『生命倫理・生命法研究資料集Ⅳ――先端医療分野における欧米の生命倫理政策に関する原理・法・文献の批判的研究』
2018~2020年度科学研究費補助金基盤研究(B)(一般)No.18H00606研究グループ 編 20190430 芝浦工業大学工学部応用倫理学研究室(研究代表者:小出 泰士),419p.
last update:20190711
■2018~2020年度科学研究費補助金基盤研究(B)(一般)No.18H00606研究グループ 編 20190430 『生命倫理・生命法研究資料集Ⅳ――先端医療分野における欧米の生命倫理政策に関する原理・法・文献の批判的研究』,芝浦工業大学工学部応用倫理学研究室(研究代表者:小出 泰士),419p. ※r be
■内容
本書:「はじめに」より
『生命倫理・生命法研究資料Ⅳ』をお届けします。
本資料集は、「2018~2020年度科学研究費補助金・基盤研究(B)一般」を受けて行われている共同研究「先端医療分野における欧米の生命倫理政策に関する原理・法・文献の批判的研究」(研究代表者:小出泰士、課題研究番号:18H00606)の2018年度における成果の一部です。
先端医療分野という広い領域を対象としているため、本書で扱われているテーマは多岐にわたっています。以前から継続的に取り組んできた終末期医療と安楽死の問題については、オランダやベルギーの最近の動向の調査報告や、台湾における終末期医療に関する「患者自主権利法」の翻訳が掲載されています。
また、そもそも世界に生命倫理という問題関心が生まれたきっかけの一つは、臓器移植など人体の医療利用が人間の尊厳を侵害する可能性についての憂慮でした。近年、人体の一部を医療資源として利用することは、血液、組織、臓器だけでなく、生殖医療における配偶子や胚の提供、再生医療における胚性幹細胞やiPS細胞の使用など、きわめて多様化、複雑化、巧妙化してきております。本書には、こうした問題群に関する倫理的考察が多数収められております。人体の利用をいかに規制してゆくべきかは、今後のわが国の重要な課題です。
さらに、今日話題のゲノム編集技術に関する研究報告や資料が数多く収載されています。イギリスのナフィールド生命倫理評議会報告書の概要や、2018年11月に香港で開催された第2回ゲノム編集国際サミットからの報告やその際に出された声明の翻訳、また、フランスやドイツなどヨーロッパにおけるゲノム編集技術についての議論や、世界各国における遺伝情報の取り扱い方など、海外における最先端の研究報告が収められています。
医療技術は技術である以上、世界共通です。だからこそ、技術者は、その共通性に基づいて、世界のどこでも活躍することができます。しかしこのことは同時に、生命倫理の問題は一つの国に閉じていることはできないことをも意味します。ある国で技術の使用を禁止しても、他の国に行けばそれを利用することができます。生命倫理のグローバル化の最前線で活躍されている、ユネスコ国際生命倫理委員会委員長のクリスティアン・ビック氏に、人間の尊厳を侵害から守るために、世界として何ができるのかについてご講演をいただきました。
ここに収録されている研究の記録は、わずか1年間の成果に過ぎませんが、社会の複雑化を反映して、実に多彩な内容が詰まっています。皆様それぞれの問題関心に従って繙いていただければ幸いです。何かしらの参考になれば、この上なく嬉しく存じます。
2019年4月30日
小出泰士
■目次
Ⅰ 第1回研究会
Ⅱ 講演会
Ⅲ シンポジウム
Ⅳ 第2回研究会
Ⅴ 資料
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:岩﨑 弘泰