『落葉隻語――ことばのかたみ』
多田 富雄 20100510 青土社,219p.
■多田 富雄 20100510 『落葉隻語――ことばのかたみ』,青土社,219p. ISBN-10: 4791765451 ISBN-13: 978-4791765454 1680 [amazon]/[kinokuniya] ※ r02.
■[著者] 多田富雄(ただ・とみお)
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1934年生まれ。千葉大学医学部卒業。コロラド大学留学。74年千葉大学教授、77年東京大学教授を歴任。免疫学の世界的権威。元・国際免疫学会連合会会長。71年に〈サプレッサーT細胞〉の発見を国際免疫学会で発表、世界的に注目を浴びた。この業績によって野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞ほか、内外の受賞多数。84年、文化功労章。能にも造詣が深く、脳死をテーマとした 「無明の井」、朝鮮人強制連行の問題をテーマとした 「忘恨歌」、アインシュタインの相対性理論を主題にした 「一石仙人」、そして広島長崎被爆を扱った 「原爆忌」 および 「長崎の聖母」 など、新作能の作者としても知られ、大倉流小鼓を打つ。2001年に脳梗塞を患い右半身麻痺と嚥下・発声障害を抱えながら、執筆活動を続けてきた。2006年、リハビリ診療報酬改定撤回を求める運動を展開。2007年には多くの親しい知識人たちに呼びかけ 「自然科学とリベラル・アーツを統合する会(INSLA)」 を設立し、自ら代表を務めている。
主な著書、『免疫の意味論』(大佛次郎賞) 『わたしのリハビリ闘争』 『生命へのまなざし』(対談集)(以上、青土社)、『生命の意味論』 『脳の中の能舞台』(以上、新潮社)、『寡黙なる巨人』(小林秀雄賞) 『ダウンタウンに時は流れて』(以上、集英社)、『能の見える風景』 『言魂』(石牟礼道子との共著) 『花供養』(白洲正子他との共著)(以上、藤原書店)、『独酌余滴』(朝日文庫)ほか多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
多田 富雄
1934年生まれ。千葉大学医学部卒業。コロラド大学留学。74年千葉大学教授、77年東京大学教授を歴任。免疫学の世界的権威。元・国際免疫学会連合会会長。71年に「サプレッサーT細胞」の発見を国際免疫学会で発表、世界的に注目を浴びた。この業績によって野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞ほか、内外の受賞多数。84年、文化功労章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
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第一部 落葉隻語
1 「昭和の子」 が護るもの
2 郷土料理 千年の知恵
3 現代の 「姨捨(おばすて)」 を憂うる
4 今年限りの桜に会わん
5 年齢による命の差別
6 それでも正論を叫ぶ
7 賞味期限に頼らぬ知恵
8 介護に現れる人の本性
9 「望郷」 の果ては 「亡国」 か
10 若き農民 考える農業
11 「町の原理」 病院明るく
12 ケニアからの歌声
13 厄除けの願い 現代にも
14 家族と正業 生活の両輪
15 疑念を招く李下の冠
16 春は桜の歓喜と憂い
17 障壁なき街への好機
18 「オガタマ」 招魂の季節
19 「医の心」 どう伝える?
