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税・2007



 *↓の本のために作成開始。増補予定
◆立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 20090910 『税を直す』,青土社,350p. ISBN-10: 4791764935 ISBN-13: 978-4791764938 2310 [amazon][kinokuniya] ※ t07.


◆立岩 真也 2007/02/10 「政治は何をやるべきか――今と少し違う社会の像を描いてみる・2」,『高等学校 新現代社会改訂版』,清水書院,p.82

  「[…]経済学では、市場経済がうまくいかないところ、市場にまかせない方がよい場合に政治が登場するというふうに言う。そのような筋で考えてもわるくはないのだが、もっと単純に考えてみてもよい。政治が決めることがそれ以外で決まることと違う一番大きなことは、政治には強制があるということだろう。税金は払いたくなくても払うものだ。払わなければ脱税で罰せられる。だから、私たちは政府に何をさせるかを考えるなら、人を強制してでもすべきことは何かと考えた方がよい。例えば税金で様々な施設を作っている。それはたぶんわるいことではないが、ほかに比べてよいかどうかはわからない。また道路も、かつて本当に道がなかったころはともかく今どきの道路はどうしてもいるというようなものではない。反対というほどではないにしても、賛成でないのに使われるのはよくないというのも、もっともな考えかもしれない。むしろ、ほしい人たちがみなでお金を集めて作ったり維持したらどうだろう。
  しかしそれでは、お金のない人はお金を出せないし、使えないではないか。この指摘は一理ある。これは大切なところだ。一人ひとりが暮らせるための条件を社会は用意するべきだとしよう。それは善意によって用意されるのでなく、義務としてなされるべきことだとしよう。つまり、負担したくない人も負担すべきこと、強制されてよいことだとしよう。するとそれは政治がきちんとやるべきことだということになる。
  そうすることにして、その結果、一人ひとりはだいたい同じだけのお金をもっているとしよう。さらにもっときちんと筋の通った案を考えるなら、身体等の状態のために他の人より余計にかかってしまう部分はそれに合わせて増やし、ほぼ同じ程度の暮らしが可能になるだけもっているとしよう。すると、格差の問題はなくなったので、今度は各自がそのお金を持ち寄って、なにかを作りたい人は作ればよい、ということですむように思える。道路のように一人ひとりから料金を取るのが難しいものは政府でという考え方もあるが、技術も発達しているし、お金の個別の徴収も可能な場合もあるかもしれない。
  このように考えれば、政府はお金を分けることに徹するというやり方もありそうだ。大きな政府は効率がわるいといってよく批判されるが、この案では政府という組織自体はあまり大きくならないから、その批判は効かない。たしかにこれは極端な案だ。しかし案としてはありうる。次にその弱点を考えればよい。むろん他の考え方もあるだろうから、それを考えたらよい。」

◆生活経済政策研究所 20070300 『税制改革に向けて――公平で税収調達力が高い税制をめざして』,生活経済政策研究所,生活研ブックス25,143p. ISBN: 9784902886108 2000 [kinokuniya] t07.

◆立岩 真也 2007/03/07 「税金について」,関西テレビ・ニュース,

◆高木 勝一 20070920 『日本所得税発達史――所得税改革の発展と歴史 創設期から現在まで』,ぎょうせい,224p. ISBN-10: 4324083096 ISBN-13: 978-4324083093 2500 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

第七章 中曽根・竹下内閣における抜本的所得税改革
 「昭和六十二年九月の所得税改正は、次のようであった。①中堅サラリーマン層の負担軽減をスローガンとした税率改正が行われ、従来、最低税率一〇・五%から最高税率七〇%の一四区分であった税率を、最低税率一〇・五から最高税率六〇%にいたる一二区分に緩和した。この改正は抜本的改革の理念とされた税率のフラット化にはほど遠いものであった。」(高木[2007:172])

