>HOME >

事件と言説:若者・教育・労働… 1991-

18世紀 19世紀 1901-1930 1931-1950 1951-1970 1971-1990 1991-

製作:橋口昌治* 2004.09-

last update: 20100122

1991年
    湾岸戦争勃発
    ソ連解体
    EU創設

    CERN(欧州合同素粒子原子核研究機構)、WWWを公開

    大学設置基準、学位規則等改正
    大学審議会「大学院の量的整備について」答申(2000年までに大学院学生数を1991年度の二倍増にする計画を発表)

    「91就職ノート 景気減速の影響 採用拡大にも変化のきざし」(朝日新聞1991年6月11日付朝刊)
    「(…)「いざなぎ景気」に迫る大型好況も、ここへきて疲れ気味。それが来春の新卒者の採用面にどんな影響を与えるかが、今年の焦点だ。
 (…)
 1990年代後半は若年労働力の減少が見込まれるので「採れるうちに採っておこう」という、人材備蓄の考え方も根強い。石油危機後の減量経営期に新卒の 採用を減らし、企業の人員構成がいびつになったことへの反省もある。(…)」

    Reich, R. B., The work of nations : preparing ourselves for 21st-century capitalism (中谷巌訳『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ : 21世紀資本主義のイメージ』、ダイアモンド社)
「高付加価値型企業においては、利益は規模と量に規定されるのではなく、ニーズと解決策を結びつける新しい組み合わせを絶えず発見することによって生まれ る。そして、「商品」と「サービス」の区別は無意味になっている。というのも、成功している企業が提供する価値の大半は、サービスをも含むからである。事 実、そのようなサービスの価値は、世界中どこを探しても容易には創りだせないという点に求められる。具体的には、問題を解決するために編みだされた特別調 査、設計、デザイン・サービスであったり、問題を発見するために必要な特別な販売とマーケティング、コンサルティング・サービスであったりする。また、問 題発見と解決策を媒介する独自の戦略、財務上・経営上のサービスであったりする。すべての高付加価値型企業は、このようなサービスを提供することによって 事業を展開している。
 たとえば、製鉄業も今やサービス事業になっている。新しい合金が、特定の重さと耐久力を持つように作りあげられる時には、もろもろのサービスは、最終製 品の価値の中で非常に大きな割合を占めるようになる。鉄鋼サービス・センターは、顧客が必要とする鉄鋼や合金を選び、そのあと検査し、切断し、塗装し、配 送する。(…)」(p.115)

    「本質的な観点から見て、競争的な立場の異なる職業に対応した、三つの大まかな職種区分が生まれつつある。この三つとは、「ルーティン・プロダク ション(生産)・サービス」、「インパースン(対人)・サービス」、「シンボリック・アナリティック(シンボル分析)・サービス」である。こうした区分 は、今や米国以外の先進国にも当てはまりつつある。」(p.241)

1992年
    政府、緊急経済対策決定
    宮崎義一『複合不況』

    産業技術審議会総合部会企画委員会、「テクノグローバリズムの推進とCOEの多面的醸成」を報告
    経済審議会、新しい経済計画「生活大国五ヵ年計画」答申

    学校五日制スタート(月1回第二土曜日)

    新就職協定、92年度より実施
    <新就職協定による92年度の採用・就職活動の日程>
 7月1日    大学側の求人票公示
 同月初旬以降  ▽大学・企業が主催する企業研究会・説明会開始
 (目標)    ▽学生とリクルーターの接触開始
 8月1日前後  採用選考開始
 (同)
 10月1日   採用内定開始
(朝日新聞1991年12月11日付朝刊)

