HOME > Tateiwa >

応募書類・草稿

文責:立岩 真也


 *「立命館大学東日本大震災に関る研究推進プログラム」に6月24日に応募→7月19日落選通知。
 *以下は草稿です。提出したもの発見したら差し替えようと思います。

T.研究目的、研究の必要性 49×19行

 1)この事態の下で、障害や病を有する人たちの生活・避難が困難であること、避難できたとして避難所の生活が困難であることはよく報じられる。電源や栄養剤の確保が生死を左右する。さらに、困難だからと、見知らぬ地の福祉施設・病院等に送られ、場合によっては、死ぬまで、そのままになってしまう。これらが起こる可能性があり、現に起こりつつある。そうした事態をできる限り防ぎ、住みたい場所で住める条件を確保すること、介助(介護)態勢を含め受け入れる場を全国に確保しようという動きも、全国でまた各地で、とくに福島県の全県的な組織として「被災地障がい者支援センターふくしま」によって、開始されている。私たちは、これらの組織に関わる人たちとこれまで研究企画等で25年以上の交流の実績がある。所在がまだ分からない人たちも含め様々な場所にいる人たちの生活の様子を調査し、次の生活につなげる方途を探る。
 2)同時に、居住可能な、そして介助等が必要な人については必要を満たす制度があり、生活保護の利用等の相談にも乗れる人・組織のある各地の受け容れ先についての情報を集め、ウェブサイトに掲載する。この活動は既に始めているが、助成を受けることにより、より積極的・継続的な情報収集・提供が可能になる。そしてそれはそのまま、災害時における、各地の受け入れ体制の現状・課題についての研究になる。
 3)以上を含め、障害者・病者と震災全般に関わる情報を収集・掲載・分析する。私たちは3月14日からCOEのウェブサイト(http://www.arsvi.com→「生存学」で検索→右上に赤字で「東日本大震災」)から情報提供を行ってきた。このサイト全体への年間ヒット数の累計は1100万を超えており、震災後は、関連のページがアクセス数の上位を占めており、月間の総ヒット数も100万を超えている。既にこの活動については新聞等でも紹介されており、震災関連の雑誌の特集号や単行書で私たち自身も紹介に努めている(そしてこれらの文章もまたサイト上にある)。とくに関連報道の収集・公開は地味で地道な作業だが、記録を残し、報道のあり方を含め、今後の対応のあり方を示すためにも必要である。

U.研究計画・方法 49×18行

 1)全国組織として設立された「東北関東大震災障害者救援本部」および、阪神淡路大震災以後、全世界での災害救援のために資金を集め供給してきた「ゆめ・風基金」、そして東北各地の組織と連絡をとりあいながら、調査を進める。とくに被災現地では医療・福祉機関、行政機関との折衝などに立ち会い、時にそれを補佐する専門知識や経験をもった人材が必要であり、私たちはそうした場面に積極的に関わる意志を有し能力を有する人材を擁している。最大限安全に留意しつつ、大学院生他が交替で現地に逗留し、ときにこれまでの研究・活動等で培ってきた知識を生かし、参与観察的調査を継続し、記録しそれをまとめていく(このことについて既に許可を得ている。)
 2)受け入れについての連絡を待つだけでなく(これは当初より行なっている)、全国にある自立生活背インター(CIL)等民間団体や行政機関から積極的に情報を集めて、公開する。一時的な移動・移住を求めて人と受け入れる人・組織とをつなぐ。既にその態勢を作ることができた人々・地域や、気持ちはありながら困難に直面している人々・組織にいてもその困難のありかを検証し、打開策をともに検討する。また現在に至る蓄積が存在する。いま1)現地での対応と2)支援・受け入れの態勢かまがりなりにも存在するのは、阪神淡路大震災後の、さらに遡ればここ40年以上の人々の行動と智恵の蓄積があってのことである。その歴史・推移も辿り、論文・学会報告等で報告する。
 3)以上の作業・研究の一環として、HP更新作成・更新の一部を継続する。少なくとも5年は継続せざるをえないと考えるが、まず本年度については、今回の助成をその費用の一部にあてるものとする。また、停電の被災地で、独居で生き抜き、現在は仲間の支援に関わっている人工呼吸器使用者を招いて、公開の場で、お話をうかがう。その記録を文字化し、映像とともに公開する。

V.本プログラムを契機とする研究活動の展開・方向性 49×20行

@今後、科研費などの学外研究費に申請し、どのように研究を発展させようとしているのか
A本研究終了後、どういう形式・内容で研究成果を発信し、どのように学術的な評価を得ようとしているのか
Bその他、研究活動の展開・方向性に関する点(Bは該当がない場合、記入は不要です)

@科研費A「身体の現代」の2012年度採択を目指し(2011年度は不採択、その申請書類は上記のHP表紙→「歴史」の項目などで全文を読むことができる)、その一部に、この数十年から現在に至る活動の推移を組み込む。阪神淡路大震災以降の資料は既に大部分を収集しているが、それを補い、全体を保存し記録する。それは貴重な資料の散逸を防ぐものでもある。
 それと別に、科研費あるいは民間助成に応募し、障害者・病者が危機的な状況においてどのように必要な資源を得るか、またどのように自由な移住・居住を実現するのかについての研究を継続する。
 既に私たちのサイトの関連ページは、障害・疾患別の対応に関わる文章の掲載やHP上の文書へのリンクを行なっている。それらを整理・検証し、加えるべきを加え、各々の内容・有用度の度合いや問題点を点検し、参照すべき情報集とし、利用に供するものとする。
A事柄の性格上、終了後だけでなく、研究を進行させながら報告・発信を行なう。この7月9日、韓国でこれまでの研究報告を行う。また10月1日の障害学会大会では「被災地障がい者支援センターふくしま」の代表を招聘し、報告を受け、議論する。さらに11月にやはり韓国での国際学会で、主に大学院生やPDがその成果を報告する。上記したように、研究は本助成の継続可能性と別に、すくなくとも5年は継続されるだろう。本助成の終了後の報告・発信ももちろん積極的に行なっていく。英語・韓国語のメールマガジンでは既に幾度も現状と私たちの活動を短く知らせてきたが、このたび創刊した多言語(主に英語)雑誌『Ars Vivindi Journal』でも活動の報告や論文の掲載を行っていく。
B上記した多言語雑誌も含め、地震に限らず危機に対する対応は、世界のどこにいても必要とされる。次年度以降も継続する生存学研究センターの活動の一環として、学術的な研究成果に限らず、有用な情報は翻訳し、世界中で使えるものとして提供していく。


UP:20110623 REV:
災害と障害者・病者:東日本大震災  ◇東日本大震災:本拠点の活動関連  ◇立岩 真也 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)