地上デジタル放送を視聴できる「格安」受信機(チューナー)が、来春にも店頭に登場しそうだ。中心部品のシステムLSI(大規模集積回路)の生産コストを半分にする技術をNECエレクトロニクスが開発し、今秋から国内のチューナーメーカーに供給する。現在、量販店で主流のチューナーは1万数千円するが、5千円程度での販売を見込んでいる。
地上波のテレビ放送は11年7月までにすべてデジタル化される予定。対応テレビへの買い替えなどは、生活保護世帯を除き、視聴者の自己負担が原則となっている。総務省は5千円程度の低価格チューナーの早期開発、発売を電機メーカーなどに求めてきた。
NECエレのLSIは、受信したデジタル信号を調整する部品と、信号を画像や音声に変換する部品を一体化。回路上の部品を半分に減らし、生産コストを抑えた。アンテナメーカーやパソコン周辺機器メーカーなどが、NECエレから部品供給を受けて低価格チューナー市場に参入する予定だ。「店頭で5千円での販売が十分可能だ」(NECエレ)という。(湯地正裕)
◆「蟹工船」が着く港 週のはじめに考える
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008072002000091.html
2008年7月20日
「貧困」という言葉が二十一世紀のいまになって、頻繁に目につくようになりました。政治は国民の生活を守る責務がある。あらためて思い起こすべきときです。
「あれから八十年近く。いまさらどうしたことか」
小説「蟹(かに)工船」が再びブームと聞いて、作者の小林多喜二は草葉の陰で驚いているでしょう。
不安定な雇用関係、屈辱的な取り扱い、働いても食えない若者らが、昭和初期に発表されたプロレタリア文学の傑作をわが事と受けとっているようです。
厳冬のオホーツク海。カニを捕り缶詰に加工する船での出稼ぎ労働者の過酷な日々。我慢も限界を超えストライキを断行するが…。
「安全網」にも穴が
派遣労働者、パート、アルバイトなど、昨年の非正規雇用者は全雇用者の35・5%と過去最高、生活保護世帯はこの十年で五割増え百万の大台に乗りました。
大きな原因は、「小泉改革」で急速に進んだ規制緩和です。
一九九〇年代のバブル崩壊後、企業は業績回復のために人件費削減に重点を置きます。これに呼応した政府は法律を改定し、結果として低賃金、いつでもクビを切れる派遣労働を可能にしました。
やがて、所得格差拡大という副作用を引き起こし、いま若者を含む「貧困」層の増加となって立ち現れています。
同時に「小さな政府」志向は、雇用、社会保険、公的扶助の三層のセーフティーネット(安全網)に大きな穴をあけました。生活保護を拒否されて餓死などのニュースには言葉を失います。
「自己責任」ではなく、政治・経済の仕組みの犠牲でしょう。
なぜこんなことに。九一年の東西冷戦終結が大きな転機です。
市場原理主義が暴走
それ以前、資本主義の国々は共産主義の台頭を恐れ、労働者保護や社会福祉、男女平等などの分野に力を入れました。
日本では、この“修正資本主義”が八〇年代に「一億総中流」を実現し、経済の安定、社会の安定をもたらしたのです。
ところが冷戦の終結で、資本主義は独り勝ちと勘違いして野放図に。市場の役割を重視する米国流の「市場原理主義」、いわゆるグローバル化の登場です。
経済活動のすべてを資本の論理に任せれば、弱肉強食の世界になるのは必然です。この結果、貧富の格差拡大は地球のあらゆるところへ広がっています。
「そして、彼等は、立ち上がった。-もう一度!」
「蟹工船」の結びには奇妙な明るさが感じられます。
労働者は再び団結して、抑圧者をやっつけて、労働者の天下をつくり上げる…。作者は自らが志向した共産主義を念頭に置いていたに違いありません。
しかし、共産主義国家は独裁政治や経済の非能率でほぼ自滅しました。いまや万国の労働者の理想郷にはなり得ません。
となれば、資本主義の暴走を食い止め、国民生活を破壊し、貧困に陥れないよう抑制の利いたものにする必要があります。先のサミットに期待された課題です。
市場原理主義を象徴するのが投機マネー。実際の需要を超えて出回り原油や食料の高騰を招いて、貧しい国々や人々を痛打しています。監視の仕組みなど国際的な処方せんが必要ですが、まとめることができませんでした。
そうではあっても、政府は国内での対策に手をこまぬいているわけにはいきません。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(憲法二五条)
国家は国民のこの権利を保障する責務を負っています。
企業の競争力を最優先にして、最低限の生活ができない人たちを放置する政治は本末転倒です。
「人間疎外」の仕組みは、国全体の力を衰弱させるはずです。
政府・与党はようやく日雇い派遣の原則禁止に着手しました。「生活者重視」「生活第一」…。各政党とも似たようなスローガンを掲げています。
「貧困」直視し対策を
問題は政策の中身と実行です。格差是正という抽象的な課題でなく、安全網の再構築、安定した労働環境など具体策が必要です。
特に重視すべきは貧困対策です。現状を把握し真正面から向き合う必要があります。貧困層の生活保障なくして、職業訓練も再雇用の機会も確保できません。
かつて、この国は大銀行などの不良債権処理に、公的資金を十兆円超つぎ込みました。再び景気後退は必至。いまは国民生活を守る政策に力を入れるときです。
平成版「蟹工船」が安心して着岸できる港を築くこと。政治の喫緊の仕事です。
◆最低賃金 貧困解消への出発点だ(7月20日)
健康で文化的な生活を営むためには、最低限、どれだけの賃金が必要か-。
厚生労働省の審議会が今月中にも、最低賃金の引き上げ額の目安を決める。「生活保護施策との整合性に配慮する」とした改正最低賃金法が施行されてから初の審議会だ。
最低賃金はどうあるべきなのか、突っ込んだ議論を重ねてほしい。
最低賃金は厚労省の審議会の目安決定を受け、都道府県審議会がそれぞれ決める。この十年来、時給五円以下の引き上げで推移してきたが、昨年は景気回復などもあって平均十四円の引き上げとなった。
それでも現行は、全国平均で時給六百八十七円(道内は六百五十四円)にすぎない。フルタイムで働いたとしても、月収に換算すると約十二万円で、高卒初任給の平均より四万円ほども低い。
最低賃金が生活保護費を下回る地域が北海道など九都道府県もあり、勤労意欲の低下につながっているとの指摘もある。
二〇〇六年には年収二百万円以下の労働者が一千万人を突破した。ワーキングプア(働く貧困層)が増大し、公的保険や年金など社会保障制度にも影を落としつつある。
最低賃金の是正は喫緊の課題だ。政府の「成長力底上げ戦略推進円卓会議」に参加する労使代表も先月、五年間かけて、最低賃金を小規模事業所の高卒初任給の最低水準にまで引き上げることで合意した。
だが、合意内容には問題も残る。そもそも、引き上げ額を高卒初任給のうち最も低い水準に合わせることが妥当だったのか。
従業員が百人未満の事業所にあてはめると、時給は七百五十五円で、年収にすると百五十九万円だ。これでは貧困の解消につながらない。
厚労省の審議会でも、経営者側は原材料費の高騰などを理由に大幅な引き上げには反対の構えだ。
たしかに、中小・零細企業の経営が厳しさを増していることは理解できる。とは言え、最低賃金を抑制しワーキングプアの現状を黙認することは、もはや許されまい。
改正最賃法が施行され、円卓会議が中期目標を示した今年、審議会はただ単年の引き上げ額を協議するだけでは済まないはずだ。賃金が持つ本来の意味を確かめ、社会の安定につなげねばならない。
賃金の底上げは、労働者の企業定着意識を向上させ、企業の生産性向上にも寄与する。内需拡大にも欠かせない。経営者側にはそうした視点を持つ必要もある。
国にも中小・零細企業の振興策を強化し、最低賃金の増額を支援することが求められよう。
◆生活保護相談後に申請した人、大阪・浪速区は21%
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200807210052.html
2008年7月22日
全国各市と東京23区の生活保護窓口へ相談に訪れた人のうち、生活保護の申請をした割合(申請率)は06年度、45%程度にとどまっていた。朝日新聞社が情報公開法に基づき厚生労働省から資料を入手した。生活保護の窓口で申請をさせない違法な「水際作戦」の広がりをうかがわせる。国が社会保障費の抑制策を進めるなか、低所得者層を救えない一因と指摘されていた。(永田豊隆、清川卓史)
生活保護制度では、福祉事務所の相談窓口は、住民から保護申請を受け付けた後、収入や資産などを調査して保護を開始するかどうか決める。本人の意思に反して申請を受け付けない行為は生活保護法違反となる。
申請率は05年度まで、基となる相談数の集計方法が市区の福祉事務所によってまちまちだった。06年度からは、相談に来た世帯の数を基に統一され、申請率が正確に出るようになった。集計方法を誤り、再集計不能の京都市を除く全市区分を朝日新聞社が分析した。
06年度は34万8276世帯が相談に訪れ、うち15万5766世帯が申請。申請率は全国平均で44.7%だった。政令指定市は41.2%、それ以外は46.7%で、都市部の方が低い傾向にあった。
指定市で最も低かったのは、北九州市の30.6%。06年当時、申請率の上限など数値目標を設ける保護抑制策が批判されていた。市は「親族による扶養など生活保護以外の指導に重点を置いた結果の(低い)数値。『不適切』との指摘を受け止め、改善を始めている」という。
指定市での最高は千葉市の70.5%だった。市によると、福祉全般に通じたOB職員を窓口に配置し、必要な場合は保護につなげているという。
■同じ市のなかでも格差■
同じ市のなかでも格差は大きい。保護世帯が全国一多い大阪市では、24区のうち北区の72.4%から浪速区の21.8%まで50ポイント以上の差があった。東京23区でも、足立、板橋、世田谷区は区内の福祉事務所間でも30ポイント以上の開きがあった。
05、06年に北九州市で保護申請を断られた男性が相次いで孤独死するなど、窓口で申請書を渡さず相談扱いにとどめる「水際作戦」が法律家や福祉団体から批判されるようになった。厚労省も一部自治体への監査で06年度当時の相談記録を調べたところ、「申請意思を確認していないなど申請権の侵害が疑われるケースもあった」という。
政府は、生活保護基準以下の低所得者のうち、実際に保護を受けている割合(捕捉率)を現在調べていない。しかし、複数の研究者らは15~20%程度と推計しており、欧米諸国と比べて低いとされている。
厚労省は今年4月、保護申請の意思を確認し、意思があれば速やかに申請用紙を交付するよう通知。自治体への監査でも、窓口対応の記録の点検を強化した。
厚労省保護課は「相談したうえで生活保護以外の方法で解決するケースもあるし、対応が丁寧な福祉事務所に多くの相談が集まることもあり得るので、今回の申請率が妥当かどうかは一概に評価できない。ただ、06年度当時、申請意思の確認が不十分な例があった可能性もあり、今は徹底を図っている」としている。
◇
〈生活保護制度〉 国が決めた「最低生活費」を世帯収入が下回る時、その差額が支給される。自治体の福祉事務所は保護申請を受けると、預貯金などの資産、働く能力、親族の援助などを調査し、保護の要否を判定する。申請を受ければ、必ず調査と要否判定をしなければならない。最低生活費は居住地や世帯構成で異なるが、大阪市や東京23区に住む3人世帯(33歳、29歳、4歳)の場合、家賃や医療費分を除いて約16万7千円。
