望・同センター所長は「譲渡したのが禁止通知前だったので、思い至らなかった。研究は終わっていると思っていたが、承認されたことを知って中止を申し入れた」としている。
[2001-11-07-21:08]

◆2001/11/07 献血血液使い遺伝子解析 鹿児島大、通知見落とす
 共同通信ニュース速報

 鹿児島大医学部が、鹿児島県赤十字血液センターから提供された献血血液を使って遺伝子解析研究をしていたことが七日、分かった。日赤は昨年九月、各医療機関に献血血液を使用しないよう通知していたが、医学部の「遺伝子解析研究に関する倫理委員会」は通知を知らずに承認していた。
 医学部によると、法医学の講師らが今年六月、「DNAの型の分布を調べ、個人識別や親子鑑定などに必要な基礎資料を作る」として倫理委に審査を申請。倫理委は「個人情報に配慮しており、国の指針にも沿っている」として十月に承認した。
 しかし、研究に使われたのは、血液センターから昨年三月に譲渡された使用期限切れの輸血用の献血血液。同九月に日赤は、提供者の献血時にされる「輸血に使用できなかった血液は輸血の有効性や試薬の製造などのために使用する場合がある」との説明の範囲を超
えているとして、各医療機関に遺伝子研究に使用しないよう要請の通知をした。
 倫理委の村田長芳委員長は「通知を見落としたことは反省したい。再度審議し、不承認になるだろう」と話している。
(了)
[2001-11-07-12:04]

◆2001/11/07 ◎献血血液での遺伝子研究中止=日赤の申し入れ受け−鹿児島
時事通信ニュース速報

◎献血血液での遺伝子研究中止=日赤の申し入れ受け−鹿児島大
 鹿児島大学医学部は7日、献血血液を使った遺伝子解析研究を、県赤十字血液センターの申し入れで中止する方針を決めた。日本赤十字社は昨年9月、「献血の際の同意の範囲を超える」として、献血血液を遺伝子研究に使わないよう関係機関に通知したが、同大医学部倫理委員会は通知を見落とし、10月22日、研究を承認していた。 
[時事通信社]
[2001-11-07-13:37]

 

◆2001/12/20 「ヒト20番染色体」解読
 NHKニュース速報

 二十三対(ツイ)あるヒトの染色体のうち、「二十番染色体」の遺伝情報をすべて解読したとイギリスの研究チームが発表しました。
 ヒトの染色体で解読が終わったのは、これで三つ目になります。
 「からだの設計図」ともいえるヒトの遺伝情報は、染色体にある対になったおよそ三十億の塩基の配列からできていて、「ヒトゲノム計画」と呼ばれる国際プロジェクトとして、日米欧の研究機関が協力して解読を進めています。
 今回、イギリスの「サンガー研究所」がすべて解読したのは、「二十番染色体」で、ヒトの染色体では二十二番、二十一番に続いて三つ目となります。
 この二十番染色体は、およそ六千万の塩基からなり、クロイツフェルト・ヤコブ病や糖尿病、肥満、白内障の関連遺伝子など七百二十七個の遺伝子が含まれ、このうち新たな遺伝子が二百二十二個発見されました。
 また、今回の分析によってヒトの遺伝子の数は、三万から四万個で当初考えられていた十万個よりもかなり少ないことも確認されたということです。
 ヒトの遺伝情報は、世界各国で解読が急速に進んでいて、二〇〇三年の春までには、残りのすべての染色体の解読も終わる見通しです。
 遺伝情報の解読に詳しい理化学研究所の服部正平(ハットリマサヒラ)チームリーダーは「残りの染色体も解読が間近で、来年は解読ラッシュになると思う。遺伝子の働きを解明し、新薬の開発につなげる研究が急速に進むと思う」と話しています。
[2001-12-20-10:30]