20 漢方薬 郵送禁止の乱暴
21 秋色 昔も今も哀しい
22 民主政権、脱官僚の試金石
23 「有難う」 と叫びたい
24 終わりから始まる未来
第二部 ことばのかたみ
当たり前の生活を取り戻す
憂うること
1 この国は病んでいる / 2 希望砕くリハビリ制限 / 3 うば捨て医療制度に怒る
4 冷酷な医療費削減 / 5 「自助努力」 という名の差別 / 6 介護に表れる人の本性
7 独自のアイデアで世界の輪に / 8 その国の真実の姿を見る / 9 美しい日本 四つの特徴
10 明晰さとあいまいさの間で / 11 人文と科学、「知」 の統合を / 12 能に詰まる日本の美や文学
13 忘れ得ぬ知己との出会い / 14 受け継ぐ恩師の教え / 15 自然と伝統胸に未来をひらけ
新年のメッセージ
脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」 133-136
水俣病という 「踏み絵」
死に至る病の諸相 140-156
死の風景 / 受苦 / 悪液質
歩キ続ケテ果テニ息(や)ム
*
野村万作・冷えたる芸
隅田川の源流と支流
天鼓の恨みと和解
近藤乾之助の袴能 「松風」
能評・桜間金記の会 「當麻(たえま)」
二つの反戦の能
二つの阿修羅 私の収穫
平和の神 / 天平ルネサンス / 苦悩の舞 / 狂宴の情熱
魔女と貞女の間
若き研究者へのメッセージ 教えられたこと、伝えたいこと
あとがき
初出覚書
■引用
◆「介護に現れる人の本性――冠落葉隻語・8」,『読売新聞』2008-8-13夕刊→→多田[2010:36-38]
「私は最近まで特別養護老人ホーム(特養)に預けられていた。私の介護を一手に引き受けていた妻が、無理がたたって股関節の置換手術を受けたためである。老老介護の行き着く先である。術後のリハビリも含めて、約二か月入院しなければならない。」(多田[2008→2010:36]
◆「疑念を招く李下の冠――冠落葉隻語・15」,『読売新聞』2009-3-3夕刊→多田[2010:63-66]
「この理不尽な制度を作った厚労省は、「効果のはっきりしないリハビリが漫然と続けられている」と、高齢者リハビリ研究会の指摘があったというが、そんな指摘は議事録にはなかった。むしろ、この制度を擁護し続けたのは、厚労省寄りの「全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会」の会長であった。
慢性期のリハビリ打ち切りは、もっと早期に行われる回復期リハビリを充実させる政策とセットになっていた。回復期のリハビリを充実させることには、誰も異論はないが、その代償として、維持期、慢性期患者のリハビリ治療を犠牲にするのはあまりにも残酷である。それに回復期リハビリ病院の理事長が、自分の利益となる改訂の擁護をしているのは、どうしても疑惑を招く。
その証拠に、制度発足から三年後の今、重度の維持期の患者が、リハビリ難民として苦しんでいるのに対して、回復期の患者を選択的に入院させる回復期リハビリ病院は繁栄を誇っ<0065<ている。難民となった維持期患者の医療費は、そっくり回復期の病院に回っている。利益誘導の疑念を持たれても仕方がない。
この当事者にも、「李下に冠を正さず」という言葉をささげたい。」(多田[2010:65-66])
cf.全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会
http://www.rehabili.jp/index2.html
会長挨拶 http://www.rehabili.jp/message/message.html
◆「脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」」
『朝日新聞』 133-136
◆20080301 「死に至る病の諸相」,『現代思想』36-3(2008-3):40-47
→多田[2010:140-156]
脳梗塞で倒れてから「六年余り、右半身麻痺と言語障害、摂食障害との戦いが続いている。懸命にリハビリをしたが、後遺症は基本的にはよくなっていない。
その間には、何度も死の誘惑があったが、自死するには至らなかった。一度死の体験をすると死を恐れなくなるが、自死するほどの衝動もなくなる。
かえって生の衝動が強くなる。生きて甲斐ない生だが、そんな生がなぜかいとおしいものになる。そのようにして丸六年が過ぎた。」(多田[2008→201005:144])
◆「当たり前の生活を取り戻す」
「私が大学を卒業したころには東京タワーが建ち、東京オリンピックの準備で東京が第変貌しようとしていました。よくボートをこぎに行った、東京・弁天橋ボート場の風景や、日本橋の風景が、無神経な高速道路の建設で一変したのに肝をつぶした記憶があります。やがてインターン闘争から学生紛争にいたるのですが、私はアメリカに留学したので、安田講堂の攻防戦はアメリカのテレビで見ました。日本にいたなら、私はさしずめ三派系だったでしょう。
そのころの学生の変革へのエネルギーは、生命力に満ちていました。時代を変えるのはわれわれだという意気込みがあったんです。それが今では」(多田[201005:102])
■言及
◆立岩 真也 20100701 「……」,『現代思想』38-9(2010-7): 資料
◆立岩 真也 2011/02/01 「二〇一〇年読書アンケート」,『みすず』53-1(2011-1・2 no.):- http://www.msz.co.jp,