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自立生活センターに対する公的助成

大野 直之・立岩 真也・豊田 昭知・頓所 浩行・野口 俊彦・増留 俊樹 199411
第6回自立生活問題研究全国集会実行委員会『第6回自立生活問題研究全国集会資料集』


[要点]

 0:サービス利用費用の支給
 有償のサービスを利用するために、サービス費用の公的な支出が求められる。介助保障制度を中心に、その現状を概観する。

 Ⅰ:雇用促進法による助成
 自立生活センター(CIL)で障害者を雇用することで、「雇用促進法」(「障害者の雇用の促進等に関する法律」)上の制度をいくつか利用できる。特に事業の運営がまだ軌道に乗っていないセンターの活動の立ち上げの時期に役立つ。例えば、2人を雇用し3年間で 700万円以上の助成を受けることができる。この制度は全国一律のもので、どこの地域のセンターであっても利用することができる。

 Ⅱ:東京都地域福祉振興基金による助成
 東京都のCILは「東京都地域福祉振興基金」(500億円)による助成を受けている。CILの活動で助成対象になる事業は介助者派遣(助成額の上限900万円)、自立生活プログラム(525万円)、移送サービス(750万円・初年度)。以上の2~3つの事業を行っているCILでは、年間1400万~2000万円くらいの助成を受けられることになる。

 Ⅲ:地域福祉基金による助成
 Ⅱと同じような趣旨で国(自治省・厚生省)が都道府県・市町村に設置させるものとして「地域福祉基金」がある。基金の総額は9600億円で、人口比で見た場合この額は東京都の基金に比べむしろ多い(約2倍)のだが、実際にはほとんどCILに降りていない。この制度のこと、そして東京都の基金の使われ方を知り、その上で自治体と交渉し、助成を得ることができるはずである。また各CIL間で情報を交換する必要もある。

 Ⅳ:「「障害者の明るいくらし」促進事業」
 厚生省が金を出し都道府県・政令指定都市が実施する事業で、年間19億3400万円、1県あたり6900万円(94年度)の予算が組まれている。非常に多くの事業があがっているので、一つ一つの事業に対する助成はそう大きなものにならないかもしれないが、少なくともいくつかの事業は現にCILが行っているものであり、この枠からの助成を求めることができるかもしれない。

 Ⅴ:「ホームヘルプサービス」の受託団体になる
 これまで受託したCILは実際にはないが、可能性はある。委託を受けた場合、「事業委託基準」で1回(2~3時間)6060円が支払われる。

 Ⅵ:自治体による助成
 Ⅱ・Ⅲ・Ⅳとは別の自治体、特に市区長村による独自の助成を要請し、助成を受けているCILがある。自立生活センター・立川の場合、94年度は立川市から約1830万円の助成を受けている。本文では、事務局長の野口が行政との関係のあり方について述べる。

 Ⅶ:法人化
 法人化に際しての従来の厳格な要件を緩和しようとする傾向もあるようだ。しかし、法人化にどの程度の利益があるのか、よく考えていく必要がある。

■0■ 個人に対する保障

 重度の障害を持つ人にとって、行政支援(福祉制度)は必要不可欠である。障害を持つ私たちの多くが障害を理由に就学(高等教育)や就労の機会が制限されるため、経済的にも自活するのは困難である。ゆえに所得保障が必要である。また、駅等の公共施設・建物にスロープ・エレベーターを設置する等、ハード面での充実が求められている。
 そして、介助をする人がいないと生活が成り立たない。だから、介助保障制度が必要がある。そして必要な日常生活用具・補装具の給付の制度が必要である。これらは、医療にかかる経費と同様、その費用は、税金によるにせよ社会保険制度を取るにせよ、社会的に負担されるべきである。近頃、公的な介護保険が話題になってきている。私達もどういう制度があるべきかを考える必要がある。また実際にどの程度の介助に対する保障があるのかを知って、使えるものは使いきる必要がある。
 自立生活センター(CIL)は、そうした必要なサービスを当事者が中心となって提供する一つの機関としてある。それが活動していくためには、特に有料のサービスを提供する事業をやっていくためには、まず個人がそのお金を持っている必要がある。特に介助のための費用は重要だ。
 もし個人に十分な費用が払われるのだったら、センターにはお金はいらないという主張もできる。だが、しかし少なくとも今それが不十分であり、また施設等には公的な助成が出ている以上、センターに公的な助成があるべきだ★01。そして、少なくとも国のレベルでは民間団体にある程度力を貸してよいと考えてもいるようだ★02。この報告では、センターへの公的助成として、今あるもの、そして可能性のあるものを紹介するが、その前に自立生活に必要な個人への行政支援、特に介護保障制度について簡単にみておく。

■1 所得保障(年金、手当等)

               月額
①障害基礎年金 1級    81,250円(94年10月から)
        2級    65,000円
②特別障害者手当      26,050円
③自治体の福祉手当     14,500円(東京都) 重度手当56,000円(東京都)
④生活保護による生活扶助費 180,820円(1種1級の障害者が東京都の1級地で支給される基準額 介護加算を除く)※

 ただし、生活保護を受ける場合、上記③の自治体の福祉手当以外は収入認定される。つまり、①~②は収入とされ、生活保護からその分が差し引かれ、実質的に受け取るのは、④の額と同じになるということである→[④-(①+②)]+①+②)=④。東京都に住んでいる重度の人の場合、受け取り額は、③+④で月236,820円ということになる。

 ※1類:38,720円/2類:40,950円/障害加算:26,070円/重度加算:13,580円
  住宅扶助:61,500円

■2 機器の購入、住宅の改造等

 日常生活用具の給付としては、ベッド、特殊尿器、その他がある。補装具の給付としては、車イス(手動・電動)、特殊マット、その他がある。住宅改造については、風呂、トイレ、玄関等の改造費用(の一部)が支給される。
 ここで特に知っておいてもらいたいのは、「生活福祉資金」である。
 生活福祉資金は、補装具の給付対象になっていない高額な福祉機器を購入したり、住宅の改造費が足りない場合に借りることができる。これは、全国の社会福祉協議会で申込ができる。
 生活保護受給者が生活福祉基金を借りた場合、年金その他の収入認定されている収入から返済できる。もちろん返済分は収入認定から除外される。つまり、返済額と同じ額を受け取ることができ――もちろんこれは借り入れをしていない場合には受け取ることができない――、返済は生活保護受給者の負担にならないということである。
 (以上、『94年度生活保護手帳』中の生活保護法認定除外について記されているp.207,209,210を見て下さい。)

■3 介助保障

①ホームヘルプサービス事業
 全国的な実態としては、平均週2回~3回、1回あたりの派遣時間2時間~3時間。ただし、厚生省は従来週18時間としてきた派遣時間の上限は存在しないとしており、一部の自治体ではそれに対応して上限を撤廃し、実際にも週60~80時間程度派遣しているところもある。また一部自治体では、介助の利用者が選んだ介助者をヘルパーとして登録して介助を行わせる「登録ヘルパー制度」が実現されている。★03

②介護人派遣事業(月額)
  東京都 6400円/回× 30回      月 192,000円
  埼玉県  780円/時× 4時間×16回     49,920円
  大阪市 1360円/時×153時間        208,080円
  神戸市 1360円/時× 64時間        87,040円
  札幌市  800円/時× 48時間        38,400円
  その他、神奈川県、広島市で検討中

 利用者が選んだ介助者に対して介助料が払われるというかたちがとられている。大阪市、神戸市の制度は、制度的にはホームヘルプサービス事業を用いている(このことはホームヘルプサービス事業がかなり融通をきかせられる制度だということでもある)。★04

③生活保護法による他人介護加算(月額)★05
  一般基準   68,700円 全国一律
  知事承認  103,050円   〃
  大臣承認  177,300円 東京近郊
        163,300円 大阪
        150,700円 兵庫
        125,700円 その他

 例えば大阪市や東京都の場合、非常勤の身辺介助中心のホームヘルパーの手当と同額(1時間1360円)を払うとすると、②+③で1日約9時間までの介助を受けられることになる。これに①による介助が加わる。②+③の全てにCILが関わり、1時間 100円の手数料をCILが受け取って介助者を派遣する場合、1人の利用者当たり年間約30万円がCILの収入となる。
 ②の制度がない地域でも、③の大臣承認の特別基準をとって、やはり1時間1360円、1日3時間強の有償介助が可能であり、1時間 100円をCILに支払う手数料とすれば、1人年間10万円がCILの収入となる。
 CILの有償介助サービスを軌道に載せるためには、生活保護を受給している人、受給できる人については、③を確実に受給することを支援するとともに、(全国的な制度のない現状では)②の自治体独自の制度を獲得していく必要がある。ただし、②は、利用者が介助者に介助料を渡し、CILは利用者・介助者双方から同額の手数料を受け取るというCILの多くが採用している形態には、そのままでは対応しない。中・長期的にはどのような全国的な制度が望ましいのか、考え、提案し、要求していく必要がある。
 以上のような所得保障・介助保障制度については(また雇用助成金についても)、「全国公的介護保障要求者組合」(電話・ファックス0424-62-5955、夜8時から11時までフリー・ダイヤル0120-665-444)が最も詳しいから、問い合せるとよいだろう。組合員になると定期的に最新の情報を得られるほか、個別の相談にも対応してくれる。

■Ⅰ■ 障害者雇用助成金(労働省管轄)をとる

 例:月給20万円の1・2級障害者が2人いた場合、3年間で、756万円の助成がとれる。
 他にも、障害者のアパート、通勤用自動車、駐車場、事務所家賃、事務所のトイレ等の 改造、パソコンなどの機器に助成金が出る。視覚障害者の場合、介助者の人件費も出る。

■1 雇用助成金の性格

◆「地域福祉基金」や「「障害者の明るいくらし」促進事業」「ガイドヘルプ/ホームヘルプサービス事業」などの事業受託金、自治体からの独自の助成金などを自立生活センターが受けるには、ある程度の事業の実績が必要になる。これに対し、労働省の雇用助成は「障害者や高年齢者が働いていること自体に助成される」制度であるから、事業の実績はなくてもよい。センターが実績をつくる2~3年間までの立ち上がり資金として有用な制度である。

