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著作権法関連・2009

著作権法関連


<目次>

2009/05/08 衆議院 文部科学委員会

◆2009/11/25 シンポジウム「著作権法改正と障害者の著作物利用・情報保障を考える」
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/1125_symposium/

◆2009/11/25 石川 准「意見発表」
シンポジウム「著作権法改正と障害者の著作物利用・情報保障を考える」
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/1125_symposium/handout/iken.html#ishikawa
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/1125_symposium/ishikawa.html

◆2009/11/25 橋本 操「意見発表」
シンポジウム「著作権法改正と障害者の著作物利用・情報保障を考える」
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/1125_symposium/handout/iken.html#hashimoto
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/1125_symposium/hashimoto.html

2009/11/30 毎日新聞 岩下恭士「書籍の電子データ提供などを要望−−改正著作権法に障害者団体」


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2009/05/08 衆議院 文部科学委員会

「○高井委員 おはようございます。民主党の高井美穂です。
 きょうは、著作権法の一部を改正する法律案ということでお時間をいただきまして、ありがとうございました。
 インターネットという手段ができて、著作権が、一部の業界人だけが注目していたものが国民すべてがこれにかかわるようになったという時代になりまして、まさにだれにどのような著作権を付与するかということは、やはり国民の合意によって決めていくものだと私は考えております。つまり、国民の合意によって決めるということは、この国会で議論をして決める。つまり著作権というのは、権利者と利用者、そのどちらもが利害や思想が異なる、そのどちらの立場を認めていくかということを国民すべてがかかわる中でルールをつくるということだと思っておりまして、どっちの立場に立つのが正しいとか、善とか悪とかいう問題ではないというふうに考えております。
 そうした中で、どういう著作権を付与するのかしないのかを決めていくのは、やはり産業政策や、どうすれば人々がより利用しやすいか、幸福になれるのかという観点から法律をつくるわけだと思いますが、これからさらなる技術の発展や新しいビジネスモデルに対応できるように、不断の改善の努力が必要だというふうに考えております。
 今回の法律改正においては私は一定の前進だという認識を持っておりまして、とりわけ、きょう質問をさせていただきます障害者のための著作物利用の円滑化についてという点においては大変な前進だと思いまして、この点からまず質問を申し上げたいというふうに思っております。
 今回の法改正の中で、国連の障害者の権利条約の第三十条三にうたわれている、「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。」というふうな精神にのっとりまして、また、文化審議会の著作権分科会の中でも議論がありました、障害等によって著作物の利用が困難な者を可能な限り権利制限の対象に含めるとともに、複製主体、方式も拡大する方向で速やかに措置を講ずることが適当というふうなこういう検討結果に沿って今回の改正がなされようとしておるわけで、障害者のために権利者に無許諾で行える範囲を拡大するということは、先ほど申し上げた権利条約の趣旨にものっとったものとして大変評価をいたしますが、具体的に、障害者の皆さんや障害児の通う学校や図書館等、また、障害を持つ方々の大きな支えとなっておられるボランティアの方々やさまざまな活動団体にとってどのようなメリットがあるとお考えになっておられるか、大臣からまずは御答弁をお願いしたいと思います。

○塩谷国務大臣 著作権につきましては、今高井委員がおっしゃったように、インターネット等の情報通信が発達する中で、国民全般にかかわることとしてこれから状況に応じてしっかりと対応していかなければならないということでございまして、今回、特に障害者についての三十七条三項の改正の意味ということでございますが、これについては、健常者と障害者の情報格差の拡大、さらには障害者の著作権利用法の多様化、障害者の権利に関する条約をめぐる状況を踏まえて、障害者のために権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲の抜本的な見直しということで、障害者の情報格差を解消しようとするものでございます。
 特に具体的に、一つは、弱視や発達障害者なども含めて、視覚による表現の認識に障害のある者が対象となること、二つ目には、録音図書に限らず、拡大写本、DAISY図書の作成など、それぞれの障害者が必要とする方式で複製等が可能になること、また三つ目として、図書館など、障害者福祉を目的とする施設以外でもそれらの作成が可能となること等の改善が図られるわけでございます。
 こういった措置を通じて障害者のために著作物の提供が一層円滑になるようになり、障害者による著作物の利用機会の拡大が図られることとなるものと考えております。

