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第2回ヘルスケアにおける感情の機械化に関するワークショップ

2010/09/17・18
イタリア・ベルガモ大学
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Last update: 20101015

■第2回ヘルスケアにおける感情の機械化に関するワークショップ

日時:2010年9月17日(金)・18日(土)
場所:イタリア・ベルガモ大学
言語:英語
主催:立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点, 立命館大学生存学研究センター, 立命館大学大学院先端総合学術研究科, Centro di Ricerca Interdisciplinare su Scienze Umane, Salute e Malattia (CRISUSM) & Scuola di Dottorato in Antropologia ed Epistemologia della Complessità (Università degli Studi di Bergamo)
(ルイザ・ダミアノ、ポール・デュムシェル松原 洋子、ステファノ・トメレリ)


◆趣旨

The Mechanization of Empathy in Health Care (「ヘルスケアにおける感情の機械化」)は2009年1月に立命館大学で開催されたワークショップのタイトルであった。そして、そのワークショップでは現代のヘルスケアの医療従事者と患者の関係においてテクノロジーがつくりだした変化の分析にその時間を費やした。第1回ワークショップではさまざまなことが議論できたため、今回も同じテーマで第2回のワークショップを開催する運びとなった。前回のワークショップではテクノロジーを用いた場合の感情移入の関係の変化に焦点が当てられたが、今回のワークショップではこの技術的な斡旋が患者、医者と彼らの近くにいる人たちとの間の社会的、情緒的関係にどのように影響を及ぼすかにより具体的に焦点を当てたい。

前回のワークショップ同様、今回も同種の研究テーマをもつが、イタリア、日本という異なる国で研究する研究者間の意見交換ならびにディスカッションの場としたい。より重要なことは、この身体的距離はまたテクノロジーの進化とヘルスケア領域におけるそのインパクトに対する異なった態度を示す社会文化的多様性に対応しているということである。

今回、2日間にわたって開催するワークショップ、The Mechanization of Empathy in Health Care(ヘルスケアにおける感情の機械化)はベルガモ大学で開催される。ワークショップの言語は前回同様英語である。ワークショップの第1部は患者、その中でも特に慢性疾患や末期の病気に悩まされている患者の生活にテクノロジーが与える影響についてである。第2部は治療文脈におけるロボットの使用についてである。


プログラム


2010年9月17日 ヘルスケアにおけるテクノロジーと感情移入

10:00-10:15 イントロダクション: ルイザ・ダミアノ、 ポール・デュムシェル、 ステファノ・トメレリ
10:15-10:45 The Patient's Experience and Cyborg Ethics: 松原 洋子 (立命館大学)
10:45-11:15 ディスカッション
11:15-11:30 休憩
11:30-12:00 The Meaning of Self-presenting as a 'Cyborg': 植村 要 (立命館大学)
12:00-12:30 ディスカッション
12:30-14:30 昼食
14:30-15:00 Living with an Intractable Disease: Technology and 'Technical Peer-support' for an ALS Patient: 日高 友郎 (立命館大学)
15:00-15:30 ディスカッション
15:30-15:45 休憩
15:45-16:15 End of Life and Quality of Care:ステファノ・トメレリ(ベルガモ大学)
16:15-16:45 ディスカッション

2010年9月18日 人工的感情移入: ロボットとセラピー

9:30-10:00 Artificial Empathy--Imitation and Mimesis: ポール・デュムシェル & ルイザ・ダミアノ (立命館大学; ベルガモ大学・ハートフォードシャー大学)
10:00-10:30 ディスカッション
10:30-11:00 Life Innovation with Therapeutic Robot Paro: 柴田 崇徳 (独立行政法人産業技術総合研究所)
10:00-11:30 ディスカッション
11:30-11:45 休憩
11:45-12:15 Robots as Theraputic Toys: Encouraging Social Interaction Skills in Children with Autism: ベン・ロビンス (ハートフォードシャー大学)
12:15-12:45 ディスカッション
12:45-13:15 閉会の辞