◆全国で誰でも使える制度である。また、書類さえ指定された通りに書いて出せば、確実に助成される制度である。

◆雇用助成は1年半から3年で期限が切れてしまう項目がほとんどである。一部に、10年間助成されるものや永久に助成されるものもあるが、基本は立ち上がり資金と考えて、実績をつけたところで、他の助成金を取る計画が必要。

◆事務所の家賃や給与を最初に払う日から、助成金が振り込まれるまでにある程度のタイムラグがある。その資金がない場合には、その間を埋めるためのお金を借りておく必要がある(方法は6で紹介)。

■2 雇用助成金の種類 その1

A 特定求職者雇用開発助成金
 重度(1・2級)身体障害者・・・・・1年6カ月間、賃金の4分の3が助成される
 45歳以上の3~6級の身体障害者・・・1年6カ月間、賃金の4分の3が助成される
 重度知的障害者(療育手帳等A)・・・1年6カ月間、賃金の4分の3が助成される
 55歳以上の健常者(高年齢者雇用助成)・・・1年間、賃金の3分の2が助成される
 45歳未満の3~6級の身体障害者・・・・・・1年間、賃金の3分の2が助成される
 軽度知的障害者・・・・・・・・・・・・・・1年間、賃金の3分の2が助成される
 精神障害者・・・・・・・・・・・・・・・・1年間、賃金の3分の2が助成される
 短時間労働の障害者※・・・・・・・・・・・1年間、賃金の3分の2が助成される
 45歳以上の健常者(高年齢者雇用助成)・・・1年間、賃金の2分の1が助成される

B 重度障害者職場適応助成金
 重度(1・2級)身体障害者・・・・・・・・3年間、月3万円が助成される
 45歳以上の3~6級の身体障害者・・・・・・3年間、月3万円が助成される
 重度知的障害者・・・・3年間、月3万円、その後2年間、月1万5千円が助成される
 精神障害者・・・・・・3年間、月3万円、その後2年間、月1万5千円が助成される
 重度身体障害者の短時間労働者・・・・・・・3年間、月2万円が助成される
 重度知的障害者の短時間労働者・・・・・・・3年間、月2万円、その後2年間、
                      月1万円が助成される

 ※ 「短時間労働者」とは:普通の障害者雇用助成は、週30時間以上働いている常用労 働者が対象になる(ただし、3分の1までの欠勤は認められる)。それに対し、週20時 間以上20時間未満の労働者の場合は、「短時間労働者」として区別され、助成率が落ち たり助成期間が短くなったりする(こちらも3分の1までの欠勤は認められる)。なお、 労働時間とは、CILの業務に携わっている時間をCILが判断する(それを勤務簿に 記入して申請時に出す)ものであり、事務所にいる時間のことではない。例えば、訪問 相談・取材・他団体との会議・権利擁護活動として市役所に出掛ける、自宅勤務でIL P(自立生活プログラム)の計画表を作る、なども業務時間となる。

C 報奨金
 1・2級身体障害者と重度知的障害者・・・・雇用期間中、月3万4千円が助成される
 その他の障害者と短時間労働の重度障害者・・雇用期間中、月1万7千円が助成される

 ※障害者1人当たり1万7千円、重度は2人分と考え、2倍出る。ただし、軽度障害者 を1人、重度障害者を2人と計算して、1~5人分の報奨金は出ない。6人目以降から 出る。例えば、重度障害者3人の場合は全体で1万7千円しか出ない(2×3-5で1 人分)。1~5人目の報奨金をカットされない方法は後で紹介(→5)。

 以上のABCが、大まかに言うとお金の助成。すべて重複して受けられる。重度の場合、月給12万円で4人雇えば、18カ月間で、払う人件費よりも91万8000円も多い助成金が入ることになる。
 ほかにも買う・改造する・借りる・などに対して助成項目がある。次にこれを紹介する。

■3 雇用助成金の種類 その2

D 障害者作業設置等助成金-第1種
  以下の項目にかかる費用の3分の2が支給される。
  支給額上限は障害者1人450万円。ただし100万円を越すと書類が大変。
   作業施設・・・例:車椅子使用のため、スペース確保のための増築
   付帯施設・・・例:トイレ改造、入り口に段差解消機、スロープ、点字ブロック
   作業設備・・・例:パソコンなどOA機器、座席の上下する車椅子、改造自動車
            FAX、コピーなどもそれを必要とする障害なら取れる。

E 障害者作業設置等助成金-第2種
  事務所の家賃(の内、均等割で障害者が使う面積部分)の3分の2が助成される。
  「障害者の使える設備が整った所を借りる費用」という趣旨のため、上記、Dを使っ  た障害者は対象にならない。また敷金などは対象にならないので、大家に“敷金礼金  が安く、その分家賃が高い”という条件にしてもらうとよい。期間は3年間。
  4人労働者がいて、3人が障害者の場合、面積3/4×2/3で、2分の1の助成に  なる。月4万円の家賃なら、月2万円が助成される。

F 重度障害者雇用管理助成金-第1種(通勤対策等)
  通勤を容易にするための以下の項目の費用の4分の3を助成
  対象者は、1・2級身障者、知的障害者、精神障害者、4級以上のCP、など

             (支給限度額)
   住宅設置   世帯   900万円 (1200万円で申請したら900万円出る)
          単身   400万円
   住宅賃貸   世帯  月10万円  5年間
          単身  月6万円  5年間
   駐車場賃貸(2カ所) 月5万円  5年間  
   通勤用自動車 購入   120万円
   通勤用自動車 賃貸  月5万円  3年間
   通勤用バスの購入    700万円 (要件:これで通勤する重度障害者5人以上)   グループホーム介助者 月15万円  10年間(重度5人以上が入居する住宅に)

G 重度障害者雇用管理助成金-第2種(介助者・手話通訳等)
  以下の人件費の4分の3を助成(20万円で申請すれば15万円が出る)。(すべて介助  者として使える)
  下に記したほかにも、手話通訳、健康相談医の委嘱、在宅勤務援助者の配置、委嘱な  どがある。

   職場介助者    ・2級以上の事務職視覚障害者(短時間も可)1対1でつく
            ・支給限度額 月15万円。期間10年
   業務遂行援助者  ・3人以上の、重度知的障害者(短時間も可)、精神障害者で             1人の業務遂行援助者を雇える。
            ・支給限度額 月15万円。期間10年
   職業コンサルタント・5人以上の、知的障害者、精神障害者、重度の身体障害者、             重度の短時間労働者(知的・身体とも)、4級以上のCPで             移動又は上肢の機能障害で、1人の職業コンサルタントを雇             える。
            ・支給限度額 月15万円。期間10年

■4 注意点

◆以上が大まかな助成の種類である。一人の障害者に対し、基本的にA~Gまですべて重複して受けられる(DとEのみ、どちらか選ぶ)。

◆なお、Aの助成率は不況対策で打ち出された94年度限りのもの。年度末の3月31日までに職安を通して雇用されればこの助成率が適応されるが、これを過ぎると、4分の3は2分の1に、3分の2は3分の1に戻る。2分の1(の45歳~55歳)はなくなる。

◆「Fの対象者は上記表よりもっと多い」「Eの助成は事務所を借りて3カ月以内に障害者を雇用して申請を済ませる」「Dの作業設備は5~10年の間に更新できる」などの情報を上記の表は網羅していない。詳しくは、共同連(06-567-5170) 発行の雇用助成の解説書を参照していただきたい。 500円。申請方法等についても当事者団体側からの視点で、詳しく解説されている。

◆助成金を取るにはまず、CILの職員の誰かを雇用保険にいれることから始める。これらの手順は、この制度を使っているCILに問い合わせると教えてくれる。兵庫、静岡のセンターや東京のほとんどのセンター(立川、田無、町田など)がこれを使っている。上記の共同連にも電話で聞けば教えてくれる。

■5 雇用助成の上手な使い方

◆給与の助成はあるが、ボーナスには助成されないので、ボーナスを無くして月給を上げた方が多く助成金が取れる。

◆同様に、家賃は助成されるが、敷金礼金は助成されないので、社宅として障害者用にアパートを借りる場合、家賃が高くて礼金敷金のないような物件が得だ(最近は不動産不況で、敷金礼金0カ月で家賃高めの物件が増えている)。知り合いに大家がいればこちらの条件を話して上記のように変更してもらう方法もある。なお、社宅アパートの賃貸契約はセンターが行い、家賃は満額、障害者から取ることにしておくと、助成される4分の3がセンターの収入となる。給与の助成は1年半で終わるが、住宅費の助成金は5年出る。

◆単身者用アパートは、6万円までしか助成されない(対象が8万を越えても無駄)ので、駐車場つき10万円という物件の場合、駐車場2万、アパート8万と契約書に書いてもらうと、4分の3満額取れる。なお、駐車場は事務所前の分と合わせて2カ所取れる。

◆事務所も駐車場付きの物件なら、駐車場の助成率が高いので、本体を安く、駐車場を高くしてもらうとよい。

◆事務所用のスペースを借りる場合、「店舗・事務所用」の場所を借りると保証金が10カ月分ほどかかる。資金のない立ち上がり時期の団体の場合、マンションの1室を事務所として借りた方がよい。「敷金礼金0カ月」の物件もあるかもしれない。夜間・休日は自立体験室としても使える。CILとしての「仲間を自立させる能力」は体験室があるかないかで格段に違う。(まず体験室に引っ越させて生活保護を取れば、他にアパートが見つかったときに生保から敷金礼金等が出る)。なお、普通の事業では、部屋の面積のうち、台所や風呂などの営業に関係ない面積は助成対象から引かれるが、例えば、「個別自立生活プログラムという事業に、受講者が自分の指示で風呂介助を受けてみるとか、食事を指示した方法でつくらせると言ったプログラムがあるので、風呂も台所も営業に使っている。職員の障害者はその場でインストラクターをやっている」と言えば全面積が対象になりうる。当然、市からの助成が取れたら事務所は一等地のビルに引っ越しして、以前の事務所は専用体験室とする。

◆例えば、コンサルタントや報奨金を取るために生活保護を受けている障害者を雇用する場合、出した給与は収入認定されてしまうので、なるべく低めに設定した方が得。一人暮らしで介護の必要な障害者の場合、生保基準は1級地で23万円~3級地で18万円になる。最低賃金で雇えば年金・特障・給与が生保基準を越えることはないので、生保が切られることはない。月給や日給よりも、時給の方が最低賃金が低いので、週30時間雇用ということにして、例えば1級地では、時給 650円で雇えば、給与は月8万5千円になる。この場合取れる助成は、報奨金を含め、月12万7750円になる。この例では、3年間雇ってもまだ40万円が残る。報奨金を含めなくても、2年1カ月は黒字が続く。