◆中国残留孤児:終わらぬ苦悩 30人を写真家・宗景さんと取材 /大阪
http://mainichi.jp/area/kochi/news/20080722ddlk39040317000c.html
◇国の謝罪、真の賠償を--高齢化で生活不安も解消されず
中国残留孤児に対する新しい支援策が今年4月、始まった。老齢基礎年金の満額支給や給付金(単身で月最大8万円)の支給などが柱で、生活保護を受ける人がほとんどだった孤児らの生活は、経済的には上向いた。だが、国が孤児の収入を調べ給付金から一部を差し引く「収入認定」の制度は残り、「国の監視だ」と反発する声も強い。孤児が長期間帰国できなかった責任に関し、国からの公式な謝罪もないままで、問題は「過去のもの」ではない。【樋口岳大】
兵庫県尼崎市の阪神支局に勤務する私は、06年春から、地元の写真家、宗景正(むねかげただし)さん(61)とともに、兵庫や大阪、京都などに住む孤児約30人の自宅を訪ねた。終戦直後の混乱で肉親と死別するなど壮絶な経験を話す孤児たちは、ほとんど日本語が話せず、経済的にも追い詰められ、社会から孤立していた。
取材を始めて半年あまり経った06年12月には、兵庫県の孤児たちが国に損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁が「国が孤児の早期帰国を妨げ、帰国後も十分な自立支援を怠った」と判断、国の責任を認めて賠償を命じた。
これを機に、国は新たな支援策作りへ一気にかじを切った。孤児らの高齢化が進む中、07年7月には全国の孤児代表が与党プロジェクトチームが示した支援策受け入れを決めたが、謝罪がないままの「幕引き」に、不満もくすぶっている。
兵庫原告団長だった初田三雄さん(65)=兵庫県伊丹市=は、支援策開始後も、給付金を受給せず、アルミ缶拾いを続けている。国の謝罪がないままにできた支援策に納得できず、「自分の尊厳とお金(給付金)を交換したくない」との思いからだ。
初田さんは、文化大革命期には「日本のスパイ」として9カ月拘禁され、糾弾された。極貧の農村へ強制移住させられ、残飯を口にして生き延びた。87年に帰国後も、低賃金の肉体労働にしか就けず、定年後はアルミ缶拾いをしてきた。早朝の暗いうちから団地などを回って缶を集め、リサイクル工場へ運ぶ。重さ30キロにもなる缶を入れた袋を荷台に積み、自転車のペダルを踏みしめると、以前に脳梗塞(こうそく)で倒れた体は悲鳴を上げる。だが、缶拾いをやめるつもりはない。「国が孤児を遺棄した責任を認めて謝罪し、真の『賠償』を勝ち取るまで闘い続ける」
同県宝塚市の山田春木さん(65)は、中国では金属分析の研究者だったが、帰国後は専門知識を生かせる仕事には就けず、ゴルフ場の作業員などとして働いた。日本語が話せず、職場では何度もばかにされた。狭心症を抱え、発作におびえながらも働くしかなかった。無理がたたり、昨年12月には小脳出血で倒れた。後遺症が残り、働けなくなった。
やっと受け取れるようになった厚生年金も、その約7割相当額が給付金から差し引かれる。山田さんは「厚生年金は命を削って働いた証。給付金が減額されることは、命がけの努力を否定するものだ」と訴える。
生活不安も解消されていない。高齢になった孤児たちは、日本語が不自由なまま、医療や介護面で不安を抱えている。4月からはそうした相談を受け付ける「支援・相談員」が自治体に配置されることになったが、配置が遅れたり、十分に機能していないケースも目立つ。
残留孤児問題は終わっていない。国や自治体は、これから孤児たちにどう向き合っていくのか。戦争や国策で人生を奪われた孤児とその子や孫たちを、日本社会はどう受け入れていくのか。孤児たちは問い続ける。
毎日新聞 2008年7月22日 地方版
◆地方の税財源強化など求める
京都市など17政令都市 共同提案まとめ
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008072200176&genre=A2&area=K00
京都市など17の政令指定都市は22日、来年度政府予算の編成に向けた共同提案をまとめた。道路特定財源の一般財源化に向けて地方の税財源強化を求めるほか、新たな大都市制度の創設を要望する。
共同提案は地方分権をテーマに毎年提出しており、今年は重点提案八項目を含む計36項目をまとめ、今月下旬から各政党や省庁に働き掛ける。
新規の重点提案は道路財源に関する1項目。国が国道整備に全額道路財源を充てているのに対し、道府県道や市町村道の整備は別の分野から財源を回しており配分が不十分として、一般財源化を地方の財源の拡充と裁量拡大につなげるよう訴えている。
このほか、生活保護制度では就労支援を強化した有期保護制度の新設など抜本的な改革を主張している。道府県との二重行政をなくし、国や広域自治体との役割分担を明確にした新たな大都市制度の創設も盛り込んだ。
◆堺のアパートで69歳男性が変死 胸などに刺し傷
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080722/crm0807222346058-n1.htm
2008.7.22
男性の遺体が見つかった堺市北区のアパート=22日午後11時30分男性の遺体が見つかった堺市北区のアパート=22日午後11時30分
22日午後3時5分ごろ、堺市北区百舌鳥本町の文化住宅2階の無職、金沢尚六さん(69)の部屋で、金沢さんがベッドの上で血を流しているのを、訪問してきたヘルパーの女性(25)が発見、119番した。救急隊が駆けつけたが金沢さんはすでに死亡していた。胸などに数カ所の刺し傷があり、府警捜査1課と北堺署は事件と自殺の両面で捜査。司法解剖して死因を調べる。
調べでは、金沢さんはTシャツとトレーナーのズボン姿で、6畳間のベッドにあおむけに倒れていた。刺し傷は服の上からで、腕にも傷があったという。遺体の近くに刃物はなかった。死後数日経過しているとみられる。府警によると、金澤さんは一人暮らしで生活保護を受けていた。遺体発見時、玄関は施錠されておらず、物色の跡はなかったという。
◆年金「最低保障額」を検討 「五つの安心プラン」概要
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200807230067.html
'08/7/23
政府が社会保障分野の緊急対策として今月末に公表を予定している「五つの安心プラン」の概要が二十二日、明らかになった。一人暮らしの高齢女性らが生活に困らない最低限の金額を確保する基礎年金の「最低保障額」導入の検討や認定こども園の補助金の申請手続きの一本化、住居がなく不安定な仕事を続ける若者らへの自立支援策などを盛り込んだ。
厚生労働省の信頼回復に向けた抜本的な組織改革は、外部の有識者らで検討会議を発足し、年内にも具体策をまとめる方向だ。
関係省庁間で調整のうえ、政府は二十九日にもプランを正式決定し、二〇〇九年度予算の概算要求に反映させる。
高齢者政策は、最低保障年金のほか、定年後働き続けると年金が減額される在職老齢年金制度の見直しを検討。さらに勤労意欲のある人が年齢に関係なく働けるよう、高齢者を多く雇用する事業主への助成金などの支援拡充や税制優遇措置の創設を検討する。
幼稚園と保育園の機能を併せ持つ認定こども園は申請手続きなどの一本化で、所管が厚労、文部科学両省に分かれる二重行政の弊害解消を目指す。子どもが多い世帯を対象にした保育園の保護者負担減免なども盛り込む。
インターネットカフェで寝泊まりしながら生活するネットカフェ難民などを念頭に非正規雇用対策として「就労・生活・住宅に係る総合的な支援の充実」と明記。住所不定だと、正規社員として採用されるのは難しいことから、アパートを借りることができるよう敷金や礼金の費用を貸し付けることなどが検討されるとみられる。
医療では医師不足対策として、大学医学部の具体的な増員計画の検討などに取り組む。
◆地デジ移行/あと3年なのにこれでは
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2008/07/20080723s01.htm
2011年の7月24日、テレビの地上アナログ放送が終了する。デジタル放送への完全移行だ。
地デジ対応ではない今までの普通のテレビは、全く何も映らなくなる。このことはひところに比べ、だいぶ知られてきたが、「あと3年」という理解はまだまだ浸透していない。
新しいテレビを買えない場合、どうしたらいいか。テレビを買い替えたとしても、地デジを受信できない地域が残りそうだというのは、どうしてか。よく分からないことが多い。
理解が広がっていかないのは、あまり関心がわかないからだろう。関心がわかないのは結局、デジタル化の魅力を実感できないからである。
地デジ政策の最大の特徴は、「今のテレビを使い続ける」という選択肢が誰であれ許されないことにある。
生活必需品の買い替えを強いる政策。総務省をはじめ推進する側がそんな自覚に立てば、視聴者の出費をできるだけ抑えることが、3年後への最低限の目標として導き出されるはずだ。
総務省が今年5月に集計した調査によると、アナログ放送の11年終了を知っている人は64.7%。前年調査からの伸び率は4ポイントにとどまり、頭打ち傾向がはっきりした。この調査では地デジ対応テレビの世帯普及率は43.7%と半数以下だった。
テレビを買い替えない場合は専用チューナーが必要になる。総務省は関連業界に、現在2万円ほどのチューナーを5000円以下で販売できるようにと要請している。実現を促したい。
チューナーについて情報通信審議会(総務相の諮問機関)は先月、生活保護世帯に限り無料で現物支給すべきだと答申した。チューナーの価格次第で支給対象の議論は変わる。動向を見極めながら吟味したい。
受信障害を解消するための共同受信施設の改修工事も進んでいない。
東北総合通信局によると、山間部や都市の高層ビル周辺の共同施設は東北では5065カ所。今年4月の調査では、このうち改修が終わったのはわずか10.1%だった。都市部施設の多い宮城県は5.4%と特に遅れが目立つ。
山間部や離島では、アナログの難視聴は解消されたのにデジタルになったら受信できない地域が生まれる可能性がある。
同通信局によると、東北の視聴可能世帯の割合(カバー率)は中継局の整備で08年末に91%、完全移行時は97%に上がる見込み。しかし、約3万世帯は取り残される。放送衛星の活用で対応するという。
共同施設の改修や中継局整備の遅れは、移行間近になっての混乱につながる。まず該当地域の人たちが現状を十分認識しているかどうかを、総務省がきちんと掌握する必要がある。
アナログは何の不便もなく見ていられたのに、デジタルになったら駄目なんて。そういう不満や憤りを、事前にどう解消していくか。難しくてもその課題は、言い出した総務省がしっかり背負わなくてはならない。
2008年07月23日水曜日
◆地デジ完全移行まで3年 普及4割超も課題多く
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2008072302000107.html
2008年7月23日 朝刊
テレビのアナログ放送が終了し、デジタル放送に完全移行する二〇一一年七月二十四日まであと三年。総務省や民放連の調査では、デジタルテレビなど地デジ対応受信機の世帯普及率は四割を超えたが、国民への周知徹底や受信環境の整備など残された課題は多い。 (近藤晶)
