2019/01/23 立岩真也「誰が?」
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誰が?

立岩 真也,企てに参するを企てる・6
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■立岩真也「企てに参するを企てる」1~6

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石井雄一「言葉がさかさまになる怪獣」

 ※以下立岩担当分

企てに参するを企てる
 ■1 与える人たちの学問でないこと
 ■2 歴史を見る
 ■3 なおる/なおらない/なおさない
 ■4 言葉を調べる
 ■5 名付けられること/わかること
 ■6 誰が?

■6 誰が?

 ★01誰がその学問をやるのか。誰でもよいのです。ただこれまで関わってくれた人を分けると3種類ぐらいいます。
 ★02まず1種類。「経験者」がいます。自分がやってきたことをまとめようという人がいます。私たちは、すくなくとも私は、とても歓迎しています。例えば、だいぶ時間がかかりましたが、もうすぐ博士論文が提出されそうな人で、六〇歳台後半の人の女性がいます。彼女は、夫を過労死で亡くし、その後ずっと、二〇年以上過労死家族の会の活動に関わってきました。その活動を中心に論文を、ずいぶん手間もかかったし、なかなかたいへんでしたし、これからしばらくまだたいへんだと思いますが、書いてくれました。こういうことには、中にいた人しかけっしてわからないことがあります。その人しか書けないことがあります。論文としてのまとめ方であるとか、そんなことについてはいくらかお手伝いすることはあります。私たちはそれで給料をもらっているわけです。そうしていくらかお手伝いして、論文を書いてもらうのです。
 ★03昨年、博士論文を提出した葛城貞三さんは78歳です。それから1年経っているから、もう1つ年が加わっているでしょう。彼は、滋賀県で、県内の「難病」の人たちの組織の連絡会、「滋賀県難病連絡協議会」の事務局長を長いこと勤め、そして公務員定年退職の後大学に入って卒業し、こちらの大学院に入って、そしてやはりずいぶん時間がかかりましたが、博士論文を書きました。それがもとになった本がもうすぐ出ます。
 ★04もう一つ、今回、優生保護法のもとでの手術の話を少ししましたが、そのことを、ほとんど社会的には知られていなかった長い期間問題にしてきた人たちの一人に、利光恵子さんがいます。本になったその博士論文はすこし違うテーマでしたが、大学院を修了された後は生存学研究センターの客員協力研究員として優生手術の問題にとりくんでいます。
 そういう人はとてもたくさんはいないかもしれませんが、しかしそれでもやはりたくさんいらっしゃいます。繰り返しますで、その人たちが書いてくれないと、どこにも残られない、歴史がないことになってしまうわけです。今ならまだまにあいます。
 もう1種類は、「専門職」の人たちです。ただ今どきは福祉学にしても看護学にしても、立派な大学院がいろいろとできています。もちろん、普通にそういうところで論文書いて学位をとったってよいのです。ただ、職業者による職業者のための職業者の学問とは、ある種の「臭さ」があって、今日最初のほうで言いましたが、それがわれながら鼻につくという人が、ある程度、います。その人たちは、ある意味、自虐的なかもしれません。自分たちのやっていることを「相対化」しようというのです。それはたまにはしんどいことかもしれません。しかし私はそうでもないと思います。かえって、自分や自分の上司との距離が掴めて、楽になることもあると思っています。だから、何をテーマにするかにはちょっと苦労すると思いますが、歓迎です。
 もう一種類は、その他です。若い人もいます。若い人たちのなかにも既に「経験者」という人がいます。例えば、中学生のときに精神病を発病したという人がいます。また、いまどきの傾向として、さらに若い時に「自閉症」とか「発達障害」の診断を受けて、そういう自覚をもって、これまでの人生をすでにやってきたという人がいます。その人は診断は受け入れているのですが、しかし、自閉症についての医学であるとか教育学のものの言い方は気に入っていない。それでなにか書こうとしています。これらの人は、若いながらすでに経験者ですから、第一の種類のなかに入ります。とすると、普通に育ってきた若い人というのが残ります。普通にというのは、実はかなり稀少なわけですが、それでも存在するとしましょう。その人たちは何を研究するのか。知りません。しかし、私たち教員は、もう長いこと、この研究・学問という場にいて、どんな研究がじつはないのか、薄いのかを知っていますから、こんな研究すると受けるはずだということは言えます。方法についてもいくらか言えることはあります。そういうものを参考にするにせよ、しないにせよ、調べることはいくらもあります。★05ただ保障できないのは就職です。その保障はまったくできませんからしません。私たちは若者の運命を左右したくはないと思います。しかし、研究はおもしろくやれば、おもしろい。そのことは言っておきます。
 ★06以上で私のパートを終わりします。立岩真也でした。

★01 PPT
【誰が?→
 誰でも
 あなた、とか】
★02 PPT
【1 経験者(が自分を使う)
 2 専門職(の不良な人、も)
 3 その他、諸々】
★03 http://www.arsvi.com/w/kt25.htm の上から一画面分というのが可能であれば、他についても同じ。
★04 http://www.arsvi.com/b2010/1211tk.htm …上に同じ
★05 
 【保障できないのは就職です。】
★06 
 【保障できないのは就職です。
       ↓   ……この行と次の行をあとで出す
    立岩真也でした】


■問題 ○×で答えてください。

◇1 なにか与える側の学問と別に、与えられる側が研究したってよい、と講師は述べた。○/×
◇2 障害はつねに直るのがよい、と思わない人もいるようだからその事情を調べるとよい、と講師は述べた。○/×
◇3 研究で金をえられるようになるかどうかはわからないが、しかし楽しいことはあるかもしれない、と講師は述べた。○/×
○4 過去を明らかにすることは楽しいことばかりではないが、しかしそれでも明らかにした方がよいこともある、と講師は述べた。 ○/×
○5 言葉がどう使われてきたかをきちんと調べることも研究の一つであると、講師は述べた。○/×


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UP:2018 REV:20190118
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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