◆C報奨金を5人分カットされない方法
 報奨金は永久に出るが、1事業所当たり、5人目までの分が出ない。月8万5千円、年間 102万円の損失になる。これを防ぐ方法として事業組合方式がある。5つぐらいの事業所が集まって、書類上合併して、一つの事業所になれば全体で5人分のみのカットになり、1カ所当たり4人分の報奨金は取りもどせる。もっとたくさんで合併すればさらに取れる。書類上の本店・支店関係として、事業組合規約に「本店及び事業主は支店に対して何の権限ももたない。また支店の債務も一切負わない」と書いておくとよい。(これについて導入したい方、詳しくはCIL立川・高橋まで(0425-25-0879)。

■6 資金の集め方

 もちろん雇用助成金で費用の全部をまかなえるわけではない。助成金の多くは職員の給料の一部として払われるものである。だから、他の財源がない場合には、そして将来的には返すめどが立つ場合には、活動資金を借りることになる。

◆団体の内部で集める。
 初めのうちは、高齢者問題をやっている主婦などの団体と一緒に介護派遣事業などをしていれば、資金面で頼りになる。このような団体は40~50歳代が中心。その夫は50~60代。日本では、この年代は老後の資金を1000万円くらいためている。その一部を以下のように借りる。
 第3種通信で雇用助成を十分に説明し、これから手掛ける事業も十分説明して信用を得る。敷金なども含め、返済の計画を説明する。同じ通信で1口5万円か10万円の出資を申し込む。「1人何口でも可能。何年何月何日に返済する」と明記する。利子は、カンパとするか、又は、今現在、預けているであろう金融機関の利子より高くする(配当と呼んでおく)。通信を何回か出したら、スタッフが電話か会って説明して出資を申し込んでまわる。信用第一なので、そういう主婦の団体の代表格をこちらの事務局に引き込んでおく。

◆環境団体から借りる
 環境団体の中には、郵便貯金などの資金が例えば熱帯林のダム建設に使われて、環境破壊の元凶になっていると憂慮しているグループがある。これらの団体メンバーは環境破壊にならない融資先(利子が付くところ)を探しているので、ぴったりである。団体代表者と会って話ができれば後はうまく行く。こういうことを知らないローカルな環境団体にはどうするか。『どうして郵貯がいけないの』(グループKIKI著・北斗出版)を買って来る。環境団体にこれを読ませる。すると、自分たちの貯金先を“環境破壊のない”融資に回したくなること、請け合いである。後は、上の◆のようにやる。

◆共同連の「トモニ基金」から借りる
 当事者団体が借りるためにつくられた基金。CILのために借りたいならば、まずはCIL立川にご相談を。

◆職員から借りる
 給与をすぐに使わずに貯金するという職員なら、銀行と同じ利子で給料日にすぐ借り直す。役員の給料は、最初から全額借りる計画でもよい。

■Ⅱ■ 「東京都地域福祉振興基金」による助成★06

■1 基金の目的

 この事業の狙いについて、「東京都地域福祉振興基金条例」(87年)の第1条は「在宅福祉の推進等により地域福祉の振興を図るため」とあっさりしているが、『東京都地域福祉振興基金による助成のあり方について』(88年)は、基金の規模の大きさと目的が特定されている点で注目されるとした後、「従来の福祉サービスの内容や方式では充足できないニーズが拡大」している中で「既存の福祉サービスに質・量を付加し、更に新たな方法でサービスを提供する様々な実践が進められつつ」あり、それらが「今後の福祉サービスのあり方にどのような地歩を占め得るか、という点で、地域福祉振興を標榜する本基金への期待は大きいと考える」とし、「在宅福祉サービスの多様な展開を目指す、様々な先駆的、開拓的、実験的実践を誘引し、それらが地域に根ざしたサービスとして安定した運営が確保されるよう、育成、援助していくための基金として、多様な試みを視野に入れた、包括的で柔軟な運営がなされることを期待したい」と述べている。★07
 87年度に設定された基金は200億円、この後3年間毎年100億円が追加され 総額500億円となった。実際に助成が開始されたのは88年度から。助成総額は88~93年度にかけ、1億3894.5万、2億3917.9万、3億8855.9万円、6億0951.6万円、7億6692.1万円、10億1873.2万円と年々増えてきており、94年度の予算は11億2252.7万円となっている。★08

■2 申請方法・助成対象団体

 助成の実務は東京都社会福祉振興財団が行う(電話03-5285-8530、ファックス8533)。申込みの受け付けは年度2回(4月と8月)、申請書・計画書と区市町村等の意見書を提出する。家事援助サービス等は申請の大部分が認められている。助成期間は原則として1年だが、将来にわたり継続される事業については、前年度の事業実績を勘案して、助成を継続することができる。実際、家事援助サービス等一度認められた団体は、継続して助成を受けている。助成期間の終わりに報告書を提出する。書類は各B4かB5の用紙1枚で、民間の財団の研究助成等の申請・報告に比べればそう面倒なものではない。★09
 助成対象団体の規定で注目されるのは、『あり方』の2「対象とすべき団体」で「先駆的、開拓的、実験的プログラムを促進し、地域の特性に即した在宅福祉サービスを質・量共に向上させていくという本基金の主旨から、対象とすべき団体については、限定的にとらえることなく、その事業の内容に着目して、出来る限り広範・柔軟に考えていくべきである」とし、その事例としてあげられる有料在宅福祉サービスの運営主体として区市町村社協、区市設立の公社とともに「民間の任意団体」も助成の対象になる、また「法人化することが望まれるが、必ずしもそれを助成の条件とはせず」と記されていることである。これが『要綱』第2条1)「対象団体」の「東京都内に所在し、都民を対象に社会福祉活動を実施している団体で営利団体を除く次の団体」中の最後、ウ「地域福祉の振興に寄与する事業を行うその他の民間団体」(別箇所では「純民間の活動団体」)である。また財政基盤に格差があることから、民間の任意団体に対する助成率は他に比べて高く設定されている。
 88~93年度の助成件数は、67・90・149・162・199・245件、このうち任意の民間団体が38・53・71・93・103・132件、94年度の助成決定件数は 254件、うち任意の民間団体(純民間団体)が 144件となっている。毎年総件数が増加しているとともに、純民間団体の割合が次第に高くなっていることがわかる。
 高齢者を主なサービスの対象とする団体が数としては多いが、JIL(全国自立生活センター協議会)加盟の団体としては、「自立生活企画」(田無市)、「自立生活センター立川」、「生活援助為センター」(保谷市)、「HANDS世田谷」、「ヒューマンケア協会」(八王子市)、「町田ヒューマンネットワーク」、等、都内のJIL加盟団体のほとんどが助成を受けている(他に「練馬区介護人派遣センター」等)。

■3 助成対象事業

 『あり方』では、助成対象経費を「サービス利用者に負担を求めることが適切でない経費」とし、有償在宅福祉サービスの例では、コーディネーター等常勤専門職員配置に必要な経費、サービスの担い手のための経費(保険料、研修費用)、事務所借り上げに要する経費、初度調弁等機器整備をあげている。民間の財団等の助成等には大抵含まれない恒常的な人件費が含まれている。助成をもらっても備品が増えるだけということはない。実際の助成にあたっては、人件費と事業費に大きく項目が分けられている。
 次に対象事業。「各種在宅福祉事業の中で、東京都の既存の公的制度や補助事業に組み入れられていない先駆的、開拓的、実験的な次の事業」(『要綱』第2条2)「対象事業」)として挙げられているのは、①有償家事援助サービス、②毎日食事サービス、③ミニキャブ運行システム、④障害者自立生活プログラム、⑤情報システムの開発・ネットワーク、⑥地域づくり活動、⑦調査・研究、⑧福祉組織化活動、⑨地域福祉活動計画(住民活動計画)の策定、⑩その他サービス提供事業、の10種類である(以下実績は基本的に91年度、基準額・助成率は92年度のもの)。★10
 純民間団体の場合は4分の3が助成率となる。社協、公社等は3分の2、この比率は以下①~⑦で同じ。基準額×助成率と対象事業に関わる所要額-収入額を比較し、少ない方が助成額となる。つまり経費-事業収入が基準額×助成率を超えれば、基準額×助成率が助成額となる(一定の規模以上の事業を行っている団体はこちらが助成額となっている)。
 ①有償家事援助サービス。94年度は72件の助成が決定されている(純民間団体は35件)。予算は約3.7億円。自立生活センターが提供する介助は「家事援助」だけではないが、この枠の助成を受けることになる。基準額は人件費 500万円、事業費(事務所借り上げ経費、担い手のための研修経費、担い手のための損害賠償保険等の加入経費、備品費、事務所運営に要する経費)200万円。原則として利用会員50名以上、協力会員100名以上が条件。年間利用件数3000件以上の純民間団体の場合は、コーディネーター等を複数設置可。つまり500万円上乗せで、基準額1200万円、助成額900万円まで可能ということになる。
 ③ミニキャブ運行システムの基準額は人件費500万円、事業費200万円。自動車購入経費については300万円。自動車を購入した年度は、助成額750万円まで可能。94年度の決定件数は30件(純民間団体24件)。予算は約1.4億円
 ④障害者自立生活プログラムに対する助成が行われているのが注目される。これは、委員や都の担当部局の職員にこの活動に注目する人がおり、ヒューマンケア協会の中西事務局長が前述した検討委員会に招かれその必要性を強調したことにもよる。人件費 500万円、事業費 200万円が基準額。つまり助成額は525万円まで。94年度は決定件数は33件(全て純民間団体)。予算は約1.6億円。
 他にも、事業内容によっては⑤⑥⑦⑨⑩の助成を申請することも可能だ。
 例えば、①と④の2種類の事業を行っておりコーディネーターを複数置く場合、基準額1900万円で、助成額の上限が1425万円になる。ヒューマンケア協会は①④に加え、91~93年度は⑨「地域福祉活動計画」の策定に対する助成も受けた。町田ヒューマンネットワークは①③④について助成を受け、自動車購入に助成が出た93年度は、総額2175万円の助成を受け、これが予算総額の57%を占めている。★11
 この基金からの助成があることが、東京都内にCILの数が多いこと、それらの事業規模が比較的大きいことに結びついているのは明らかである。だが、ここで私達は、東京都内の団体が比較的条件がよいことをただ言いたいのではない。各道府県、各市町村に基本的に同じ趣旨の基金が実は設定されているのである。これを全国各地のCILの事業に対する助成に回せるようにすることができるはずである。このことを次に述べる。そのためにも、東京都の基金について知っておく必要があるのである。