    「92就職ノート 長引く終盤 女子学生受難、活動終わらず」(朝日新聞1992年8月11日付朝刊)
「今年の就職戦線は、学生にとって、予想以上に厳しい。景気の低迷が続き、産業界に雇用調整の動きが広がったことが響いて、新卒の採用にも急ブレーキがか かったからだ。
 大企業の採用予定数が減少に転じ、採用経費も削減されたため、ここ数年過熱の一途だった求人競争は、落ち着きを取り戻した。学生向けダイレクトメールや テレビCMなども地味になり、採用活動は正常化に向かっている。
 例年、採用活動のピーク時には、内定した学生を他社に奪われないようにするために、あの手この手の拘束が行われる。だが、今年は経費のかさむ拘束が沈静 化した。
 (…)
 質の高い人材を求める競争は、相変わらず激しい。その結果、いくつもの会社から内定をもらう学生が出る半面、多くの会社を回って空振りを続ける者もあ り、二極分化の傾向が際立ったのも今年の特色だ。
 これからの問題点は女子学生の就職難。企業の採用数の減り方が、男子より女子の方が大幅である。リクルートリサーチの調査によれば、大学男子の求人倍率 が2倍台を維持したのに対し、大学と短大を合わせた女子学生は0.93倍と、「1」を割り込んだ。
 証券、コンピューターソフト業界の大幅な採用減や産業界の事務部門合理化の動きが、事務職志望者の多い女子学生を直撃している。
 (…)」

    PKO協力法案成立
    改正大店法施行
    北米自由貿易協定調印

    ロス暴動
    「この映像は、この年に公開されたスパイク・リー監督の『マルコムX』の冒頭に、アメリカ社会を激しく告発するマルコムによる演説のバックで使わ れています。そこでぜひみずから確認してほしいのですが、地に這いつくばったキングは警官たちに取り囲まれ、約八一秒のあいだに五六回も殴られた、といわ れています。パンチ、キック、警棒で延々と暴行され続けます。それに加えて、二度スタンガンでやられている。ほお骨や足首を砕かれ、九箇所の頭蓋骨骨折、 眼窩障害を受け、顔を二〇針縫うという重傷です。
 ところがこの事件の裁判では、四人の警官は無罪放免に終わります。この判決がくだされたのが、九二年四月二九日、つまりロス暴動が発生した日なのです。 この思いもかけない判決は、黒人たちにとってショックでした。それは積もりに積もった怒りを爆発させる契機になったわけです。
 それにしても、どうして四人の警察官は無罪になったのでしょうか。この裁判の陪審員はすべて白人でした。実は裁判所をどこでやるかは、地域住民から陪審 員を選出するアメリカにおいて裁判の行方に重大な意味をもちます。攻防の結果、シミ・バレイという黒人住民二%程度の地域の裁判所に移管されたのです。そ の結果、陪審員の人種構成が白人ばかりということになってしまった。とはいえ、ここまで「明白」な事実を突きつけられれば、多少の人種的偏見は突破してい くようにみえます。ところがそうではありませんでした。驚くべきことですが、実はこのビデオテープは警官たちの「無罪」の証拠として用いられたのです。
 キングが打ちのめされて、グロッキーであることはだれの目にも「明白」であるようにみえます。だからこそ、日ごろは警察によるハラスメントに泣き寝入り せざるをえないことが多い黒人たちには、期待も大きかった。ところが、警官の弁護団の側は、このビデオを細かく分析しながら、攻撃を受けているのは警察の 側であることの証明として用いたのです。ロドニー・キングの身体は、攻撃をやめなかったら、いまにも飛びかかって逆に暴力を加えてくるおそるべき身体とし て表象されたのです。」(酒井隆史『暴力の哲学』p.111-112)

1993年
    日産、座間工場の生産中止など大企業のリストラ相次ぐ

    細川内閣誕生、55年体制の終焉
    平岩レポート(規制緩和)
    臨時行政改革推進審議会最終答申(地方分権、規制緩和など)
    ウルグアイラウンド最終協定採択

    「業者テスト・偏差値廃止」の文部省通達

1994年
    政治改革4法案成立(小選挙区比例代表並立制の導入)
    「自・社・さ」連立による村山内閣誕生

    公立校としては全国で初の中高一貫制教育の全寮制学校、宮崎県立五ヶ瀬中学・高校が開校

    ニューヨーク市場で史上初めて1ドル100円割れ

    OECD "The OECD Jobs Study: Facts Analysis Strategies"
    米、「学校から職業への機会法」「二〇〇〇年の目標法」制定

