現在日本ではこの手段を利用して生存する人たちはおよそ30万人存在する。だが、これまで述べたように、近年の透析患者の置かれている状況をみると、人工腎臓の普及は、 施策が講じられて生存が可能になりよかったという顛末ではないことが窺える。つまり、人工腎臓という医療技術の普及は、単に、生きることができてよかったという話ではなく、生きることが可能になるような医療技術の登場普及とともに、誰がどのように享受するのか、享受するための仕組みをどのように作るのかを私たちに問いかけているのだといっても過言ではないだろう。 (19)