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全国「精神病」者集団ニュース 1984.10


last update:20100626


全国「精神病」者集団ニュース 1984年10月23日

ご挨拶
 秋桜は北国から南下しつつ秋を色どると聞きます。桜が桜前線∞開花宣言≠ネどの噂とともに、はなやいだ春をつげるのに対しこのメキシコ原産のコスモスは、静かに秋の風情をたかめています。仲間の皆さん!!いかがお過ごしですか?
 病状との格闘、生活の困難、その上10月から実施の健康保険制度の改悪に伴う一割負担の重圧等々、弱々しく心定まらぬ仲間の胸中に私たちは「コスモスでもながめに秋を散策しては?」と呼びかけたいと思います。
 そして、また、その問いかけも空虚に響く宇都宮病院をはじめとする拘禁状況下の精神病院内の仲間、仲間、仲間・・・・・・。
 病むものに最大の特効薬といえる「なぐさめ」も、高い壁にはばまれ届かぬ赤堀さんと獄中病者・・・・元気でいて下さることを祈ります。
 私たち事務局は、それらを意識の上に浮かべるとき、ニュース作りも斗争方針も決意の高まりで燃えてきます。事務所にか細い仲間の声が届きます。高らかに斗争宣言する仲間の声が激励します。その一切に支えられ、今日も仲間の絆≠深めるニュース作りをしています。
スケジュール
☆10月27日 PM3:00?
 島田事件の学習会
  静岡市民会館にて
☆10月3日?4日
 京都 臨床心理学会
☆11月11日
 赤堀さんを生きて奪い返そう 全国総決
 起集会 静岡にて AM11:00?
(会場未定・・・判明仕第呼びかけ文を返ります。)
☆11月16日 PM6:00?
 拘禁二法上程阻止、刑法改悪ー保安処分粉砕、全国総決起集会
 東京 日本教育会館大ホールにて
おことわりとお詫び
事務局報告は、紙面と時間の都合で、来月のニュースにまわさねばなりません。
 心よりお詫び申し上げます。
会計8・21〜9・26
114、300円のカンパがありました。ありがとうございました。
地域活動報告
山形 Oさんより
 病院を退院して、まだ4日目ですが、これからがたいへんだと思います。
 その内、赤堀さんの面会に行きます。
横浜 ロボトミーを糾弾し、Aさんを支援する会
 この10年「国」及び病院に対し斗い続け、「国」に対しては裁判所の不当な訴訟指揮によって「時効」の壁を突破しえなかったものの、病院については賠償をさせ、謝罪させることができ、斗いの一応のピリオドを打つことができました。
 会は今後「神奈川ロボトミーを糾弾する会」に変え、反保安処分戦線の一翼として活動を続行します。10年にわたる御支援、共斗に心からの御礼を申しあげ、今後も変らぬ戦斗的連帯を御願いします。
大阪 ささ舟会・Nさん
〈7月例会報告〉
 討論は、
 薬について@薬は潤滑油だから飲まねばならない。A薬を止めたら精神科と縁が切れるB薬の量をあやまり再入院になった事もあった。C精神科の薬では特効薬はない。D薬は病状をおさえるだけ等々。
 また、再入院についてや、死ねという声が聞こえ、死のうとしたが危いところで止められたこと、家を出ると思い、家から一歩も出なかったが、実際家を出てみたら殺されなかった等々。
 また宇都宮病院の事も論議されました。
 11月3・4日は一泊旅行の予定を計画しています。
兵庫 Kさん
 一年余り入院していますが、まだ退院の許可が下りません。めげそうな毎日です。
 前号の詩「友よ」は僕に言ってくれたかのようです。斗い、連帯、勝利、そういうものが人生の全てのような思いがします。
香川 Aさん
 「夕立に ひときわとけて 蝉しぐれ」
 仙祥庵(富士市)の件についてはおどろきました。体調のこともあって「病者」は「健常者」の体力についてゆけないし、行動力も限界があるようです。こちらは私一人、保守一色の中、何とかキッカケをつかみたいと思います。
 「交尾とて 闇夜さぐれば月見草」
 現在、入院者の退院要求に対し、何とかしたく、ソーシャルワーカーや知人や看者仲間に相談しましたが、皆一様にもう手遅れとか、そこまでする必要がないとか反対しております。年令60才すぎ、最近病棟内での盗癖やまず、リンチで殴られたり、私有物を罰として没収されています。
保護者は引きとる気持がなく、このままでいけば、増々悪くなる一方、見て見ぬふりもできず、拙宅に引き取るのを覚悟の上で、何とかしてあげたく思っています。
宮城 Kさん
 赤堀さんは元気で頑張っておられますか?