1995年
    阪神大震災
    地下鉄サリン事件
    沖縄米兵少女暴行事件
    就職「超氷河期」

    日経連『新時代の日本的経営』
    「欧米先進諸国は、日本的経営について、いわゆる終身雇用慣行、年功賃金制度、企業別労働組合の3つを象徴的な特徴としてとらえているほか、経営 行動としては企業間の系列関係、株式の持ち合いなどもわが国の特徴と指摘している。
 しかし、日本的経営の特質は、終身雇用慣行や年功賃金制度といった制度・慣行ではなくて、そうした運営の根本にある「人間中心(尊重)の経営」「長期的 視野に立った経営」という理念が日本的経営の基本である、とわれわれは考える。運営面の制度や仕組みは、環境条件の変化に応じて変える必要があるが、基本 理念は普遍的性格をもつものであろう。」(p.23)

    「最近の雇用形態の動きから今後のあり方を想像してみると、だいたい次の3つのタイプに動いていくものと考えられる(図表7、8)。
 1つは、従来の長期継続雇用という考え方に立って、企業としても働いてほしい、従業員としても働きたいという、長期蓄積能力活用型グループ。能力開発は OJTを中心とし、Off・JT、自己啓発を包括して積極的に行なう。処遇は職務、階層に応じて考える。
 2つは、企業の抱える課題解決に、専門的熟練・能力をもって応える、必ずしも長期雇用を前提としない高度専門能力活用型グループであるが、わが国全体の 人材の質的レベルを高めるとの観点に立って、Off・JTを中心に能力開発を図るとともに自己啓発の支援を行なう。処遇は、年俸制にみられるように成果と 処遇を一致させる。
 3つは、企業の求める人材は、職務に応じて定型的業務から専門的業務を遂行できる人までさまざまで、従業員側も余暇活用型から専門的能力の活用型までい ろいろいる雇用柔軟型のグループで、必要に応じた能力開発を行なう必要がある。処遇は、職務給などが考えられる。
 もちろん、こうしたグループは固定したものではない。企業と従業員の意思でグループ相互間の移動も当然起きるであろう。ただ、雇用の動向を全体的に見れ ば、好むと好まざるとにかかわらず、労働市場は流動化の動きにある。」(p.33)

    日教組・二一世紀ビジョン委員会最終報告
    経済同友会「学校から『合校』へ」
    経済審議会「次代を担う人材」
    学術審議会、「卓越した研究拠点(センター・オブ・エクセレンス)の形成について」建議

    PHSのサービス開始
    マイクロソフト、「ウィンドウズ95」の日本語版発売
    庵野秀明『新世紀エヴァンゲリオン』放送開始(95・9~96・3)

    WTO発足
    メージャー英政権、教育雇用省を創設

1996年
    橋本内閣成立、橋本六大改革路線(行政・財政・社会保障・経済・金融・教育)

    「就職協定」廃止
    「(…)この不況で、今年の就職戦線は学生にとって深刻なものとなった。数年前、同じように勉強していた(遊んでいた)先輩たちは、企業側の積極 的な働きかけと、内定の抱え込みまで受けて、うれしい悲鳴をあげていた。ところが今年は、その先輩を訪問しても、手の平を返したように冷たい態度だそう で、「君は何を勉強してきたの」などと先輩の言葉とは思えない嫌味を言うらしい。企業および企業人の豹変を嘆く学生も多いようだが、こうした企業の冷淡さ が、市場メカニズムの長所と呼ばれるものである。」(矢野眞和『高等教育の経済分析と政策』p.170)

    「RECRUIT BOOK on the Net」サービス開始(現:リクナビ)

    経済団体連合会「創造的な人材の育成に向けて」
    第一五期中央教育審議会第一次答申「二一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」
    大学審議会「大学教育の任期制について」答申

    住専処理法公布、住専処理に6850億円の税金をつぎ込む
    母体保護法成立
    http://myriel.ads.fukushima-u.ac.jp/data/law/botai.html
    らい予防法廃止法
    米軍楚辺通信所の土地契約切れ
    沖縄米軍基地用地、代理署名命じる判決

    Ritzer, G., The McDonaldization of society, Pine Forge Press (正岡寛司監訳、1999、『マクドナルド化する社会』、早稲田大学出版部)

1997年
    消費税引き上げ、3%から5%へ
    外国為替管理法改正公布(金融ビッグバン第一弾)

