「…Burr v. Board of County Commissioners事件(129)のように,斡旋機関は子の
健康状態や病歴等についての正確な情報を養親に提供する義務があり,これに違反
して損害を加えた場合,wrongful adoption(不法養子縁組)として不法行為責任が
認められる傾向にある。」(棚村修三[1991:24])
「(129) Burr v. County Commissioners of Stark City, 491 N. E. 2d 1101 (Ohio
1986). Burr夫妻が市の福祉課から17カ月の大きな健康な赤ちゃんということで男
の子を世話してもらい,養子収養をしたところ,後でハンティングトン病という進
行性の遺伝病に疾患しており,精神遅滞を伴い,平均余命が 8.5歳くらいしかない
ことが判明し,また,父母はともに精神病院にいる患者であることもわかった。そ
こで,Burr夫妻が市を相手取って,wrongful adoption を理由に子の医療費を含む
損害賠償の請求をしたというケースである。オハイオ州の最高裁は,子の健康状態
やバックグラウンドにつき,市の福祉課の職員に不実表示があり,「本件夫婦に事
実と異なる情報を提供する意図的な行為があって,これにより本件夫婦は,健全な
親となる意思決定をする権利を奪われ,損害賠償を請求しうる権利侵害を被った」
と判示して養親からの損害賠償の請求を認めた。See LeMay, The Emergence of
Wrongful Adoption As a Cause of Action, 27 J. Fam. L. 475(1988-1989)」
(棚村修三[1991:29])