「受信機の世帯普及率は北京五輪が終わった時点で、50%を超すのではないか」。民放連の広瀬道貞会長は十七日の定例会見で、デジタル化の進ちょく状況について説明し、受信機の普及拡大に期待を寄せた。
総務省の調査によると、地デジ対応受信機の世帯普及率は15・3%(2006年)、27・8%(07年)、43・7%(08年)と推移。民放連が先月公表した調査結果でも、世帯普及率は43・3%と四割を超えた。
しかし、一方で気になるデータもある。同省の調査では、アナログ停波の認知度は九割を超えているものの、「一一年に停波」という時期を知っているのは約六割。地デジの具体的な受信方法に関する認知度も約五-六割にとどまっている。
民放連調査では、地デジ対応受信機を所有している43・3%のうち、「視聴不能・不明」世帯が8・5ポイントあり、視聴できない理由の約四割がアンテナ未対応だった。受信形態の「不明」も15・9%に上り、地デジの受信方法がまだ十分に理解されていないことがうかがわれる。
放送・通信事業者や家電メーカーなどでつくる「デジタル放送推進協会(Dpa)」の浜口哲夫理事は「対応テレビを買ったものの、アナログで見ている人も多い。アンテナ問題は課題の一つ。受信環境はさまざまなケースがあり、きめ細かく相談に対応する必要がある」と指摘する。
昨年度、視聴者に地上デジタル放送を見てもらう“体感”キャンペーンを行ったDpa。本年度は「“地デジ準備”全国キャラバン&受信説明会」と題し、受信方法など視聴者の具体的な疑問に答える形で地デジの準備を呼び掛けている。
地デジを見るには、アナログテレビに専用チューナーを取り付けるか、デジタル対応テレビなどを購入する必要がある。直接受信する場合は、UHFアンテナも整備しなければならない。マンションなどの集合住宅では、共聴施設の改修を行わなければならないケースもある。
総務省の情報通信審議会は第五次中間答申で、受信側の課題として、受信機の普及と共聴施設の改修促進などを列挙。受信機普及では、生活保護世帯を対象に、デジタル放送が視聴できる簡易なチューナーを現物で無償配布する支援策の検討が盛り込まれた。
中間答申に対し、広瀬会長は会見で「障害者世帯なども、国の支援の手が伸びるように必要な場合は考えるべきではないか。そういう声も民放連に届いており、政府に伝えていきたい」と述べた。
◆10月1日の引き上げ困難か 最低賃金の小委員会
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008072301000582.html
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会が23日都内で開かれ、2008年度の地域別最低賃金の引き上げ額の目安について議論した。労使の意見の隔たりは大きく、同日中の取りまとめは困難な情勢で、政府が目指す10月1日の引き上げ実施は難しいとの見方が強まっている。
労働者側は、格差是正や最低賃金が生活保護水準を下回る「逆転現象」の解消のため、時給50円程度の大幅な引き上げが必要と主張。これに対し経営者側は、原材料価格の高騰や地域経済の低迷など経営環境の厳しさを理由に、大幅引き上げに反対している。
1日施行の改正最低賃金法は、生活保護との整合性に配慮し、最低賃金を決めるよう規定。このため審議会では08年度の引き上げ額に加え、何年程度で「逆転」の解消を目指すかも焦点だ。
2008/07/23 17:34 【共同通信】
◆京都市、財源不足964億円
09-11年度 再生団体転落も
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008072300175&genre=A2&area=K00
京都市は23日、来年度から2011年度までの3年間に総額964億円の財源不足が生じるとの財政見通しを明らかにした。地方交付税が削減されるうえ、福祉分野の支出や借金返済など義務的経費が増えるためで、事実上の「財政非常事態宣言」となる。行財政改革を断行しなければ、11年度にも国の管理下で財政再建に当たる「財政再生団体」に陥る可能性もあるとしている。
見通しは、この日に開かれた庁内の都市経営戦略会議で、本年度から4年間の政策と行財政改革の指針として11月をめどにまとめる「京都未来まちづくりプラン」の骨子案に示された。
それによると、来年度から門川大作市長の任期最終年度の11年度までに市税収入が前年度比1%前後ずつ伸びるものの、地方交付税(臨時財政対策債を含む)が5-8%台の減少が続くなど歳入が伸び悩む。一方、生活保護など扶助費が毎年約2%ずつ増え、借金返済の公債費増など歳出増が見込まれる。
この結果、09年度は278億円、10年度320億円、11年度366億円の財源不足が発生し、11年度の実質赤字比率が27%になり、地方財政健全化法の財政再生基準(実質赤字比率20%)を超えるという。
市は01年度に財政非常事態を宣言し、翌年度から2年間で新規施設の建設凍結や職員給与カットなどを進めている。福祉や医療の削減が困難な中、同プランでは、さらに職員数削減や大幅な給与カット、公営企業や特別会計、外郭団体も含めた支出見直しを迫られる。会議で門川市長は「放置すれば第2の夕張市になる。危機感を市民と共有しながらプランを策定したい」と述べた。
◆函館港殺人:無職の男ら3人を強盗殺人容疑で逮捕
http://mainichi.jp/hokkaido/news/20080723hog00m040013000c.html
函館港で22日、函館市海岸町、無職、清水裕久さん(46)の水死体が見つかった事件で、函館西署は23日、▽同市宮前町、無職、森清文(32)▽同市高盛町、自営業、本間正美(48)▽同、漁業、野崎俊(21)の3容疑者を強盗殺人容疑で逮捕した。
調べでは、3人は22日午前0時半ごろ、函館市若松町の岸壁付近で、清水さんに「家のチャイムを鳴らして逃げた」などといいがかりを付けて金を要求。顔を殴るなどの暴行を加えて港に突き落とし、水死させた疑い。
3人は清水さんがかつてアルバイトしていた先の元同僚。暴行の事実の発覚を恐れ、突き落としたという。清水さんは3年前に健康上の理由から仕事を辞め、生活保護を受けながら1人で暮らしていた。【昆野淳】
2008年7月23日
◆最低賃金、交渉物別れ=労使の溝埋まらず-厚労省
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200807/2008072300659
2008年度の最低賃金改定の目安を協議する中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)第3回小委員会が23日開かれたが、引き上げ水準をめぐって労使の主張が折り合わず、交渉は物別れに終わった。厚生労働省は月内の決着を目指して再調整に入るが、合意への足掛かりは見いだせていない。交渉が8月にずれ込めば、予定されている10月1日からの新賃金適用も難しい情勢だ。
7月施行の改正最低賃金法は、都道府県ごとに決められている最低賃金について、それぞれの地域の生活保護費を下回らないよう底上げを求めている。
この日の小委員会では、引き上げ幅を左右する生活保護費の算出方法を中心に協議した。労働側は保護費水準が高い「県庁所在地」を算出基準に採用するよう主張。最近の物価上昇も勘案し、現行の平均時給687円から50円程度の引き上げを要求した。
これに対し、使用者側は原油・原料高で中小企業の経営が圧迫されているとして大幅な引き上げに難色を示し、両者間の溝は最後まで埋まらなかった。(2008/07/23-23:55)
◆宇和島市役所にやり男
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ehime/news/20080723-OYT8T00705.htm
宇和島署は23日、宇和島市和霊町、無職田中洋三容疑者(66)を公務執行妨害容疑で
現行犯逮捕した。
発表によると、田中容疑者は23日午前9時10分ごろ、宇和島市役所1階の保護課窓口で、
応対した男性職員(27)の職員の顔を平手でたたいたうえ、持っていた手製のやり
(長さ約1・5メートル)を別の男性職員(60)に突きつけるなどした疑い。
やりは柄が木製で、先端にキリ状のとがった金属が埋め込まれていた。田中容疑者は
「生活保護の関係で、ばかにされたと思った」などと供述しているという。
◆地デジ専用チューナー、生活保護世帯に支給 総務省が総合対策
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080724AT3S2301T24072008.html
地上デジタル放送への完全移行まであと3年となった24日、総務省は推進に向けた総合対策を公表した。生活保護世帯に専用チューナーを給付することが柱。相談を受ける支援センターをすべての都道府県に置く方針も盛り込んだ。2011年7月24日以降、現行のアナログ放送は終了する。
生活保護を受けているのは06年度時点で約107万世帯。来年度から2年かけてチューナーを無償で支給するほか、必要に応じて地デジを受信するためのアンテナ改修費も援助する。必要経費は最大で400億円になると総務省は見込んでいる。
公的な支援センターは今秋に全国10カ所程度に置き、来年度初頭には各都道府県に少なくとも1カ所設置する方針だ。(16:01)
◆2003年以来の低水準に/県内零細企業の景況感
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiijul0807685/
2008/07/24
国民生活金融公庫横浜支店が二十四日までにまとめた二〇〇八年四―六月期の県内零細企業動向調査によると、業況判断DI(全業種)はマイナス五六・二となり、前期(一―三月)に比べ九・三ポイント下がり、二期連続で悪化した。マイナス五〇台は〇三年七―九月期以来の水準。
来期(七―九月)は〇・六ポイント増とほぼ横ばいの見通しで、景気の先行きは厳しさが続く見方が強い。
自社の業況について「上昇」と答えた企業割合から「下降」と答えた企業割合を引いたDIを六業種でみると、製造、卸売り、小売り、飲食店、建設の五業種が減少。サービス業は横ばいだった。売り上げについても「増加」から「減少」と答えた企業の割合を引いたDIは三・九ポイント減のマイナス三九・八と悪化した。
また、今期に設備投資を実施した企業割合は9・7%と前期比0・5ポイント増、前年同期比でも3・6ポイント増となったものの、投資判断は慎重な企業が目立った。
取引先からは「中国産の野菜類や冷凍食品の問題、原油高騰などが重なり、売り上げも採算も先が見えない」(弁当販売業)、「出漁が原油高で控えられ、市場に出回る量も減っている。今後の仕入れ価格の上昇が心配」(鮮魚店)などの声が上がっているという。
調査は同公庫県内五支店の取引先の三百八社が対象。二百八十九社から回答を得た(回答率93・8%)。
◆250万円着服/栄区役所のアルバイト職員
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiijul0807684/
2008/07/24
横浜市栄区役所は二十四日、同区サービス課の元男性アルバイト職員(27)が、生活保護受給者三人の所持金など計約二百五十万円を着服していたと発表した。職員は三人に全額を返金しているが、同区役所は「受給者を支援する立場を利用するなど悪質」として、栄署に横領容疑などで告訴する方針。