○高井委員 この第三十七条の三項、今回改正になりますが、障害者福祉に関する事業を行う者を政令で定めることとしております。
 これまで、弱視の子供たちのための拡大教科書等を全国各地のほとんどボランティアの皆さんが一冊一冊手づくりで作業を進めてこられて、本来、国や教科書会社がきちんとすべき教科書づくりを支えてきていただいたわけであります。昨年、教科書バリアフリー法が議員立法でつくられ、私もこれに関係して何度か質問に立たせていただきましたけれども、義務教育段階においてかなり普及が進んだことは感謝を申し上げたいと思いますし、評価をしたいと思いますが、今度はボランティア団体の皆さんも副教材づくりに力を入れていこうということで、意欲を新たに前向きに頑張っておられるところであります。
 しかし、今回の改正で運用面などの点で不明確な部分がありますので、ちょっと確認をさせていただきたいと思うんです。
 これからも、ボランティアで行おうとする教科書以外の教材の拡大写本は著作権者の許諾を得なければならないのか。そうしなければ違法行為になるのではないか。また、権利承諾の複雑な手続が必要になってくるのではないかというふうに心配をする向きも上がっています。
 拡大写本等のボランティアをしている皆さんを、例えば事業者として今回のこの法律の中に組み込むことが難しいのか。定めることが難しくなければ、政令で定めるということになりますと、かなりいろいろな団体等を含めなきゃいけない。それ以外の、政令で出てこない団体がみんな違法になってしまうのではないかというふうな懸念があるんですけれども、引き続き、自発的に行っている団体等が権利者の許諾を得なくて済むのかどうか、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

○高塩政府参考人 先生お尋ねの、今回の法律案の改正法の三十七条三項の複製が認められる主体として政令で定めるものにつきましては、今後、関係者の意見も聞きまして検討を行うこととしております。現時点では、利用者確認の体制の整備状況などに応じまして、公共の図書館や民間の法人などを対象としていくことを考えているところでございます。
 このため、先生御質問ございました拡大図書の作成などを行いますボランティア団体が、法人格を得て組織的に事業を実施でき、また、障害者の確認体制が整えられている場合には、第三十七条三項の複製主体として政令指定の対象とすることも可能と考えられるところでございます。ただ、個人や少数のグループなどによる活動を規定することは、政令としてはなかなか困難な面があるのではないかと考えております。
 ただ、政令指定の対象となります公共図書館等の活動に協力するという形態をとることなどによりまして、これまで同様、ボランティアの方々が拡大図書の作成を行うことは可能でございますし、そういうことを促進してまいりたいというふうに思っております。

○高井委員 今の御答弁からしますと、政令等にボランティア等を書き込むことは難しい、また、そのボランティア等の皆さんに、例えばNPO等の法人格を取れば書き込みやすいということにもなるのかもしれませんけれども、なかなか個人でやっている方々、また、いろいろな御事情もありますし、そういうふうにNPOの資格などは取りにくかったりするというふうに思います。でき得る限り、ボランティアの皆さんがやることに対して、違法とならない、わざわざ著作権の利用許諾を得なければならないということのないように、少なくとも、改正になった後に皆さんにも広く周知徹底をしていただきたいと思います。
 今の御答弁だと、今までどおり、これからもそういうことではなくていいということだと思いますので、ボランティアの皆さんが萎縮しないように、くれぐれも関係諸団体の皆さんに対して御支援をお願い申し上げたいというふうに思っています。
 拡大教科書などの電子データが提供されている場合、今回追加されたこの三十七条の三項のただし書きによって、ボランティアがそれ以上複製できなくなるということはないというふうに思いますけれども、このただし書きの「当該方式」の定義の詳細についてお伺いをしたいと思います。
 音声という媒体についてですけれども、例えば出版社が音読カセットを販売している場合、これを図書館が視覚障害者のために、DAISY方式といいまして、利用しやすい情報システムに、学習障害とか障害を持たれている方、高齢やさまざまな発達障害などにより文章を読むのに困難を有する方々への読書の支援のシステムの方式でございますけれども、音訳図書に複製するということを図書館がやってもいいということになりますでしょうか。もしくは、そのカセットがある場合、例えば、カセットを利用せずに、既にカセットがあるものに対して、もっと読みやすいDAISY方式、もっと違う形の方式をとる場合、図書館内で独自で作成したりということはできるんでしょうか。

