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『精神科作業療法』

小林 八郎・松本 胖・池田 由子・加藤 伸勝・徳田 良仁・鈴木 明子 編 19700525 医学書院,247p.

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last update: 20180225

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小林 八郎・松本 胖・池田 由子・加藤 伸勝・徳田 良仁・鈴木 明子 編 19700525 『精神科作業療法』,医学書院,247p. ASIN: B000JA0RBS 2300 [amazon] ※ m. r02.

■目次

 総論

第1章 精神科作業療法の倫理 都立松沢病院院長 江副 勉 1
 A.精神科作業療法の基本理念 1
 B.精神科作業療法の理論的背景 3
 C.精神科作業療法士の資質について 4
第2章 作業療法士の歴史と組織 千葉大学教授 松本 胖 8
 A.精神科作業療法の歴史 8
 B.作業療法士の教育 13
 C.作業療法部の組織 14
第3章 精神科作業療法の歴史 東京大学精神神経科 岡田 靖雄 17
 A.ヨーロッパ、アメリカでの動き 17
  1.ギリシャ−ローマ医学 17
  2.近代精神医学の夜明け 18
  3.無拘束制と道徳療法 20
  4.暗い谷間と新しい動き 22
  5.第2次大戦後の動き 23
 B.わが国における動き 24
  1.精神医療史の概観 24
  2.戦前の作業療法の歩み 25
  3.戦後の動き 27
 C.いくつかの問題点 28
第4章 作業療法の基礎としての医学的心理学 国立精神衛生研究所部長 池田由子 31
 A.力動精神医学の考え方 31
  1.欲求不満と葛藤 31
  2.破局と不安 32
  3.防衛機制のいろいろ 33
 B.異常の見分け方 36
  1.知能テスト 36
  2.性格を測るテスト 37
 C.治療者・患者関係 39
  1.治療者・患者関係の特徴 39
  2.治療者・患者関係のいろいろ 40
  3.治療者の条件 41
  4.精神療法の過程 42
第5章 精神科作業療法の将来 東京大学教授 臺 弘 44
 A.変わることと変わらないこと 44
 B.作業療法の対象 45
 C.作業療法の理論づけ 46