同課によると、職員は二〇〇七年七~八月、同区の男性がアパートを退去する際に管理会社から支払われた立ち退き料など計約七十二万円を着服した。〇八年二~七月は、同区に住む女性の預金通帳と印鑑を預かって委任状などを偽造し十一回にわたり計約百四十七万円を引き出し着服。二カ月後の四月にも、同区の別の男性が老人保健施設に入所する際、男性の所持金から三十一万円抜き取り着服した。
職員は社会福祉士の資格を持ち、〇七年三~〇八年五月、ケースワーカーとして生活保護の事務を担当。生活保護受給者から現金などを預かったまま着服していた。内部調査で判明した。
この職員は「着服した金は多額の借金返済や生活費に使った」と話しているという。
◆地域別最低賃金の審議求める 連合山形が労働局に要望書
http://yamagata-np.jp/news/200807/25/kj_2008072500407.php
2008年07月25日
地域別最低賃金などについての要請書を手渡す安達忠一連合山形会長=山形市・山形労働局
連合山形(安達忠一会長)は24日、地域別最低賃金の適正な審議や、改正最低賃金法の周知徹底などを求める要請書を山形労働局へ提出した。
地域別最低賃金は現在、本年度分が審議されており、連合山形は、必要最低生計費の実態や、生活保護基準との整合性などを重視した審議を要請。改正法については、違反者への罰則が強化されたことや、派遣労働者の最低賃金は派遣先企業の基準が適用されることなどを周知するよう求めた。また、仕事を辞めなければならないことを恐れて、雇用問題を表面化できない労働者がいることを挙げ、しっかりとした対応も求めた。
労働局側は、悪質な違反については行政処分も含め厳正に対処していく、などと回答。労働問題については匿名での相談も可能なことを説明した。
◆全力投球!国会議員リポート
http://www.komei.or.jp/news/2008/0725/12099.html
公明新聞:2008年7月25日
時間外賃金の改善を促進
衆院議員 坂口 力
少子化対策を進めるには、若い人たちが結婚し子育てに励めるよう働き方の改善が必要です。そこで、私はまず最低賃金引き上げを提案しました。最低賃金基準を、月々の所得を計算した時に生活保護基準を上回る程度にするもので、今年から取り入れられるようになりました。
もう一つは時間外労働賃金の割り増しです。諸外国は詳細はさまざまですが、大体5割増しくらいに設定されています。しかし、日本は何時間働いても25%と非常に低く、これが企業の労働者の使い方や、効率的な企業経営にも影響を与えていると思います。
昨年(2007年)示された労働基準法改正案は月80時間を超える労働をした場合は割り増しを5割とする内容です。しかし月80時間は、過労死の認定時間と同じで、あまりにも現実を無視しています。もう少し短縮できないかと考え、連合(日本労働組合総連合会)や、経団連(日本経済団体連合会)を中心とした経営者団体と協議を何度も重ねてきました。
連合と経団連の主張には大きな隔たりがありました。連合は当初、時間外労働の初めの1時間から50%増しを求めましたが、60時間以上5割増しとする私の案に「現状を改善する意味で現実的」と賛意を表明。一方、経団連は「現状で十分」とこれに同意しませんでしたが、今年(2008年)の通常国会最終盤で「公明党単独でも法案を出す」との方針を表明したところ、経団連も理解を示してくれるようになりました。最終的に次期臨時国会でこの内容を柱とする法案提出のメドがたちました。
野党にも働き掛け、法案成立をめざして、さらに尽力していきます。
◆夜間中学生への就学援助、廃止へ 生命線の年2万円
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200807260041_01.html
2008年7月26日
写真音楽の時間、みんなで歌う生徒たち=大阪市生野区の東生野中、高橋一徳撮影
公立中学校の夜間学級(夜間中学)で学ぶ人を対象にした就学援助への大阪府の補助が、橋下徹知事による歳出削減で来年度から打ち切られる見通しになった。年間の補助総額は約1700万円。生徒1人当たり2万円と、ささやかな額だ。だが、生徒は戦争や貧困などで義務教育を受けられず、今も生活に余裕がない人が多い。「通えなくなる」と不安の声があがっている。
「日本で永住するために、日本語は私の生命の中には空気と水のようなものです」。大阪府守口市の市立第三中学校夜間学級で学ぶ男性の梁慶(リャン・チン)さん(57)は4月、学校の仲間約70人と日本語で橋下知事に手紙を出した。
母親が中国残留日本人婦人。文化大革命の混乱で中学校では学べず、中国で農業をしていたが、生活苦から抜け出したいと96年、妻と子4人と来日した。だが直後に結核や糖尿病を患い、望む仕事にはつけなかった。今は妻と2人、化粧はけを組み立てる内職のわずかな収入と月13万3千円の生活保護費で暮らす。
病院や買い物先で言葉が通じずに困り、02年から夜間中学に通い始めた。中国語を自由に話せなかった母親は心を病んだ末に病死した。梁さんは「母のようなつらい目に遭わないように」と勉強に励み、簡単な読み書きや会話はできるようになった。
自宅の府営団地がある枚方市から電車で通う。定期代と学用品代、校外学習費用を合わせ年6万6千円の援助を受け、自己負担はほとんどなく学べている。「自分で払うのはとても苦しい」と話す。
同中の夜間学級では、16~85歳の生徒184人の半数が就学援助を受けている。
大阪府内には公立の夜間中学が7市に計11あり、日本人、在日韓国・朝鮮人ら約1300人が在籍。半数が60歳以上だ。就学援助は学校教育法で対象が学齢期の子に限られているため、府は71年度から、各市が低所得の生徒を援助する事業に半額を補助してきた。
ところが橋下知事は「就学援助は本来、国と市町村が担うべきだ」として、今年度の予算を10%カット、来年度からは補助を廃止するとしている。このため、近畿の夜間中学に通う生徒らが3万4千人分を超える反対署名を集め、6月に知事に提出した。
公立の夜間中学は、大阪、東京、神奈川、千葉、京都、奈良、兵庫、広島の各都府県に計35校ある。大阪府教委によると、都道府県が就学援助に補助している例はほかにないという。一方、京都や神戸、奈良、広島の各市は単独で就学援助をしている。
夜間中学が二つある大阪府東大阪市教委の担当者は「夜間中学は義務教育を受けられなかった人たちの学び直しの場。たとえ府からの補助金がなくなっても就学援助は何とか続けたいが」と話す。
大阪市生野区の東生野中の夜間学級に通う日本人女性(75)は「就学援助のお陰で昨年、福井の東尋坊に生まれて初めての修学旅行に行けた。自分たちの番を心待ちにしている人は多い。援助が打ち切られたらかわいそう」と話している。(小河雅臣)
◆チエの町や ここは 南海本線 萩ノ茶屋駅
http://www.asahi.com/kansai/travel/ensen/OSK200807260002.html
2008年7月26日
写真高架上の駅を降りると商店街。日が暮れる前から、赤ちょうちんに明かりがともっていた写真古い家並みが残る駅の西側。駄菓子などを売る店の前で、子どもたちが鬼ごっこに興じていた写真用途が決まらず空き地のままの南海天王寺支線跡地=いずれも大阪市西成区地図フォトギャラリー
平日の朝、仕事にあぶれた労働者らが立ち飲み屋に集い、カラオケのマイクを握っていた。駅員の岡春男さん(57)は「こないはよから、にぎやかな駅前は、ほかにありまへんな」と笑う。
駅の西は棟割り長屋が連なる下町。東は簡易宿所が立ち並ぶあいりん地区(釜ケ崎)。何十年も時が止まったままのような街だ。
漫画「じゃりン子チエ」(双葉社)が誕生したのは30年前。ファンの間では、作中の「西萩駅」はここがモデルとされる。
81年の映画化でチエの声を担当したのは当時参院議員だった作家の中山千夏さん(60)。11歳の時、簡宿・釜ケ崎荘をめぐる人間ドラマを描いた舞台劇に出演し、天才子役と呼ばれた。「私しかいない」。小5でホルモンを焼き、大人を相手に奮闘するチエの役が回ってきたのは運命だと思った。
その年の夏、中山さんは初めて釜ケ崎を訪れた。小学校で労働者らを前に講演し、前向きに生きてほしいと呼びかけたら、「きれいごとや」とヤジが飛んだ。一方で、「また来てや」と涙を浮かべたり、のどが渇いたやろうとジュースをくれたりする人も。聴衆の一人が黙って差し出した千円札は、炊き出しのカンパになった。
「よそから集まった人が多いのに、お互いに他人の感じがしない街」と中山さんは思う。駅の周りを歩いていると、チエちゃんに出会えそうな気がした。
■ホンマはみんな優しいねん■
江戸時代、住吉大社へ向かう街道沿いに、参拝客らが足を休める人気スポットがあった。周囲に紅白のハギの花が咲き乱れる風流な茶屋。それが地名の由来になったという。辺りはネギ畑が広がるのどかな農村地帯だった。
その姿が変わり始めたのは100年余り前。現在の天王寺公園付近で1903(明治36)年に第5回内国勧業博覧会が開かれた際、近くに密集していた簡易宿所が行政によって釜ケ崎へ強制移転させられ、街の原形ができた。戦後、焼け野原に再び簡宿が立ち並び、全国最大の日雇い労働市場「寄せ場」になった。
◇
萩ノ茶屋駅の開業は1907(明治40)年。所属は南海本線だが、現在は高野線の各停電車しか止まらない。ホームは6.7メートルの高架上。その向こうに夕日が沈むころ、労働者たちが現場から戻り、立ち飲み屋やホルモン屋が軒を連ねる駅東側の商店街はいっそう活気づく。
改札口前にある甘党喫茶「ハマヤ」の客は9割方が男性だ。冷やしぜんざい、ミルク金時のかき氷で、仕事に疲れた体を癒やす。
店番の浜口陽子さん(56)は兵庫県西宮市生まれ。中学から大学まで神戸女学院に通い、都銀に勤めていたが、大学時代から交際していた店主の博さん(60)と結ばれてこの街にやって来た。近くで暴動が起きることもある土地柄に驚いたが、なじむのに時間はかからなかった。
お盆が近づく。「クニに帰りたい。いや、あかん」と言葉をのみ込む人。酒を飲まず、妻子に仕送りを続ける人。「みんな突っ張ってるように見えて、心根は優しいんよね」と陽子さんは言う。
大阪市によると、800メートル四方の釜ケ崎に住むのは推計3万人で、7割が日雇い労働者。だが、携帯電話ひとつで仕事が見つかる時代になり、景気の低迷もあって、新たな流入者は少ない。高度成長期に移ってきた人は年老い、地域のほぼ3人に1人は65歳以上。10年前に202軒あった簡宿は100軒余りに減った。
四つの簡宿を営んできた木原博文さん(80)は「働き盛りが集まらん」と寂しげだ。高齢で働けなくなっても、宿泊施設を居住地にしている人は生活保護の対象外になるため、04年から二つの簡宿をアパートに衣替えして元労働者を迎え入れている。
◇
一方、安い宿代と交通の便の良さから、簡宿には新たなニーズが生まれている。5軒を経営する会社が00年からネット予約の受け付けを始めたところ、ほとんど見られなかった海外からの宿泊客が急増。昨年は4万2千人が利用した。遠方からの受験生や出張のサラリーマンも来るようになった。
鳥は木で休み、朝になると飛び立っていく。だから、簡宿は木賃宿とも呼ばれた。宿り木が林立する釜ケ崎は、労働者や客人らを包み込む森なのかもしれない。
(文・室矢英樹 写真・日置康夫)
鉄っちゃんの聞きかじり〈どないする? 支線跡地〉