毎日の生活に追われ、何もできない私を許して下さい。とにかく関心だけは持ち続けようと思っております。
 現在「自由化」「輸入拡大」政策で、牛肉の方もパッとせず、財政難に苦しんでいます。
今後ともよろしくお願いします。
島根 Sさん
 「病」者集団ニュース臨時号(8・1)にあった「厚生省の都道府県への指導監督等の強化の通知」を読んで、一つだけ気付いたのは作業療法について何もふれられていないことです。患者のこづかい等とならないで、病院側が取っている病院がかなりあるのではないでしょうか!!
 最近、山陰中央新報(新聞)へYさんが病院のことを投書されていたのを。編集局長より「一方的で具体性なく、もう投書をやめてくれ」と手紙が来たそうです。私も言論の自由を奪うものだと抗議の手紙を出しました。
 絆9号は、表紙からしてたくましさを感じさせ、内容も読みやすく、女性の方の文が多くあるせいか、親しみやすく、すばらしいものと思いました。
大阪 Aさん
 現在の病院は、病気を癒すという職業的貢献はない。余計な薬は入れるし、社会復帰した者でも、また薬を盛って病院へ引き込んでいる。もうけたいというのが経営者の本音だろう。そしてアチコチからペコペコと頭を下げてもらいたい、どあつかましすぎる!!
愛知 0の会
○関東「精神病」者有志の会主催「赤堀さん奪還、刑法−保安処分粉砕総決起集会」が呼びかけられ、0の会ではそれに賛同表明し、カンパを送付しました。また当日の0の会は2名の参加者を送りました。
○聴覚障害者の山内さんが「厚見中学校放火事件」でデッチ上げられ、名古屋高裁で不当にも逆転有罪判決をうけました。無罪を獲得するため最高裁に上告されました。この斗いを支援し署名活動を行いました。
○刑法改悪−保安処分来春国会上程阻止の斗いの緊急性を、愛知県連絡会議の事務局長、弁護士に訴えました。
○狭山の石川一雄さんへの差別裁判に対して再審を一刻も早く開始させるよう、検察庁に証拠開示要求書を出しました。
○10月19日、赤堀さんの獄中弾圧に抗し、再審開始要求の街頭情宣、ビラまきをしました。
精神医療改革と保安処分国会上程に抗して
★はじめに
 3、14、宇都宮病院告発以後、精神医療(行政)に関する報道はおびただしい数にのぼる。
 その報道は、おおまかにみてイ国連人権委員会、差別防止、小数者保護小委員会に9本の政府(精神医療行政)を告発したもの、ロ厚生省の指導による精神医療の手直し(改革)の流れ、ハ宇都宮病院及び栃木県内の精神医療の不当性(菊池病院の無資格診療の告発、聖十字病院の看護人拉致事件)、八王子市の市長同意の不当性の告発の3つの流れに大別できるであろう。
 その流れの中で、今月は厚生省の精神医療(行政)の改革に焦点をあて、その批判をのべるとともに、刑法改悪―保安処分新設の国会上程を見据えた刑法決戦期の突入を宣言してゆきたい。
★ 8・29厚生省は「精神障害者」の社会復帰を図る態勢のたち遅れがあるとのべ、来年度から社会復帰を進めるための具体的方針を2点打ちだした。
 その方針は「昼は働き夜は治療」にと、ナイトケア部門を全国に15ケ所設置し3年間で各県に一ケ所づつ整備するとし、第二は、全家連(全国精神障害者家族連合会)の各県支部が行なっている在宅患者や家族の巡回訪問生活指導を、同省が一層充実するよう補助するというものである。
 ナイトケア部門は、病院ではなく「施設」で、これは私たちが終末施設(終生封じ込める終末施設に他ならない)として恐れた中間施設に他ならない。この背景には、積極的な退院方針を持たず「危険者―精神障害者」の監視と、日精協(日本精神病院協会・病院のオーナーの集団)の営利追求に対し、損失をまねかない妥協策として講じられたものといって、ほぼ誤りはないであろう。
 私たちは、社会での自立を志向する立場から人民内部の差別と偏見を除去し、共に生きてゆける社会作りをしない厚生省≠フ姿勢をはっきりとみてとらねばならない。
 また第二の在宅患者訪問指導への援助は、じゅう軟な刈り込み監視網以外の何ものでもない。援助が必要なのは「精神障害者」自身が「精神障害者」の利益の追及をめざし組織化している各地患者会に対してである。
★ 9・14厚生省は、患者処遇への指針作りと称し、精神科医、法学者による委員会を設置した。
 委員会は「作業療法」「通信面会」「閉鎖病棟・保護室」の分科会にわかれ、それぞれ人権保護策への視点からガイドライン(線引き)を引くことを目的としたものである。私たちは、「作業療法」「通信面会」「閉鎖・保護室」を、障害者解放の視点で全面的に拒否すべきものと考える。
 第一に「作業療法」で症状が軽減したとは認めがたい。「作業療法」によってもたらされる収益は病院に吸収され、院外作業としてナイトに出かけても、労働が「療法」とされる為、その賃金は労基法に定められている最賃法からも除外の対象とされる。休息と療養を目的とした病院で拒否するべき「祖業療法」が強制されたにがい体験は、体験したものでなければ解らない。
 第二に「通信面会は憲法で保障された基本的人権は言うに及ばず「通信や面会」が認められなかったが為、自らの意志表明や権利追及の機会を奪われ、他者がその代行を行い、どれ程大きな損失をこうむったことか!