○高塩政府参考人 先生が御質問の改正案の三十七条第三項のただし書きによりまして、権利者等によりまして障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合には権利制限を適用しないということをしているわけでございます。これは、そういう権利者が障害者のためのものを作成しているということにつきましては、障害者のための条約でもそれを促進することを求めているところでございまして、このような規定を置いたわけでございます。
 ただ、このただし書きの適用の有無につきましては、先生からお話しのございました、音声カセットが販売されている場合にDAISY方式の録音図書を複製できるかという問題でございますけれども、これは、音声カセットが発売されていますので、対象となる障害者がその音声のみではその著作物を認識ができない、やはり、文字と音声両方で見聞きするDAISY方式によってのみしか、障害上の理由でそういうものがぜひ必要だということが認められる場合には、認められた図書館などで複製が可能だというふうに考えております。
 単に、テープよりDAISYの方が容量が大きいとかそういった物理的な理由ではなくて、真に障害者の方がそういうものでなければ図書などを認識ができないという理由が認められれば、音声カセットが発売されておりましても、このDAISY方式のものを複製ということは可能だというふうに考えております。

○高井委員 最近のデジタル技術の発展とか情報通信技術の革新は大変目覚ましいものですから、DAISY技術についてもかなりいろいろな機能が上がってきているのではないかと思いますし、先ほど冒頭申し上げた、障害者の権利条約上の観点からも、障害者の皆さんが利用しやすいような形を許していく、許諾していくということをでき得る限り運用上やっていただきたいというふうに思っています。
 この音声ということに加えて、電子データにおいても同じような問題が生じると思います。例えば、講談社なんかにしても、ドットブックといった形式で電子図書というものをインターネット上で販売、配信をしています。それを、例えば図書館が同じように別のファイル方式に転換をして障害者に貸し出すということが技術上は大いに可能だと思いますし、それができるというふうに解釈をしていきたいと思うんですけれども、スキャナーとかで読み取ってテキストファイル化していくとかいうことは、先ほどの御答弁からすると、同じように、障害者のために限定されたものであればできるということでよろしゅうございますか。

○高塩政府参考人 今、先生から、ドットブック方式で電子図書がインターネット配信されている場合に、別のファイルに変換する複製はできるのかというようなお話でございますけれども、これは、そのドットブック形式が音声読み上げソフトに対応しておらず、これが可能となりますファイル形式に変換する必要がある場合など、障害上の理由でこのドットブック方式以外のものが必要であるという場合には、先ほどと同じ考え方で、複製は可能であるというふうに考えております。

○高井委員 今、すべての電子データも音声の読み取り方式にすぐにできるということはないと思いますけれども、それを図書館とかが、例えば工夫をしながらファイル形式を転換してDAISY方式で対応するようなものに変えていくということは、一回複製が生じますので、著作権法上問題が生じないかということを確認させていただいたわけですが、限定されたものであり、また、それが障害者のために必ず資する、必要であるということであれば、問題が生じないということでできるというふうに理解をいたしました。
 同条項は、同じく、障害者が利用するために必要な方式による公衆への提供等がされている場合は、権利者に無許諾で、許可なく複製ができないというふうに規定をされていますが、読み上げソフト等が逆に組み込まれていたりすると、これはだめだということになるんでしょうか。

○高塩政府参考人 先生から再三御質問のございますただし書きの趣旨というのは、権利者がみずから障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合には権利制限を適用しないこととするというものでございますけれども、こうした趣旨に照らせば、必要な方式の複製物が形式的に存在するといたしましても、その著作物を実質的に障害者が入手できないような場合にまでただし書きの適用があるというふうには考えておりませんので、そういう考え方に立ちまして、ケース・バイ・ケースでございますけれども、考えてまいりたいというふうに思っております。

○高井委員 ありがとうございます。
 先ほど御答弁していただいたとおり、例えば、どうしても入手できない、絶版になっている、どうしても高くて買えないだの、買いに行けないとかいういろいろなケースが障害者の皆さんにはあるかと思いますけれども、そういう場合は、できるだけしんしゃくをしながら広く適用していただけるようによろしくお願いを申し上げたいと思います。
 例えば、図書館が独自に作成をして、それをボランティアの方が音読をする、それを例えばテープにとるとか、そういう個々一つ一つやっている場合も図書館によってはあると思います。そういう場合への制約はかからないということで対応をよろしくお願いしたいと思っています。
 次に、今回、国立国会図書館のバリアフリー化という条項が入りまして、この点についての質問に移らせていただきたいと思います。
 本日は、図書館長の長尾館長みずからお越しいただきまして、ありがとうございました。かなり積極的に御発言をされているようですので、ぜひこの場でも意見開陳をお願いしたいというふうに思っています。
 今回、バリアフリー化ということで条項が入りまして、電子図書館のアーカイブの電子図書が活字を画像として表示されておりますので、視覚障害者等が使う音声読み上げソフトには対応していないと伺っております。ですから、スクリーンリーダーなどの音声読み上げソフトを利用する視覚障害者にとってみると、独力で内容を知ることができないという状態になっておりますが、社会福祉法人の盲人福祉委員会などからは、私の方へも、ぜひこの電子図書館アーカイブの電子図書も文字として認識できる形式で提供していただいて、私たち視覚障害者でも、拡大文字で読書したり合成音声で聞くことができるようなホームページにしていただきたいという御要望もあるんですけれども、この点はいかがでございますか。