釜ケ崎の東側にはかつて、南海天王寺支線が走っていた。天王寺―天下茶屋の2.4キロを結んで1900(明治33)年に開業。昭和初期には貨物輸送に貢献し、戦後は通勤、通学の人たちでにぎわった。
66年、現在のJR大阪環状線と接続する南海本線新今宮駅が開業すると、利用客が減少。大阪市営地下鉄堺筋線が天下茶屋駅まで延伸されることになったのを受け、84年に天下茶屋―今池町がまず廃止され、93年には完全に姿を消した。廃線跡の一部には建物や道路ができたが、用途が決まらないままフェンスで囲われた空き地も多い。
天王寺支線は簡易宿所や商店が立ち並ぶ狭い道路を横切り、踏切が多かった。75年ごろ、修学旅行生を乗せた臨時電車を運転したことがあるという新今宮駅長の松原道寛さん(59)は「緊張しながら走ったもんや」と振り返る。
探索コース
萩ノ茶屋駅の周辺には大阪を代表する観光地がいっぱい。北に行けば、商売繁盛の神様「えべっさん」の今宮戎神社や、通天閣。東の松乃木大明神には、浄瑠璃作家の近松門左衛門を顕彰する石碑、三味線に使われたネコを供養する猫塚がある。近くには、かつて多くの芸能人や興行師が住み、上方演芸発祥の地とされる「てんのじ村」の記念碑がある。
※「ぷらっと沿線紀行」は次週から4回休載し、8月30日に再開予定です。
◆底上げ政策 皮肉なしわ寄せ 最低賃金 広がる地域差 大都市・アップ 地方・抑制
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/37348
2008年7月27日
「生活保護との整合性配慮」を主な狙いとして改正最低賃金法が今月1日に施行され、政府が最低賃金の引き上げ方針を掲げる中、最賃の地域間格差が広がりつつある。東京都など大都市部で大幅アップが図られる一方、九州などは企業に賃上げの余力が乏しく、引き上げ幅は抑制されがち。月給換算だと生活保護費より低いケースがあるとして勤労者の所得格差に焦点を当てた「底上げ」政策が、新たな地域間格差を招く‐そんな皮肉な現象が起きている。
■企業の「体力差」反映
地域別の最賃は、労使代表による都道府県ごとの審議会で毎年秋に改定される。現在の最高額(昨年秋改定)は東京都の時給739円。以下、神奈川県、大阪府、愛知県と大都市部が続く。
一方、最低額は秋田県と沖縄県の618円で、九州・山口も福岡、山口を除く6県が最低額を1‐2円上回るだけの低水準。月給換算で東京とは約2万1000円の開きとなり、格差は前年より約2000円拡大している。
これは昨秋の改定で東京が前年比20円の大幅アップとしたのに対し、秋田、沖縄が8円増にとどまったため。厚生労働省によると、大都市部では大半のパートの賃金が最賃を上回っているが、九州や東北などは最賃ぎりぎりの雇用が多く「企業が人件費増の影響を受けやすい地域では、大幅引き上げは難しい」(勤労者生活課)という。
しかも今秋の改定で格差はさらに拡大する見通し。改正最低賃金法は、最賃を決める際に生活保護との整合性に配慮するよう明文化。生活保護の水準に合わせると、むしろ大都市部に「配慮」の恩恵が出てくるためだ。
具体案は中央最低賃金審議会で議論中だが、同省は昨年の国会答弁で、最賃の月給換算から税などを引いた手取り額と、住宅費を含む生活保護費(若年単身世帯)の平均額のバランスをとる考え方を例示。それに基づけば、東京の生活保護費は約12万2000円で最賃の約70円引き上げが必須となる計算という。
だが、九州・山口は、大都市部より家賃などが割安で、生活保護費は最高の福岡で約9万5000円、最低の佐賀は約8万4000円。このため、最賃の月給換算は福岡で約10万円、佐賀で約9万3000円など全県で既に生活保護費を上回っており、ワーキングプアを念頭に置いた「底上げ」政策の恩恵は及ばない見込みだ。
こうした地域格差拡大について、厚労省は「認識しているが、県民所得などに比べると地域差はまだ小さい」とし、使用者側も「原油や原材料の高騰で地方の中小企業は苦しい。大都市とは収益力も違う」(宮崎県経営者協会)と指摘し、やむを得ないとの立場。
一方、労働者側は「最賃引き上げで企業倒産といった例は聞いたことがない。賃金格差は若年労働者の域外流出も招きかねない」(連合長崎)として、秋の改定で論点に据える構えだ。 (東京報道部・植田祐一)
=2008/07/27付 西日本新聞朝刊=
◆外国人の生活保護世帯急増、登録外でも37自治体が対象に
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080726-OYT1T00903.htm?from=navr
生活保護を受給する外国人世帯が急増している。06年は2万9336世帯で10年前の1・7倍。
一方、生活保護法は国民が対象で、外国人の保護受給は権利ではないとされ、福祉現場で運用に差も見られる。
主要73市・特別区への読売新聞の調査(7月)では、DV(配偶者からの暴力)を逃れるためなど、やむを得ない理由で外国人登録地と異なる自治体に生活保護申請した場合、37自治体は「保護できる」、25自治体は「保護できない」と回答した。
厚生労働省によると、全保護世帯は108万世帯。外国人世帯は、国籍別で韓国・朝鮮が最多の2万2356世帯。中国の2847世帯、フィリピンの2399世帯が続く。韓国・朝鮮人の高齢化やフィリピン人女性の離婚の増加などが、急増の要因とみられる。
日本人の場合、住民票を登録していない自治体でも受給できる。しかし、外国人に対する保護は、生活保護法の準用措置で、54年の厚生省通知は「申請は外国人登録をした自治体に行い、不服申し立てを認めない」としている。
読売新聞は、政令市、東京23区、県庁所在市に、外国人の保護実態、47都道府県に、不服申し立ての取り扱いを調査した。
大阪市など37自治体は居住実態を優先し登録の有無に関係なく「保護できる」とした。25自治体は「登録地でないと保護できない」と回答。このうち19自治体は、居住実態は問わないとした。6自治体は登録と居住実態の一致を条件とした。一方、保護打ち切り処分などへの不服申し立てを認めているのは大阪府だけ。05~07年には12件を受理、2件の処分を取り消したという。
厚労省保護課は「登録地と居住地が異なる事例は想定していなかった。現場で判断してもらうしかない。ただ、保護は権利ではなく、不服申し立ては認められない」としている。
(2008年7月27日03時14分 読売新聞)
◆社説:年金改革案/上 所得比例制度に一元化 7万円の最低保障で老後支える
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080727ddm005070002000c.html
公的年金への信頼が大きく揺らいでいる。「老後は大丈夫か」という不安が社会を覆う。年金制度はどうあるべきなのか。改革案を示しながら、2回にわたって考えてみたい。
まず、現制度の問題点を整理し、その上で提案をしたい。年金の破綻(はたん)を防ぐために政府は04年に保険料の段階的引き上げと年金給付水準の引き下げを行った。本質は財政の帳尻合わせだ。数字の上では制度を維持できても、年金の実質目減りは暮らしを直撃する。
◇フィンランド方式
04年改正では、少子化による年金加入者の減少分と平均寿命の延びの分を、年金額から自動的にマイナス調整するマクロ経済スライドという難解な名前の方式を導入した。今後ほぼ20年間にわたって毎年、年金の伸びを0・9%ずつ目減りさせる。この結果、国民、厚生年金共に実質価値は15%も下がる。ここが一番不安な点だが、難しいので国民の理解は進んでいない。
あまり知られていないが、満額で月6・6万円という国民年金も実質価値が5・6万円程度まで目減りしていく。これは日本の年金制度では、これまでやってこなかったことだ。年金が生活保護の水準以下になるので、年金への信頼は根っこから崩れ去るだろう。
働いて賃金を得ているのに正規社員は保険料が労使折半の厚生年金に、非正規社員は個人で国民年金に加入する仕組みも不公平だ。雇用形態の違いで年金額に差がついてしまうのだ。
04年改革を経ても、なお多くの問題が残っており、政府がいう「100年安心」の制度とはほど遠い状況にある。これらの問題点を解消し、新たに制度設計をやり直そうというのが本社提案の目的だ。
保険料で財政運営する社会保険方式を変えず公的年金を一元化し「所得比例+最低保障」年金制度を創設する。国民が一つの年金制度に加入するシンプルな枠組みとする。
図表をみていただきたい。現制度は基礎年金と厚生・共済の2階建てになっているが、新制度では基礎年金を廃止し、厚生、共済、そして国民年金に分かれている制度を一元化する。その上で、所得に応じて保険料を支払う所得比例型制度を創設し、国民が同じ制度に加入する。
重要なことは「所得比例+最低保障」の具体的な制度設計だ。日本ではスウェーデン方式がよく知られている。個人が掛けた保険料が一定の利回りで運用されたものとみなし、年金の受給開始時に平均余命を計算して年金額を決める。ただ、想定した経済成長が達成できない場合、運用利回りが上がらなくなる。
こうしたスウェーデン方式の課題を克服するために大枠は同じだが制度設計が違うフィンランド方式による改革案を提案したい。慶応大学の駒村康平教授らの研究者グループに協力してもらいフィンランドの仕組みを日本型に設計した。
保険料率を年収の19%(労使折半)で固定し、年金の給付乗率を1%として設計する。給付乗率とは1年働いて保険料を払うと、その年の所得の何%分の年金が増えるのかを示す数字だ。分かりやすく言うと、例えば年金に40年加入した人は、生涯の平均所得(課税前の賃金)の40%、30年だと30%が年金額となる。平均年収が600万円で40年加入だと、240万円が年金額となる。
◇「3号」問題は解消
老後の所得が不十分な人には最低保障年金で対応する。年金の加入期間が40年だと7万円(夫婦の場合14万円弱)の最低保障年金を支給する。このための財源は全額税でまかなう。駒村教授らの試算では、最低保障年金の税財源は約13兆円となる。基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げた分をこれに充てると、さらに3・5兆円程度が必要で消費税に換算すると1・5%程度の引き上げとなる。
保険料を払わない専業主婦も最低保障年金を受給できるようにする。これで長い間懸案となっていた、夫の掛けた保険料で専業主婦が年金を受ける、いわゆる「3号被保険者」問題は解消への道が開ける。一定レベル以上の高額所得者には年金課税を強化し、その分を最低保障年金の財源として補てんする仕組みも導入する。
国民は同じ所得比例年金制度に強制加入となり、国は社会保障番号によって一生涯を通して年金記録を把握する。老後の所得不足を補うために最低保障年金があるので、未納・未加入問題の解決が可能になる。
毎日新聞 2008年7月27日 東京朝刊
◆福島・更生施設に反対運動 仮出所者行き場なく
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/07/20080728t63032.htm
ほぼ完成した自立更生促進センター
刑務所を出ても帰る場所のない仮出所者を受け入れる初の国施設「自立更生促進センター」の建設が進む福島市で、住民の反対運動が盛り上がっている。説明不足を自覚する法務省は理解を求めるのに躍起だが、運営開始が迫った最近になって建設を知った住民も多く、反発は強まるばかり。身元引受人が見つからない高齢の出所者も増える中、各地にセンターを設置する法務省の方針は、犯罪への不安感を強める世情が壁となり、初めからつまずいた格好だ。(福島総局・菊地奈保子)