    金融機関の経営破綻が相次ぐ。山一證券廃業、北海道拓殖銀行経営破綻
    財政構造改革法成立(翌年停止)
    行政改革会議が中間報告(省庁再編、内閣機能の強化など)

    アイヌ保護法成立、北海道旧土人保護法廃止

    日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を策定。周辺有事への対応を拡大

    韓国、通貨危機回避のためIMFに緊急支援要請

    ブレア英首相、労働党の最優先政策を尋ねられ「教育、教育、そして教育」と答える
    クリントン米大統領、「すべての者が、八歳で読むことができ、十二歳でインターネットに接続でき、十八歳で大学に進むことができる」社会を目指 し、教育予算を大幅に増やすことを発表

1998年
    改正外為法施行、金融ビッグバン(外貨規制の撤廃)
    長期信用銀行、日本債権信用銀行の一時国有化
    NPO法成立

    大学審議会「二一世紀の大学像と今後の改革方策について――競争的制度の中で個性が輝く大学」答申

    ブレア政権、ニューディール実施
    「このニューディールの対象者は求職者手当(Job Seekers' Allowance)を半年以上受給した18歳から24歳までの若年失業者である。ニューディールの対象者となった若年失業者は、まず公共職業安定所であ るジョブセンターに呼び出され、ニューディールの参加の意思を問われる。この時点で参加を拒否した者には、ニューディールへの参加を表明するまで社会保険 給付が停止されるという罰則が科される。この厳しい罰則規定はニューディールに参加している間続き、参加の意思なしとみなされた者はその時点で給付を打ち 切られる。この給付需給の条件としてニューディールへの参加を実質的に義務化している点は、ニューディールの特徴の一つとなっている。」(伊藤大一「ブレ ア政権による若年雇用政策の展開」p.52)
    「ブレア政権は、長期的に社会保障制度の中に固定化される階層に対して、一面では、社会保障費の削減、「産業負担」の軽減のために、不安定就労層 として半ば強制的に労働市場に参加させ、他面では、むしろ積極的に短期的な失業と就労を繰り返す層を作りだし、労働供給を増大させることで、賃金下方圧力 を強め、マクロ的な経済成長を達成するための手段としてこれらの諸政策を実施しているのである。」(p.57)

    Giddens, A., The third way : the renewal of social democracy, Cambridge : Polity Press (佐和隆光訳、1999、『第三の道 : 効率と公正の新たな同盟』、日本経済新聞社)
    cf.Giddens, Anthony:http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/dw/giddens.htm

1999年
    地方分権一括法成立(2000年施行)
    「このように旧来の文部省-教育委員会の「庇護」のもとにあった地方の教育行政や学校が一般行財政や政治の「舞台」に強く押し出されていくという のが今回の分権改革に連動した教育行政改革であり、学校の組織や管理運営の見直しは、そうした新しい「舞台」でその正統性を確保するための手段ともいえる ものであって上意下達の学校管理強化という文脈とは次元を異にすると考えた方が妥当であろう。」(小川正人「分権改革と地方教育行政」p.14)

    社会経済生産性本部「選択・責任・連帯の教育改革」の発表

    経済戦略会議最終答申
    「日本技術者教育認定機構」発足
    2ちゃんねる開設
    改正男女雇用均等法施行
    周辺事態法、国旗・国歌法、通信傍受法、改正住民基本台帳法成立
    ピル承認
    石原慎太郎、東京都知事に
    cf.石原慎太郎:http://www.arsvi.com/0w/ishrsntr.htm
    iモードのサービスを開始

    OECD "Preparing Youth for the 21st Century"

    WTOシアトル会議、大規模な抵抗運動が起こる。閣僚会議決裂のまま閉会
    ユーロ導入

2000年
    教育改革国民会議発足
    「21世紀日本の構想」懇談会編、河合隼雄監修『日本のフロンティアは日本の中にある――自立と協治で築く新世紀――』

