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『歴史学と社会理論』

Burke, Peter 1992,History and Social Theory,Polity Press,198p.
=20060401 佐藤 公彦,慶應義塾大学出版会,392p.


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■Burke, Peter 1992,History and Social Theory,Polity Press,198p.
=20060401 佐藤 公彦,『歴史学と社会理論』,慶應義塾大学出版会,392p. ISBN-10:4766412540 ISBN-13:978-4766412543 \5800  [amazon][kinokuniya]


■内容
出版社/著者からの内容紹介
〈社会理論〉は歴史研究に何の役にたつのか?
歴史研究と社会理論研究には、各々「過去の個性」、
「現在と一般性」を重視するという研究スタンスの違いがある。
そこからくる偏見や確執により不明瞭になっているこの問いに、
文化史研究の第一人者ピーター・バークが明快に答えた名著の本邦初訳。
現代歴史学とその周辺分野の見取り図として必携の一冊。

著者について
ピーター・バーク(Peter Burke)
ケンブリッジ大学名誉教授。
1937年生まれ。ケンブリッジ大学名誉教授、イマニュエルカレッジの名誉校友(フェロー)。
オックスフォード大学卒業後、同大学聖アントニーカレッジで研究、
博士論文執筆中にサセックス大学に招聘される。
同大学で16年間の教員勤務の後、ケンブリッジ大学に移り、文化史講座教授を長く担任。
New Cultural History を提唱し、「文化史」概念を刷新。
ヨーロッパ史家、文化史家として世界的に著名な歴史家。
著書(邦訳)に、『イタリア・ルネサンスの文化と社会』、『ルイ14世作られた太陽王』、
『知識の社会史知と情報はいかにして商品化したか』など多数。

訳者
佐藤公彦(さとう きみひこ)
東京外国語大学外国語学部教授。
1949年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。
中国近代史・東アジア国際関係史専攻。
著書に、『義和団の起源とその運動中国民衆ナショナリズムの誕生』、
『続中国民衆反乱の世界』(共著)、『宗教の比較文明学』(共著)、
『黒旗軍十九世紀中国の農民戦争』(翻訳)など。


■目次


第1章 理論家と歴史家
耳の悪い者同士の対話
歴史学と社会学の分化
過去の無視
社会史の興起
理論と歴史の収斂


第2章 モデルと方法
比較
モデルと類型
数量的方法
社会的顕微鏡

第3章 中心的な諸概念
社会的役割
性とジェンダー
家族と親族
コミュニティとアイデンティティ
階級
身分
社会的移動性 Social Mobility
誇示的な消費と象徴的資本
互酬主義
パトロネイジと腐敗
権力
中心と周縁
ヘゲモニーとレジスタンス
社会運動
心性とイデオロギー
コミュニケーションと受容
口承 Oralityと書字Textuality
神話


第4章 中心的な諸問題
機能
構造
心理学
文化
事実とフィクション


第5章 社会理論と社会変化
スペンサーモデル
マルクスモデル
第三の途は?
理論探求の六つのモノグラフ
結論


■引用

 実践と理論の違いは,歴史学と社会学――あるいは社会人類学,地理学,政治学,経済学といった
他のディシプリンとの違いと同じではない。これらのディシプリンの研究者たちでも,理論が
わずかな役割しか果たさない事例研究(ケーススタディ)を発表した者もいるし,他方,
何人かの研究家,とりわけマルクス主義者は,エドワード・トムスンが有名な論争的な論文で
「理想の貧困」と呼んだ事態に不満を洩らしたような時でさえも,精力的に理論的な問題を
論じているのである。
そもそも,ここ数年の間に社会学,人類学,政治学研究においてきわめて大きな影響を与えた
二つの概念は,もともとイギリスのマルクス主義歴史家によって世に送り出されたものなのだ。
エドワード・P・トムスンの「モラル・エコノミー」と,エリック・ボブズボウムの
「伝統の発明」である。しかし,より一般的には,これら他のディシプリンの研究者のほうが
歴史家よりも,頻繁に,より厳格に,より誇らしげに概念と理論を使用している。歴史家と
他のディシプリンの研究者との誤解と対立の多くの原因になっているのは,この理論に対する
態度の違いなのである。
(Burke 1992=2006: 1-2)



「歴史社会学」,「歴史人類学」,「歴史地理学」,そして(めったにないが)「歴史人類学」
といった術語は,歴史がこれらのディシプリンの中に組み入れられたこと,そしてこれらの
ディシプリンが歴史学に組み入れられたこと,この双方のことを示すために使用されるように
なった。
同じ学問領域へのこのような収斂はときに,(たとえば,歴史地理学はどこで終わるのか,
社会史研究はどこから始まるのか,というような)境界の論争に導いた。ときには,同じ現象を
表現するのに異なった術語を作り出すことにまで至った。しかしこうした収斂はまた,共通の仕事に
おいて違った技法と違った観点を利用してもよいのだという事態も生んだのである。
 歴史学と社会理論との関係が次第に密接になっていったのには,はっきりした理由がある。
スピードを増しつつある社会変化が社会学者と社会人類学者の注意を歴史に向けることを実質的に
強いたからである――かれらの何人かは最初のフィールドワークの地に戻ってきて,それらの地域が
世界経済システムに組み入れられたことによって変形させられたことを発見したのだった――。
世界人口の爆発を研究している人口学者,「発展途上国」と呼ばれる国々の農業・工業の発展条件を
分析している社会学者や経済学者たちは,自分たちが研究しているのは,時間にそった変化,別の言葉で
言えば,「歴史」だということ
に気付いた。(Burke 1992=2006: 25-26)

*太字はすべて作成者による。



*作成:松田 有紀子 
UP:20081114
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