 各論

第1章 概論
 A.精神科作業療法概論 高月病院院長 小林八郎 49
  1.作業療法の定義 49
  2.作業療法の適応症 51
  3.作業種目の性格 56
   a)作業種目と施行の段階 56
   b)作業分析 57
   c)職業分析 57
  4.作業療法の方法 58
  5.診療報酬からみた作業療法 62
 B.医学的心理学 国立精神衛生研究所部長 加藤正明 64
  1.力動精神医学の概念 64
  2.精神障害における疾病概念と治癒概念 65
  3.人格、性格 67
   a)人格、性格の概念 67
   b)気質と体型 67
   c)人格、性格の測定 69
第2章 芸術療法
 A.概論 晴和病院部長 徳田良仁 70
  1.芸術療法の定義 70
  2.精神医学のなかでの位置 71
  3.作業療法と芸術療法 72
 B.絵画療法 73
  1.絵画療法の実際 73
   a)段階別分類とその指導上の問題点 73
   b)治療者について 76
   c)施設について 77
   d)画材について 78
  2.治療プラン 78
  3.症例と問題点 80
  4.心理テストとの関連 87
 C.音楽療法 お茶の水大学 美田節子 89
  1.音楽療法の歴史的背景 89
  2.音楽の療法的可能性 90
  3.精神療法としての音楽の最近の臨床的使用 91
  4.音楽療法における音楽活動の種類 92
 D.演劇 東京慈恵会医科大学 増野 肇 94
  1.理論 94
   a)演劇とは何か、その特徴 94
   b)演劇の目的 95
  2.実際 95
   a)いわゆる演劇 95
   b)心理劇、即興劇 96
   c)ページェント劇 97
第3章 作業療法 99
 A.概論 高月病院院長 小林八郎 99
 B.工芸 102
  1.陶工 国立下総療養所 伊藤英邦 102
   a)陶工を指導する上での必要な知識・技術 102
   b)患者への技術の与え方とその目標の定め方 106
  2.木工 国立武蔵療養所 浅海捷司 109
   a)木工作業と関連活動 109
   b)木工作業の特質 109
   c)観察、評価の手がかり 112
   d)作業療法としての木工作業の限界 113
  3.竹工 国立下総療養所医務部長 林 左武郎 113
   a)竹工の知識と技術の大要 113
   b)作業指導 115
  4.銅工、皮細工、七宝焼き リハビリテーション学院 鈴木明子 117
   a)銅工または銅板細工の作業分析と応用 118
   b)皮細工の作業分析と応用 121
   c)七宝焼きの作業分析と応用 125
 C.技芸 紫雲会横浜病院 赤松 耕 128
  1.人形 128
   a)技術 129
   b)臨床上の適用 131
  2.手芸 131
   a)技術 132
   b)作業療法における手芸の実際 133
   c)指導上の注意 135
  3.織物 136
   a)作業療法と織物 136
   b)手織(てばた)と製織 137
   c)臨床適用 139
   d)指導上の注意 139
 D.印刷・孔版・タイプ 多摩病院 小林清男 140
  1.活版印刷 141
   a)文選 142
   b)植字 143
   c)印刷 143
   d)校正および差替 143
   e)解版および字返し 144
   f)製本 144
  2.孔版 144
   a)原紙切り 144
   b)謄写印刷 145
  3.タイプ 145
 E.園芸・農耕・畜産 146
  1.園芸・農耕 147
  2.畜産 151
第4章 レクリエーション療法 青山病院医長 蜂矢英彦 153
 A.概論 153
  1.レクリエーション療法の歴史の概略 153
  2.レクリエーション療法の基礎理論 154
   a)臺の理論 155
   b)小林の理論 156
   c)浜田の理論 157
 B.レクリエーション療法 160
  1.組織と人 160
  2.計画性と創意性 162
  3.作業とレクリエーション 163
  4.レクリエーションの場における活動性の濃淡とその活用 164
 C.体育・スポーツ 慶応大学 中井忠男 166
  1.体育療法 166
  2.いろいろな運動について 168
  3.指導上の問題点 170
第5章 社会療法 烏山病院副院長 竹村堅次 173
 A.概論 173
  1.治療体系のなかの位置づけ 173
  2.集団療法と病相管理教育 174
   a)社会療法との関係 174
   b)精神分裂病について 174
  3.臨床チームによる社会療法 176
 B.社会療法の実際 177
  1.集団療法のなかの社会療法 177
   a)社会復帰学 177
   b)特殊なグループ会 177
   c)外来グループ 177
  2.生活療法のなかの社会療法 178
   a)ナイト・ホスピタル 178
   b)デイ・ホスピタル 179
   c)病院内職場作業 179
   d)その他の社会療法 179
 C.社会療法の背景と問題点 180
  1.社会療法と社会的治癒 180
  2.地域社会における社会療法 181
  3.これからの課題 181
第6章 身体障害、特に神経系疾患に対する作業療法 リハビリテーション学院 鈴木明子 183
 A.概論 183
  1.評価 183
  2.作業分析 185
  3.作業とエネルギー消費 185
  4.心理的側面 186
 B.脳血管障害と片麻痺 186
  1.医学的症状 186
  2.リハビリテーションの医療 186
  3.評価 186
  4.治療目標と内容 189
 C.脳性小児マヒ 193
 D.錐体外路症状群(パーキンソン症状群) 201
 E.脊髄損傷 202
 F.慢性関節リウマチ 204

作業療法の効果判定 207
 A.観察記録法 都立松沢病院 加藤伸勝 207
 B.心理検査を応用する方法 215
   a)質問紙法 215
   b)作業検査法 215
   c)投影法 215
 C.社会測定法を応用する方法 216
 D.作業処方箋について 220
 E.精神科の作業分析 リハビリテーション学院 鈴木明子 220

精神科リハビリテーション 烏山病院院長 西尾友三郎 227
 A.精神医療体系の変遷 227
  1.精神病院中心主義 227
  2.地域精神医療 228
  B.入院・退院・就職・復職 229
 C.リハビリテーション医学 230
  1.リハビリテーションの定義 230
  2.精神科リハビリテーション 231
   a)特徴 232
   b)現況 233
   c)活動の内容および関与する職種 234
索引 235