センターは福島市狐塚の福島保護観察所敷地内に建設され、8月下旬にも開所を予定する。身元引受人のいない成人男性の仮出所者が暮らしながら就職先を探す。生活が軌道に乗るまでの3カ月をめどに、保護観察官が指導監督する。
建設に異論を唱えるのは地元住民と近隣の学校関係者ら。必要性に理解を示しながらも「住民にきちんと説明しないまま建設を進めた。学校が密集する地域に設けては子どもが心配だし、福島に元受刑者が多く住み着くことになる」と計画の変更を求める。地域住民の会には3万6000以上の署名が寄せられた。
福島保護観察所は、周辺の小中高校に通う児童生徒の保護者らを対象に説明会を開き、子ども対象事件での受刑者や再犯の可能性が高い受刑者は受け入れないことを説明。運営開始後は地元との連絡協議会を設置し、入所者の情報を公開するなどの不安解消策も示したが、話はかみ合わない。
藤田守人企画調整課長は「出所者はみな普通の人なのに、あまりの怖がりように驚いている」と打ち明ける。
地元住民との摩擦は、身寄りのない出所者を受け入れてきた既存の民間施設でも強まっている。建て替え時に反対運動が起こるなどして、運営する更生保護法人数は1959年の172から99に激減。新施設ができる見込みはない。
福島市内で更生保護施設の移転計画を進める「至道会」も反対運動に直面する。常務理事の金平祖隆さん(71)は「行き場のない人を誰かが救わなければならないのに、受け入れを拒否する親族や地域が増えた。一度罪を犯したらずっと犯罪者という考え方をどうにかしないと」と話す。
1970年から2000年まで3万7000―4万7000人で推移していた受刑者の1日平均収容数は、06年には6万9000人にまで増えた。高齢化も加わり、帰る場所のない元受刑者は増加の一途で、出所しても仕事や引受人が見つからず、再び罪を犯して刑務所に戻る人も少なくないという。
法務省保護局観察課の平尾博志・処遇企画官は「貧困などが動機の犯罪が減る一方で不可解な事件が増え、恐怖感を増幅している。住民の不安も理解できるが、再犯防止には出所者に生活の基盤を取り戻してもらうのが一番。そのための施設をどうか受け入れてほしい」と訴えている。
2008年07月28日月曜日
◆社説:年金改革案/下 一元化へ、政治は決断を 「安心の社会保障」政策を描け
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080728ddm005070047000c.html
改正の上に改正を重ねてきたために難しく複雑になっている公的年金を整理し、国民に分かりやすい制度に作り替えていく。これが、基礎(国民)年金を廃止して、新たに「所得比例+最低保障」年金を創設する狙いだ。
所得比例制度は所得に応じて払った保険料と年金額の関係が明確で分かりやすい仕組みだ。最低保障年金は現役時代に病気や障害、そして会社の倒産、解雇などによって生涯の所得が低くなった人たちの暮らしを支えるものだ。
◇課題は所得捕捉
保険方式で運用される所得比例年金と、暮らしを支える福祉制度の要素がある最低保障制度をはっきりと区分けしたのが今回の提案の特徴だ。
図表のように最低保障の年金の給付額はゆるやかな右肩上がりにしてある。高い保険料を払う人には年金額を上げることで、保険料を納付する意欲が喪失しないようにするためだ。最低保障年金は現役時代の平均年収が600万円以上だと支給されない。
高齢世代に最低保障年金を導入することで、生活保護制度は現役世代向けの福祉施策として位置づける。地域によって物価や住居費などが違うため、最低保障も生活保護制度と同様に地域によって給付額を変える必要がある。
所得比例年金制度には、正社員、非正規社員、自営業者らがいっしょに加入する。所得に応じて保険料を払うが、非正規社員の保険料も労使折半とする。ここが、雇用形態によって年金に格差がつく現行制度とは大きく違う点だ。この点は、企業にもぜひ理解をしてもらいたい。
本社提案の新制度にも課題はある。最低保障年金を公平に運用するには、自営業者らの所得把握が必要になる。国民年金は当初から所得比例制度を目指した。しかし、自営業者の所得捕捉ができないために改革ができなかった。
国民年金が所得比例型になれば、事実上は所得比例制度の一元化に近づく。給料制でない自営業者の収入をしっかりとつかむためには納税者番号制の導入を急ぐことだ。
所得をごまかして保険料を低く抑え最低保障年金を手にする人に対しては年金を支給しないなど厳しい罰則を設けるべきだ。長い間、所得把握の問題がネックとなってきたが、難しいことを理由に改革を遅らせてはならない。
保険料は19%(労使折半)だが、04年改革で政府が決めた最終保険料率である18・3%と大きな差はない。問題は一気に上げるか、段階的に行うかだ。慶応大学の駒村康平教授ら研究者グループの試算では、団塊世代が現役のうちに一気に上げることができれば、若い世代への負担が減る。保険料は暮らしに大きな影響を及ぼすだけに、国民の声を十分に聴いて判断をしていくべきだ。
新制度にどう移行させるかも大きな課題だ。すでに年金を受けている人は、現行制度のままとするのがいいのだろうが、移行に長い期間がかかる。
新制度が発足以降、65歳になった人から適用するが、国民年金のみの加入者や厚生・国民年金の両方に加入していた人の場合、加入期間などによって給付を調整する。分かりやすく、不公平感が少ない仕組みにして移行をできるだけスムーズに行うことが必要だ。 ◇医療、介護も視野に
「老後に年金がもらえなくなるのでは」。国民の間には年金制度への不信が相当に強い。しかし、政治の対応は遅れている。政党から年金改革案が出されているが、議論は中途半端なままになっている。与野党は年金改革の議論を再開し、具体的な改革案について決断をすべきだ。
「所得比例+最低保障」年金を提案したのは、政治が国民の年金不信にもっと敏感に反応し、改革論議を深めるきっかけとなることを期待してのことだ。
年金の改革には消費税の引き上げ問題が避けて通れない。本社案の試算では最低保障年金の財源を消費税でまかなうとすると、約1・5%アップが追加的に必要となるが、基礎年金を全額税方式にするとなると相当な引き上げとなる。
しかし、財源難に直面しているのは年金制度だけではない。医療や介護保険制度の方がもっと苦しく、深刻な問題を抱えている。消費税の議論をする場合には、社会保障の一体改革を進める中で、安心の社会保障制度にするための議論を深めていくべきだ。
毎日新聞 2008年7月28日 東京朝刊
◆連合会長、原油・食料高騰に緊急対策要請 政府に
http://www.asahi.com/politics/update/0728/TKY200807280343.html
2008年7月28日
連合の高木剛会長は28日、首相官邸を訪れ、原油や食料価格の高騰に対し、「揮発油税などの暫定税率の今年度凍結と来年度廃止」を柱とした緊急対策を実施するよう政府に要請した。
高木会長は「特に中低所得者層に大きな影響が出ている。できるだけスピーディーに対策を」と求めたが、応対した町村官房長官は一部の内容について「研究させてほしい」と述べるにとどまったという。連合はほかに「中低所得者層の所得税減税」「生活保護の生活扶助基準の上乗せ」「中小、下請け企業へ国家備蓄の石油を安価で供給すること」なども求めている。
◆計2億円余?生活保護費を詐取、土木会社役員ら6人逮捕
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080728-OYT1T00647.htm?from=navr
雇った建設作業員を生活困難者に見せかけて生活保護費をだまし取ったとして、千葉県警は28日、千葉市稲毛区萩台町、土木会社役員黒川滋容疑者(56)ら6人を詐欺容疑で逮捕した。
黒川容疑者らは、設立したNPO法人が運営する福祉施設に作業員を入所させ、市の担当者をだましていたという。約4年間で入所者は約130人、総額2億7000万円の生活保護費の受給があり、県警は大半が不正受給とみて調べている。
ほかに逮捕されたのは、千葉市稲毛区萩台町、土木会社社長荻原淳二(37)、妻の土木会社役員荻原春美(33)、同市若葉区東寺山町、元土木会社従業員塚越寿美(51)、同区千城台北、土木会社役員下河原穣(46)、同市稲毛区萩台町、土木会社契約社員米川義光(52)の5容疑者。
発表によると、黒川容疑者らは2004年6月、社長を務めていた土木会社「辰巳建設」(千葉市若葉区)で作業員として雇った米川容疑者を、自ら設立したNPO法人「みどりの会」(同区)が運営する無料低額宿泊施設に入所させ、無収入のように偽装。市若葉福祉事務所(当時)に虚偽の申請をして、2か月分の生活保護費約21万円をだまし取った疑い。
無料低額宿泊施設は、生活困難者らの支援などを目的とした施設。米川容疑者は給料を月16~17万円もらっていた。
黒川、荻原淳二両容疑者は容疑を否認しているという。
(2008年7月28日22時36分 読売新聞)
◆「生活の安定」で再犯防止、出所者の就労を国が支援
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080728-OYT1T00363.htm?from=navr
政府は、刑務所や少年院の出所者の就職を支援するための「就労支援推進協議会」を今年度中に全都道府県に設置する方針を固めた。
刑務所などへの再入所者のうち、無職者の割合が7割以上を占めることが法務省の調査で浮かび上がっていることから、出所者が就職し、安定した生活を送ることが再犯防止の決め手だと判断、雇用対策に乗り出すことにした。
刑務所への再入所者のうち、無職者が占める割合は1997年度は約62%だったが、2006年度は約72%と、増加傾向にある。
今回の就職支援は、こうした傾向を受け、法務省と厚生労働省が連携して取り組むものだ。法務省の保護観察所や刑務所などの刑事施設、厚生労働省の労働局、それに都道府県、地元の経済界などが協議会のメンバーとなる。
地元企業への呼びかけや、シンポジウム開催などにより、出所者の就職を受け入れる「協力雇用主」の企業の輪を広げることを目指す。
法務省の調査によると、07年の協力雇用主の業種は、53・5%が建設業で、14・6%が製造業だった。また、06年に雇用された出所者のうち、臨時や日雇い労働者が70・2%を占めた。
同省は、協力雇用主の業種に偏りがあり、景気に左右されやすい業種が多いことや、日雇い労働の比率が高いことなどが、出所者の生活の不安定さにつながっていると分析。各地の協議会は今後、出所者が幅広い業種でフルタイムで働けるよう地元企業に理解を求める活動を展開する方針だ。
協議会は、全国に先駆けて今年5月に広島県に初めて設置された。協力雇用主の数は、5月時点の250社から、7月28日現在で295社に増え、順調なすべり出しだという。
政府が再犯防止対策強化に乗り出すのは、犯罪件数の約6割が再犯者によるもので、治安の改善策の重要課題だとの認識が高まったためだ。
(2008年7月28日12時50分 読売新聞)
◆【主張】労働者派遣法改正 非正規雇用のひずみ正せ
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080729/plc0807290343002-n1.htm
2008.7.29
