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「規範的社会理論の批判的検討――共通悪アプローチをめぐって」

安部 彰 20080914 日本社会学理論学会 於:神戸大学

last update: 20151225

要旨

 我々の共生を積極的に動機づける―基礎づける―「通約的な価値(共通善)」など存在しないということ、したがって各人が抱く信念/価値は多様であらざるをえず、またそれは望ましいことでもあるという「多元性の事実」は、現代の規範的社会理論の認識上の出発点である。にもかかわらず、ある通約的な価値を措定する立場がある。「多元性の事実」は認めたうえで、しかし我々は「互いに回避したいと思う価値(共通悪)」のもと連帯できるはずだというのである。かかる認識/方向性は基本的に正しい。だがその問題は「共通悪とは何か」ということである。たとえばR・ローティはそれを「残酷な行為 cruelty」―それがもたらす身体的/物理的苦痛と精神的苦痛―であるとする。本報告では、かかるローティの理説を検討しつつ「残酷な行為」―とりわけ精神的苦痛―を回避することにまつわる重層的な困難について指摘する。そのうえでしかし不要な苦痛を減らすための道筋について若干の展望/示唆を提起する。


*作成:石田 智恵
UP:20080913 REV:
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