■書誌情報

岡田 靖雄 19700525 「精神科作業療法の歴史」,小林八郎他編[1970:17-30]
臺 弘 19700525 「精神科作業療法の将来」,小林八郎他編[1970:44-48]
小林 八郎 19700525 「精神科作業療法概論」,小林八郎他編[1970:49-63]
竹村 堅次 19700525 「社会療法」,小林八郎他編[1970:173-182]

■引用

小林 八郎 19700525 「精神科作業療法概論」,小林八郎他編[1970:49-63]

 「〔各論〕

 第1章 概論

 本意のAでは、本章全般にまたがる概論的事項として定義、適応症、各作業種目の性格、方法などについて述べる。次にBでは総論の医学的心理学面を補う意味でここに特別に各論の項を設けた。

  A.精神科作業療法概論
 1.作業療法の定義
 作業療法という言葉は、広狭二つの意味をもっている。狭義の作業療法とは、現在多くの精神病院で行なわれている、農耕・畜産・土木・印刷・手芸などのような生産的な作業種目を主とするものである。広義の作業療法とは、上記の狭い意味の作業療法のほか、レクリエーション療法・芸術療法・社会療法および生活指導などを包含するものであって、生活療法とも呼ばれるものである。ここで述べるのは、広い意味の作業療法についてである。
 作業療法は、作業活動を手段として行なう精神療法である。作業療法は、方法としては主に作業活動を用いるものであって、いわゆる精神療法のように主として言語を方法として用いるのではないが、しかし精神療法と同じような効果を納めることが目的である。したがって、単に作業その他の諸活動をすること、あるいはそれらを巧みにすることが目的ではなく、それら諸活動を精神状態の治療を可能ならしめる道具であると考えるのである。精神症状に対する治療効果と、作業その他の諸活動の技術の上達や能率の向上とは必ずしも平行しないことは、よく知られている事実である。

 精神疾患に対する身体的治療とは、薬物によって脳の機能に影響を与えたり、あるいは脳に通電し、また手術的侵襲を加えて脳の機能に変化を与えて、それによって精神障害者の心を変化させる治療法である。すなわち、物理的あるいは化学的手段によって生理的変化を脳に生ぜしめて精神状態を変えるのである。
 これに対して精神療法は、治療者の言葉が主として手段となり、それが患者に理解されて、心に影響が与えられるのである。すなわち身体的治療のように、脳の生理的変化を介在させて心の変化が生じるのではなく、治療者のめざす心理的影響を直接に心が受<0049<けて変化することが期待されるのである。

 現実の外部世界は、もの人間によって構成されているが、作業療法は、この二つの系列を治療効果の生ずるように構成し、そこへ患者を導き入れて治療を行なうのである。患者を単なる表象の世界から脱却させ現実世界に戻らせるには、ものを扱わせ、他の人間の行動・態度に触れることによって初めて可能である。精神療法における言葉の代りに、そこでは治療者および他の患者、ものすなわち作業種目、材料、作業方法その他によって、言葉のように直接でなく、間接に患者の心に効果的な影響を与えるのである。
 このような方法のとられる理由は、精神疾患の主要なものは、言語的なコミュニケーションが困難であるか、ほとんど不可能であることに基づくものだからである。また、言語的媒介によるだけでは治療的影響を与えない疾患であり、現実的な体験によって初めて治療的変化が生じうるからである。とはいっても、補助的に言語的手段を用い、薬物療法その他の身体的治療を平行して行なうことは忌避されるべきではない。
 作業療法の本質は以上のようであるが、作業療法の効果構造は生理的・心理的・精神的の三つの層から成っている。生理的層とは、本書の〈身体障害、特に神経系疾患に対する作業療法〉および〈技芸〉の項に記されているように、すべての作業活動には身体活動を伴うから大小さまざまな筋肉が働き、四肢躯幹の粗大なまたは繊細な運動が生ずる。これらの運動のために血液循環は盛んになり、神経系統の活動性は高まり、情動反応にもすぐれた影響を及ぼすであろう。心理的層とは、目的のある仕事に注意を集中し、記銘を把持し、合理的・計画的に、目的にかなった継続的な行為を行ない、調節と抑制をふたたび習得するであろう。生理層と心理層とが共同に働く結果として、活動意欲の発動が促されることが多い。精神的層では、病識の形成・自己評価・現実吟味・洞察・自我の強化など高次の人格の再建が行なわれる。この最後の層が、いわゆる精神療法としての作業療法の対象であるが、しかし、これら三つの層は作業療法によってともに影響を受け、互いに関連し合って患者の心に作用するものである。また作業療法の方法あるいは患者の精神状態によって、必ずしも三つの層が同じ程度に影響されるものではなく、いずれかの層が特に強く影響<0050<を受けることがある。」(小林[1970:49-51])