政府・与党の労働者派遣法改正に向けた動きが急だ。ワーキングプアの存在に代表される行き過ぎた雇用の規制緩和を見直す動きである。派遣業界では昨年来、二重派遣やピンハネなど法令違反が相次いだ。派遣法改正は当然の流れであろう。
ただ、グローバルな競争にさらされた企業が正社員の採用を抑制するなかで、非正規雇用が雇用の受け皿となり、失業者の増加を防いできた面も否定できない。
正規雇用と非正規雇用とのバランスをどう取っていくのか。国の将来像を踏まえた長期的視点に立って立法化してもらいたい。
労働者派遣法は昭和60年に制定され、当初は通訳やアナウンサーなど専門的な13業務だけに派遣が限定されていた。それが、バブル崩壊で雇用調整を進める企業側の要請もあって、いまでは建設、港湾運送などを除いたほとんどの業種で認められるようになった。
しかし、派遣労働のすそ野が広がるにつれて、深刻な問題も浮き彫りになった。バブル崩壊後の就職氷河期といわれた時期に正社員になれなかった若者の多くが、職業訓練の機会がないまま年齢を重ね、非正規労働を続けている。
厚労省によれば、卸売・小売業では非正規労働者の割合が1990年代以降急激に上昇し、2002年には業界全体の44・2%に達した、という。この上昇傾向はいまも続いている。
派遣やパートで働く人は、正規雇用と違って雇用契約が不安定で、いつ仕事を辞めさせられるか分からない不安を抱いている。
経営側にはなお、規制緩和を求める意見が強いが、このまま非正規雇用の増加が続けば、将来の生活保護が増加し、国の社会保障負担が増大する懸念も強まる。そうした非正規雇用が生む社会のひずみに対して、対策を急ぐのは政府の責務である。
厚労省の研究会がまとめた「契約期間が1カ月以内の派遣を原則禁止する」などの対症療法だけでは不十分だろう。企業の核となる正規社員への転換を進めるとともに、非正規社員の待遇を改善し、同一労働同一賃金に近づける方策を探る必要がある。健康保険や雇用保険への加入も課題だ。
国民が生きがいを感じ、安心、安定して働ける社会へ向け企業側の意識改革も欠かせない。それが長期的に国が発展する礎であることを忘れてはなるまい。
◆視覚障害装った保護費疑惑 札幌市、被害届提出へ 五十代の男性
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/107858_all.html
(07/29 08:19)
視覚障害で障害者一級の認定を受けていた札幌市豊平区の五十代の男性が生活保護費の障害者加算分を不正に受給した疑いがある問題で、札幌市は二十八日、早ければ今週中にも道警に被害届を提出するか刑事告発する方針を固めた。
市によると、この男性は視覚障害一級の認定を受け二〇〇二年一月から今年三月まで、毎月、生活保護費の障害者加算分月額二万六千八百五十円を受給した。加算額は計約二百万円。しかし「自転車に乗っている」など情報が寄せられ、市が四月以降の加算分の支給を凍結、指定した医師による再検査を命じ、再検査で障害はないと診断された。男性は四月下旬、障害者手帳を市に自主返還していた。
両下肢障害で一級に認定されている一人も「車いすを使わず歩いている」と情報があり、市が調査している。
◆外国籍市民の生活実態を調査
甲府「共生計画」策定へ10月実施
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2008/07/29/10.html
2008年07月29日(火)
甲府市は、多文化共生推進計画の策定に向け、外国籍市民を対象にした初めての生活実態調査を行う。日常生活で困ることや行政に提供してもらいたいサービスなどを聞き、結果を計画づくりの参考資料にする。28日は学識経験者や市民ら12人で構成する計画策定委員会が設置され、調査方法や質問項目について意見を交わした。
市の外国人登録者は3月末現在で5581人。20年前の約4・8倍、10年前の約1・6倍となっていて、今後も増加が予想されている。
こうした中、市民が国籍にかかわりなく行政や地域活動に参画し、外国籍市民にも住みよいまちづくりを進めることが計画策定の狙い。策定委や各部局の幹部職員で構成する多文化共生庁内連絡会議が、年度内の策定を目指している。
10月にも実施する調査では、健康保険証の有無や日本語の習得度、困ったことを誰に相談しているか-といった質問項目を設け、外国籍市民の生活実態を把握する。市役所、県国際交流協会、留学生が通う山梨大と山梨学院大で調査用紙を配るほか、小中学校の外国籍児童・生徒の保護者にも答えてもらう。550人程度が対象になる。
策定委の初会合では、宇野善昌副市長が委員に委嘱状を交付し、委員長に安藤淑子県立大准教授を選出した。調査について委員から「対象者に小中高校の児童・生徒本人を加えるべきだ」「対面方式の方が実態をつかめるのではないか」などの意見が出たため、9月の次回会合で詳細を詰めることにした。
◆最低賃金:引き上げ対応求める要請書 連合山形、労働局に /山形
http://mainichi.jp/area/yamagata/news/20080729ddlk06020208000c.html
連合山形(安達忠一会長)は、山形労働局を訪れ、佐藤祐輝労働基準部長に、時給620円の県内最低賃金を引き上げるための積極的な対応を求める要請書を手渡した。
現在の最低賃金は、生活保護の水準を下回り、そのねじれを解消するため、改正最低賃金法が40年ぶりに施行されたばかり。
連合山形は、最低賃金の引き上げや、最低賃金を下回る業者への監督・指導の強化などを要請。佐藤労働基準部長は「法改正を周知徹底させ、担当機関として違反があれば厳正に対処していく」などと話した。
県最低賃金審議会は、県の最低賃金の引き上げについて協議しており、8月中旬までに山形労働局に答申する予定。【林奈緒美】
毎日新聞 2008年7月29日 地方版
◆再雇用確保 6割の3700人 また『派遣』も…絶えぬ違法の土壌
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008073002000098.html
2008年7月30日 朝刊
日雇い派遣大手グッドウィルが、今月末に廃業する。同社に登録していた約6000人の労働者のうち、新たな働き口を得た人は6割の約3700人にとどまり、残りの多くは仕事が決まらないままだ。決まった人の半数余りも別の派遣会社への“移籍組”で、これまでのような不安定な生活が続いている。 (菊谷隆文)
グッドウィルは派遣先に対し労働者の直接雇用を働きかけてきたが、期間雇用を中心に来月以降の採用が決まった人は約千七百人にとどまった。また、別の派遣会社に移った人は約二千人で、雇用の調整弁のように労働者を求める企業が、依然多いことを物語っている。
一方、グッドウィルによると、職場が決まらない約二千三百人の中には、自分で職場を探したり、同社のあっせんした仕事に態度を保留したりしている人もいる。
だが、派遣労働者の労働組合「派遣ユニオン」には「収入がなくなってしまう」(大阪府の四十歳男性)、「生活保護を受けるしかない」(神奈川県鎌倉市の三十四歳男性)など、中高年を中心に逼迫(ひっぱく)した声が寄せられている。
同ユニオンの関根秀一郎書記長は「ほとんどの人が貯蓄もなく、雇用保険にも加入していない。失業すればすぐに生活が破たんしてしまう」と懸念を強める。
グッドウィルは業務停止になった今年一月以降、業績が急激に悪化。グッドウィルとの契約を打ち切った派遣先は、別の派遣会社に切り替えた。最近、準大手に登録した女性(45)は、支店従業員から「GW特需」という言葉を聞いたという。
ある派遣会社の幹部は「グッドウィルの廃業で、多くの派遣先は事前に就労条件を示さないような法令順守の甘い派遣会社との契約に切り替えているようだ」と話し、違法派遣は依然として蔓延(まんえん)していると指摘する。
関根さんは「法令よりも利益優先で、違法派遣の疑いがあっても契約する派遣会社は多い。法律を改正して日雇い派遣を禁止するしかない」と訴える。
『雇用保険遡及加入を』
派遣ユニオンは、当面の生活費確保のため、雇用保険料をさかのぼって納付し、失業給付を受ける雇用保険の「遡及(そきゅう)加入」の利用を呼び掛けている。
加入に際してはハローワークで資格の有無の確認が必要。グッドウィルで継続して一年半以上働いた実績(年間平均週二十時間以上)があれば、加入できる可能性が高い。支払う雇用保険料は、月収十五万円ならば月九百円程度で済む。既に約二十人が遡及加入しているという。
今月七日、藤野雅己さん(39)は遡及加入の資格が認められ、二〇〇六年七月から二年分の雇用保険料二万千六百円を一括納付。計十五万円の失業給付を三カ月に分けて受け取れることになった。「今は内装業の請負で生活しているが、この失業給付はありがたい」と笑顔をみせた。ハローワークは、グッドウィルの廃業後も遡及加入の手続きに応じるとしている。
◆「みんだん生活センター」 サポートさらに充実化へ
http://mindan.org/shinbun/news_bk_view.php?page=1&subpage=3037&corner=2
2008-07-30
第2回全体会議であいさつする鄭進民団中央本部団長
Q&A形式の冊子作成も
生活支援事業の一環として、戸籍整理、婚姻・離婚、相続、税務など同胞の抱える問題の無料相談・助言のために、東京・港区の韓国中央会館内に設置された「みんだん生活相談センター」(代表者=鄭進中央本部団長、所長=呂健二中央本部副団長)が、17日で開設1周年を迎えた。同センターでは、もっと多くの同胞に活用してもらうために、この間の活動を総括し、運営の充実化を図る。相談事例をもとにしたQ&A形式の冊子の作成や民団ホームページへの転載なども予定している。
相談、多岐に約800件
在日同胞および日本人の弁護士、税理士、司法書士、行政書士ら25人でスタートした専門相談員は現在32人を数える。
この1年間の累計相談件数は約800件(7月17日現在)にのぼる。相談内容では戸籍関係(戸籍整理、婚姻、離婚問題など)と相続関係(韓国の相続法、韓国における不動産相続、日本内不動産の相続、遺言状の作成など)に関するものが半数近くを占める。税務など税理士関連の相談は比較的少なかった。
心の問題を含む医療関係の相談も50件近くあった。公的年金受給、無年金問題、生活保護など社会保障、福祉に関する相談も20件以上あった。
ニューカマーといわれる同胞からは各種在留資格に関する相談や給与未受け取り、労働災害、金銭トラブルなどに関する相談が多かった。不法滞在者からの電話相談も少なくない。
このほか、2重国籍解除、「朝鮮」や日本国籍から韓国籍への変更など国籍問題、兵役問題、住宅問題、交通事故の処理・保険金問題、債務・債権問題など、相談は多岐にわたっている。
予約制を原則としているが、実際の相談は予約約200件に対して当日の飛び込み相談のほうが約500件と多かった。 予約制による直接面談のほかに①電話による直接相談②インターネットによるテレビ電話(ウェブカメラ)を使った対面相談(センター~地方本部)も行われている。相談時間は1人1回30分とし複雑な相談は専門家が判断して別途に個別相談または継続相談とする。
相談日時は、土・日を除く週5日、13時から16時まで。電話受付は9時半から16時まで。(℡03-3454-4911、FAX03-3454-4632)
■□
「多くの方から感謝」専門家も今後に意欲
第2回全体会議