■Ⅲ■ 「長寿社会福祉基金」と「地域福祉基金」★12

■1 長寿社会福祉基金

 89年12月に「高齢者保健福祉促進十か年戦略(ゴールドプラン)」が発表された。ホームヘルパーを十万人に増やすというところが有名だが、そしてこういう方針からヘルパーの供給形態を多様化させないとどうにもならないという事情も出てくるのだが、他にもいろいろ書いてある。
 この「戦略」の一環としての民間組織に対する支援・助成の第一は、政府の出資で「社会福祉・医療事業団」に 700億円の「長寿社会福祉基金」が設置されたこと(これは88年度補正予算により在宅介護を振興するための事業を行なうため受けた出資金 100億円に、89年度予算で 600億円の追加出資を行なったもの、その後増えていない)。実際の助成は「長寿社会開発センター」が担当する。「民間の創意工夫を生かしつつ地域の実情に即したきめ細かな在宅福祉事業を推進する」というもので、実施している事業の第一は「高齢者、障害者の総合的在宅福祉事業の支援」、その一番目に「民間の公益団体、ボランティア等が行なう在宅福祉事業の推進」とある。
 ただ実際に支給されている助成対象事業としては、福祉サービスの提供そのものというより、介助技術等の研修等、人材の養成に関わるものや研究が多い。このままの助成のあり方だと使える範囲は限られることになる。また私が知る限りでは、障害者が主体となる民間組織でこの基金からの助成を受けているところは(まだ)ないようだ。だが当の長寿社会開発センター発行(厚生省老人保健福祉局監修)の『高齢者保健福祉推進十か年戦略』の中に先のように明記され、例として「地域福祉公社等のモデル的な事業の支援」とあり、そして「高齢者、障害者の」とある(p.9) 以上、「自立生活センター」等も、この基金からの助成を受けることが出来るはずである。また例えば「全国自立生活センター協議会」といった組織が、センターの運営を担える人材の養成や、運営・人材養成についての研究等の事業を行うという場合にも、この基金が想定している助成対象事業に入ってくるはずである(長寿社会開発センターの連絡先は03-5800-1781)。

■2 地域福祉基金

 この「戦略」を受けた第二のものは、91年度から厚生省と自治省が「高齢者保健福祉推進特別事業」を実施することにし、この中で設置された「地域福祉基金」。91年6月に「高齢者保健福祉推進特別事業について」という同じタイトルのA:自治政56とB:老福127の2つの通知が出されている(『社会福祉六法』に掲載されている)。
 基金の設置費に対する財政措置は地方交付税によって行なわれる。91年度2100億円(都道府県分700億円・市町村分1400億円)、92年度3500億円(700億円・2800億円)、93年度4000億円(700億円)、3年間で総額9600億円で都道府県分2100億円、市町村分7500億円となっている。93年度だと一般会計歳出の21.6%、15兆6000億円余の地方交付税交付金の中のこれだけの部分を基金の設定のために使いなさないということである。自治体によっては独自にこれに増額して基金としそれの運用益(貯金であれば利子にあたる部分、金利の動向に左右される)を使って助成する。本来地方交付税の使い道は自治体にまかせられているから、Aで「目的・内容等は地域の実情に応じ、住民の創意と工夫を活かして独自に決定されるものであるが」、想定されているものとして「地域の実情に応じて各種民間団体が行う先導的事業に対する助成等の事業」、さらにそれを例示すればとある中の二番目に「地域の実情に応じた在宅保健福祉サービス」と記されている。Bでは、「助成対象事業としては、高齢者の保健福祉に限られず、広く障害者及び児童の保健福祉等地域福祉の増進のために活用できるものであること」、「民間団体に対し、当基金の趣旨等の周知徹底に努めるとともに、基金の適用方針等を定めるに当たって民間団体との意見交換の場を設けることなどにより、民間団体の意見反映にも努めることが望ましい」等とある。
 助成の実態はどうなっているのか。全国社会福祉協議会の『平成4年度「地域福祉基金」設置状況調査<都道府県分>』(93年1月、政令都市の分も載っている)で、都道府県と政令指定都市について、91・92年度に積み立てた基金の額と92年時の助成のおおまかなところがわかる。
 地方交付税だから、財政状況によって東京都や大阪府のように全く交付されていないところもあり(東京都独自の基金については→Ⅱ-1、大阪府にも 218億円の独自の基金がある)、人口と財政状況により交付される額は様々で、また地方自治体が独自に積み立てているか否かによりっても大きく違うが、交付税からは2年分で20億円前後(政令指定都市では10億円くらい)のところが多く、この額で自治体独自の上乗せがないと、使えるのは例えば年に5000万円ほどから。(これとは別に市町村の基金からの支出がある。)
 その使い道だが、見る限りでは補助・助成先のかなりの部分は社会福祉協議会等の法人であり、その当の社協も行政主導型だと文句を言っており、内容的にも新しいもの、「先導的事業」に対する助成は少ない。その中で、実態がどうだったか把握できていないのでなんとも言えないが、少し変っているかなと思われるのは、熊本県など。交付税分24億円+独自分8億円の基金で92年度に1億2500万円を使い、その中で、県直営事業として「マイケル・ウィンター・シンボジウム」に100万、障害者米国派遣事業に270万、民間団体が行なう自主的な福祉活動支援に5700万円ほど使った。また政令指定都市では北九州市で「住民参加型による在宅福祉サービスを提供する団体に対する援助」「障害者を対象とした自立の為の生活指導サービス」が1億700万円使った中の 1900万円の一部に入っている、等。だがとにかく全般的には変わりばえがしない。
 まず自治体が福祉基金のことを知らせていない。「周知徹底」「意見交換」「意見反映」がなされていない、あるいはその相手の「民間団体」として社協等しか想定していないということである。総額としては都道府県よりも多くお金が出ている市町村の基金の使い方も、大勢としてはそのような状態のようだ。それ以前に、この福祉基金の存在と主旨とを担当部局の人達が十分に把握していないようでもある。使えるお金が少ないから従来支給していたところに降ろしているんだという返答もある★13。だが少なくとも県レベルでは本来使えるはずの「果実」(運用益)を使いきっていないところも目立つ。そして基金の額は今後も増えていく。自分のところの自治体に対して、こういうものがあるはずだが基金(名称は各自治体で独自につけられているが、説明すればわかる人はいるはずだ…その程度の認知度である)をいくら設定し、何にいくら使っているのかを知らせてもらい、これこれの事業は当然助成の対象になりはずだから助成するようにと申し込み、交渉することができるはずである。

■Ⅳ■ 「障害者の明るいくらし」促進事業

■1 概要

 在宅身体障害者の社会活動への参加と自立を促進するため、92年4月1日から「「障害者の明るいくらし」促進事業」が開始されている。以下「「障害者の明るいくらし」促進事業(障害者社会参加促進事業」の実施について」(93年4月1日社援更 124)とその中の別紙「実施要綱」、等から紹介する。★14
 1993年度の予算総額は17億9400万円、1994年度は19億3400万円であり、1県当たり93年度は6400万円、94年度は6900万円の予算が国から各都道府県へ出ている。
 趣旨は、「障害者が住み慣れた地域社会のなかで自立し社会に参加できるように必要な援助を行なうことにより、障害の有無にかかわらず誰もが明るく暮らせる社会づくりを促進することを目的にする」とある。
 また、実施主体は都道府県及び指定都市だが、「ただし、事業の一部を都道府県身体障害者社会参加促進センター、身体障害者福祉団体等に委託することができる」とある。また「実施上の留意事項」の(1) として「本事業の実施に当たっては、都道府県身体障害者社会参加促進センター及び身体障害者福祉団体等関係各方面と密接な連携を図り必要な協力を得るほか、身体障害者の積極的参加を得るよう努め、総合的かつきめ細かな運用が図られるよう配慮すること。」とある。(以上「実施について」より)
 とすれば、自立生活センターへの助成は考えられそうだ。各都道府県との交渉次第では助成を受けられるのではと考えられる。

■2 委託される可能性のある事業

 「要綱」には非常にたくさんの事業が示されている。第1から第8まで対策分野が大きく分類されており――「コミュニケーションの確保等」「移動」「生活訓練等」「生活環境改善」「スポーツ振興」「相談」「啓発・普及」「市町村支援事業」――さらにこの一つ一つの中にいくつかの事業が列挙されている(例えば第1「コミュニケーションの確保等」については7つ)。
 この中には、事業の委託をあまり想定していないものもある。また、基本的に県の行う事業とされているため、事業を行う範囲等の問題がでてくることがありうるだろう。実際に自立生活センターの行なう事業で助成の対象になりそうなものをいくつか示す。他にもたくさんの事業があがっており、要綱では「第1から第7までの対策分野ごとに、各対策分野内に掲げた事業のいずれかは必ず実施すること」となっているので、一つ一つの事業あたりの予算額の方はあまり期待できないかもしれない。だがまず、各都道府県でこの事業がどのように実施されているのか、予算がどのように配分されているのかを知り、センターがそこにどのように入りこむことができるのかを検討する必要がある。

○カイドヘルパーネットワーク事業(第2「移動」の2)
  事業内容:重度の視覚障害者及び脳性麻痺者等全身性障害者が、都道府県・指定都市  間を移動する場合に、その目的地において必要となるガイドヘルパーを確保するため  のネットワークを整備する。
  ※既に、各CILは互いに連絡を取合って、例えばこの自立生活問題研究全国集会等  で移動する際に、その地での介助をその地域のCILに要請するといったことを行な  っている。ただ、この事業で想定しているのはホームヘルプサービス事業の一部とし  てのガイドヘルプであり、この事業は都道府県が行うべきものとされているようであ  る。★15