◆12/20 ヒト20番染色体を解読 狂牛病関連遺伝子も存在 英科学誌
 共同通信ニュース速報

 【ワシントン19日共同】二十三組ある人間の染色体のうち、二十番目の染色体のほぼ完全な塩基配列を英国サンガーセンターのグループが解読し、二十日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 ヒトの染色体の解読は二十二番、二十一番に次ぎ三番目。二十番染色体上には、狂牛病やクロイツフェルト・ヤコブ病の原因となるタンパク質「プリオン」を作る遺伝子や免疫不全症の一種の発症に関連する遺伝子が存在することが知られているほか、糖尿病の一種
や肥満などに関連する遺伝子が存在するとされている。塩基配列解読は、これらの病気の原因解明や治療薬開発に貢献するという。
 ヒトの細胞の染色体は、常染色体二十二対、四十四本と性染色体二本の計四十六本がある。二十番染色体は常染色体の中で三番目に小さく、五千九百十八万七千二百九十八の塩基対から成り、ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の約2%に当たる。
 今回の解読ではマウスやフグなど既に解読を終えている生物の結果との比較も交えて遺伝子を解析。計八百九十五個の遺伝子が確認された。このうち、百六十八個は遺伝子の配列は持っているが実際には働かない「偽遺伝子」だった。
 人間の全遺伝情報解読を目指すヒトゲノム計画は昨年六月に全体の約90%の解読を終えたが、精密な解読は二○○三年完了を目標に継続している。
(了)
[2001-12-20-07:51]

◆<ヒトゲノム>20番染色体の解読完了 日米欧プロジェクト
 毎日新聞ニュース速報

 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読を進めている日米欧のプロジェクト「国際ヒトゲノム計画」は、人間の染色体の一つである20番染色体の解読を完了したと発表した。人間の染色体は23対あるが、染色体の全容が分かったのは21、22番染色体に次いで三つ目。20日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載される。
 20番染色体からは727個の遺伝子が確認された。この中から、痴呆症の一種のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の原因となるたんぱく質「プリオン」を作る遺伝子や、肥満、運動不足などの生活習慣が引き金になってかかる「2型糖尿病」、白内障などの原因遺伝子が特定された。これらの病気の発病の仕組みの解明や、治療に役立つと期待される。
 20番染色体の塩基の数は約6000万個で、全塩基対(31億6000万個)の2%を占める。解読は英国のウェルカム・トラスト・サンガー研究所が行った。
 【田中泰義】
[2001-12-20-07:25]

◆ヒト20番染色体のゲノム完全解読=ヤコブ病など解明に期待−英研究所
 時事通信ニュース速報

 【ロンドン19日時事】英国のウエルカム・トラスト・サンガー研究所は、24種類の染色体で構成される人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)のうち、20番染色体の遺伝暗号配列を完全解読した。染色体の完全解読は22番、21番に続き3番目。今回の解読結果は、人間の遺伝子数が3万〜4万個程度とするこれまでの分析を裏付けるとともに、原因遺伝子が含まれるクロイツフェルト・ヤコブ病や糖尿病などの解明に役立つと期待される。論文は20日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。 
[時事通信社]
[2001-12-20-07:07]

◆2001/12/20 英研究チームが人間の20番染色体解読に成功
 読売新聞ニュース速報

 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)が記録されている23対の染色体のうち、「20番」の解読に英国のウエルカム・トラスト・サンガー研究所のチームが成功した。20番染色体には、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となる遺伝子などが含まれており、将来、新たな治療法開発につながると期待されている。染色体の解読完了は22、21番に次ぎ3番目。詳細は20日付の英科学誌ネイチャーに発表される。
[2001-12-20-04:02]

 

◆2001/11/21 文部科学省
 生命倫理に関わる諸問題に関する研究開発動向及び社会的合意形成に関する調査
 ヒトゲノムの研究開発動向及び取扱いに関する調査及び、生命倫理に対する
 社会的合意形成の手法及びインフォームド・コンセントのあり方に関する調査
 (委託先:三井情報開発(株)総合研究所)
 科学技術振興調整費ニュース 225号
 http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/chousei/news225.htm


■科学技術振興調整費ニュース■

文部科学省

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 生命倫理に関わる諸問題に関する研究開発動向及び社会的合意形成に関する調査
 ヒトゲノムの研究開発動向及び取扱いに関する調査及び、生命倫理に対する
 社会的合意形成の手法及びインフォームド・コンセントのあり方に関する調査
 (委託先:三井情報開発(株)総合研究所)
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−第225号−
平成13年11月21日


1. 調査の概要
本調査は、科学技術振興調整費により、平成11年度から平成12年度にかけて実施
されたものであり、今回は平成12年度の調査結果について報告するものである。