 第三に「閉鎖・保護室」は精神医療にのみ認められている三類看護(患者6人に看護婦が一人)に現われている医療スタッフの不足を充実に転換し、鍵や鉄格子こそはずすべきだと信じる。
 何よりも訴えたいのは、心を病む人≠ノ対し、鍵や鉄格子に入れられる事で、この病への極度なコンプレックスの増幅である。
 私たちはガイドライン作りで、これら上記3点の問題が、拒否の方向をもたず、逆に固定されることに怒りと恐れをもつ。
 ガイドライン作りと、その委員会は粉砕以外にない。
 厚生省のこれらの方針は、すでに実態調査で方針化が目論まれ、新たな精神医療体制内整備と再編に着手した事を、充分に知る。そして、私たちが恐れる差別と分断が一層鮮明にされ、監視網が強化されてゆくことを知らねばならない。
 また、これらの動きと連動し、精神衛生法の改悪が具体的に進行しつつある。
 ここで指摘した重要な点は、
 一九五六年、厚生省に精神衛生課が新設され、
 同年、法務省に刑法改正準備会が設置され
 一九六一年、精神衛生法の一部改悪がなされた年に、改正刑法準備草案が提示され、
 一九六三年、第二回精神衛生実態調査が強行され、
 同年、準備草案の検討がはじまる。
 一九六四年、ライシャワー事件を契機とした精神衛生法の改悪、
 同年、法制審議会発足、
 といった歴史的事実である。
 すなわち、精神医療(行政)の改革は、常に刑法ー保安処分の推進の水先案内となってきたのである。
 現在の厚生省の精神衛生行政体制内整備は文字どおり、来春国会上程を射程に入れた反動攻勢であり、私たちはここに刑法の決戦情勢の煮つまりをはっきりと押えなければならない。
 宇都宮の血なまぐさい暴力機構の告発をも「精神障害者」の差別・分断政策へと転換してゆく厚生省の姿勢を糾弾し抜かねばならない。
 一方、行革路線をつっぱしり経済再編を目論む中曽根政権は、当然のことながら精神医療(行政)予算の削減を着手し、「精神障害者」をうけ皿のない=u社会復帰」にかりたてる無謀な政策を打ち出す危険が充分に考えられる。
 私達は、その無謀な「社会復帰」政策にどう対処すべきなのか?今はどこれを問われている時期もない。
 そこで、こうした政策をすでに20年前に遂行したアメリカの「精神障害者」の実情にひきつけて考えてみなければならない。
 1963年のケネディ発言(朝日の社説)に端を発し、「精神障害者」退院の促進を打ち出しうけ皿のない社会≠ノ追放したアメリカ(アメリカの精神病院は公立が多い。日本の精神病院の場合は私立(ブライベート病院・・・)が圧倒的に多く、病院の経営者の利害がからむので退院させないという事情の違いがあるが・・・中間施設化はその背景をもっている。)の現況をしっかり見ておかねばならない。
 一説によるとアメリカでは「精神障害者」が「生保」でドヤ街にいる。その生保をギャングがピンはねするという都会の実情、あるいは青木薫久氏(精神科医師)が月刊「状況を主体」の11月号で「アメリカの現状報告のなかで数千床もあった各州の州立病院は、500床から800床を残してカラにされ、公的中間施設も廃止されるところが多くなるなど、総合的な社会復帰計画もないどころか、かえって劣悪化された環境のなかに退院させられた患者が症状悪化したり、あるいは自治能力のないため、再び病院にもどるなどから、犯罪に走ったり、患者が露頭に迷ったりすることも多く、アメリカの無計画な社会復帰政策に疑問をなげかけている。と引用しておられる悲惨さ、本年夏のTAMA(アメリカ医師雑誌)には「患者のかなりの部分が刑務所に出たり入ったりしている」(地域で支える受け皿がないため)という報告すらある。むろん私達はアメリカの政策の追認はしない。
 そして私達の斗いは欠格条項、差別条項といった差別分断政策に抗し、その撤廃や、日常的な差別糾弾の斗いを通し、「精神障害者」が生きられる社会の構築をめざすのは当然のことである。
 そして長い病院生活と「精神障害者」であることによって奪われてきた生活権(働く場所、住む家など)を奪いかえし、現実「精神障害者」が生きてゆくあらゆる手段を丁寧に奪いかえす方向が何か′サ在問われている。