○「障害者とともに歩む地域づくり」推進事業(第4「生活環境改善」の1)
  事業内容:身体障害者が家庭や地域で明るく暮らせるための地域づくりを推進する。
  身体障害者の日常生活、緊急時等の支援体制の整備。概ね人口3万人未満の市町村等  を単位とした地域で実施する。都道府県は市町村が実施する事業の2/3を2年間助  成することができる。
  ※人口が少ない市町村での活動に使えるかもしれない。ただ助成が2年間に限られて  いるという限界もある。

○生活環境情報提供事業(第4「生活環境改善」の2)
  事業内容:身体障害者の日常行動に役立つ各種の情報を提供する。
  ※これはCILが行なっている中心的な事業の一つである。ただ、次の事業について  も言えることだが、都道府県を単位とした事業として想定されているものと思われ、  この性格にCILの側がどのように対応していくかが検討課題になるだろう。

〇相談事業(第6「相談」)
  事業内容:概ね次のような相談を行う。ア、就労に関する相談/イ、結婚に関する相  談/ウ、介助に関する相談/エ、福祉機器に関する相談/オ、法律に関する相談/カ、  住環境に関する総合支援相談/キ、その他必要な相談
  ※これもCILが行なっている中心的な活動の一つである。

○重度身体障害者移動支援事業(第8「市町村支援事業」の3)
  事業内容:車椅子利用者等が利用できるリフト付き乗用車を運行する事業。市町村が  直接実施する方法、社会福祉法人に委託して実施する方法又は民間輸送業者に助成し  て実施する方法等。民間輸送業者が実施する場合は、通常のタクシー料金を上限とし  て利用料金を徴することができる。

■Ⅴ■ ホームヘルプサービス事業の受託団体になる★16

■1 事業委託を受ける条件

 CILがホームヘルプサービス事業を委託される(受託する)団体となれる可能性がある。国が費用の2分の1、都道府県が4分の1を負担するので、市町村の負担が少ない点も市町村との交渉の場合には有利になる。
 委託されると何がよいのか。基本的には、この制度を利用者側に立ったものにできるということである。もう一つ、センターの経営基盤の安定化をはかることができる可能性がある。この点は後に記す。
 この事業の実施主体は市町村だが、市町村が委託することができる。ここのところ委託先は拡大されてきた★17。93年度の要綱(93社援更165号)では以下のようになっている。

「2 実施主体
 (1) 事業の実施主体は、市町村とし、その責任の下にサービスを提供するものとする。
 この場合において、市町村は、対象者、ホームヘルパーにより提供されるサービスの内容及び費用負担区分の決定を除きこの事業の一部を市町村社会福祉協議会、身体障害者療護施設等を経営する社会福祉法人、福祉公社、在宅介護支援センター運営事業の委託を受けている社会福祉法人及び医療法人等、昭和63年9月16日老福第27号、社更第 187号老人保健福祉部長、社会局長連名通知による「在宅介護サービスガイドライン」の内容を満たす民間事業者並びに別に定める要件に該当する介護福祉士に委託することができるものとする。
 (2) (1)に掲げる者以外に適当と認められる者がある場合には、当職に協議の上、事業の一部を依託することができるものとする。」★18

 自立生活センターはもちろん社協、福祉公社ではないし、社会福祉法人になるのも(今のところ)望みうすだ。そうするとまず目につくのが「「在宅介護サービスガイドライン」の内容を満たす民間事業者等」である。
 「ガイドライン」では、「保健婦又は看護婦、ソーシャルワーカー(社会福祉士等社会福祉援助技術を行なう者を言う。)及びヘルパーを配置すること」となっている。社団法人シルバーサービス振興会というものがあって、申請はここに対して行うことになっており、ここの要綱等に詳しい申請の手続きが書いてある。この申請が受け入れられると、「シルバーマーク」というものがもらえ、右に記した「民間業者等」になる。かなりいろいろな要件を満たさねばならず、申請にお金もかかる。この基準を満たすのはなかなか厄介である。シルバーマークを取得している自立生活センター等の組織はまだない。今のところあまり現実的ではないと言えるかもしれない。だが人を雇い、ある程度の初期の出費を覚悟し、書類書きをいとわなければ、クリアできないわけではない。本格的に取り組もうとする場合には選択肢の一つになる(シルバーサービス振興会から出ている「シルバーマーク制度要綱集」「シルバーマーク制度申請の手引き」等も要求者組合から取り寄せられる)。
 「シルバーマーク」を取るのは不可能ではないにせよ今すぐはなかなか難しい。とすると先の要綱の(2)「(1)に掲げる者以外に適当と認められる者」はどうか。「手引き」には次のように書かれている。
 (1)に掲げる者「以外の者に対して地域の実情から委託することが適当と考えられる場合には、都道府県を通じて厚生省に協議いただければ、その可否について検討することとする。
 要は、市町村の責任の下に、適正なホームヘルプ事業が住民に提供されることが可能になる体制を構築することが制度の眼目であり、いたずらに実施主体を規制することが本旨ではない。
 ホームヘルパーの供給の体制として、一市町村が複数の形態(直営と委託の併用、委託の中でのいくつかの形態の併用)を持つことは当然可能である。」
 厚生省の側はとにかくヘルパーを増やさねばならないわけで、その協議に消極的であるとは考えられない。また自治体でも(特に男性や、夜間・休日に活動できる)ヘルパーを自前あるいは社協委託等で集めることが出来ず、しかもその必要に応えないわけにはいかないとすれば、既に実績のあるセンターが委託先の候補に上がっても不思議ではなく、自立生活センターの側もこの状況を前提に交渉することができる。夜間や休日の派遣自体は既に厚生省が推進すべきだと言っている。自治体の側もセンターの側の積極的な事業運営を束縛することはできないはずだ。実際、ある自立生活センターには市からの打診があったということである(今のところ受諾してはいない)。

■2 事業委託費用の基準

 ホームヘルプサービス事業の費用の基準には「一般基準」と「事業委託基準」があり、直営・社協委託以外の非常勤ヘルパーについては「委託基準」を用いることになる。「一般基準」とは、先に述べた、例えば非常勤で身体介護中心業務の場合1時間1360円(94年度)という額である。他方、「事業委託基準」の方は1回6060円(93年度)となっている。いずれについても、国がこの額の2分の1、都道府県・市区町村が4分の1を出す(実施主体が上乗せをするのは構わない、生計中心者の収入に応じ利用者側の負担がある)。
 この「1回」というのがよくわからないが、シルバーマークを取って事業を受託している団体の活動を紹介している『月刊総合ケア』という雑誌の記事を見ると、この事業を受託している8つの企業の例が掲載されており、上記の6060円が2時間分として計算されている場合が多いことがわかる。つまり1時間あたり約3000円である。仮にヘルパーに1時間1360円を払うとし、年3万時間程度とかなり多い時間の派遣を行っているセンター(自立生活センター・立川や田無市の自立生活企画)についてごくごく単純に計算すると、年間4500万円程がセンター側に残ることになる。もちろんこれは単純すぎる計算ではあるが、それにしてもなかなかの額である。受託しないにしてもこの額は頭に入れておいてよい。こうしてホームヘルプ事業を受託するのは、センターを安定的に運営し、介助者に相応の額を支払うためには有効な方法だと考えられる。

■Ⅵ■ 自治体による助成――自立生活センター・立川の場合

■1 CIL設立までの行政との関係

 1981年の立川駅の駅ビル建設工事の際、エレベーター設置を目指す「立川駅にエレベーター設置を要求する会」が高橋修氏(現在自立生活センター・立川代表)を中心に始められたのが、障害当事者による最初の運動でした。約2万人の市民による署名をもとに立川市議会での請願の採択を獲得し、国鉄や立川市行政を相手にエレベーター設置の交渉を行い、エレベーター設置の約束を取りつけることができました。これは当時としては画期的なことでした。(その後紆余曲折があり、設置までには15年(1986年完成予定)の時間を必要としました。)
 その後、エレベーターの運動を通じて集まってきた障害者の生活保障をつくる「立川市在宅障害者の保障を考える会」へと運動が広がってきました。特に介助保障の充実へとホーム・ヘルパー制度や介護料制度は重点的な取り組みを行い、立川市独自の登録介護人制度をつくることが出来ました。
 当時は、何かあるごとに要望書を提出し、話し合いを持ちました。また翌年度の予算に向けては、7月頃から要望書を出し、年度内に10回程度の話し合いを行ったこともありました。行政から見れば、私たちの生活は行政の提供できる福祉サービスでは到底支えられないものでした。その障害当事者が自分たちで介助者を集め、生活を維持している中で行ってきた私たちの活動は、少人数ながらも、行政にとっても無視することのできないものであり、彼らの側も緊張して向かい合わざるをえないものだったと思います。
 私たちの街づくりや生活保障の運動の取り組み方は
 ① 最新情報を得ること。★19
 ② 要望項目について障害当事者の基本的認識を一致させること。
 ③ 決してくじけない、粘り強い交渉を継続すること。
だったと思います。

■2 今までの活動を自立生活センターへ結びつけていく

 私たちが自立生活センターへと活動の展開を図ったのは、街づくりや生活保障の運動が一定の成果を得ることが出来たからです。特に「介助料制度」の充実が重要です。この制度は障害当事者が個々に有効に活用することもできますが、障害当事者の何人かが協力することによって、社会の中のシステムとして介助を獲得・提供できるものになります。また、そのことによって今まで運動でしか集められなかった障害当事者が増えていくのです。
 私たちが自立生活センターを社会の人的資源を有効に配置し機能させるシステムとして位置づけることが、行政との関係でも大事です。特定のグループ(共同体)の中だけの利益を求めているように見られないようにしましょう。不特定の市民に対してサービスを提供することを目指すべきです。このことによって、行政ができなかったり、気づかなかった福祉サービスの必要性を掘り起こすこともできます。そしてそれを行政に問い直すことも大事です。
 また自立生活センターの果たす機能が行政や他団体では果たせないものであることを私たちが認識し、行政に認識させることが必要です。自立生活プログラムやピア・カウンセリングは障害当事者にしかできないことを言っておきましょう。立川市ではピア・カウンセリングはこれから行政が支援する事業として、地域福祉総合計画に含まれています。介助サービスについても行政の提供するホームヘルパーや他の民間団体では障害当事者の自立生活に合ってないことも強調しましょう★20。本来、生活の中心者は障害当事者なのです。生活を行政サービスに合わせる必要はないのです。障害当事者が普通の生活を営むことができることを自立生活センターの機能が立証することです。そのことによって改めて行政のサービスの不備がわかるでしょう。行政にも自らのサービスが行政責任を果たしていない自覚を持ってもらうことです。そのことを前提に関係を作ることが大切です。そうでないと無視されたり、一方的に利用される関係になりがちです。行政の対応についてあきらめないで何度でも同じテーマで話を継続することが良いような気がします。