目的:
最近の生命科学の発展により、生命科学と社会との接点において、人間の尊厳や
生命倫理の問題が新たに生じている。このような問題に適切に対応するための政策
審議に資するため、ヒトゲノム解析研究を例にとって、国内外の研究開発動向を調
査するとともに生命倫理問題に対する社会的合意形成の手法等について調査を行った。


2. 調査の結果
平成12年度の調査では、(1)ヒトゲノムの研究開発動向及びその情報の取扱いに
関する調査と、(2)生命倫理に対する社会的合意形成の手法及びインフォームド・
コンセントのあり方に関する調査を行った。

(1) ヒトゲノムの研究開発動向及びその情報の取扱いに関する調査

「ヒトゲノム研究に関する基本原則」及び「遺伝子解析研究に付随する倫理問題
等に対応するための指針」の運用における問題点およびヒトゲノム研究の成果の応
用段階での社会の関わりに関連する文献・資料等を整理・分析を行った。併せて有
識者を対象にインフォームド・コンセントや倫理審査のヒアリング・アンケート調
査を行った。
その結果、各分野の関係者から、インフォームドコンセントや倫理審査について取り
組む課題が多いと受け止めていることや生命科学全般について社会の信頼を得る努力
をしなければならないとの共通認識が確認された。また、個人の遺伝子の解析データ
はその個人の疾患発症の予知がある程度可能になることにより雇用差別の問題、遺伝
カウンセリング体制の整備の必要性、遺伝資源バンクの悪用等の問題が指摘された。


(2) 生命倫理に対する社会的合意形成の手法に関する調査

ヒトゲノム研究を例にとり、コンセンサス会議手法による合意形成を検討した。その
結果、生命科学研究といった一般市民にとって身近でないテーマ、難しいと予想され
ていたテーマであっても情報や検討の場を提供することによって、市民がこれらのテ
ーマを理解し、テーマに対する意思を明確に示すことができた。このことからコンセ
ンサス会議は市民参加の社会的合意形成手続きとして、有効な手法のひとつであると
評価できる。その上で、この会議の運営方法に関して、与えられたテーマについて充
分に検討できる時間を確保する、市民パネルによる主体的進行を重視する、専門家と
市民の間の対話をより一層行い、テーマの理解を促進する等が留意点として認識され
た。
今後の課題としては、社会的合意形成に関する情報提供について報道機関への積極的
な働きかけ等があげられる。


問い合わせ先

文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 担当者 浅川 茂樹
TEL : 03−5253−4114(直通)
03−5253−4111(内4113)

 
>TOP

■立岩真也


◆99/08/25「遺伝子の技術と社会」
 総合研究大学院大学・湘南レクチャー'99「社会の中の科学」
 http://koryu.soken.ac.jp/home/syonan/syounan99.html
 400字の概要
◆99/03/01「遺伝子の技術と社会──限界が示す問いと可能性が開く問い」
 『科学』1999-03(‘科学’800号記念特集号(いま,科学の何が問われているのか)
 ※『科学』のホームページ http://www.iwanami.co.jp/kagaku/
 編集に対する返答
◆98/09/01「未知による連帯の限界──遺伝子検査と保険」
 『現代思想』26-9(1998-9)(特集:遺伝子操作)
◆96/02/28「遺伝子」
 比較家族史学会編『事典・家族』,弘文堂
◆98/03/21「コメント」
 遺伝子医療を考える市民の会議
 コメントのためのメモ他
◆98/02/21「遺伝子治療の現状を離れて少し考えてみる」
 遺伝子医療を考える市民の会議・専門家パネル2 於:大阪科学技術センター
 当日配布した資料のもとになったファイル(に若干の追加)

 
>TOP

★バイオテクノロジー

・薬・治療・食物・エネルギー 80年春から世間で急にもてはやされる(坂口[85:9])
・3つのレベル
 1 DNAを操作するレベル…組換えDNA 2 細胞を操作するレベル…細胞融合
 3 卵や胚を操作するレベル (伊東[87:48-49])
・文献:坂口[85]松宮[82]・ Sylvester & Klotz[83=85]…特に合衆国での科学者 を取り込んだ企業化の動きに詳しくくふれている 他,山ほど解説書が出版されている