○長尾国立国会図書館長 国立国会図書館がインターネットで提供いたしますサービスのうちで、ホームページによる各種の情報提供と書誌情報の検索サービスにつきましては、文字データである部分については、原則として音声読み上げソフトに対応できるようになっております。
 しかし、電子図書館アーカイブにある本文情報の提供は、現状は画像情報によるものでありまして、対応するテキスト情報は作成していないわけでございます。
 その理由は、これまでの対象が明治、大正時代の古い資料が中心でありまして、旧仮名、旧字体資料のテキスト化には多大の費用と労力が必要だからであります。
 また、刊行年代の新しい資料のテキスト化につきましては、出版関係者等から、商業活動に影響を与える可能性があるとして強い反対意見が出されております。
 国立国会図書館としましては、昨年度の出版関係者、著作権者等との数回の関係者協議の場を通じまして、利用、提供の範囲、条件につきまして合意形成を図る努力を重ねてまいりましたんですけれども、テキスト化につきましてはなかなか抵抗が強くて、音声読み上げソフトに対応することは当面難しい状況だということでございます。残念なことではございます。

○高井委員 確かに、私もきのう通告の段階でいろいろお聞きをしまして、昔の大正や明治等の資料と旧字体等の資料等もなかなか難しいというふうにお聞きをしましたし、これから電子図書にしていくのに関してかなりお金も手間暇も時間もかかっていくものだと思いますが、ただ、デジタル技術がここまで進んでいる時代において、私は最近の図書でもどんどん新しく、早くできていくものかなと思っていたんです。やはり人手も時間もかかっていくということではありますが、これからぜひ前向きに進めて検討していっていただきたいと思っています。
 障害者の権利条約も採択されて、二〇一〇年の国民読書年に向けて読書のバリアフリー化を目指した運動も全国で始まっておりますので、子供たちの読書活動や、また、障害者の皆さんも本当に分け隔てなく情報が手に入るように、技術的にはこれからできていくんだと思いますので、我々も含めて努力をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 申すまでもなく、教育基本法にも、障害のある者がその状況に応じて十分な教育を受けられるよう、教育上の必要な支援を講じなければならないというふうに規定されておりますので、予算もかかることですが、この点においてこそぜひ進めていっていただきたい。国会の方の意思として予算もつけて進めていきたいというふうに思って、私どもの党は少なくとも思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 そして、今回の改正で、図書館において以後すべての所蔵資料について電子化を進めていくというふうな御予定だと思いますが、アーカイブ形式が促進されるということにおいてどのようなペースでこれから進めていかれるのか、また、電子保存されたアーカイブ資料は国民の皆さんにどのように活用していただく御予定があるのか、教えていただきたいと思います。

○長尾国立国会図書館長 現在、国立国会図書館の所蔵する明治、大正期の刊行図書を電子化してインターネット公開する事業を行っておりまして、これは、十四万八千冊を画像情報の形で提供中でございます。
 それから、国立国会図書館におきましては、資料電子化の基本計画を策定しておりますけれども、平成二十一年度補正予算案では計画を加速いたしまして、図書等の大規模なデジタル画像化を進めるために、関係経費百二十七億円余を要求しております。これにより、デジタル化すべき図書約四百万冊につきましては、その四分の一が画像形態での電子化がされるという見込みでございます。全部やるためにはこの四倍の予算が必要でございますし、さらに、雑誌の電子化につきましても同程度の資金が必要であると考えております。
 それで、作成いたしました電子情報の利用につきましては、原資料の保存の観点から、来館利用者に対して館内提供をするということとともに、今後、出版関係者、著作権者等との協議を通じまして、さらに利便性の高い利用の仕方を実現すべく努力していきたいというふうに思っているところでございます。