第八章 現行所得税の構造と問題点
 3 税率構造
 累進的な税率の「第一の問題は、所得税は、人々の働く意欲を阻害するということである。所得が人々の働く努力に対する報酬である以上、所得に対する租税が人々の努力に対する罰となる。努力を続けてみても、それから得られる報酬が累進課税の下で少なくなるというのでは、人々の労働意欲を喪失させてしまう。また、新たな事業活動を展開しようとしても、利益が出た時そのかなりの部分を課徴されてしまうのでは、人々の事業意欲を薄れさせてしまう。このような所得税の悪影響は、所得税の限界税率が高くなるほど大きくなる。最近、、アメリカをはじめとする世界各国で、所得税の税率を引き下げる傾向が顕著になっているのは、このような悪影響を少しても緩和しようという配慮によるところが大きい。しかし、この点は一概にいえないという考えもある。」(高木[2007:206])

◆森信 茂樹 20071002 『抜本的税制改革と消費税――経済成長を支える税制へ』に,大蔵財務協会,242p. ISBN-10: 4754714512 ISBN-13: 978-4754714512 2000 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

◆200711 税制調査会「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/top.html
 http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/pdf/191120a.pdf
「第2 各論
1.個人所得課税
(1) 個人所得課税の現状
 個人所得課税(所得税・個人住民税)については、これまで累次の税制改正において、勤労意欲、事業意欲を阻害しない観点から、課税最低限の引上げ、税率の引下げやその適用範囲(ブラケット幅)の拡大を通じ、累次の累進緩和が行われてきた。その結果、我が国の個人所得課税は、全体として、諸外国に比べ負担水準が極めて低くなっており、その財源調達機能や所得再分配機能が低下している。
 所得税の税率構造については、累次の累進緩和の結果、大多数の納税者に対して極めて低い水準で負担を求めるという主要国の中でも特異な構造となっている。課税ベースについては、人的控除や所得控除、特定の収入だけに適用される特別の控除や非課税措置が多く存在して制度が複雑となり、税制上の歪みの要因となっている。
 平成18 年には、地方分権推進の観点から、3兆円の税源移譲が行われているが、その際、個人住民税について応益性や偏在度縮小の観点から10%比例税率化する一方で、所得税については累進構造を見直すことにより、所得税・個人住民税の役割分担を明確化している。
(2) 所得税の今後の改革の方向性
 こうした中、今後の抜本的な税制改革に当たっては、個人所得課税について、税体系全体の議論や社会保障を含めた受益と負担の関係にも留意しつつ、その負担のあり方が適切なものとなるよう見直していく必要がある。個人住民税の比例税率化や、今後の税体系全体における消費税の役割も踏まえつつ、社会保障制度とともに所得再分配を担う存在として、所得税の役割を適切に発揮させていくことは重要な課題である。とりわけ、いわゆる格差問題への意識の高まり等から、所得税の所得再分配機能のあり方が問われている。
 同時に、少子高齢化の進展、ライフスタイルや働き方の多様化に対応し、個々<0011<人や社会全体の活力を引き出す観点から、個人の経済・社会活動の多様な選択について、税制がこれをできる限り阻害しないよう中立的な仕組みとしていくことが重要である。さらに、国民にとって分かりやすい簡素な仕組みとなるよう、複雑化した制度の整理合理化を図ることも課題となる。
(3) 所得税の税率構造について
 前述の通り、税率構造については、累次の税制改正による税率の引下げやブラケット幅の拡大等により、所得税の納税者の大部分に5%又は10%という低い税率が適用される構造となっている。
 したがって、税率やブラケット幅については、所得再分配機能が適切に発揮されるよう、他の税目における見直しの議論や人的控除等の課税ベースのあり方の議論と併せて見直すことが課題である。
 最高税率については、前述の通り、これまで引き下げられてきているが、最近では、所得再分配の観点から見直すべきといった意見も出されており、さらに検討する必要がある。」


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  ◇生存・生活  ◇分配
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