☆技術

○遺伝子組替え

・原理:3つの道具 @制限酵素 ADNA連結酵素(リガーゼ) BプラスミドDNA
 1.DNA(細胞1個につき2m)の一部を制限酵素により切る 制限酵素にはたくさん の種類があって切る場所を選べる
 2.プラスミドDNA(バクテリアの中で増える環状のDNA…ベクター(運び屋)とも 呼ばれる)プラスミドDNAを切り
 3.そこに1.の切り取ったDNAをDNA連結酵素(リガーゼ)でつなぎ
 4.それをバクテリア(大腸菌など)に入れて増殖させる
 解読 マクサム・ギルバート法・サンガー法
 (村松[6-10],溝渕[1987],市川[1984:304-306][1988:429-435]…)
・応用の可能性
 問題は高等真核生物の遺伝子が原核生物細胞内では働かないこと
 そこでDNAを人為的に合成することを考えた 人為的に合成した遺伝子DNAを組換 えて原核細胞内にいれると働く 1978 リッグスらこの技術によるインシュリンの生成 に成功 最初はDNAR合成酵素を使う 後に逆転写酵素を使うようになって時間が短 縮されるように インシュリンはすでに生産されている パテントはすべて外国が握っ ている(市川[1988:459-463])

○細胞融合
細胞を培養して,異種の細胞どうし融合させる 動物細胞では20年ほど前から可能 ハムスターの細胞とハツカネズミの細胞を融合 ヒトの細胞とネズミの細胞を融合 植物の場合は細胞壁があるため動物よりもずっと遅れる 酵素で処理して解決 ポマト:失敗 栽培植物がもつ特質は遺伝的には劣性なため 例えばキャベツとダイコンをかけ合わせると葉はダイコン根はキャベツといったことに 市川[1988:486-492]○胚工学(胚操作):体外受精・クローニング→別項 ・キメラ 石井一宏[8605:79-90]

○組合せ
遺伝子操作と胚操作(体外受精)の組合せ スーパーマウス:マウスの受精卵(卵割を始める前)に遺伝子操作によって,ラットの成長ホルモンに関係する遺伝子を入れる ラットの遺伝子を1つもっているだけで通常のマウスの2倍の目方をもつラットが
ということは クローンもできるし,遺伝子組換えの技術と併用すれば特定の遺伝子をもった動物もできる 国立分子生物学研究所と京大理学部の2つの研究グループには特別許可が出ていて,どちらもヒトの遺伝子を組み込んだマウスが作られている 両方とも繁殖も許可されている つくったものが遺伝的に何世代も続いていくかどうかを調べるため ただしヒトの受精卵に遺伝子を入れることはタブーとされている(市川[1988:500-501])人間の免疫抗体遺伝子をマウス受精卵に挿入(大阪大学医学部)(831112各紙,斎藤[1985:88])

○拒絶反応抑制剤
タンパク反応抑制剤を使った異種間の受精などが可能に(ただし抑制剤を使っている間はウィルスなどが体内に入ってきたときそれを識別するT細胞の反応が抑えられているので,感染を受けないようにしないと簡単に死んでしまう) 異種の卵と精子の受精が可能に それだけでなく受胎も可能に ヤギとヒツジ ウマとシマウマの間で成功している 例えばヒトの卵とチンパンジーとかゴリラとかの精子を受精させることもいまアメリカの科学者たちの申し合わせによって,受精卵の3回目の分裂(8細胞)をするまでしか発生せないことになっているが ヒトとゴリラの雑種を雌ゴリラが産みうる可能性も またヒトの受精卵をゴリラの子宮内で育てることも可能 市川[1988:501-507]
☆利用

