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精神障害・精神障害者 〜1999年

精神障害・精神障害者


◆199908
 毎日新聞ニュース速報

 今年4月に業務を始めた大阪市東成区東小橋1、精神障害者地域生活支援センター「すいすい」(岡本雅由施設長)に対し、撤去を求める住民の運動が深刻化している。町内会は「障害者差別ではない。大阪市が事前に(センターの設置について)説明せず地域住民の人権を無視したのが原因」と主張。設置反対ののぼり200本が立っている。施設側は近く大阪弁護士会に人権救済を申し立てるが、「こんな状態をなぜ放置するのか」と解決に及び腰な行政の対応も批判している。
 【磯崎 由美】

 「すいすい」はJR大阪環状線玉造駅近くの工場、商店、住宅の混在地にあるビルに入居する社会復帰施設。在宅の精神障害者の生活相談に応じたり、食事や入浴サービスの提供、ボランティアの育成などを行っている。東成、生野、天王寺区の福祉、医療関係者らが5年がかりで構想し、大阪市の業務委託を受け、4月から一部業務を始めた。
 本格稼動を目前にした5月末、市が地元に施設について初めて説明。連合町会は「一方的」と反発し、7月に約2500人の署名を添えて市にセンターの撤去を要望した。回答がないため、「今後、行政には協力しない」と、夏祭りや公園清掃などの地域振興活動をボイコットしている。
 センターが入居するビルの所有者を中傷するビラなどが建物に張られたり、「火つけたる」などの脅迫電話などがセンターにかかってくるようにもなったという。
 センター職員の塚本正治さん(37)は6月、身体、知的障害を持つ人たちと一緒に「これ以上障害者をいじめないで」と書いたチラシを配布した。「みんなが反対しているわけではない。頑張って」との激励の手紙も届いたが、「まるで自分たちが障害者を差別しているようで心外」と憤慨する住民もいる。
 センターは今月上旬、住民への啓発活動などを求める要望書を市に提出。市環境保健局側は「反対運動によって障害者の病状が悪化していることは把握している。近く対応策をまとめたい」と話している。
 大阪市は同様の地域生活支援センターを2002年までに計8カ所つくる計画だが、他の地域でも住民の反対運動があり、一部でも業務開始にこぎつけたのは「すいすい」だけという。
 「とにかく施設側や医師の説明を聞くこと」。精神障害者施設に対して同様の反対運動を経験した各地の住民らは、当時を振り返り、口をそろえる。
 1997年4月に開設した富山市の施設も、事前説明がなかったことから反対が起きた。町会役員の金谷幸雄さん(52)は「説明しないのは、行政も迷惑施設と思っていた証拠」という。だが、精神障害者に関するビデオなどを見て理解を深め、同意。「総論賛成、各論反対になりがちだが、どこかに、つくらなければならない。施設と交流するようになって、精神障害者が地域に遠慮しながら暮らしていることが分かった」と話している。
 反対運動が1年以上続いた北海道苫小牧市では今年7月、町会長が「これ以上の建設延期は障害者差別」との見解を示し、条件付きで同意。反対派幹部だった泉清一さん(51)は「施設や保健所が率先して説明会を開いた。住民が他の施設を見学したのもよかった」という。
 大阪府枚方市の施設では「不安で子供を外に出せない」との周辺住民の声に、障害者本人らが幼稚園での人形劇の上演などに取り組み、保護者の理解を得た。町会は賛否をアンケートで問い、最終的に同意した。元町会役員の杓(しゃく)瀬勇さん(57)は「最後まで強硬に反対した人たちが、今は施設でボランティアをしている。不思議です」と話す。
 東京都には既に12カ所のセンターがある。昨年1月開設した足立区のセンターは都営住宅に入居。併設の喫茶店を利用する住民も多い。駅に近く、1年間の利用者は延べ約5000人。職員は「反対がなかったのは、以前から地域で活動してきた障害者の共同作業所の実績があったから」と分析している。

 ◇体調崩す障害者も 塚本さんの話
説明を聞いてほしいと訴えているが、町会は『行政批判でセンターは関係ない』と拒否する。それなら、のぼりは市役所前に移してほしい。障害者の中には「反対」の文字に囲まれて生きる意欲を失い、体調を崩す人が出ている。反対運動は障害者が地域で暮らすことを脅かしている。

 ◇私の家にも無言電話 地元連合町会の宮口俊一会長(69)の話
 市は日ごろ精神障害に関する啓発活動もしていない。事前にちゃんと説明すべきだった。地域の人間関係はズタズタだ。私の家にも無言電話があり、精神的にまいっている。施設への嫌がらせはわれわれとは関係のない人の仕業だ。病状が悪化した障害者たちも、こんな事態を招いた市政に怒りを向けるべきだ。

 ◇ご意見をお寄せください
 〒530―8251(住所不要)毎日新聞社会部「人権摩擦」取材班。ファクスは06・6346・8187、メールアドレスはaction―osaka@mbx。mainichi。co。jp
[1999-08-24-14:01]..

長野 英子 著 1990初版 1997増補改訂版
 『精神医療』,現代書館,フォービギナーシリーズ 1200
◆1998/04 全国「精神病」者集団
 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律見直しに関する意見書」
 http://www.din.or.jp/~ladd/seimei9804.htm
 全国「精神病」者集団 1998/04 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律見直しに関する意見書」
 http://nagano.dee.cc/98HHLad.htm
◆南山 浩二 199707 「家族ケアとストレス――要介護老人・精神障害者家族研究における現状と課題」
 『家族社会学研究』(日本家族社会学会)9:77-90
◆南山 浩二 19990730 「精神保健福祉システムの変容と精神障害者家族研究(1)」
 『静岡大学人文学部人文論集』第50号の1:1-19
◆19990916 『精神医療ユーザーのめざすもの――欧米のセルフヘルプ活動』
 メアリー・オーヘイガン著,中田智恵海監訳,長野英子訳
 解放出版社 四六版 248ページ 1800円
長野 英子 1990/09/25 「「精神障害」者に対する人権侵害,新たな保安処分――人権擁護局の差別文書,公衆衛生審議会のプライバシー侵害調査を糾弾する」
 『季刊福祉労働』48:114-121 
◆仙波 恒雄 矢野 徹 19770310 『精神病院――その医療の現状と限界』星和書店,345p. ASIN: B000J7TT42 3300 [amazon]※ m i05


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