生活相談センター開設1周年の17日に、韓国中央会館(東京都港区)で開かれた08年度第2回全体会議では、過去1年間の相談内容別報告と前半期方針に関する経過報告を受け、同胞へのサービス、サポートの充実化のための今後の課題および運営について意見交換が行われた。
鄭進中央本部団長は冒頭のあいさつで、「貴重な時間を使い、ボランティアとして専門相談員を引き受けてくれた皆さんに感謝します。1年間やってきていろいろな問題もあったと思いますが、同胞のためにもっとよいものにしていきたい」と表明、充実化へ一層の協力を要望した。
センター設立時の中心メンバーの一人である崔聖植行政書士は「民団が各分野の専門家と協力して全国の団員を対象に直接相談を実施したのは初めてのこと。この1年間、多くの方から感謝の言葉をいただいた。さまざまな相談に応えることができたのは、専門相談員の尽力と協力のおかげです。いろいろな課題も見えてきたので、皆さんとひとつひとつ克服していきたい」と語った。
(2008.7.30 民団新聞)
◆北九州市:就職相談員を配置、生活保護受給者支援へ--来月から /福岡
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20080730ddlk40010339000c.html
北九州市は29日、現在進めている生活保護行政の運用見直しの一環として、保護受給者の就職活動を手助けするキャリアカウンセラー3人を、来月1日から市内3福祉事務所に置くと発表した。市は今年度当初予算に事業費309万円を計上している。
カウンセラーは、民間企業で人事部門の経験のある人々を起用。保護受給者への求人情報提供や、採用面接時の付き添いなどが主な業務内容となる。
配置されるのは門司、若松、戸畑の3福祉事務所。平日に週1~2日、午前9時から午後4時まで勤務する。【平元英治】
〔北九州版〕
毎日新聞 2008年7月30日 地方版
◆ニュースUP:現場で考える 16年ぶりの西成暴動=社会部・堀江拓哉
http://mainichi.jp/select/opinion/newsup/news/20080730ddn005040064000c.html
騒然とする大阪府警西成署前=大阪市西成区で6月13日午後11時31分、三村政司撮影(一部画像加工をしています)
◇生活苦、渦巻くうっ憤
日本最大の日雇い労働者の街・あいりん地区(大阪市西成区)で16年ぶり24回目の暴動が起きた。記憶に新しいと思うが、6月13日から6日間、断続的に労働者らが大阪府警西成署を取り囲み、機動隊と衝突した。労働者や警察官20人以上がけがをし、逮捕者は24人に上った。なぜ、あいりんで暴動が起きるのか。改めて背景や原因を考えた。
「ここは本当に日本なのか」。目の前で繰り広げられる光景に息をのんだ。暴動は4日目に最大規模になり、約450人の労働者や若者らが集結。機動隊に向かって、空き瓶や歩道の敷石、自転車のサドルが飛んでいく。機動隊の脇にいる私の頭上で、カップ酒の瓶が電柱に当たり、割れた破片がバラバラと降ってきた。ふと近くを見ると、自転車が燃えていた。
激しい衝突は翌日も続いた。機動隊による高圧の放水に逃げまどう人たち。足をすくわれ、転倒する人もいる。ジュラルミンの盾を手にした機動隊が一斉に迫り、投石などをしたとみられる10代後半の若者や労働者らを確保した。隊列の間に入り込んでしまった私の四方から、隊員が押し寄せる。怒号の渦の中、方向感覚がまひした。気が付くと隊員に腕をつかまれ、隊列の後ろに出されていた。
◇
暴動のきっかけは、西成区の無職の男性(54)が6月13日夕、「昨日、警官に暴力を振るわれた」と同署に抗議したことだ。飲食店であったトラブルについて男性は署内で事情を聴かれ、その際に暴行を受けたと主張したが、署は「暴力は一切ない」と否定。男性から相談を受けた釜ケ崎地域合同労働組合の委員長、稲垣浩被告(64)=道路交通法違反罪で起訴=が、署の前で「謝罪しろ」などと抗議演説を始めた。
演説を聞いた労働者らが署の周りに集結し、空き瓶を投げ入れた。夜には機動隊との激しい衝突に発展した。労働者らは未明に解散し、夜にまた集まった。騒ぎを聞きつけて地区外から若者も集まった。ところが、やがて「謝罪しろ」と繰り返すだけの演説に「根本的な解決になってない」と詰め寄る労働者が現れた。18日に稲垣被告が逮捕されると、空き瓶などの投げ込みはごく一部となり、暴動は収束。翌日以降はほぼ普段通りの光景に戻った。
暴動のさなか、労働者に話を聞いた。「労働者は人間と思われてないんや」「憂さ晴らししたいだけ」「おれたちのことを忘れてもらったら困る」。表現は違っても、どの人もうっ憤がたまっていた。不安定な生活を送り、世の中に対する不満や不安でいっぱいの日雇い労働者たち。そのはけ口が示されたことで、一気に暴動へとつながったのだろう。きっかけとなった出来事について語る人は少なく、知らない人さえいた。
あいりんでは1961年に初めて暴動が起きた。90年や92年の暴動では駅舎や車が放火され、スーパーが襲撃されるなど周辺にも被害が及び、日中も緊迫した雰囲気だったという。今回、日中は平穏で、暴動が起きている夜も裏通りの屋台は普段通り営業していた。緊迫感はなく、落差に拍子抜けするほどだった。
暴動で目立ったのは、地区外から集まった10代後半の若者たちの姿だ。花火や煙幕を署に投げ込み、投石にも加わって騒ぎを大きくした。若い男女が「機動隊ってどっちから来るん? ほんまゲームみたいやわ」「祭りや。写メ撮らな」と話し、見るとカメラ付き携帯電話を構えていた。「騒ぎのための騒ぎだったのか」と疑問に思った。
◇
「かつてないほど仕事がない」。労働者が口をそろえて言う。西成労働福祉センターによると、4~6月は公共工事の新規着工が少なく、基本的に求人は少ない。7月以降に求人が現れ、秋から年末にかけて伸びるのが普通だが、昨年は違った。センターは「求人件数の伸びが鈍かった。建築基準法の改正で建築確認審査が厳しくなり、新規着工が大幅に減ったのが原因」と説明する。今年4~6月は昨年に比べあっせん件数が12%減少し、7月に入っても伸び悩んでいる。
求人の減少に加え、同地区では労働者の高齢化が追い打ちをかける。雇用保険被保険者手帳(白手帳)所持者のうち、55歳以上は86年末は25・5%だったが、07年度末は57・4%に達した。高齢になると働き口も見つけにくく、病気を持つ人も増え、ますます生活は不安定になる。同地区の生活保護受給者数は20年前の7倍以上に膨らんでいる。
NPO法人「釜ケ崎支援機構」の山田實理事長(57)は「あいりん地区では働くことが難しく、人として普通の生活ができる環境ではない。高齢化や産業構造の変化などに対応する仕組みを国や自治体が作らないと、火種は存在し続ける。ささいなことがきっかけで騒動が起こりやすい状況にある」と説明する。
暴動が終わり、梅雨が明けた。あいりん地区に足を運ぶと、以前と変わらぬ平静さが戻っていた。だが、一皮むけば、そこには労働者のうっ憤が渦巻いている。根本的な解決を図らなければ、騒ぎは起き続ける。暴動の光景がよみがえり、そう思った。
毎日新聞 2008年7月30日 大阪朝刊
◆視覚障害詐欺事件 被告が「供述調書は内容がわからず署名した」と抗弁
http://www.bnn-s.com/news/08/07/080730183358.html
07月31日(木) 00時30分
文:糸田
写真拡大
札幌地方裁判所
全盲と診断されたにもかかわらず、運転免許を更新したが「一切、記憶がない」と手続きを否認。
全盲と偽り、札幌市から生活保護費や介護サービス費用の一部など計540万をだまし取ったとして、詐欺の罪に問われている丸山伸一被告(50)の第3回公判が30日午後3時から札幌地裁(嶋原文雄裁判長)で開かれた。
丸山被告は、1999年4月に「視神経炎、全盲」と診断され、市から視力障害1級の認定を受けた。日用生活用具の給付やホームヘルパー利用などの福祉サービスを提供され、03年10月から受給した生活保護には保護費に障害者加算分が上乗せされた。
ところが、丸山被告は02年9月と昨年10月に運転免許を更新、視力検査で両眼あわせて「0.7」以上であったことが判明した。今年2月に詐欺容疑で逮捕され、生活保護費の障害者加算分を計約210万円、福祉サービスなど約330万円相当を札幌市から不正に提供させたとして起訴された。
丸山被告は、初公判で生活保護費、第2回公判で福祉サービスのいずれについても「(全盲を)装ったということはない」と起訴事実も否認した。
30日の公判では被告人質問が行われ、被告と弁護人、検察官、裁判官との間で以下のようなやり取りがあった。
弁護人 だましていないと主張しているが、端的に言えば自分には視力がないということで間違いないか。
被告 間違いありません。
弁護人 警察の調べでは免許を更新しているとされているが。
被告 自分では一切記憶がない。やってないということです。
弁護人 供述調書では起訴事実を認めているが、なぜ違うと言わなかったのか。
被告 自分が一番びっくりしている。(取り調べでは)担当の刑事による泣き落しで始まり、親が子を諭すように言われて丸め込まれた。すべて説明した。刑事から言ったままに書いているから心配しなくていいと言われていたので調書に署名、指印した。
弁護人 供述調書の読み聞かせはなかったのか。
被告 まったくなかった。だまって出来るのを待って署名、指印した。
弁護人 なぜそんなことをしたのか。
被告 自暴自棄になっていた。警察署では誰にも助けを求められないと思いヤケになっていた。早朝から夜遅くまでの取り調べで参っていた。怒鳴られ、罵倒され、机を叩かれたりした。時には襟を掴まれたりして、恐ろしくもなりますよ。
弁護人 裁判所に言いたいことはあるか。
被告 正しい裁判を下してほしい。偏った見方だけは絶対にして欲しくない。確かに視覚障害、精神障害、身体障害、情緒障害という病気という病気はすべて持っているが、人間を差別するような見方をしないで欲しい。人間なんだ、獣じゃないんだ、それだけはわかって正しい裁可を下してほしい。
検察官 平成14年と平成19年に自動車免許の更新しているという証拠があるが、自分が手続きしたものではないということか。
被告 そうです。
検察官 誰が手続きしたのか。
被告 自分ではない…やったとしたら親戚の者です。
検察官 供述調書への署名は、罫線の中にきれいに書かれているが、どのようにして行ったのか。
被告 詳しい事は憶えていないが、体調が良ければ明暗はわかるので、調書を顔に近づければ、文字はわからなくとも書く場所はわかる。
検察官 調書が、詐欺を認めているのか争っているのかわからずに署名したのか。
被告 そうです。警察官を信じていたが、裏切られた。
検察官 どうして裏切られたと思ったのか。
被告 言ったことと違うことを調書に書かれたから。詐欺ではないと訴えていた。
検察官 取り調べの警察官はどんな事をあなたにしたのか。
被告 本人に聞いて下さい。正面から襟首掴まれたくらいです。
裁判官 勝手に調書が出来上っていたなら、あなたが詐欺容疑の否認を貫き通しても、暴力を振るう必要はないのではないか。
被告 …わからない。
裁判官 自宅から穴開きの免許証が3枚見つかっているが。
被告 …説明できません。
弁護人 最後に確認したいが、供述調書は警察官への信頼から内容を知らずに署名したのか、それとも訴えたが怒鳴られたりして自暴自棄や諦め、投げやりな気持ちになって署名したのかどちらなのか。
被告 …内容をわからず署名した。理由は…混乱しているが…だまされたと言う事だけ。
次回の公判は9月1日午前10時半、論告求刑が行われ、結審する。
*作成:
橋口 昌治