    Reich B. R. THE FUTURE OF SUCCESS : Working and Living in the New Economy, Vintage Books (清家篤訳、2002、『勝者の代償 ニューエコノミーの深遠と未来』、東洋経済新報社)
    「アメリカ人はスローダウンするべきだとの声が、いっせいに高まるのが聞こえる。それにもかかわらず、われわれの多くは、逆にスピードアップして いる。われわれはかつてないほど家族を大切にしなければならないと叫んでいる。それなのになぜ私たちの家族は衰退し、家族のきずなはぼろぼろになってし まったのか。子どもの数が減り、あるいは子どもを持たない人が増加し、結婚も減少し、一時的な同棲が増え、食事の用意をしたり悩みを聞いたり相談相手に なったり、あるいは子どもの世話をしたりする家族機能の下請けビジネスがますます増殖している。また私たちはコミュニティの美点についてかつてないほど情 熱的に語っている。それにもかかわらず、私たちのコミュニティは、似たような所得の人々の集団に分裂している。富む者は壁で囲われ、ゲートで遮断され、貧 しい者は孤立し無視されている。」(p.9)

2001年
    「大学(国立)の構造改革の方針」

    Virno, P., Grammatica della moltitudine : per una analisi delle forme di vita contemporanee, Rubbettino Editore, Catanzaro (廣瀬純訳、2004、『マルチチュードの文法 現代的な生活形式を分析するために』、月曜社)
    「グローバル化された社会の本質的な局面――他のすべての局面がそこから生じるような局面――は、言語活動と労働との共生関係にあるように私には 思われま す。かつて、すなわち、マニュファクチュアの時代から始まったフォーディズム的工場の絶頂期までは、活動は無言のものでした。労働する者は、黙して語らな かったのです。生産は音を立てない鎖をなしており、また、この鎖においては、前後間の機械的でよそよそしい関係しかなく、あらゆる同時的な相互関係が排除 されていました。生きた労働は、機械システムの付属品として、自然な因果関係に従うことでその力を利用していました。これこそ、ヘーゲルが労働することの 「狡知」と呼んでいたものです。そして、この「狡知」は、周知の通り、寡黙なものでした。ポストフォーディズム的大都市においては、反対に、具体的な労働 過程は、言語活動行為の複合体として、一連の主張の系列として、あるいは、共生的な相互行為として経験的に描き出すことができます。というのは、一方で、 生きた労働の活動が、いまや、機械システムの傍らに位置付けられ、維持、監視、調整といった任務を与えられているからなのですが、他方で、とりわけ、生産 過程が、知、情報、文化、社会関係をその「第一質料」としているからです。
 労働する者は饒舌であり、そうでなければならない。ハーバーマスによって設定された「道具的行為」と「コミュニケーション的行為」との(あるいは労働と 相互行為との)有名な対立は、ポストフォーディズム的生産様式によって根底から覆されることになります。(…)労働は相互行為そのものなのです。」 (p.6-7)

    「ポストフォーディズムにおいては、剰余価値を生産する者は、ピアニストや舞踏家のように、したがって、ひとりの政治家のように振る舞うのです (もちろん これは構造的な観点から見た場合のことです)。現代の生産においては、パフォーマンス芸術家の活動と政治家の活動とについてのアーレントの見解が清澄に鳴 り響いています。すなわち、労働するためには「公的構造を備えた空間」が必要だというものです。ポストフォーディズムにおいて、《労働》は、ひとつの「公 的構造を備えた空間」を必要としており、また、(作品を欠いた)名人芸的なパフォーマンスに似ることになるのです。このような公的構造を備えた空間を、マ ルクスは「協働」〔cooperazione〕と呼んでいます。社会的生産力がある一定の水準まで発展すると、労働的協働は、言葉でのコミュニケーション を自らのうちに取り込み、その結果、名人芸的なパフォーマンスに、あるいはまさに、政治的行動のひとつの複合体に、似てくるのだと言うことができるかも知 れません。
 職業としての政治についてのマックス・ヴェーバーの有名な議論を覚えていらっしゃるでしょうか。ヴェーバーは、政治家を特徴付ける様々な資質を列挙して います。すなわち、自分の魂の健康を危険に晒すことができること、信念の倫理と責任の倫理とのあいだの均衡、目的への没頭といったものです。この議論をト ヨティズム〔トヨタ主義〕――すなわち、言語活動に基づく労働、あるいは、認知能力の生産的動員――との関わりにおいて再読する必要があるかも知れませ ん。ヴェーバーの試論が私たちに教えてくれるのは、物質的労働において、今日、要請される諸々の資質についてのことなのです。」(p.91-93)

