『第2回障害者政策研究全国集会』
障害者政策研究全国実行委員会 編 19961130 141p.
■障害者政策研究全国実行委員会 編 19961130 『第2回障害者政策研究全国集会』,141.
1996年11月30日〜12月1日・神戸
市町村障害者生活支援事業
中西正司(ヒューマンケア協会) 21-22(以下全文)
96年10月1日より,いよいよ「市町村障害者生活支援事業」が開始されている。以下の17市町村で委託事業が始まり,東京都では立川市「自立生活センター・立川」,町田市「町田ヒューマンネットワーク」,八王子市「ヒューマンケア協会」が受託団体となっている。
この事業は本来,障害当事者が運営する自立生活センターというモデルがあって。それを厚生省が地域福祉推進の要石として考え,その実施してきた自立生活プログラムやピアカウンセリングを国の制度の中に組み人れようとしたことに始まっている。
自立生活センターは障害当事者がサービスの受けてから担い手に変わるという歴史的な意味を持つセンターであり,その運営規約には,@運営委員の51%は障害者であること,A実施責任者は障害者であること,B障害種別を越えてサービスを提供すること,C介助サービス,自立生活ブログラム,ピァカウンセリング。住宅サービスを提供していることが謹われている。
生活支援事業はこれらの要件を備えた組織が受け皿にならないとうまく機能しない。療護施設には地域で生活する障害者はいないので生活支援ができない。福祉センターは障害者が中心になって運営していないためニード把握ができない。
行政や施設の枠内では地域ケアの問題は解決がつかないことから,障害当事者のニードを直接反映する組織を地域に導人するためにでき犬制度である。既存の施設等がこれを受けることによって地域の改革の阻害要因を作ってはならない。自立生活センターのある市町村は他の団体の応募を蹴ってでも自立生活センターに委託すぺきであるし,自立生活センターのない市町村は。サービス提供者である当事者組織を支援し,早急に自立生活センターを作れる環境をつくってほしい。
国は既に24時間のホームへルパー事業の実施を市町村に迫っている。時間制限を持っている自治体には支援事業は任せられないとの厚生省の内示も出ている。ー向に改善されない事態を見て,その実施を地域の中から迫る組織を作る必要が出てき丈。それが生活支援事業である。行政の内部改革を果丈せる組織は既存の施設ではなく,当事者が運営する自立生活センターしかない。サービスの提供者側こ受け手の双方の立場が分かる組織の提言は重い。
ケアカイドラインの研究
1967年厚生省の委託研究により,日本障害者リハビリテーション協会が「障害者ケアガイドライン」の試案を発表した。さらに5ケ所の介護現場での調査研究を深めケアガイドラインをつくリ充実したものにしようとという目的で。委託研究が現在おこなわれている。そのうちの一つが自立生活センターに委託され東京の「自立生活センター・立川」でおこなわれている。
介護保険が動き始めるとき,介助時間の判定基準と判定機関がどうなるかは重大な問題である。ドイツにおいては介護保険法が実施され。医者によるADL判定が主導権を取り悲惨な状況になっている。トイレ介助25分,入浴45分というように1曰の介助時間が積算され。その料金以上には保険は出ない。障害者にとつて社会参加の場面での介助時間が算定されなければ自由な生活は保障されない。ドイツにおいては以前より社会保険法で既に24時間の介助サービス▽022 が保障されていたため,障害者は介護俣険は自分には関係ないものとして,政治問題とし取り上げてこなかった。ところが介護保健法における医療による介護算定基準が明らかになってくると,社会保険法の介助サービスにおいても,社会のニードについて明確な積算根拠が問われるきている。例えば,社会参加のたになぜ月に3回映画・演劇鑑賞に行く必要があるのかという理由を問われるようになっているということである。
このようなことがわが国でも起こらないようにするためには,政策の先取りをしてないくほかない。ケアガイドラインを自分たちの手で作り上げることである。自立生活センターでの委託研究はドイツの障害者からも期待されている。
この検討会の中では,第1に,障害当事者自身のニードを最重要なものとすべき判定基準が,ドイツのように果てしなく医療の判定基準に引き込まれないように,当事者側の判定基準の合理性,妥当性を明確にし,医療の基準とは異なる科学的な客観性を持たせていくことをめざしていく。
第2に介助は厚生省の担う生活の部分,教育の場面での介助は文部省,駅での介助は運輸省,職場での介助は労働省といったように全省的取り組みの必要なものであることをこの中で明らかにしていこうとしている。
身体障審者介助者要請講座の持つ意昧
[…]
おわリに
これら3事業を通じてわれわれは,いま,生活支援事業でへルパー派遣の決定に参加しーアガイドラインでその介助判定基準に当事者の意思を反映させ,そして介助者の要請講座で事業者のニードに即し文介助を受けられる基盤を作りつつある。
この3つの部門でわれわれの考えが反映されれば将来の地域ケアは明るい見通しをもてるものになるう。
その基盤としては自立生活センターが障害者介助派遣センターとして行政の委託を受サていくことが当面の課題となる。そのためには介助専門スタッフをこの講座の中で育成していきカを貯えていくとともに,われわれ自身の力量も高めていかねぱならない。