○高井委員 長尾館長、今模範答弁をされましたけれども、館長自身はいろいろと電子図書館構想等も御検討されているということを報道等で聞きかじりました。もし可能ならばそれを開陳していただきたいと思いますし、私が新聞報道等で読んだのは、例えば、出版社から有料で本やデジタルを購入して、それを外部利用者が利用したい場合には利用料をいただき、それを中継役として単に利用料を出版社の方に渡す。だから、営利目的のものはできないので、単にアーカイブを持っている中継役として、外部利用者に対してお金を払ってもらって出版社に払う、そうした構想もお持ちだというふうにお伺いしましたけれども、これが可能であるならばぜひ前向きに検討していただきたいと思いますし、少なくとも、出版社であったり図書館の側であったり、利用者の側が協議をして、現状の枠組みの中でもできるというふうにはお聞きをしているんですけれども、今どのようなお考えで検討中にあるのか、教えていただければと思います。

○長尾国立国会図書館長 図書館の資料をデジタル化しまして、日本じゅうの人たちに遠いところからでもインターネットを通じて利用していただくということは理想のところでございますけれども、これを無料でやりますと、出版社あるいは著者が成立しないというところに追い込まれる危険性がございます。日本の文化というのは、やはり著者、出版社がしっかりと進んでいく、そして図書館と協調していくということがなければいけないわけでございますので、そういうある種のビジネスモデルをつくっていく必要があるんじゃないかということを提案しております。
 これは大ざっぱに申しますと、音楽のダウンロードで皆さんがイヤホンで聞いておられる、そのときお金を適当に払うというようなモデルでございますが、図書館はあくまでも無料ですべての情報を提供するというのが基本でございますので、お金につきましては、これは、ダウンロードするわずかな金額を集めて、これを出版社あるいは著者に還元するような第三のセンターみたいなものを設けまして、これをうまく活用して、すべての人にデジタルな著作物の提供をするということをしてはどうかということを提案しております。
 図書館としましては、無料でデジタル情報を外部のセンターなんかにお渡ししまして、そしてそこから要求のある読者に渡す、こういうモデルを考えておるわけでございますが、こういうことにつきましては、著者、出版社あるいは利害関係者と今後よく議論をして、両者が納得する形でつくっていければというふうに思っておりまして、今後努力をしたいと思っております。

○高井委員 これから、出版社等、また利用者の利便に資するためにも、すごく前向きな新たなビジネスモデルを提案される館長の姿勢というのは私はすばらしいと思っておりまして、ぜひ関係者の皆さんと議論を進めながら、また、より前向きに検討を進めていっていただきたいと思います。
 館長がおっしゃったとおり、私も徳島でありますけれども、父もちょっと病気をいたしまして遠くまで外出できません。でも、地方にいても高齢者であっても、どこからも最新の情報を手に入れられる、そこからお金を払って手に入れられるということは、技術の発展によりそれができるようになったというのは、本当に私はすばらしいことだと思っておりますので、ぜひそうしたビジネスモデルを前向きに検討していっていただきたいと思います。
 また、今回の改正の中で、聴覚障害者のために映画や放送番組への字幕とか手話の付与を可能とするということも盛り込まれておりますけれども、レンタルのDVD映画等にも字幕の義務づけをしていただきたいというふうに運動してきた「バベル」字幕の願いをつなぐ市民の会、きょうもお見えになられていますけれども、そうした方々からもさまざまな期待を持たれております。邦画ビデオの字幕の採用等には、かなりこれまでは著作権者と映画会社の事業者のコスト負担がネックになっているところもありまして、これはむしろ産業政策の方かもしれませんけれども、でき得る限りいろんな形で後押しをしていけるように、多くの関係者と協力をしながら進めていきたいと思います。
 最後の質問になりますけれども、本改正の趣旨を広く国民に周知徹底をしていっていただかなくてはならないと思いますし、最近大学のレポートなんかでも、コピペという、何かウィキペディアからとってそのまま張りつけしたりとかするようなことがふえているというふうに報道でも聞きますし、新聞とか週刊誌というプロの世界ですら、この著作権法違反ということがしばしば問題になります。
 こういう現状を見るにつけ、また、冒頭申し上げた、インターネットという手段を通じて国民みんなが著作権の利害関係者となる、利用者となるという立場の中で、著作権に関する教育というものに対して必要性が、もしくは高校生レベルからでも必要ではないかというふうに感じておりますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