 再び施設病院に入れない!!権力に捕らわれない!!地域で共に生きつづける!!を共斗の原則とし、この問いに答えてゆく為に『何を問い、何を獲得』してゆくべきか、あらためて大わくを提起したい。
 第一に「精神障害者」仲間への差別観を払拭し、既成の精神医学の批判とそれにもとづく体調の維持。
 第二に経済の確立(労働権、ならびに生保をはじめとする諸権利の追求)
 第三に「精神障害者」の自活能力の回復(生活手段として、買いもの、炊事、掃除、洗濯など「合理的」かつ実践的な方法の学習と相互援助、共斗活動)
 第四に権力の手に奪われた「病者」の奪還(鈴木国男君の虐殺を再びくり返すな!!)
 第五に「精神障害者」の差別と分断、抹殺の否定的歴史の学習と総括
 その上に立って保安処分の国会上程阻止、保安処分イデオロギー(排外=抹殺ならびに優生イデオロギーによる強制医療)との対決精神衛生法の撤廃。
 私達は一人一人が苦しい病状と格斗する中であるが、これらも常に自覚し、共斗、共生の「障害者」解放斗争の原理を押し進めていこうではないか!
『絆10号』発行にご協力下さい。
 本年中に「絆10号」を発行したいと旨、絆編集委員より提起がありました。
 事務局まで原稿をお寄せ下さい。
 また、発行に伴う予算が会計からはまかなえません。皆さんの心あるカンパを事務局までお寄せ下さい。
郵便局振り込み口座
名古屋9 70488
  大野 萠子
※ 振り込み用紙裏に絆カンパ≠ニ明記のこと。
資料(ニュース参照)⇒8410月東大精医連のビラより?
 本年3月、栃木県宇都宮病院における患者虐殺が報じられ、同病院の看護人によるリンチ、強制労働、面会制限など数限りない人権侵害が次々と暴露されてきた。
 東大ではこの間、宇都宮病院と東大医学部との構造的癒着を明らかにすべく、三島医学部長、原沢病院長、黒川脳研所長、原田精神神経科教授そして宇都宮病院関係者出席のもと、7月23日、9月13日と、二回の公開討論会をもった。
 この二回の討論会には、被害者、「精神病」者も出席し、宇都宮病院の虐殺医療の実態が赤裸々に明らかにされ、この病院の肥大化に重弾があびせられた。そしてそういった追求の中で三島学部長は、これらの人権侵害の事実を認め、被害者に対して謝罪し、又保安処分についても反対を表明したのである。
朝日、84、8、16
日本の精神医療告発
「世界人権宣言」に違反
米の非政府団体
国連小委に文書

 【ジュネーブ十五日=柳沢特派員】ジュネーブで開かれている国連人権小委員会(差別防止・少数者保護小委)に十五日、国際的な権威のある米国の非政府団体(NGO)の国際人権連盟が、日本の精神病患者の取り扱いの実態を人権侵害の実例として告発する文書を提出した。
報徳会宇都宮病院事件について、患者ヘの暴行、薬物の乱用などの具体的事例を挙げただけでなく、強制入院・隔離を基本とする日本の精神衛生行政の在り方自体が「世界人権侵害」や「国際人権規約」に違反しているとして、こうした状況を是正するために、精神病患者の扱いについての国際的基準を早急に作る必要がある、としている。
日本の精神病患者の問題では、先に別の法律家団体が、同じ観点から日本政府に対し、調査や審査機関の設置を勧告したばかり。相次いで国際的な場で日本の「人権意識」が厳しく問われたわけで、政府としても対応を迫られそうだ。
 国際人権連盟は、ニューヨークに本部を置く法律家を中心とした国際的な人権擁護組織で、人権侵害を受けている人びとへの活発なケースワーク、政治犯の救出などで知られる。精神病の分野では、傘下の団体が五〇年代後半からの米国の入院患者を減らす運動で実績をあげたほか、現在同小委で審議中の「精神病患者の取り扱いに関する国際基準案」(ダエス観告)の実質的な推進者でもある。
 内容はまず、政府統計や同連盟加盟団体である自由人権協会のデータを引いて、精神病患者三十二万人の八〇%が強制入院であることや、平均入院日数が政府統計で全病床平均五百二十八日、措置入院患者で二千三百九十六日に及ぶ(いずれも七八年)ことなどの基礎データを示した上で、ダエス報告にいる国際基準とかけ離れている現状を次のように列挙している。