■当日の様子

第2回ヘルスケアにおける感情の機械化に関するワークショップ in ベルガモ大学 当日の様子1

第2回ヘルスケアにおける感情の機械化に関するワークショップ in ベルガモ大学 当日の様子2

第2回ヘルスケアにおける感情の機械化に関するワークショップ in ベルガモ大学 当日の様子3

第2回ヘルスケアにおける感情の機械化に関するワークショップ in ベルガモ大学 当日の様子4

■ワークショップの感想/コメント

日高 友郎
 2010年9月17日・18日の両日にわたり、イタリア・ベルガモ市のベルガモ大学で開催されたワークショップ「The mechanization of Empathy in Health Care」においては、研究発表当日に至るまでの語学の修練も含めて、非常に実りある経験を積むことができたと確信している。今回の経験を振り返るにあたり、以下2点に焦点を当てコメントとしたい。
 第一に、日本国内での事前準備の重要性である。今回は、教員および発表者が一堂に会し、事前に実践形式での発表練習を行えたことが大変に有用であったと感じている。発表は英語でなされるために、文法・単語の選択・表現上の適切さ等、教職員からの指導が極めて重要であった。また、発表内容についてのアドバイス、読み上げ原稿の読み上げ速度などの細部にわたっても手厚いフォローが得られたため、当初抱えていた発表に対する不安が自信へと変化していくのを実感することができた。もしこうした事前指導・サポートが無ければ、これだけ充実した研究発表は困難だったであろうし、言い換えれば英語での発表(国際学会等での発表)に対する敷居の高さはこうしたサポートによって随分と軽減されるのではないか、ということを院生の立場から感じている。
 第二に、海外の研究者と繋がることの重要性である。発表を経験しての率直な感想は「国内での学会発表よりもウケが良い」というものである。今回のワークショップがある程度「クローズド」なものであったこと、以前から先方の研究者との関係が構築されており互いに研究内容を理解していたこと、などの背景はあるものの、きちんと相手に伝わる書き方ができていれば海外においても研究の文脈できちんと交流ができるのでは…という印象を抱いている。国内だけを研究活動・発表の場とする必要は無く、むしろ国外に目を向けることで研究が進展したり、研究者のネットワークが広がっていくという可能性も相当にあるのではないかという思いを実感として得ることができた。これは今後の自分自身の進路を考える上でも大変重要な経験となって活きてくるのでは…と思っている。
 総じて充実の一言に尽きる今回のワークショップであったが、最後に「自分が得たもの」という点を述べてコメントの締めくくりとしたい。英語での発表はどうしても敷居が高く感じられてしまうものであるが、事前の準備をきちんと行うことができれば、その不安は随分と軽減されるように思われる。充実した準備は充実した発表に繋がり、「海外での研究発表でも気後れする必要は無いのでは」という前向きな自信を与えてくれるように感じられる。こうした構造があることは本ワークショップ(本企画)の強みであり、何よりも今後に繋がる経験として活かすことができると確信している。

植村 要
 9月17・18日にイタリアのベルガモ大学で開催された「The Mechanization of Empathy in Health Care」というワークショップに参加させていただきました。参加者20名ほどの関係者のみのワークショップでしたので、一つ一つの報告に掘り下げた質疑ができたと思います。ワークショップは、全日程が英語で進行されました。私は、海外での報告も英語での報告も初めてでしたので、報告当日よりも準備期間に多くの労力をかけました。そこで、少しずつではありますが、7月末から準備を始めました。
 資料は、配布資料と読み上げ原稿の二つを作成しました。私には視覚障害があるため、プレゼンテーションに映像を使うことが苦手ということもあって、報告の全てを言語で組み立てました。また、英語での質疑応答に不安がありましたので、答えられる範囲のことは、全て配布資料に書いてしまうことにしました。社会保障制度など、日本人には説明の必要のないよく知られたものであっても、その前提が共有されていない方々に向けて報告するということを念頭に置き、脚注で補足するように心がけました。
 結果、配布資料は、日本語で約16000文字になりました。これを英訳したものが約7700ワードになり、これを圧縮する形で、約3000ワードの読み上げ原稿を作成しました。日本語で作成した資料を英訳する過程では、先端総合学術研究科の英語スタッフの皆様の手厚いご協力を得ました。改めて御礼申し上げます。
 当日の報告は、準備した資料で全て補足し得たと思っています。
 今、振り返って思い出すことは、ワークショップ以外のところで引き起こした珍道中の数々です。その一つ一つが、ワークショップを含めたイタリア渡航の全てを、楽しい記憶にしてくれました。



UP: 20100830 REV:20100924 0928 1012 1015
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