    自立生活センター・立川への行政助成金(単位千円) ★21

               91年度  92年度  93年度  94年度
 都の財団からの助成(→Ⅱ)
 介助サービス         2,158   9,000   9,000   9,000
 自立生活プログラム      5,067   5,250   5,250   5,250
 立川市                 6,181   8,781  18,287
 東京都・立川市合計      7,223  20,411  21,011  32,547
 立川市内訳
 介助サービス              4,290   4,290   3,000
 自立生活プログラム           1,871   1,670   2,500
 その他                       801  12,797

■Ⅶ■ 法人化★22

■1 公益法人とは何か

 ある任意の団体が法人化を考える場合、営利を目的とするものでない限り、公益法人の設立を目指すことになる。
 わが国の法人に対する法制度は、営利・非営利・公益目的を問わず、民法33条が根拠法となる。民法33条は、「法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス」と規定し、法人の成立は、民法その他の法律の規定によってのみなされるという「法人法定主義」をとっている。そして公益法人については、「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得」(34条)という規定がある。戦後、「学術・技芸」に関する法人が「私立学校法」により「学校法人」に、「祭祀・宗教」に関する公益法人が「宗教法人法」により「宗教法人」に、「慈善」に関する公益法人が「社会福祉事業法」により「社会福祉法人」になり、民法に規定される公益法人はこれら以外の財団法人と社団法人ということになった。公益法人と言う場合には、社会福祉法人・学校法人・宗教法人等を含む場合と、民法34条の「其他公益ニ関スル」法人に限る場合がある。
 当該団体が福祉に関係する場合、まず社会福祉事業法による法人化、つまり「社会福祉法人」になることが考えられる。同法によれば、社会福祉事業を、①第1種社会福祉事業と②第2種社会福祉事業に分け、それぞれのグループに属する事業を限定的に列挙している。社会福祉法人は①・②のいずれかあるいは両方の事業を行う法人である。それに当てはまらない場合には、民法34条上の「財団法人」「社団法人」化を図ることになる。
 法人化した場合にどういうよいことがあるのだろうか。そして、公益法人化する場合どういう要件が必要なのか。

■2 法人化の効果

 (1) 所得税がかからない。法人税・地方税が減免される。
 (2) 寄附を集めやすい(贈与税の免除、所得税の控除があるから)。
 (3) 登記や登録を要するものについて、団体名義での所有が可能になり、相続問題が発   生しない。
 (4) 契約がやりやすい(例えば金融機関から融資を受けるような場合)。
 (5) 社会的な信用度が高い。
 (6) 事業委託を受けられることがある。国の補助金・助成金がもらえる場合がある。
 以上は利点である。だが、実際に利点となるかどうかは場合による。
 (1) はそもそも利益を出さず、組織として税金を払っていないCILには関係がない。
 (2) 寄付金の免税は、その法人が、「特定公益増進法人」の資格を得ているか、「指定寄付」の資格を得ているかのどちらかの場合に限られる。この二つの資格を得るのは簡単ではない。ただし、企業による公益法人への寄付の場合は、以上の資格を得ていない場合でも、損金算入限度内では寄付の損金算入が可能であり、企業にとっての利点はある。いずれにせよ寄付金の集めやすさは、法人化して実際に相当の寄付金が集まることを見込める場合にだけ有利になる。今のところ、各CILの予算に占める寄付金の割合は多くない。
 (3) も何も財産を持たないCILには関係がない。
 (4) も多額のお金を借りたりしなければ、また借りたとしても返すあてがないのであれば、少なくとも融資に関するメリットはあまり影響しない。また、金融機関以外からも資金を借りる方法がないわけではない(→Ⅰ-6を参照)。
 (5) も(法人であることによる)信用がどの程度生ずるのか、またそういう信用がどの程度必要なのかを検討してみる必要がある。
 (6) 事業内容が法律によって規定される。その事業がどういうものか、それを引き受けることがCILの理念にかなっているか、利益があるかを判断する必要がある。また、先にホームヘルプサービス事業の委託について述べたように、法人格を持っていなくても委託される場合がある。また法人化すること自体によって、助成金等を受け取れるわけではない。こうしたことを考慮する必要がある。

 そして法人化することによる制約もまたある。
 (7) 法人の業務は主務官庁の監督に服する(民法67条1項)。
 (8) 主務官庁はいつでも職権をもって法人の業務および財産の状況を検査することがで   きる(民法67条3項)。
 これらはある程度仕方のないことである。このような枠をはめられることで問題が生じないかも検討する必要がある。
 以上ではあまり積極的なことを述べなかったが、それは法人化による利益が期待できる場合がないと主張するものではない。AJU自立の家(社会福祉法人、90年5月)、埼玉障害者自立生活協会(社団法人、91年3月認可)等、法人化しているところがある。また、法人化を目指しているところもある(札幌いちご会、等)。どこに利益を見出して法人化したのか、また法人化を目指しているのか、現実にどのような利点と問題点があるのか、情報を得、検討する必要があると思う。

■3 社会福祉法人

 当該団体が福祉に関係する場合、まず社会福祉事業法による法人化が考えられる。同法は、社会福祉事業を、①第1種社会福祉事業と②第2種社会福祉事業に分け、それぞれのグループに属する事業を限定的に列挙している。

 1.①第1種社会福祉事業について
 社会福祉事業の中で特に重要な内容を持っており、その経営主体は原則として国、地方公共団体または同法による社会福祉法人に限られる。具体的には同法2条2項に列挙されている。
 障害者に関係するのは「身体障害者福祉法にいう身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者福祉ホーム又は身体障害者授産施設を経営する事業」(2条2項3号)、「精神薄弱者福祉法にいう精神薄弱者居宅介護等事業、精神薄弱者短期入所事業又は精神薄弱者地域生活援助事業及び精神薄弱者の更生相談に応ずる事業」(3号の2)、「精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)にいう精神障害者社会復帰施設を経営する事業」(3号の3)である。関係するのは「身体障害者福祉ホーム」(と場合によったら「身体障害者授産施設」)といったあたりだろう。これらを経営するつもりがないのであれば、関係がないということになる。逆にこうした施設を経営する主体になりたいなら、社会福祉法人の法人格を取得しなければならない。

 2.②第2種社会福祉事業について
 ①と比較し、その創意と自由にまかせても弊害の伴うおそれが少ないと考えられるもので、同法2条3項に列挙されている。
 障害者に関係するのは、「身体障害者福祉法にいう身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業又は身体障害者短期入所事業、同法にいう身体障害者福祉センター、補装具製作施設又は視聴覚障害者情報提供施設を経営する事業及び身体障害者の更生相談に応ずる事業」(2条3項3号)「精神薄弱者福祉法にいう精神薄弱者居宅介護等事業、精神薄弱者短期入所事業又は精神薄弱者地域生活援助事業及び精神薄弱者の更生相談に応ずる事業」(3号の2)「精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)にいう精神障害者社会復帰施設を経営する事業」(3号の3)
 以上で、CILの事業とまず関係しそうなのは、「居宅介護等事業」(その中心的なものが「ホームヘルプサービス事業」)だが、まず介助サービスをこの枠の中でやるかどうかという判断が必要である。次に、第2種社会福祉事業については、先にもホームヘルプさ事業について見たように(→Ⅴ)必ずしも社会福祉法人格は必ずしも必要ではない。次にみる民法上の公益法人であっても、また法人格を持っていなくても事業を受託することはできる。ただ、(社会福祉)法人格を持っていた方が事業を受託しやすいことは考えられる。

 3.要件
 「社会福祉法人の所轄庁は、都道府県知事とする。」(28条2項)「社会福祉法人でその行う事業が二以上の都道府県の区域にわたるものにあっては、その所轄庁は、前項の規定にかかわらず、厚生大臣とする。」(28条2項2号)基本的に都道府県知事の認可を受ければよいということである。
 「社会福祉法人は、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない。」(24条)とある。どの程度必要なのか。一律の基準はないようだ。これは、基本的に居住型の施設を経営することを想定しているものと考えられる。在宅福祉に関係する事業では、土地や建物を所有している必要はない。都道府県の考え方によっては、それほどの資産を持っていなくても法人格を取得することが可能かもしれない。
 他に、「社団又は組合の行う事業であつて、社員又は組合員のためにするもの」(2条4項3号)は社会福祉事業に含まれないという規定がある。これについて厚生省社会援護局に問合せたところ、民法上の社団法人であっても、事業自体が不特定多数のために行われているのであれば、第二種社会福祉事業を行うことができるとのことだった。

■2 民法法人

 1.都道府県知事への権限委任
 民法34条にもとづく公益法人は、「公益」を目的とし、非営利の財団または社団で、主務官庁の許可を得なければ設立できない。
 社団法人の設立許可申請は、当該法人の目的事業を所管する行政官庁である主務官庁に必要書類を提出して行い、そこで審査を受けることになる。二つ以上の府省庁の所管事項にわたる事業を行う場合は関係府省庁のすべての許可(いわゆる共管)が必要である。社会福祉であれば厚生省ということになる。
 ただ民法83条2項は、政令により、主務官庁の権限を国の地方支分部局の長、都道府県知事に機関委任することを認めている。
 この条項に基づいて、平成4年5月20日には、「公益法人に係る主務官庁の権限の委任等に関する政令」(政令 161号)が制定され、権限委任の範囲が明らかになった。これによると、当該公益法人の事業が1都道府県の区域に限られる場合、都道府県知事にというように国の地方支分部局長への権限委任も明らかにされている。
 この点について厚生大臣官房総務課に問い合わせてみた。それによれば、この権限委任により、都道府県知事に対する設立許可申請の審査にあたっては知事が原則として絶対的な権限を有し、厚生省は知事の決定を覆すことはできないとのことである。これは都道府県知事の決定がおりさえすれば法人化が可能になるということであり、公益法人の設立の要件の緩和といえる。