 @「病院の管理者が患者の行動を制限することができる」(精神衛生法三八条)ために、実質的に通信面会の自由が奪われているA「病院管理者は、扶養・保護義務者の同意があれば、本人の同意なしに入院させることができる」(同三三条=同意入院、三四条=仮入院)。
管理者は医師であるが、精神医学の経験は必要とされず、入院の必要の有無の診断も、ときに若いスタッフや看護人が行っているB「都道府県知事は二人以上の精神衛生鑑定医の判断をもとに入院させることができる」(同二九条)。住々にして、この判断は入院をさせる病院の医師から得ているC一度入院させられると事実上退院は不可能であるが、厚生省は患者に適正な審査の道を開くことに反対しているーなど。
 文書はさらに、報徳会宇都宮病院事件に触れ、自由人権協会の調査データをもとに▽患者への日常的な暴行▽無報酬の労働の強制▽三年間に二百二十二人が死亡▽うち十九人が不自然な死因による死亡▽自然死とされているものも含め、少なくとも六人は暴行による死亡だったーを挙げている。
 そして最後に、「患者の虐待については、日本政府はすでに七〇年から注意を喚起されている(注=朝日新聞の報道をさす)にもかかわらず、無関心で何らの措置もとらなかった」と述べている。
84、8、10
朝日 社説
風通しよい精神医療をめざせ
 日本は、また、妙なことで国際的に有名になりそうである。
 「日本の精神病患者の入院数は異常に多い。だが、驚くには当たらない。入院によって利益を得る当の管理者が、多くの場合入院を決めているからだ」と国際人権連盟がいい出した。同連盟は国連人権小委員会に提出した文書の中で、日本の精神衛生行政の在り方が「世界人権宣言」や「国際人権規約」に違反している、と厳しく批判している。
日本の精神医療は、さまざまな点で後遺性をかかえている。政府がこの問題への対応を誤れば人権感覚問題国・ニッポン≠ニして国際的な指弾が高まるおそれもある。
 人口一万人に対する精神科ベット数は、一九七五年の時点で日本二十五床、米。英は十六床。「しかも、日本では入院患者の八〇%が本人の意思と関係のない入院であり、英国の強制入院が五%に比べ異常に高準である」と同連盟の報告書は述べている。
 日本人だけが精神病にかかりやすいのだろうか。日本にだけ、重い精神病が流行しているのだろうか。そんなことはなさそうだ。
 貧血圧や糖尿病の人たちが、通院しながら社会で活躍できるように、精神病の人たちの多くも、いまでは、向精神病と医療スタッフのきめ細かな働きかけがあれば、幻聴や妄想の苦しみから逃れ、家庭や職場で普通の生活を送れるようになった。
 このような治療上の進歩にあわせ、イギリスでは一九六一年、厚生大臣が「一九七五年までに入院患者を半減させる」という通院中心主義を打ち出した。人里離れた精神病院を閉鎖し、通院しやすい各地域の総合病院の精神科を治療の中心にすえ、退院後の患者を支える社会復帰のための施設も用意した。アメリカも、この二十年間で入院患者を三割に減らした。フランス、オーストリア、スイス、西独、イタリアも同様である。
 しかし、日本の精神医療は、いまだに土地代の安い過疎地の私立精神病院中心に行われている。その密室性が、人権侵害をしばしば生んでおり、七月には国際法律家委員会が中曽根首相にあて、患者の人権保護を法改正によって実現するよう勧告している。
かりに、糖尿病と診断された人が、人里離れた病院に強制的に入院させられ、そこでは電話や手紙もチェックされ、家族が見舞いにきても職員が同席して聞き耳をたて、いつ退院できるかは院長の胸一つ、ということになったとしたら、だれも糖尿病の検査を受ける気にはならなくなるだろう。人権無視は早期治療のチャンスを奪う結果を招く。精神病も同じことだと思う。
 少なくとも先進諸国の精神科医たちや行政担当者たちはそう考え、人権を重視した精神医療を実行に移している。国連経済社会理事会の人権委員会も、さきごろ「精神病者保護に関する国際基準案」の中で「すべての患者は住んでいる地域の中で治療されねばならない」とし、人権侵害から患者を守る方策を示した。国際条約化をめざしている。
