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『近代の復権――マルクスの近代観から見た現代資本主義とアソシエーション』

松尾 匡 20010220 晃洋書房,264p.

last update:20120402

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松尾 匡 20010220 『近代の復権――マルクスの近代観から見た現代資本主義とアソシエーション』,晃洋書房,264p.  ISBN-10: 477101227X ISBN-13: 978-4771012271 \3500+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

暴れ回る資本主義に直面して、これに反発する有象無象の社会主義運動とマルクスの立場とはどこが違ったのか。何故マルクス主義だけが残ったのか…。 15年近くにわたる著者の研究をまとめる。

過去一世紀の封印を解いて今マルクスが蘇る――。のっけから「新自由主義は歴史の進歩」などと書いてケンカを売っていますが、 もちろん筆者は新自由主義者でもブレア主義者でもありません。本書ではマルクスの全体系を疎外論の統一的図式から読み解いています。 つまり、権力や市場や因習のように、全体的なことが個々人の外に遊離して逆に個々人を支配・抑圧すること、これが「疎外」で、マルクスはこれを無くし、 全体的なことが個々人の合意に服す自由社会を目指したわけです。このためには個々人が合意可能なよう普遍化せねばならず、 これをもたらしたのが近代資本主義の発展である…このようにマルクスを解釈すると、重工業化後の20世紀は個々人が特殊化された、 近代からの逆行の時代であって、彼の展望は成り立たなくなっていた、 しかしグローバル化・IT化を進める現代資本主義は再び世界の普遍化をもたらしマルクスの展望を復活させる、とこのように見ることができます。 しかも19世紀の単純労働者化という「喪失による普遍化」ではなく、我々の主体的取り組みによっては、もっと高次元の「獲得による普遍化」が可能である、 それが労働運動の世界的連帯や各種協同組合、NPO、NGO等のネットワークで創られていくものだ、と論じています。 最終章では、これらのネットワークで活動する人々が組織や運動の変質を避けて新しい社会を創っていくために必要なエートスが、 唯物史観を進化論的に再解釈することで与えられるのではないかということを論じています。

■著者略歴

1964年石川県に生まれる。1987年金沢大学経済学部卒業。1992年神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。 現在久留米大学経済学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

はしがき

序章
1 疎外の図式
2 本質と形態の弁証法
3 前近代の疎外と近代の疎外
4 疎外概念の取り替えと疎外そのものの克服
5 マルクスの社会主義とアナーキストの社会主義
6 20世紀の逆行と今日の再転換
7 喪失による普遍化と獲得による普遍化

第1編 マルクスの近代観

第1章 近代の本質とその資本制的形態──マルクスは近代のどこを肯定したのか
1 はじめに
2 マルクスのテキストでの近代と前近代の対比
3 「近代の本質」の疎外された形態への批判的視点
4 価値・価格の場合
5 国家の場合
6 機械の場合
7 総括と展望
補論1:本質と形態の弁証法について
補論2:本質と形態の弁証法の近代における特質
補論3:本質と形態の弁証法と理論経済学

第2章 共産社会二段階区分論の再検討──マルクスの消費観との関連で
1 問題意識
2 マルクス、エンゲルスの消費観
3 自由時間による段階区分
4 共産社会二段階区分とマルクスの消費観
5 いくつかの補足
6 独占段階以降の消費の協働化
7 消費の協働化意識化の評価
8 マルクスの「普遍化」と我々の「普遍化」

第2編 マルクスの近代観再生の時代

第3章 複雑労働力商品生産の疎外論――家族、消費、教育、医療、福祉の一般経済理論へ向けて
1 はじめに
2 疎外論とフロイト理論
3 疎外の原因と商品物神崇拝理論
4 単純労働力商品と複雑労働力商品
5 家父長制の復活
6 複雑労働力商品としての消費
7 女性の商品化
8 育児と教育
9 医療と社会保障
10 疎外された生活を越えて

第4章 民族自決はなぜ善だったのか
1 はじめに
2 マルクス・エンゲルスの第1の論点
3 マルクス・エンゲルスの第2の論点
4 バウワー・ルクセンブルグの主張
5 レーニンの民族自決権
6 これからのマルクス主義的民族理論
補論 ソ連型体制の規定論――国家独占資本主義段階の本源的蓄積体制

第5章 最近の日本のアソシエーション論について
1 はじめに
2 マルクスのアソシエーション論をめぐる諸研究
3 現代アソシエーション論の脱国権志向
4 現代アソシエーション論の中の相異なる志向
5 開放社会と閉鎖社会の違い
6 両アプローチの提携はあり得るか

第6章 プロレタリアートの倫理と社会主義の精神──進化論的唯物史観の運動論上の意義
1 はじめに
2 疎外論的唯物史観とその否定
3 疎外論的唯物史観
4 疎外論的唯物史観の運動論上の意義

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP: 20120402 REV:
経済(学)  ◇Marx, Karl[カール・マルクス]  ◇労働  ◇女性の労働・家事労働・性別分業  ◇共同体運動・コミューン運動  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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