2.公益性
 公益法人になるためには、公益を目的とし営利を目的としないことが必要である。ここでいう「公益」とは、ひろく社会全般の利益あるいは不特定多数の者の利益を意味する。
 「公益」つまり不特定多数の者の利益とは具体的にどういうことなのか。具体的に自立生活センターのような団体をイメージして、その団体の会員と「公益」との関連について、厚生省の大臣官房総務課に問い合わせてみた。
 それによれば、会員になれる要件に制限がなければ不特定多数と言え、「公益」にあたるとのことだった。
 財団法人は、資産の運用益などによって事業を行う。したがってかなりの資産がなければ設立できない。この点も厚生省に聞いてみた。それによると、財団法人においてはその設立にあたって3億円が必要となるそうだが、都道府県に権限委任がなされている場合は各都道府県によって異なるとのことである(大臣官房総務課の回答)。必要な金額が一律にきまっているということではないようだ。だが、いずれにせよ財産が必要だ。財団法人を設立できるだけの資産があるのだったら誰も苦労はしていないわけで、財団法人化の可能性は、誰かが多額の寄付をしてくれるといった場合以外は、あまりない。
 他方、社団法人は社員の会費等によって運営される。社団法人設立の方が可能性がある。上の回答に見たように、会員の要件や、事業の対象者が不特定多数であれば、「公益性」には問題がなく、社会福祉事業法に規定される第二種社会福祉事業の委託を受けることもできるようである。
 日本の公益法人の制度、社会福祉法人の制度には様々な問題点がある。条件が不必要に厳しいところがある反面、親睦団体や業者団体のようなものが「公益法人」として認可されたりもしている。社会福祉法人と措置制度は一体のものとして機能している。長期的には、公益法人制度、社会福祉法人制度をどうするか、これが検討課題になる。

