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『こころの勲章』


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■山田 富也 19900419 『こころの勲章』,エフエー出版,245p. ISBN-10: 4900435899 ISBN-13: 978-4900435896 ※ md. n02h.

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内容(「BOOK」データベースより)
人は生きていくとき、最大の恐怖は死ではないだろうか。その死を、私は幼い頃からずっと背負ってきた。筋ジスの仲間たちが次々に倒れていく中で、私は一人戦場に残された兵士の思いを抱いてきた。そんな中でも、私はいつも夢だけは捨てずに生きてきた。「車椅子の青春」の映画づくりや詩集の出版、民間では全国初の福祉ホームの建設など、この15年間本当にさまざまな活動をしてきた。難病をかかえ、迫りくる死を見つめながらも明るく綴るバイタリティーあふれる手記!

■目次

第1部 こころの勲章
生い立ち
母のこころ
苦い思い出
立てなくなった日
こころの勲章
国立西多賀病院
「ありのまま舎」の芽生え
兄の決断

第2部 素晴らしき人々と共に・ありのまま舎の15年
「ありのまま」に生きられない時代だから――雑誌の創刊
初めての映画づくり――「車椅子の青春」
20万人の人たちに
ハレ晴れ村の花火大会
賞金で借金返済――劇映画「さよならの日日」
長兄・寛之の死
三度目の映画づくり――「忘られた一日」
次兄・秀人の死
「社会福祉法人・ありのまま舎」誕生
寛仁親王殿下との出会い
自立ホームの仲間たち
心優しい応援団

第3部 夢を開くために
愛する人がいるから
妻からの贈り物
私の子供たちへ
母の名は“外へ与える子”
父と入る元日の朝風呂
私の使命
何に向かって生きているのか
障害者の生き方
障害者の自立
私が支えられたものは
夢はホスピスの建設

■引用

第2部 素晴らしき人々と共に・ありのまま舎の15年
「ありのまま」に生きられない時代だから――雑誌の創刊
初めての映画づくり――「車椅子の青春」

 「長兄の寛之が雑誌づくりに取り組み始めた頃、私は、これまでの詩集の出版や写真展などのような活字や視覚に訴えるだけの表現方法ではなく、もっと総合的な表現方法を求めていた。
 私が入院生活をしていた頃、筋ジス患者のドキュメント映画を作りたいという映画制作者が現れた。私たちは当然被写体として写される側にあったが、その映画を制作する監督は、患者の皆さんと共に作る映画にしていこうと約束をし、編集する前のラッシュも時々観せくれた。
 しかし、撮影が進むにつれて患者の意見は全く反映されず一人歩きをするようになっていった。私たちは映画制作に対して異議を唱えた。それでもずかずかと私たちの生活に踏み込んでフイルムはまわされていった。△077
 ある時撮影を拒否している私にカメラが向けられ、おかまいなしにフイルムがまわされた。手も足も出せない私たち筋ジス患者にとって撮影を止めさせる手段はない。どうしようもない感情のたかまりから私はカメラに向かってツバを吐いて抵抗した。完成した映画にはそのシーンが残っていた。
 何が原因だったかは忘れたが、幼い頃ツバを吐きかけて、母に強く注意されたことがある。
 その様子が永遠にフイルムに残るなんて、私にとっては屈辱的なものでしかなかった。
 だからこそ納得のいく物を作りたい、私たちの思いを本当に写し出せないだろうか、とその頃から考えていた。
 そんな時、ちょうどドキュメント映画「車椅子の進む町」(朝日新聞厚生文化事業団制作)に出演していた私は、監督の杉原せつさんに突拍子もない質問をした。「私はいつもこうして撮られる側ですが、逆に患者の視点から自分たちをとらえるということはできるものでしょうか――」
 「資金はかかるけれど、やる気さえあれぱ誰だってできますよ」
 杉原さんは、映画をつくる目的と内容を充実させる方法、資金とスタッフの集め方、短期聞に撮影する方法など、映画制作のノウハウを伝授してくれた。△078
 夢は、にわかに現実味をおぴてきた。
 いよいよ映画づくりが始まった。スタッフは杉原さんが紹介してくれたが、制作にあたっては、早急に解決しなけれぱならない二つの問題があった。一つは、患者自身の手で映画をつくること。そのためには、障害者と健常昔で構成されるスタッフが、お互いに本音をぶつけ合い、模索して行かなければならなかった。カメラの眼≠ェ誰の目になっているか、常に確認しながら撮影しなければ、患者の視点からの映像は不可能である。
 撮影したフィルムのラッシュを見るたびに、監督と激しい討論を闘わせながら、自分たちの思いを如何に映画の中に表現していけるかを、一番大切にしながら制作を進めた。
 今思うと、映画づくりに全くの素人の集団から、何やかやと注文をつけられながら作っていへ監督の相沢道義さんは大変だったと恩う。
 もう一つは、映画の製作費。これは毎月発行する「映画ニュース」で寄付を呼びかけ、撮影しては資金を調達するという火だるま操業だった。総額五百万円をかけ、一年がかりというゆったりとしたぺースで制作して行ったが結果的には、四季折々の風情が映像の中で生かされてむしろ良かったように思う。
 出演者には、病気のタイプも、生き方も異なり、住む所も互いに遠く離れている筋ジスの仲間を選んだ。同じ筋ジスの次兄・秀人が長い旅を重ねながら訪問し、生活の様子や考え方など△079 を取材し語り合、つというドキュメント形式で映画は進められた」(山田[199004:77-80])


■言及

◆立岩真也 2014- 「身体の現代のために」,『現代思想』 文献表

立岩 真也 2017 『(題名未定)』,青土社


UP: 20160105 REV:20170412
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