 4.作業療法の方法 >


 さて次に、作業療法全般を通して原則的な方法論を述べる。
 1)同一化および模倣理論 これは荒廃状態などに対して用いられることが多い。荒廃には感情鈍麻・無為・自閉・拒絶などを伴うものであるが、いずれにしても自我の衰弱のいちじるしい場合に、この方法を用いて作業療法に導入することができる。
 精神分析的立場では同一化といっており、訓練的立場では模倣と名づけている。多少の理論的違いはあるが、導入の過程は共通点がある。
 同一化理論 3)では、患者が同一化する対象を治療者においている。患者は自分にとって重要な人(重要というのは、生活をともにして、患者の欲求を満たす努力をしてくれることをいう)が、絶えず傍にいて、仕事その他を定時間(1〜2時間)、毎日繰り返して続けていると、しだいにその人に同一化して、その人のしている行為に手を出し、やがて同じことを始める。一般に荒廃がいちじるしく自我の衰弱が強ければ強いほど、同一化傾向は早く生じる。これは作業療法の導入としては基本的なもので、ことに慢性分裂病が適応症である。
 模倣は加藤 4)の主張する理論で、働く患者の傍におけば無為・荒廃患者も模倣して働きだすにいたるというのである。
 2)同質の原則 1) これは抑うつと発揚という情動の2方向に対して用いられる理論である。この2方向とは必ずしも躁うつ病を意味するものではない。一般に基礎疾患のいかんによらず、精神状態はこの2方向によって彩られることが多いから、広い適用が可能である。たとえば妄想状態についていえば、微小方向の妄想は抑うつ的、誇大傾向の妄想は発揚的と考えてよいことが多い。
 この方法は、患者の気分、気分に基づく自己の能力感に合わせて、作業などの諸活動の種目・材料・材質・強度・硬度・弾性・時間・テンポ・リズムなどを選んで与えるということである。
 抑うつ状態あるいは抑うつ方向には、穏やかな、静かな、テンポの速くないものがよい。激しかったり競争するようなものはよくない。新規のものより馴れ親しんだものがよい。あまり建設的なものよりは、患者の現在の能力を下まわる程度のものがよい。材料や材質は抵抗の少ない、柔らかいものがよい。対人的には、強制されたり、促がされたりしない人間関係がよいということである。
 これに反して、発揚状態あるいは発揚方向には、外向的なもの、運動の烈しいもの、<0059<力を必要とするものがよい。力感にあふれ、抵抗のある、堅い材料、弾性のある材質がよい。新奇の、建設的なプラン、競争や変化に富むものがよいということである。
 しかし、抑うつ状態に同質の作業を与えているうちに、精神状態は変わってくるわけであるから、それを十分に観察して、それにふさわしい作業に変えていかなければならない。また、ある目標をたてて気分状態に先行して目標に適当な作業を与えなければならぬこともある。たとえば発揚状態において、自己制御を目標とするとか、抑うつ状態において自我の強化を目標とする。この際、いつまでも同質の原則の枠内での作業を与えるだけでなく、目標に到達するため、気分に先行して作業種目を選択しなければならぬこともある。その決定をいつ行なうかは、きわめて難しい判断である。この原則については本書の〈芸術療法〉の音楽について記されている。
 同質の原則とは異なる原理であるが、精神障害、ことに分裂病を退行現象と考え、その退行段階に応じて、幼児期に好まれる遊び、すなわちフィンガーペインティング・粘土細工・水遊び・砂遊びのような活動を与えることがある。
 3)指示的方法と非指示的方法 この二つの方法は、作業療法士の患者に対する基本的な態度であって、働きかける対象として選んだ患者に対して、上記の方法のいずれかを選ぶことになる。
 指示的方法とは、作業療法士が患者に対して主として言語をもって、到達すべき治療目標に向かって、作業の進め方、患者の態度その他について、指示を与えることである。忠告・批判・非難・訓戒・称讃などの形式をとることが多いので、ある意味では訓練的要素が濃くなりがちである。