■注■

★01 ヒューマンケア協会地域福祉策定委員会『ニード中心の社会政策――自立生活センターが提唱する福祉の構造改革』(94年8月)は、CILへの公的助成について、またⅦで取上げる法人のあり方にも触れて、次のように述べている。
 「…現状では社会福祉法人には予算が配分されている。また、行政や医療の専門家が行なう支援活動には予算の配分が行なわれている。これらを全廃し、個々人に対する支給に一元化するのでないとすれば、行政や社会福祉法人に対しては支出するが、それ以外には支出しないということである。これは全く不合理である。従来行政や専門家が担当してきた(担当していることになりながら、実際のところはしきれなかった)部分をこれらの組織が担当するのだから、当然これらの組織の運営に対しても公的な支出が行なわれるべきである。
 では、将来的には個人に対する給付に一元化するのか、それとも一部については公的な支出・助成を行なった方がよいのか。これは今後とも検討すべき課題である。だが、例えば、利用者の数は地域によって異なり、また事務所の運営費なども地域によって変わってくる。これに応じて個々人に対する給付を加減するよりも、コーディネイター等の人件費、事務所等の賃貸料等、固定費用(の一部)については、その組織の行なう事業に応じて直接公的な支出を行なう方が合理的とも考えられる。
 例えば、結成後一定期間経過した組織は政府に助成金の申請ができる(ニュージーランドでは1年)ようにし、政府は、利用量によってランク付けし助成額を決めるといった方法が考えられる。いかなる組織も堕落する可能性は十二分にある。実績の審査を担当する部門において、毎年のサービス実績や利用者の評価などが検討される。同部門は利用者からのクレームの多い法人、団体の資格取り消しも行う。実績の認定、資格取り消し共に公開審査とする。
 ただ、どこでもすぐにこうした民間組織が設立され、必要な範囲を覆うことは難しいだろう。そのような場合に、何も行なわないことがあってはならない。その部分は政府が責任を持たねばならない。しかしそれは、民間組織の誕生・発展を妨げるようなものであってはならない。…」(p.24)
 この『ニード中心の社会政策』は、「福祉政策」全般について積極的な対案の提出を試みたものであり、是非御検討いだたきたい。(88p.、1000円、ヒューマンケア協会:〒192 八王子市寺町23 0426-23-3911 fax:0426-23-7348、千葉大学社会学研究室の報告書との合本版もある→★06)
★02 「サービス」供給のあり方に対する国の見方がかなり大きく変化してきている。その変化とは、国あるいは自治体が直接に事業を運営するか、そうでなければ社会福祉法人が行ない、この法人に対して措置費を支給するという形から、もっと多様な供給形態を認め、それに対して一定の助成を行なうという形へという変化である。少し広い範囲で、国の「住民参加型の自主的福祉組織」に対する態度を確認しておく。
 90年8月の社会福祉関係八法の改正(老人福祉法等の一部改正)の中で「社会事業法」も改正された。旧社会事業法(51年制定)の第3条では「援護育成又は更生の措置を要する者に対し」だったものが、新社会事業法で「福祉サービスを必要とする者」と変わった。これがすぐに何かをもたらすのでないにしても、当事者にとっての必要が最初にあることを示した意味はある。また在宅福祉サービスが「第二種社会福祉事業」に位置づけられた(→Ⅶ)。ただ、社会福祉法人が事業主体だという基本は基本的に変化していない。また措置費を利用者本人にではなく法人に降ろすという形も変わらない。これらの変革は未解決の課題として残っている。ひとまず法改正以降の現実の動きは、法人・措置費の体系を動かさないで、というよりさしあたりは動かせないので(ただ、今後それが変化する可能性もあると思う)、様々な計画・指針等の中で、法人以外のものも認め援助していくという方向をとった。93年だけをとっても以下のようなものがある。
 93年3月の障害者対策推進本部「障害者対策に関する新長期計画――全員参加の社会づくりをめざして」の第二「分野別施策…」では、「当事者である障害者自身の選択の幅を広げる等障害者本人の立場に立った施策の展開に努めること」(5「福祉」)とある。
 ついで、93年4月の厚生省告示(第117号) 「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」でも「住民参加の自主的福祉組織による福祉活動…が円滑かつ継続的に行なえるよう…支援に努める」と記されている。
 さらに、93年7月、中央社会福祉審議会地域福祉専門分科会の意見具申「ボランティア活動の中長期的な振興方策について」は、「社会福祉の基礎的需要については公的なサービスが対応することを前提しつつ、その質的な充実を図る上で、ボランティアの役割が大きい。…公的施策の代替やその不備を埋めるというのではなく、自律的な市民の目で、多様なニーズにきめ細かく弾力的に対応し、生活のアメニティを確保するものである」としつつ、Ⅳ「振興の重点課題」の5「住民参加型福祉サービス」で「この活動は、…住民の福祉活動への参加を容易にする有力な選択肢であり、福祉コミュニティを育むものとして、また、住民の福祉ニーズを受け止める供給組織として、一層の発展が期待されるとこであり、その自発性を尊重しつつ支援に努める必要がある」と述べ、その1)「地域福祉基金などの活用」は「地域福祉基金や共同募金等も活用しながら、創意工夫をこらした支援に努める必要がある」となっている。
 こうした動きを国のやることは本質的には何も変わっていないと言って見過ごすことはできない。また、これを「公的責任の放棄」という論法で否定するのも外れだ。障害をもつ当事者の運動が主張してきたのは、当事者性の確保だった。とすれば、当事者組織が主体となってサービス自体を供給するというあり方は積極的に認められるべきである(『季刊福祉労働』55号の特集「挑戦、もう一つの供給主体、もう一つの場」等参照)。
★03 このあたりにもっとも詳しいのは、本文に記したように「全国公的介護保障要求者組合」だが、他に立岩「ホームヘルプ事業はもっと使える(自立生活運動の現在・10)」(『福祉労働』64号、1994年9月)もある。また金山信一「介助者をどこに求めるか――ホームヘルプサービスとの比較」では、インタヴュー結果に基づき、CILの提供する介助サービスとホームヘルプサービスとの比較が行なわれている(千葉大学文学部社会学研究室『障害者という場所――自立生活から社会を見る』、1994年5月、第4章)。この千葉大学の報告書は他の部分もなかなか使える報告書だと思う。会場でも販売しているので手にとってみて下さい(1200円、ヒューマンケア協会の『ニード中心の社会政策』――合本版でのタイトルは『地域福祉計画』となっているが『ニード中心の…』が正しい――との合本版1500円、連絡はファックス043-290-2294(社会学研究室)か、電話・ファックス0422-45-2947(立岩)へ)。
★04 東京都の制度については、立岩「東京都重度脳性麻痺者等介護人派遣事業(自立生活運動の現在・5)」(『福祉労働』59号、1993年6月)が紹介している。また、小山雄一郎「公的介助保障の現状と展望」(千葉大報告書→★03、第5章)p.105、 『ニード中心の社会政策』(→★01)p.70に74年度から93年度までの東京都・大阪市・札幌市・神戸市の派遣事業の月回数(時間数)・単価・月額の推移が掲載されている。
★05 立岩「生活保護他人介護加算(自立生活運動の現在・6)」(『福祉労働』60号、1993年9月)で支給額の推移等を含め紹介している。他に上掲小山報告p.106、 『ニード中心の社会政策』p.69に、75年度から93年度までの障害者関係の加算額の推移が掲載されている。
★06 以下は、立岩「東京都地域福祉振興基金による助成事業(自立生活運動の現在・3)」(『福祉労働』57号、1992年12月)がもとになっているが、92~94年度について新しいデータが補充されている。次の注に記す検討委員会の報告、助成事業の実務を行う東京都社会福祉振興財団発行の『助成事業のごあんない』『地域福祉振興事業助成金交付実施要綱』(各年度)広報紙『地域福祉の芽』(各団体の活動の紹介等)と財団への問合せにより得た情報を用いた。他に、この助成事業について紹介し、立川・町田・八王子のCILに対する助成を年度別にまとめたものとして梁井健史・原田康行「自立生活センターに対する行政の支援体制」(千葉大報告書→★03、第6章)がある。
★07 東京都では83年、増える福祉サービスの需要にどう答えていくのか、都の社会福祉審議会に対して諮問がなされ、86年に答申が出された。その中で従来の制度になじみにくいものを育てていく必要があること、それを基金からの助成というかたちで行うのが適当であることが指摘された。これを受け、地方自治法第 241条第1項に基づき「東京都地域福祉振興基金条例」(87年4月施行)が制定された。この条例制定後の同年5月、「東京都地域福祉推進計画等検討委員会」(三浦文夫会長)が助成のあり方等について検討するよう東京都福祉局長から依頼を受け、同年10月に「中間のまとめ」を報告、翌88年4月に『東京都地域福祉振興基金による助成のあり方について』を報告した。
★08 なお、『あり方』の5「公私協働の方策」では「地域に根ざしたサービスとして安定した運営が確保されるためには、地域住民の連携と参加が極めて大切」とし、「都民の自発的負担としての参加を誘導し、本基金を公私が協働して育成していくことを、今後の基金運用の中で引続き検討するよう望みたい」とあるが、現状では全額が都からの補助金によっている。
★09 都の出納長室が基金原資の管理・運用を行う(運用益金は、東京都一般会計歳入歳出予算に計上され、基金に繰り入れられ、その全部又は一部を事業経費に充てる)。また外部の委員で構成される「基金運営委員会」(仲村優一委員長)は都から審議依頼を受け、基金運営に関する基本的事項の審議決定、助成計画の審議決定を行い、都に報告する。この委員会の運営を行うのは都の福祉局である(この事業の担当部署は福祉部地域福祉課)。
 助成の実務を行う広域的民間福祉団体として、73年に設立された財団法人「東京都社会福祉振興財団」が指定された。ここで団体からの助成申請受付、助成計画案の作成、助成金の団体への交付、実績報告のとりまとめ、事業報告書の作成・報告を行う。またこの中に置かれる外部の委員からなる「地域福祉振興事業審査委員会」(前田大作委員長)が申請の審査、実績の評価を行う。なお東京都の担当部署は、東京都福祉局福祉部地域福祉課となっている(電話03-5320-4071)。
★10 ②毎日食事サービスは調理する場所の確保が難しいこともあって、件数としては伸び悩みという状況のようだ。基準額は調理人人件費380万円、事業費450万円、開始に必要な機器、配達用自動車購入に対して各200万円。94年度17件、約1億円。
 ⑤情報システムの開発・ネットワーク。現在までのところ社協・公社に対する助成となっており、91年度は社協に3件。パソコン通信を利用する障害者の提案で、市の社会福祉協議会が福祉情報+αの情報提供サービスを開始した事例もあるという。研究、開発経費は300万円、ネットワーク等に要する機器設備費は350万円が基準額。94年度は1件だけで、予算は100万円。
 ⑥地域づくり活動は、福祉啓発活動や体験学習活動などの事業に対して。91年度に初めて2件の助成が行われた(いずれも純民間団体)。基準額200万円。94年度は0件。
 ⑦調査・研究への助成は、基本的に団体が具体的なサービス提供プログラムを作る上での指針作成のための調査に限っており、ニード調査や既に開始されているサービスについての実態調査等は受けていない。例えば東京都精神障害者家族会連合会による調査は、世田谷区精神障害者家族会による④の事業としての精神障害者地域生活プログラムに生かされている。調査・研究事業のリストが財団にある。基準額200万円。94年度は2件(純民間団体)、300万円。
 ⑧福祉組織化活動は社協対象。94年度32件、約1.4億円。基準額は人件費500万円、事業費200万円、助成率は3分の2。
 ⑨91年度から「地域福祉活動計画(住民活動計画)の策定」への助成が開始された。「社会福祉協議会等が自らの活動の目的や目標などを設定し、実践するための地域福祉活動計画(住民活動計画)の策定に対する経費を助成する」というもの。基準額 300万円。ヒューマンケア協会は、91~93年度にかけこの項目で助成を受けた。その結果まとめられたものが、★01に記した『ニード中心の社会政策』である。94年度は34件(社協31、純民間団体3)、予算約6650万円。
 ⑩その他サービス提供事業。例えば「台東区身障児者を守る父母の会」が設立した「生活ホーム」(重度の身体障害を持つ人が親元から数日間離れて宿泊体験をする)の運営に対する助成(91年度)、等。助成額は個々の事業計画に基づき審査される。94年度は29件(1件が公社等、他は純民間団体)、予算は約1.4億円。
★11 一つの問題は、現在「先駆的、開拓的、実験的」であるものが、将来当然行われるものとなった場合にどうなるかである。『あり方』には、「本基金の役割の本旨は、先駆的、開拓的、実験的プログラムを発掘し、それらが在宅福祉サービスの一翼を担うものとして、真に有効な事業と成り得るかを検証することを保障していくことにある」から、「一定の検証がなされた後どうするかについては、本来、在宅福祉サービス事業の主体的役割は、区市町村にあることからいって、地元区市町村の判断によることとなろうが、それらの事業が、基金の助成に代わる継続的支援が得られるよう、都と関係区市町村との間で十分協議し、具体的方策を講ずることを要望したい」となっている。各区市町村の施策が整っていない現状で、当面は既に行われている助成を継続し、加えて新規の助成を受け入れることになろう。これまでのところ助成額年は年々増加しているが、将来財政上の問題が生じることはありうる。この助成自体が実験的なものだから、どのような形態に落ち着くかは未知数だ。
 財団に対しては各県や政令指定都市等からかなりの問い合せ等があるらしいが、結局財政上の問題で、同じようなものを実施というわけには簡単にいかないでいるらしい。だが、実施規模はともかくとしても、法人格を持たない団体に対しても助成していること、自立生活プログラムといった活動に対しても助成を行っていること、運営に最も必要な人件費を助成しており、手続きがさほど煩雑ではないこと、これらは評価すべきだし、参考にできると考える。
★12 以下は立岩「当事者組織にお金は渡るか→地域福祉振興基金・他(自立生活運動の現在・8)」(『福祉労働』62号、1994年3月)を利用。
★13 梁井・井上の報告(→★06)に各自治体の対応が報告されている。
★14 これは1979年から行われてきた「障害者社会参加促進事業」(「障害者社会参加促進事業の実施について」、1979年6月11日社更68)を引き継ぐものである。1992年9月29日に厚生省社会局長通知「障害者の明るいくらし」促進事業(障害者社会参加促進事業)の実施について」(社更239)が出され、翌93年4月1日からの実施が発表された。本文で使用するのはこの後、幾回かあった改正後の93年の通知である。
★15 「社会福祉関係主管課長会議資料」(94年3月2日、社会・援護局更生課)p.7 による。
★16 以下★03に記した立岩の報告を使用。
★17 委託先についてその変化の概略をみておく。民間団体への委託が可能になったのは、82年からである。この年の要綱では次のようである。
 「事業の実施主体は、市町村(特別区を含む。)とする。ただし、やむを得ない理由がある場合には、市町村は派遣世帯、サービス内容及び費用負担区分の決定を除きこの事業の一部を当該市町村社会福祉協議会等に依託することができるものとする。」(82年社更156号)
 89年以降委託先はさらに拡大される。90年の「要綱」では次のようになっている。
 「事業の実施主体は、市町村とし、その責任の下にサービスを提供するものとする。この場合において、市町村は、対象者、ホームヘルパーにより提供されるサービスの内容及び費用負担区分の決定を除きこの事業の一部を市町村社会福祉協議会、身体障害者療護施設等を経営する社会福祉法人及び昭和63年9月16日老福第27号、社更第187号老人保健福祉部長、社会局長連名通知による「在宅介護サービスガイドライン」の内容を満たす民間事業者等に委託することができるものとする。」(90年12月28日 社更255号「身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱」)
★18 「別に定める要件に該当する介護福祉士」について付け加えると、「身体障害者ホームヘルプサービス事業の依託について」(92年10月13日、社援更59号)という通知に次のような基準が記されている。「市(区)町村長が、次の事項のいずれにも該当する者であって、依託先として適当と認定した者とする。(1) 介護福祉士資格を有する者であること。(2) 介護業務に十分な経験(十年以上)を有する者であること。なお、介護業務については、介護福祉士受験資格要件にいう介護業務に準ずることとする。」個人も委託先となるということである。この条項も使える場合があるかもしれない。
★19 普通はなかなか手に入らないものも含む各種情報を提供する強力な機関として「障害者総合情報ネットーワーク(BEGIN)」が設立され活発な活動を開始している(電話・ファックス03-5228-3484)。紹介として立岩「障害者総合情報ネットワーク・他(自立生活運動の現在・7)」(『福祉労働』61号、1993年12月)等。
★20 92年度に全国社会福祉協議会が把握した「住民参加型在宅福祉サービス団体」の総数は452団体だが、「重介護」まで行なっているのは、回答数345団体のうち75団体、以前より増えてはいるのだが21.7%、「めざすサービスの程度」としても「重介護サービスまで対応」「看護サービスまで対応」は23.5%、9.6%にすぎない。重度の障害を持つ人にとってこれでは役に立たない。またホームヘルプサービスの現状は知っての通りである。それに対して、CILは、当然、重度の障害を持つ人に対する身辺介助を行っているし、また夜間・休日にも対応している。また、上述の全社協調査では介助者のうち96.2%が女性であるのに対して、千葉大学社会学研究室がCILに対して行った調査によれば、介助者の40.6%男性であるという重要な違いもある(石井雅章・井上智紀・寺本晃久「CILの現状――質問紙による調査から」、千葉大報告書→★03、第2章)。こうした事実を積極的にアピールしていく必要があると思う。
★21 その他、町田ヒューマンネットワークは93年度に町田市から200万円(予算全体の5%)。ヒューマンケア協会は八王子市から89~91年度にかけて625000円(同3・3・2%)、92・93年度は 240万円(同7・7%)の助成を受けている(以上、梁井・原田の報告→★06)。他にも、HANDS世田谷が世田谷区から 150万円、社会福祉協議会から10万円、生活援助為センターが保谷市から 618万円など(いずれも92年度より)。
★22 以下参考文献として、『日本の公益法人――全国アンケート調査による現状分析』(92年、笹川平和財団、非売品、電話03-3769-2081)、森泉章『公益法人の研究』(77年、勁草書房)『公益法人の現状と理論』(82年、勁草書房)、森泉章編『公益法人の法務』、小川政亮『社会福祉事業法制』、『法学セミナー』94年10月号(「特別企画:求められるボランティア」)等を用いた。


REV: 20161031
自立生活センター  ◇立岩 真也
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