 アメリカでも、かつて宇都宮病院そっくりの事件が起き、議会が調査にのり出したことがある。この時ケネディ大統領は「精神病及び精神薄弱に関する教道」を発表し、次のようにいった。
 「これらの病院、施設は、職員不足、過剰入院、居心地の悪さといった点で恥ずべき状態にある。思い切ったアプローチをする時期が今来ている。我々は国としてこの人たちを長い間無視してきた。この無視は終わらせねばならない」
 二十年も前、一九六三年のことである。
8、18
日本の患者、動物以下の扱い
国連小委 精神病院の虐待また批判
 【ジュネーブ十八日=柳沢特派員】十七日開かれた国連人権小委で、民間の国際人権擁護団体「身体障害者インタナショナル(DPI)」が、日本の精神病院の人権抑圧問題に言及。
 「日本の現状は根も夢かわしい。多くの病院での患者の扱いは動物以下」と述べた。
 発言はまず、日本についての情報はさまざまな面から以前から取っていたと述べ、これらをもとに「日本の精神病院の現状は、患者の持っているもともとの障害を虐待によってさらに悪化させ、入院障害≠ニもいえる状況をつくっている。これは、治療を一層困難にし、ときに社会復帰を不可能にする」と述べ、精神障害者の「独立の生活と自由の権利」の確立を訴えた。
 DPIは、身体障害者の人権擁護で活躍している国際組織で、本部はストックホルム。日本では八代英太参院議員がアジア地区の代表になっている。
84、8、28 中日
人権侵害などチェック
厚生省 精神病患者対策で方針
 国連や法律家団体から人権侵害を指摘されている精神病患者対策として厚生省は二十八日、強制入院患者に対する精神衛生鑑定医の診察を六十年度から徹底し、回復が認められた場合の退院措置など人権面の配慮を手厚くすることにした。合わせて在宅ケアやナイトケア、リハビリテーション施設など患者の社会復帰対策を強化する方針。
 精神病患者は毎年五千人前後増加
 しており、現在三十五万人。うち自分に傷をつけたり、他人に危害を及ぼす恐れがあると認められた一割については行政命令による措置入院が、また七割については保護義務者の同意などを経て入院手続き(同意入院)が取られている。
 入院患者の場合、精神衛生法では国の指定する精神衛生鑑定医の診察で回復が認められれば、通院、自宅治療などに道を開くことになっているが、一度入院すると退院が極めて難しいのが実情。
 このため厚生省は、現在、年間で三分の一の患者に対してしか実施されていない措置入院患者への精神衛生鑑定医の診察を六十年度から全患者に徹底するほか、同意入院患者に関しても実施率を現在の年間六%から三三%に引き上げ、入院が継続している患者について人権侵害がないか、チェックすることにした。
84、8、29 朝日
昼は働き夜に治療
精神病院に新態勢づくり
厚生省方針

 厚生省は、報徳会宇都宮病院事件など精神病院での不祥事の背景に、精神障害者の社会復帰を図る態勢の立ち遅れがあるとして、来年度から社会復帰を進めるための多角的な施策を実施する方針を決めた。障害者が昼働き、夜は病院で治療を受けられるよう、病院にナイトケア部門を設ける、患者家族の会が実施している在宅患者への指導・相談活動を補助する、などがおもな内容。しかし、同省は「社会復帰を成功させるには、行政施策と同時に、地域や職場の理解が絶対に必要だ」と、住民や雇用主の協力を求めている。
宇都宮病院などの一連の事件では、病院側が患者を抱え込んで営利の道具にしている実態 と背中合わせの形で、好転した患者が受け入れ施設が不十分なばかりに病院から出られずにいる現実が浮き彫りにされた。厚生省の施策は、復帰の受け皿をさまざまなケースに応じて用意することで、現状の改善を進めようというものだ。
 具体策の第一は、精神病院へのナイトケア部門の設置。昼は通所施設で働いたり訓練を受け、夜は病院に帰って専門家のケアを受けるという方式を取り入れ、そうした患者のための病床を確保する。現在も一部の病院で試みられているが、このようなケアには保険が適用されていないため、同省はまずこの点の改正を進めたい考えだ。来年度は十五カ所に設置し、三年間で各県一カ所ずつ整備したい、としている。