     アメリカ、中枢部への同時多発テロ。アフガニスタンに「報復」

2002年
    「ゆとり・生きる力」のカリキュラムが小中学校で施行(高校では2003年4月から)
    経団連と日経連が統合、日本経済団体連合会結成

    European Commission "A New Impetus for European Youth"

2003年
    内閣府・文部科学省・厚生労働省・経済産業省「若者自立・挑戦プラン」

    アメリカ、イラク侵攻
    有事法制成立

2004年


参考文献

Allen, F.L. , 1931, Only Yesterday An Informal History of Nineteen Twenties, Harper and Row (藤久ミネ訳、1986→1993、『オンリー・イエスタデイ』、筑摩書房)
天野郁夫、1982、『試験と学歴』、リクルート
天野郁夫、1992、『学歴の社会史 ―教育と日本の近代―』、新潮社
浅田彰、1984、『逃走論 スキゾ・キッズの冒険』、筑摩書房
千本暁子、1994、「ホワイトカラーの人材育成と学校教育への依存」『阪南論集(社会科学編)』29(3):15-31
Debord, G., La Societe du spectacle, (Buchet-Chastel, 1967; Champ Libre, 1971; Gallimard, coll. Folio, 1996) (木下誠訳、1993、『スペクタクルの社会』、平凡社)
江藤淳、1967、『成熟と喪失』、河出書房新社→講談社(1993)
現代用語の基礎知識編、2000、『20世紀に生まれたことば』、新潮社
Halberstam, D., 1986, THE RECKONING, William Morrow & Company, Inc. (高橋伯夫訳、1990、『覇者の驕り 自動車・男たちの産業史』、新潮社)
姫岡とし子、2004、『ジェンダー化する社会 労働とアイデンティティ の日独比較史』、岩波書店
広田照幸、1999、『日本人のしつけは衰退したか 「教育する家族」のゆくえ』、講談社
藤本隆宏、2003、『能力構築競争 日本の自動車産業はなぜ強いのか』、中央公論新社
猪木武徳、1996、『20世紀の日本7 学校と工場――日本の人的資源』、読売新聞社
井上昭一・中村宏治編著、1995、『現代ビッグ・ビジネスの生成・発展・展開』、八千代出版
乾彰夫、1990、『日本の教育と企業社会 一元的能力主義と現代の教育=社会構造』、大月書店
乾彰夫、1996、「進路選択とアイデンティティの形成」『〈講座学校 第4巻〉子どもの癒しと学校』、柏書房
乾彰夫、1997、「企業社会の再編と教育の競争構造」『講座 現代日本3 日本社会の再編成と矛盾』、大月書店
伊藤彰浩、1999、『戦間期日本の高等教育』、玉川大学出版部
岩木秀夫、2004、『ゆとり教育から個性浪費社会へ』、筑摩書房
岩下清子、1969、「第一次大戦後における『職業婦人』の形成」『社会学評論』19-4
片桐薫編、2001、『グラムシ・セレクション』、平凡社
加藤典洋、1985、『アメリカの影 戦後再見』、河出書房新社→講談社(1995)
川口浩編著、2000、『大学の社会経済史』、創文社
基礎経済研究所編、1992、『日本型企業社会の構造』、労働旬報社
小林康助編著、1985、『アメリカ企業管理史』、ミネルヴァ書房
金野美奈子、2000、『OLの創造 意味世界としてのジェンダー』、勁草書房
町村敬志、1994、『「世界都市」東京の構造転換』、東京大学出版会
三浦展、1999、『「家族」と「幸福」の戦後史 郊外の夢と現実』、講談社
宮本みち子、2004、『ポスト青年期と親子戦略 大人になる意味と形の変容』、勁草書房
水岡不二雄編、2002、『経済・社会の地理学 グローバルに、ローカルに、考えそして行動しよう』、有斐閣
森清、1989、『ハイテク社会と労働 何が起きているか』、岩波書店
仲新監修、1979、『学校の歴史 第4巻 大学の歴史』、第一法規出版
日本労働研究機構編、1998、『教育と能力開発 (リーディングス日本の労働; 7)』、日本労働研究機構
西川長夫・松宮秀治編著、1995、『幕末・明治期の国民国家形成と文化 変容』、新曜社
西川長夫・渡辺公三編著、1999、『世紀転換期の国際秩序と国民文化の形成』、柏 書房
小川正人、2000、「分権改革と地方教育行政」『教育』2000年1月号 No.648、
小熊英二、1995、『単一民族神話の起源 〈日本人〉の自画像の系譜』、 新曜社
