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【翻訳】ロンドン・ラティンクス――アフィニティ・グループを作り、抑圧と闘う

[Translation] Usayd Younis & Cassie Quarless "London Latinxs: Building Affinity Groups, Fighting Oppression", STRIKE! Issue 15 (MAR-APR 2016): 29

訳:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi) 2017/07/11

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last update: 20170715


 ロンドン・ラティンクスは、「政治的な活動をしているラテン・アメリカン」を募る呼びかけの結果から生まれた。この呼びかけが期せずしてフェミニスト・反資本主義運動家・アナキスト・反ファシズム運動家らを引き付けたことは、軍産複合体の存続に脅威をもたらすことを期待させる、幸運な偶然の一致である。雪だるま式に友が友を呼び、私たちはコロンビア人・ペルー人・ボリビア人・ウルグアイ人・ブラジル人を含むまでに拡張してきた。

 私たちはこれまで主に、ブラック/ブラウンの女性/人々のニーズと物語〔の充足〕を活動の動機とする多様なグループとともに、抵抗のイベント/行動を共催するかたちで活動してきた。私たちは、環境保護主義/反資本主義、反ファシズム、アナキズム的なクィア・LGBT解放運動、フェミニズムに関する集合的な政治の物語から、白人優位主義を外に出すために闘う。
 脱植民地的な理論と実践は、私たちと同様に――文化的差異をもち、ロンドンのような植民地主義的な都市に拠点を置く――多様性のあるグループにとってずっと一貫した課題であった。とりわけ私たちがかつてつながりがあった団体や階層的な組織にとっては。私たちは、話す言語と生活する空間すべてにおいて、その〔植民地主義的な〕体制と埋め込まれたコードを目にする。私たちは数世代の移民の混合体だが、植民地化は私たちの理解よりも多くのかたちで私たちの身体/精神に存在する。
 「Latinxs」の「x」は、以下の2つの目的で使われている。(a)すべてのジェンダーもしくはジェンダーをもたない人を包摂することを示す。(b)ヨーロッパの植民地主義に直接的な起源をもたない、私たち自身を類型化する言葉をもつ。
 私たちは、スペイン王立アカデミーが定める標準的な文法上のジェンダー――それは、たいていの名詞・形容詞につく男性形・女性形の語尾と冠詞を意味する――を拒絶する。文法上のジェンダーが実際のジェンダーもしくはジェンダー表現とは異なる一方で、その性別二元論はユダヤ・キリスト教による植民地支配的な〔言語の〕横領の影響をとどめている。「x」を使用することで、私たちは言語をニーズにあわせてクィア化しているだけでなく、たいていのスペイン語話者が奇妙あるいは不必要だとして拒絶する言葉を意識的に使用している。
 さらに、その語に私たちが使用するものという印をつけることで、私たちは自身のアフリカ系の、先住民としての、メスティーゾのルーツを認識する。過去に経験した文化・言語の滅亡によって自身の祖先の伝統的なルーツを呼び起こすことができない人々を、私たちは包摂する。ラテン・アメリカの伝統は深く混合された文化的ルーツから生まれている。それがいま、大いなる多様性と美をもって開花しているのだ。私たちはミックスされている、それはとても誇らしい!
 グループの一部のメンバーは、移民二世である。ラテン・アメリカ移民の一世と二世とを組織化することの価値は、私たちの文化が脱植民地化という点でシェアされ、拡張しているだけでなく、同時に対抗され、解体されていることを確認することにある。人間はただ文化の影響下にあるわけではない。文化が私たちを作るように、私たちが文化を作るのだ。私たちは、「ラティーノ/ラティーナ」という用語が象徴している家父長制的・人種差別的・同性愛嫌悪的概念を打倒することに取り組む。私たちはグループとして、社会、私たち自身、私たちの集合的本質を変革し、脱植民地化の準備をすることを目指している!
 すでに述べたように、植民地支配的な言語を用いて脱植民地性を表すことは容易ではない。私たちが最も多く用いる2つの植民地支配の言語、英語とスペイン語は、私たちの地域活動に必要なものだ。発音は、ラテン・アメリカ移民一世にとって悩みの種だ。なぜなら外国人だと見抜かれてしまうから。するとこの国では、雇用や自己決定に対する障害が設定されてしまう。流ちょうに話せるという経験と特権は、私たちを元気づけるとともに、私たちの活動において異なるジェンダー・文化・階級の人々との対立を引き起こす。
 このような言語はまた私たちの教育を媒介する。私たちは、自分たちの考え方をシェアしコミュニティを創造するために行なっているワークショップ、議論、ソーシャル・メディアの活用に誇りをもっている。私たちは、国境を越えて友だちを作るためにスペイン語訛りの英語、スペイン語訛りのポルトガル語で遊ぶのが大好きだ。私たちは、ラテンアメリカ文化の知識をシェアするために利用できるあらゆる方法を活用する。そうして私たちに影響を及ぼす問題の情報と、大西洋の向こうで抑圧的な制度と闘う兄弟姉妹(同胞)たちを奮起させるような方法を拡散している。私たちは、ジェンダー・人種・セクシュアリティ・特権といった問題に関するワークショップを開催してきた。さらに、国境に埋め込まれている人種差別と資本主義、ミソジニー、拘置所(収容所)の恐怖、そしてこの地球の破滅に立ち向かう創造的な抵抗のプラットフォームを活用してきた。
 私たちは、他者を刺激して、自分たち自身のアフィニティ・グループ〔直接行動で共に行動する少数の活動家集団〕を見つけようという気持ちを起こさせたいと思う。共に組織化するために、そして人種差別的・異性愛規範的・資本主義的・家父長制的な体制との闘いに立ち上がるために。