 非指示的方法とは、患者の欲求を理解してなるべく受け入れてやり作業活動をさせる。そしてカタルシスや昇華を十分に遂げさせ、作業療法士あるいは仲間の作業患者との相互関係のなかで、自己評価をさせるように導き、自分で現実吟味を行ない、洞察をさせようとするものである。言語的指示はなるべく少なくし、強制や命令を避けるのが特徴である。
 実際には、指示的方法をとるのは容易であるが、非指示的方法をとることは非常に困難である。それゆえに作業療士は指示的方向で集団を扱いがちとなるが、集団内のある患者を特に非指示的に扱うような努力はすることができる。
 4)保護的方法と訓練的方法 保護的方法とは、作業時間を短縮したり、軽作業とか馴れた仕事を課したり、休憩を多くしたり、要求に応じてやったり、面倒をよくみる患者と組ませてやったり、なにくれとなく作業療法士がかばってやる態度である。この際要求は必ずしも解釈的・受容的というより表面的に承認してやるということである。
 訓練的方法とは、患者に対して作業の持続性を求め、より高度の仕上りを要求し、能率を高め、欲求不満に耐えさせ、さらに異常体験たとえば幻聴などに抵抗して作業を行なうように求め、患者もこれに応ずるように仕向けていく方法である。
 この方法は言語的に行なわれることもあり、作業条件を特に設定することによって効果をあげることもある。一般的には保護と訓練を適度に組み合わせ、精神状態によって緩急を考えるのがよいとされている。
 5)支持的方法と抑制的方法 支持的方法は保護的方法と重複するところがあるが、必ずしも同じではない。単なる保護ばかりではなく、患者は自分が精神的に作業療法士<0060<によって理解されていると感じ、それによって自信をもつ。これが患者の支えである。そして問題や目標は自分から解決するように導いてやるのである。
 この支持とは言葉による激励などではなく、作業療法士の扱いのうちにそれを感じることである。また患者の環境調整などにより間接的な支持の行なわれることもある。したがって、保護的方法の対象とする症例よりは軽快した患者がこの方法の対象である。少なくとも作業療法士の行なった支持的態度が理解できる程度のものに効果がある。
 抑制的方法は訓練的方法と重複するところがあるが、必ずしも同じではない。訓練的方法の要求よりは、さらに高い目標すなわち自我の統制と強化が要請される方法である。すなわち、自己の衝動・情動および行動を制御することを求め、その方向に向かって自ら鍛錬させるのである。それには、自己評価が前提になる。そのためには他人との人間関係についての現実判断が抑制の基準になるのであるから、そのように導かなければならない。作業場面の設定、および人間関係の設定をして、抑制の機会を提供するようにつくることが必要である。」(小林[1970:59-61])

1)Davis,J.E.(1950): Recreational therapy. Occupational therapy.(edited by Dunton,W.R.& Licht,S.),Tomas、Illinois.

3)Freeman,T.,Cameron,J.L.& McGhie,A.: Chronic schizophrenia(小林訳:慢性分裂病,医学書院,1968)

4)加藤普佐次郎(1925):精神病者に対する作業治療並びに開放治療の精神病院におけるこれが実施の意義及び方法 精神経誌,25巻,大14.8.


UP:20110731 REV:20110801, 1003, 20180225
小林 八郎  ◇リハビリテーション  ◇生活療法  ◇精神障害/精神医療  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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