『介護保険最前線――日独の介護現場の取材から』
斎藤 義彦 20000830 ミネルヴァ書房,233p.
■斎藤 義彦 20000830 『介護保険最前線――日独の介護現場の取材から』,ミネルヴァ書房,233p. ISBN-10: 4623032604 ISBN-13: 978-4623032600 \2310 [amazon]/[kinokuniya] ※
■内容
(「BOOK」データベースより)
本書は、日独の介護現場の取材から、介護保険の「冷たい」実像に迫り、ズレを解明しようというものだ。
(「MARC」データベースより)
これから私たちは超高齢化社会を迎える。介護保険というシステムを選んでよかったのか。また、どう改革していけばいいのか。日独の介護現場の取材から、介護保険の「冷たい」実像に迫り、ズレを解明する。
■目次
はじめに
第1部 起きなかった介護革命――ドイツ・介護の実状
第1章 虐待――介護の実態
1 ホームスキャンダル
「成功しなかった」ドイツの介護保険
「ホームは地獄だった」
次々と虐待が発覚
美しい虐待の現場
非人間的な光景
2 介護保険が虐待を加速
助け合いのシステム
収入減、高齢化、重度化
人間らしい介護ができないシステム
主犯は低い人員配置基準
介護者にも重い基準
3 広がる虐待
地検も捜査へ
介護は詐欺師のフィールド
虐待否定する判決も
家族の中にも広がる虐待
4 介護警察――進む虐待防止と課題
オープンになった虐待
介護警察
質の確保の課題
ホーム監視局
苦情窓口
虐待は当たり前?
第2章 成功しなかった介護保険
1 ドイツの介護保険、福祉とは何か
NPOが作り出した福祉
社会扶助削減が介護保険の狙い
似ている日独の社会保障
介護保険法の輝かしい理念
“人の値段を決める”要介護認定
現金給付から現物給付へシフト
介護者にも社会保障あるドイツ
2 排除のシステム
却下につのる不満
「介護のバラバラ殺人」
部下は二、三割
不服申し立て・要介護ゼロ
認定で費用を削減
「介護」しか対象でない
3 足りない介護保険
インチキ包装
中途半端な給付
住宅でも足りない――二本立ての福祉
安上がりでない住宅介護
単価上昇、家族介護、ヤミ労働
4 もうからない介護保険
5 社会保障削減の嵐
第3章 介護保険を支えるシステム・文化
1 世話法(成年後見制度)
福祉の司令塔
手術の承諾も
世話人協会
サービスかき集める司令塔
世話人の費用も削減へ
人権を守る裁判所
成年後見法
2 人と文化、日本への教訓
有資格者の再教育も
雇用主モデル
孤立の文化
日本への教訓
第2部 日本の介護保険制度の課題
第4章 介護保険とは何か
1 貧しい福祉
腐ったリンゴの実
福祉の貧しさが招いた癒着
老人虐待、介護殺人
痴ほう老人をフィリピンへ
「異国に捨ててほしい」
福祉でもうけて何が悪い
2 介護保険の理念
3 介護保険の基本システム
掛け捨て保険?
限度額決める要介護認定
ケアマネージャーがサービスの要
限度額での規制
NPOの参加も
財政
第5章 冷たい制度の核心・要介護認定
1 現実離れした理論
血も涙もない
「安心」奪う認定
社会環境考慮せず
救いのない二次判定
2 認定の狙い――給付費削減・中央統制
パンドラの箱
生活保障なくす身勝手
タイタニック理論
支配の道具
給付コントロール
名ばかりの地方分権
地方分権なら別の運営形態を
3 不可解なコンピューター判定
「迅速・公正」な判断
車いすでも「介護が必要ない」
現実とズレる新介護理論
切り捨てられる痴ほう
新理論の意図
輪切りシステムへの変ぼう
説明できない認定
素人の審査
ソフトの限界
4 要介護認定を廃止せよ
悪くなってほしい
要介護認定を廃止せよ
アウトカム評価を
第6章 「半分」保険の実態――給付と報酬の検証
1 二本立ての福祉を
2 半分保険の理念
家族に頼る半分保険
慰労金は正直(?)な政策
家族ヘルパーで現金給付
3 半分保険の実状
全然足りない
すき間だらけの厚生省モデル
全国的な切り下げ
介護の社会化後退させる介護保険
悪平等を改めよ
自治体が補てんも
制度の矛盾
4 不安の残る報酬
老人と事業者が対立する構図
ダンピング
労働者にしわ寄せ
地方も切り捨て
強まる厚生省支配
第7章 費用・システム・情報公開の問題点
1 貧しさ無視した制度
2 上乗せ・横出し、ヤミ負担
上乗せ・横出し
ヤミ負担
ヤミ負担は在宅にも?
迫られる差額負担
我慢する患者、崩れる保険原理
3 老人の介護拒否
4 不十分な情報公開
5 老人病院は故郷に帰れ
もくろみはずれた厚生省
どさくさの人減らし
明るく変わった老人病院
故郷に帰れ
6 申請、退所、福祉削減
申請拒む老人・囲い込まれる老人
退所――終の住処の終えん
スーパーゴールドプランを
障害者にも介護保険を
不安に陥る障害者
第8章 権利擁護の課題
1 介護保険の権利擁護制度
拘束の波紋
苦情窓口・オンブズマン
不十分な在宅の不服申立
サービス評価
2 成年後見制度の課題
成年後見制度の導入
治療の代理承認の可能性
「差別」残したレッテル貼り
残った欠格条項
ちぐはぐな権利擁護事業
もっとアドボカシーを
終章 介護保険成功の条件
1 介護の社会基盤
2 負担増をおそれるな
福祉に金を使っていない日本
保険料は高いか
介護目的税を
3 介護保険の改善点
あとがき
参考文献
さくいん
■引用
「障害者の側にとっては、「半分保険」や過酷な認定を前提にした介護保険願い下げという空気も強く、今後の適用は微妙だろう。」(斉藤[2000:203])
「しかし、二〇〇五年には、介護保険の制度の見直しが予定されている。障害者への適用を必然とする観測もあり、障害者を障害者を不安に陥れている。難病のかかり、人工呼吸器をつけて自宅マンションで暮らす女性(四六)は」(斉藤[2000:203])
■書評・紹介・言及
*作成:三野 宏治