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「死に急いでいるような風潮にあえて「生存学」を投げかける 後編」
立岩 真也
2009/08/24
『AERA』22-37(2009.8.24):87
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/koho/aera/018.html
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Chinese
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/koho/aera/018.html
前編では「生存」ということにギリギリで接している人たちがたくさんいること、そういった人たちがどうやって生きていくかに関わる様々なことを考えるのが「生存学」だと紹介しました。後編では、より具体的なお話を展開しようと思います。
例えば聴覚障害の人は、聞こえないから見るしかない。今では音声をコンピュータで文字にするソフトがあります。そうした技術が、実際にはどう使えるのだろうか。目の見えない人にも、文字を自動で点字にしたり、音声にすることも可能です。そうしたテクノロジーはある意味で決して難しいものではありませんが、日常生活という現場で使いまわしていこうとすると数々の問題が発生します。ソフトの精度だけではなく、情報流通の面では、著作権法によって許可が必要になるなど、社会や制度的な問題が出てくるわけです。視覚障害者に出版社がテキストデータをどの程度無償で提供してくれるのかなどを調査・分析した報告書も発表しました(
生存学研究センター報告6
)。
生存学は、経済学などのように大きな前提や命題はありません。テーマによって最適な手法や理論を駆使していこうというのが基本スタイル。メディアでは、少数派の声はまだ小さいですよね。そうしたマイナーな声や皆さんに知ってほしいことをインターネットのホームページを通じてどんどん発信しています。調査報告を出したから、情報を発信したから世の中が簡単に変わるわけではありません。ただ、情報を発信することで、それぞれのスタンスで様々な意見や事実を言っていただくことを大切にしたい。
僕たちのホームページ
には膨大な情報が集まり、かなり実践的なレベルに達していると僕は判断しています。
生きるのが難しい時には、技術を使えば少しは生きやすくなる。であるなら、使い勝手をできる限り良くした方がいい。そのためには何を解決すべきなのか。また、解決のためにどのような視点が必要なのかを当事者の意見(技法)を尊重しながら拾い上げていく。世界で起こっていることでも、拾われていないことはたくさんあります。そういったものを拾い上げて発信していく。これも「生存学」の使命なのです。
AERA 2009年8月24日号掲載 (朝日新聞出版)→
前編
UP:20091204 REV:20100203 20120221
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