 第二は、財団法人全国精神障害者家族連合会の各県支部が行っている在宅ケア活動に対する補助。各支部は、在宅患者や家族の訪問を受けて悩みごとの相談に応じたり、患者宅を巡回訪問して生活指導などに当たっているが、「同じ悩みを味わっているだけに相談しやすい」と好評。同省は、補助金によって活動が一層充実することを期待している。
84、9、14 朝日
精神病院
患者処遇へ指針作り
厚生省委員会 年度内に通知予定
 報徳会宇都宮病院などの相次ぐ不祥事件をきっかけに、精神病院入院患者の人権保護策の強化を迫られていた厚生省は十三日、精神科医、法学者らによる委員会を設置、患者の処遇に関する指針の作成にとりかかった。委員会でたたき会をまとめたあと、公衆衛生審議会精神衛生部会にはかり、年度内には都道府県に示す予定。
 一連の事件では、作業療法の名の下に患者を強制労働にかり出したり、限度を超えた通信・面会の制限、閉鎖病棟や保護室の乱用など、人権保護の上で重大な問題点が次々に明るみに出た。厚生省は、これまで精神病院でこうした事件が起きるたびに、注意を促す通知を出してきたが、行政が医療の具体的な内容にまで立ち入るのは好ましくないという考え方もあって、内容は一般的・抽象的なものにとどまっていた。
 しかし、不祥事の続発で、こうした態度から一歩踏み出し、もっと具体的に守るべき基準を示す必要があると判断。通信や面会を制限できるとすればどんな場合か、作業療法が治療の範囲を逸脱しないために、どんなチェックをすべきか、などについて指針をつくることにした。
 委員会は「作業療法」「通信・面会」「閉鎖病棟・保護室」の三つの分科会にわかれ、十一月まで検討したうえ、たたき台をまとめる。同省はこれをもとに、日本精神神経学会、日本精神病院協会など関係団体の意見も聞いて審議会に諮問。答申を受けて都道府県に通知する。
 委員会は、岡上和雄・国立精神衛生研究所社会復帰相談部長を座長に、町野
朔・上智大法学部教授、滝沢武久・全国精神障害者家族連合会事務局長ら十五人。
保安処分に反対を表明
東大医学部首脳
 報徳会宇都宮病院と東大関係者の結びつきを追及する「宇都宮病院問題を考える第二回公開討論会」(東大精神科医師連合主催)が十三日午後、東京・本郷の東大医学部図書館講堂で開かれた。席上、三島済一東大医学部長、原田憲一精神精神科教授らは、現在法制化が検討されている保安処分について、「保安処分には反対だ」と述べた。
 同大医学部精神科の教授らが、個人的意見としながらも、「保安処分反対」の態度を公式の場で明らかにしたのは、初めて。
 この発言は、討論会に出席した患者や家族の組織が「宇都宮病院での患者への無法な取り扱いは、保安処分の思想に基づくものだ」と追及したのに対して答えたもの。原田教授は反対理由として@精神病患者の再犯の恐れの判定は科学的にできないA処分と治療は相反する概念だB保安処分の更新が許されれば実質的に不定期刑となり、刑事裁判の判決より重くなる、の三点をあげた。
 討論会には若手医師らで作る精医連の関係者、同病院の元入院患者ら約百五十人が参加した。
 それでは私達はこの冬何をなすべきなのでしょうか。第一に、全国からの文通、面会の強化、第二に、宮刑に抗議を集中し、宮刑を包囲糾弾すること。第三に、赤堀さんは相変わらず辛い状態にあるため、手紙の返事は求めない。ただし、返信用封筒、切手は従来通り同封する。以上をもって、赤堀さんの越冬に協力していきましょう。
 尚、11月11日に静岡市、トキワ公園で、赤堀さん奪還!全国総決起集会があります。呼びかけ文は臨時ニュースとして近日中に発送します。御了承下さい。
赤堀さんの近況
☆ 赤堀さんの手紙より
 私ハフミン性ビョウキ中ノタメニヨル、ネムレナイ日ガアリマス。
 ソノタメニ、ツギノアサオキタトキ、カラダ中ガヒドク(シ)ダルイノデス。アタマガイタムノデス。カキモノ(ウ)スルノガシンドイデス。ツカレルノデス。アタマガモヤモヤスルノデス。ソノ(ウ)タメニ、私ハジブンカラキメタノデス。テガミヘンヂ(ウ)カクトキニハ、ナルベク(ウ)ミヂカク(ウ)カクコト(ウ)ニキメタデス。オシラセシマス。