〇薬

・成長ホルモン

成長ホルモン(ソマトスタチン)が先天的に足りない。身長が半分でとまる。15歳までにホルモンをいれれば今まで,死体の新鮮なもの(1人あたり40の遺体必要(太田[86:69-70])からホルモンをとって(ソビエト,スウェーデンで許可されている→輸入 年間数百人 高価)。成長ホルモンをつくるDNAをとり出し,一部をとってプラスミッドに バクテリアで増殖 成長ホルモンを取り出し,精製 安全性についての臨床試験が残っている。(坂口[1985:26-19])
外国の企業が1社生産に成功 テストの段階 市販には至っていない
子供のある時期までに投与しないと成長しない(市川[1988:470-471]
例えば甲状腺の細胞を取り出して培養し,そこに普通の人から取った正常な遺伝子を入れてやって,その人の甲状腺に戻してやる 拒絶反応が起こらない といったことが可能になるかもしれない(市川[1988:458])・インシュリン
膵臓で作られる血糖値を下げるホルモン 糖尿病に使う 現在はと殺した牛や豚から→多少の拒否反応→副作用(市川[1988:457])
インシュリンが合成できない先天的な糖尿病の場合に,大腸菌にインシュリン合成遺伝子を組み込んで,その患者の腸内でインシュリンを作らせて,インシュリンを腸から吸収させるという方法ができるかもしれない またその人はインシュリンを作る遺伝子がないのだから,その人の膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞を取り出して培養し,その培養細胞に遺伝子を導入してやって,その人の膵臓のランゲルハンス島のところに戻すということができるかもしれない。(市川[1988:458])
インシュリンの投与をいったん受けると膵臓のランゲルハンス島ではインシュリンをつくる遺伝子は働かなくなる 投与を始めるとずっと投与を続けなくてはならない 医者は必ず家族の同意書をとる 注射をずっと続けなくてはならないから(市川[1988:470]

・インターフェロン

動物の遺伝子から作られるタンパク質 ウイルスの感染に干渉(インターフェアー)して
増殖を妨げる インターフェロン遺伝子を組替えで細菌に生産させる(Hutton[88],他に坂口[1985:29-])カイコに作らせる 実験成功 (別府[1987:74])
しかしインターフェロンには多型現象(血液型がその一例)がある α・β・γの3タイプ αだけでも10数種類 α・β・γのうち何種類もが同時に同時に生産されており多種類が共存しないとだめ ところが遺伝子組換えで一つの遺伝子を導入してできるのは1種類だけ それをいくら量産しても効かない(市川[1988:467-468])
しかも逆に1種類のインターフェロンでも体内に入れると,インターフェロンがもうあるということで,自分の体がもっているインターフェロンをつくる遺伝子が働かなくなってしまう(市川[1988:468])
万能薬のように言われたが効果は限定的(朝日8906) エイズに対して(……)・ウイルス:体内で抗体を作るよう誘導する抗原を含んでいるのはウイルスのタンパク質 膜 病気自体の原因はDNA→ウイルスの毒性部分をタンパク質膜から分ける あるい は抗体自体を取り出す(Hutton[85-87])
・細胞融合
 モノクローナル抗体 B細胞とエミローマ細胞の細胞融合によって作り出され,いろい ろな病気の診断に使われる ミルシュタインらにより1975から(伊東[1987:50-51] )

○農業

・窒素固定:窒素→アンモニア を行う細菌 マメ科はこれと共生関係にある 現在合成 肥料を必要としている植物と共生している細菌に,窒素固定能力をもつ細菌のゲノムを 移植(Hutton[95-97])
・組換えDNA→耐病性の強い品種 栽培種に病気に強い遺伝子をもつ野生の植物の遺伝 子をいれる(市川[1988:473])だが菌の方が世代交代早いから耐病性のものを攻撃す る菌がまたあらわれる また今まで野草についていた病原菌──野草はまばらにしか生 えていないからあまり広がらない──が栽培種につく可能性(市川[1988:473-474])
 除草剤に強い遺伝子をペチュニアに取り込ませる実験が成功等(山口[1987:142-143])
・細胞融合…ポマト等 60種以上の雑種植物が作られている
 例:イネとヒエ→ヒネ 収穫量が多く風害や虫害 に強いイネ…植物工学研究所 1986 単子葉植物で世界で最初 (伊東[1987:50])
 オレンジとカラタチ→「オレタチ」 農林省の研究所 他 (山口[1987:140-142])
・胚操作…畜産 優秀なメウシにある種のホルモンを与えて7個から10個くらいの排卵を させて人工受精を行い,その初期胚をみな回収して,数頭の借腹ウシの子宮に一つずつ 移植してやると優秀な遺伝子をもったウシがたくさんできる 受精卵を分割して一つの 受精卵からたくさんの牛を作り,畜産の効率をあげる(伊東[1987:51])
・他に 放射能を使った人為突然変異の利用(山口[1987:133-135])
 ハイブリッド(一代雑種)(山口[1987:135-139]) 等 など 山口[1987]
 未来のバイオ社会からの報告:Calder[1988=1988]他にCooke[1977=1978:147-205]