 もしあなたがラテン・アメリカンで政治的意識があるなら、[thelondonlatinxs@gmail.com]で私たちにアプローチして、活動に参加して。


*段落は原文を反映している。
*この翻訳は『STRIKE!』の許可を得て掲載している。(This translation article is published with permission from STRIKE!.)


■関連事項(Related Matters)
◇村上潔 20170701 「ロンドンの若きラテンアメリカ系フェミニストは「ジェントリフィケーションに抵抗せよ!」と叫ぶ」,反ジェントリフィケーション情報センター
◇The London Latinxs "Resist Gentrification!" (April 9, 2017)=村上潔訳 20170621 「[アピール]ジェントリフィケーションに抵抗せよ!」
◇The London Latinxs "[Event] Salsa&Samba Shutdown PART II" (June 19, 2017)=村上潔訳 20170622 「[イベント]サルサ&サンバ・シャットダウン パート2」
◇The London Latinxs
https://twitter.com/londonlatinxs
https://www.facebook.com/thelondonlatinxs/
◇STRIKE!
https://twitter.com/strikeyo
https://www.facebook.com/strikemagyo/
◇Tanisha Love Ramirez & Zeba Blay "Why People Are Using The Term 'Latinx': Do you identify as "Latinx"?" (HuffPost, 2016/05/07) http://www.huffingtonpost.com/entry/why-people-are-using-the-term-latinx_us_57753328e4b0cc0fa136a159


cf.
◇立命館大学産業社会学部2016年度後期科目《比較家族論(S)》「「ハウジング」をめぐる問題からみる「家族」[The Forms of "Family" Observed from the "Housing" Problems]」(担当:村上潔)
◇神戸市外国語大学2017年度前期科目《ジェンダー論入門》「女性がつくる自律的文化シーン――メディア・空間・アクティヴィズム[Women's Autonomous Cultural Scenes: Media, Space, and Activism]」(担当:村上潔)
翻訳(村上潔)


*作成:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
UP: 20170711 REV: 20170715
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