 体調グワイガワルイトキニハ、カキモノ(ウ)一切シマセンデス。体調グワイガスコウシヨイトキニハ、テガミヘンヂ(ウ)カキマス。マサオガワルイノデス。ゴメンナサイ。ユルシテ下サイ。
 みなさんには。体大切ニシテ下サイ。ゲンキデガンバッテミンナハ、ハタライテ下サイ。アカルク(ウ)タノシク(ウ)生キテイキナサイ。
 私ハグワイガワルイトキニハ、カキモノ(ウ)一切シマセンデス。カク(ウ)キガシナイノデス。
私シエンヲシテクレル人タチガテガミヲクレマスガ、ヘンヂ(ウ)カク(ウ)ノガメンド(ク)ウサイノデス。ミナサンニハ申訳ガナイノデス。
☆ 赤堀さんは、9月末頃から少しずつ元気になってきました。しかし、「誰にも言えない心配事がある。」と赤堀さん自身が面会者に漏らすことがあります。Oさんのことや、獄内のことで、かなり悩んでいる様です。そのことを除けば、赤堀さんは夏頃に比べてずっと元気になりました。薬は相変わらず一日おきの様です。また、赤堀さんからの手紙や、面会内容が最近極めて平面的なことから、獄中において、かなりの締めつけがあるのではないかと思われます。
☆ 宮刑は今春より新規面会禁止を強行していますが、新規の面会者に限らず、既存の面会者をも次々と面会禁止処分にしています。これは、獄内外を分断し、赤堀さんの再審斗争を妨害し、我々に屈服を迫るものです。そしてこの弾圧は、こと宮刑のこととしてあるだけではなく、国家権力の全面的な暴力的弾圧の発動の一端であることを押えなければなりません。我々は、赤堀さんの再審開始し静岡移管を見すえ、徹底的にこの弾圧をしなくてはなりません。
9月11日 朝日
血液・体液検出されず
島田事件再審請求差し戻し審 西丸教授が証言
 島田事件の死刑囚、赤堀政夫・元被告(五三)の再審を始めるかどうかを決める再審請求差し戻し審が十日、静岡地裁(高橋正之裁判長)で開かれ、「凶器とされる石から血液は検出されなかった」との鑑定を行った西丸与一・横浜市大教授の証人尋問が行われた。
 鑑定は、昨年五月の東京高裁の差し戻し決定が、「審理が尽くせば有罪の確定判決を覆す蓋(がい)然性がある」と指摘したのを受け、同地裁が西丸教授に依頼した。石に人の血液が付着しているかどうか、やその付着状況を中心に鑑定が行われ、先月二十二日同地裁に鑑定書が提出されていた。
 鑑定によると、凶器とされる石には、肉眼で血液らしいものは認められなかった。さらに、淡褐色に変色している四カ所について、ルミノール反応検査や澱概沈降反応法などによる検査を試みたが、いずれも人間の血液は検出されなかった、としている。
 証人尋問では、裁判所が、鑑定方法や血液だけでなく、他の体液の付着状況などを質問。西丸教授は「体液についても検出されなかった」と答えた。血液付着の鑑定は、変色している部分だけを対象としていたことから、それ以外の部分についての鑑定も改めてやり直すことになり、再び西丸教授に依頼された。
 この日の審理の中で、検察側は、裁判所が提出を求めていた石発見当時の捜査日誌について「提出するかどうかは検討中」と答えた。また、犯行順序についての鑑定書を十月末をめどにまとめる考えを明らかにした。
次回審理は十一月二一日。
「不当に面会妨害」と抗議
 仙台拘置支所へ支援者
 死刑囚として東京高裁で一審の再審請求棄却決定が取り消され、静岡地裁で差し戻しの審理が続けられている島田事件(静岡)の赤堀政夫元被告(五五)=仙台拘置支所在監=の支援者らは十日、同支所が赤堀さんとの面会を不当に妨害しているとして同支所に抗議の署名簿を提出した。しかし、話し合いの要求は同支所に拒否された。
 この後、支援者らは宮城県警記者クラブを訪れ、支援の会の大野萠子代表は「赤堀さんの健康状態が悪くなっている。赤堀さんへの激励を阻むことは人権上非常に問題がある」と当局側の態度に不満を示した。


*作成:桐原 尚之
UP: 20100626 REV:
全文掲載  ◇全国「精神病」者集団 
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