○工業

・石油を食う細菌 組替えによるものではない(Hutton[90-94])
・酵素を人工装置の中で働かせたバイオリアクターでさまざまの飲料,さらには燃料用の アルコールをつくる(伊東[1987:51])
 発酵工業での応用(別府[1987:77-80]) 他に Cooke[1977=1978:207-222]

☆危険性の指摘

・バイオ・ハザード:遺伝子の組み替え実験,等に関し安全性に対する疑問 実験施設の 外に(自然界になかった)細菌がもれ出す…→規制をめぐる動き

・合衆国を中心とした経緯
70   Paul Berg(スタンフォード大学)SV40(腫瘍ウイルス) のDNAをバクテリオ    ファージ(この場合ラムダ・ファージ)に挿入して雑菌DNAを得,これを宿主    細菌である大腸菌と組替える実験。これが人に運ばれガンを引き起こす危険性
71   実験をやめる(Krimski[82=84:29-46],Hutton[38-46]
7306  バーバード・ボイヤー 雑種DNAを用いた実験を「核酸に関するゴードン会議」    で報告 翌日,シンガーがアメリカ科学アカデミーに書簡を送って安全性を検討    する委員会設置を要望することを提案 参加者が同意
730921 『サイエンス』誌にシンガー,サールの規制の必要性を訴える書簡(↑)発表
7407  もう一通の手紙『サイエンス』『ネイチャー』『国立科学アカデミー会報』に掲    載実験の延期を要求(Rogers[1977=1978:70-79])
750224〜27カリフォニア州・アシロマでの科学者の会議。17か国から 140人。4日間に渡    る激しい討論の末,DNA組替え実験を実施するうえでのバイオハザード(生物    災害)防止策について自主規制を中心とするガイドラインを各国で設定するとい    う大筋合意。(この会議のレポートとしてRogers[77=78]他に市川[84:306]    [88:433-446])物理的封じ込め:P1〜P4(P:Physical)
    生物学的封じ込め:外の環境では生存が困難な宿主と他の生物細胞には伝播しに    くいベクターを用いる(市川[1988:444-446])
76夏  マサチューセッツでの実験 はっきり限定されていない多くの遺伝子からのDN    Aを細菌に入れ,結果がどうなるかあらかじめわからないという…
    合衆国NIH(国立衛生研究所)のガイドライン 制限が多すぎるという学者も    Langone[78=79:138-144],Krimsky [82=84],Hutton[78=80])
760909 ガイドライン官報に(Wade[77=78:223](訳者による))
    高等真核生物の遺伝子が原核生物の中で働かないことが明らかになる
78   以降3度 規制の緩和(市川[1984])
 他に合衆国の77年までの動きについてCooke[1977=1978:253-300]
 (1859〜)197711までの年表:Wade[77=78:226-229]
 主題的に扱った文献:Rogers[77=78]Wade[77=78]Krimsky[82=84]

・日本

7710  日本学術会議第73回総会 わが国のDNA分子組換え研究の進め方(学術会議     見解) (Wade[77=78:226-229]訳者による追加)
790331 文部省の指針
790800 科学技術庁の指針
800401 文部省規制緩和 酵母
810401 文部省規制緩和 枯草菌
820831 文部省規制全面緩和 P4・P3の大部分をP2 P2をP1に
    (市川[1984:306-307])
・   筑波研究学園都市に理化学研究所(理研)のP4施設建設計画→反対運動
84   完成 P4は使われていない(必要がないので)
    (DNA問題研究会編[1984],市川[1984:309][1988:453-456])
    以上市川[1988:439-456]
・   国立予防衛生研究所(予研)の新宿区への移転
881213 着工 学生30人逮捕 反対運動について芝田編[88]
・問題:漏出 検出が不可能 実際に起こった事故例 ソ連・オーストラリア
 以上(市川[1988:463-466])7303 ロンドンで天然痘(Rogers[77=78:167-170]
・遺伝子操作を被った生物の環境への意図的放出 『技術と人間』89-6

 遺伝子操作の安全性についての文献

◆芝田 進午 編 19880825 『生命(いのち)を守る方法──バイオ時代の人間の権利』,晩聲社,401p.,2500円 ※

 ※は生存学書庫にあり。


REV:20100122, 20111006, 20150916, 20160721
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