小熊英二、1998、『〈日本人〉の境界 沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで』、新曜社
小熊英二、2002、『〈民主〉と〈愛国〉──戦後日本のナショナリズムと公共性』、新曜社
岡崎哲二・奥野正寛編著、1993、『〈シリーズ・現代経済研究6〉現代日本経済システムの源流』、日本経済新聞社
大久保幸夫編、2002、『新卒無業』、東洋経済新報社
大塚英志、2004、『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』、講談社
尾崎盛光、1967、『日本就職史』、文芸春秋
小沢雅子、1985、『新・階層消費の時代――消費市場をとらえるニューコンセプト』、日本経済新聞社→1989、『新・階層消費の時代 所得格差の拡大 とその影響』、朝日新聞社
Reich, R. B., 1991, The work of nations : preparing ourselves for 21st-century capitalism (中谷巌訳『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ : 21世紀資本主義のイメージ』、ダイアモンド社)
Reich B. R. THE FUTURE OF SUCCESS : Working and Living in the New Economy, Vintage Books (清家篤訳、2002、『勝者の代償 ニューエコノミーの深遠と未来』、東洋経済新報社)
坂井昭夫、1991、『日米経済摩擦と政策協調』、有斐閣
桜井哲夫、1984、『「近代」の意味――制度としての学校・工場』、日 本放送出版会
Sampson, A., 1975, THE SEVEN SISTERS The Great Oil Companies and the World They Made, Viking Pr. (大原進・青木榮一訳、1976、『セブン・シスターズ 不死身の国際石油資本』、日本経済新聞社)→1984、講談社
Sanderson, M. (ed.), 1975, The Universities in the Nineteenth Century, London (安原義仁訳、2003、『イギリスの大学改革 1809-1914』、玉川大学出版部)
関下稔、1989、『日米経済摩擦の新展開』、大月書店
Sloan, Jr., A.P., 1963, MY YEARS WITH GENERAL MOTORS, Doubleday & Company, Inc. (田中融二・狩野貞子・石川博友訳、1967、『GMとともに』、ダイヤモンド社)
絓秀実、2003、『革命的な、あまりに革命的な 「1968年の革命」試論』、作品社
鈴木博之、1999、『〈日本の近代 10〉都市へ』、中央公論新社
鈴木直次、1995、『アメリカ産業社会の盛衰』、岩波書店
田原総一郎、1987、『円を撃て』、講談社→1991、『「円」を操った男たち』、講談社
高木八尺・末延三次・宮沢俊義編、1957、『人権宣言集』、岩波書店
上前淳一郎、1979、『サンリオの奇跡 世界制覇を夢見る男達』、PHP研究所→1982、『サンリオの奇跡 夢を追う男たち』、角川書店
潮木守一、1978、『学歴社会の転換』、東京大学出版会
潮木守一、1993、『アメリカの大学』、講談社
潮木守一、2004、『世界の大学危機 新しい大学像を求めて』、中央公論新社
渡辺治編、2004、『日本の時代史27 高度成長と企業社会』、吉川弘文館
Willis, P. E.,1977, LEARNING TO LABOUR How working class kids get working class jobs, Aldershot (熊沢誠, 山田潤訳、1996、『ハマータウンの野郎ども』、筑摩書房)
山田太一、1985、『山田太一作品集‐2 岸辺のアルバム』、大和書房
山崎広明・橘川武郎編著、1995、『日本経営史4 「日本的」経営の連続と断絶』、岩波書店
米本昌平松 原洋子ぬで島次郎市野川容孝、2000、『優生 学と人間社会 生命科学の世紀はどこへ向かうのか』、講談社


UP:20040907 REV:20050523,25 20090214, 20100122
◇労働 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/d/w001.htm