○塩谷国務大臣 御指摘のとおり、情報化の急速な発展によって、国民に広く著作権に関する知識を周知することが必要だと思っておりまして、文部科学省としましても、国民向けの普及啓発事業として、著作権に関するさまざまな質問にインターネットを通じて答えるシステムの開発を現在しておりまして、これを運用していきたいと思っております。
 また、図書館職員、教員や一般の方々を対象としての各種講習会の実施に取り組んでいるところでございます。
 また、生徒や教員を対象とした多様な教材等の作成、配付やホームページでの提供などを実施してきたところでございますが、特に、平成二十一年三月、ことし三月でございますが、高等学校の学習指導要領の改訂において著作権にかかわる記述を充実しまして、従来の情報に加え、音楽や美術等においても著作権について指導することとしたところでございます。
 著作権に関する普及啓発や教育については、一層の充実を図ってまいりたいと考えております。」

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◆2009年11月30日 毎日新聞 岩下恭士「書籍の電子データ提供などを要望−−改正著作権法に障害者団体」

書籍の電子データ提供などを要望−−改正著作権法に障害者団体
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2010年1月1日から施行される改正著作権法に求められる障害者の著作物利用や情報保障のあり方を考えるシンポジウムが25日、東京都千代田区永田町の参議院議員会館で開かれた=写真。障害者関係20団体で構成する障害者放送協議会が主催したもので、当日は障害当事者のほか、ボランティア団体や政府・民主党のバリアフリー政策担当議員らが参加、聴覚障害者には字幕同様に手話での情報保障が必要なこと、視覚障害者がパソコンの読み上げソフトで読書ができるように、書籍の電子化にはテキストデータの提供が必要なことなどが訴えられた。

改正新法は、これまで利用対象者が視覚障害者に限られていた録音図書の制作・貸し出しを発達障害者や色覚障害者らにも広げたこと、点字図書館など視覚障害者情報提供施設だけでなく、公共図書館でも録音資料の制作・貸し出しができるようになったこと、これまで聴覚障害者の利用に限られていた放送字幕を発達障害者や難聴者にも広げたこと、字幕だけでなく、手話での情報保障も認めたことなど障害者の情報アクセシビリティ(バリアフリー)について多くの改正が実現し、多数の障害者福祉関係者から高く評価されている。シンポでは、障害者放送協議会著作権委員会委員長の井上芳郎さんが「10年にわたる運動の成果」と評価したものの、同時に残された課題について会員らから指摘が出された。

全盲者の立場から発言した静岡県立大学国際関係学部教授で、全国視覚障害者情報提供施設協会理事の石川准さんは「政令が認めた機関については電子データによる複製ができるようになったものの、紙媒体からOCR(光学式文字認識)で電子データ化するには多くの作業と人手が要求される」として、出版社が所有するDTP(デスクトップパブリッシング)データの提供を要望した。

「アマゾンのKindleには音声読み上げ機能が標準で搭載されている。Barnes & NobleもNookという電子ブックリーダーを発売する。日本でも一般向け電子書籍リーダーを視覚障害者が使えるようにしてほしい」と訴えた。

また、大活字文化普及協会事務局長の市橋正光さんは、国立国会図書館の蔵書アーカイブ事業について、書籍の電子化では視覚障害者が利用できる音声読み上げに適したテキストデータを加えること、国会図書館所蔵の電子資料について国が運営する障害者専用の配信システム等に無償で提供し、デイジー図書データや点字図書データ等に媒体変換し、無償配信することを認めることなどを訴えた。

聴覚障害者の立場から提言した全日本ろうあ連盟理事の浅利義弘さんは「手話も言語」として、ニュースなど放送番組への手話の付加を人権として訴えた。

発達障害の子供を持つ兵庫県LD親の会代表の山中香奈さんは、文字と音声が同期するマルチメディアDAISY(デイジー)が学習障害者にも有効であることを力説した。

民主党「障がい者政策推進議員連盟」事務局長の小宮山泰子さんは、同議連について「140人を超える民主党最大の議連」として、政府与党として引き続き障害者の権利擁護にまい進することを強調した。

動画:障害者団体からの意見発表
http://video.mainichi.co.jp/viewvideo.jspx?Movie=48227968/48227968peevee285948.flv

なお文化庁では現在、1月から施行される改正著作権法のパブリックコメント(意見募集)を行っている。

【岩下恭士】


UP:2009 REV:20091014, 20100211, 13
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