加藤 有希子 「留学のススメ」

レクチャー・フォーラム「“世界”に羽ばたけ――海外で研究すること」
2011年10月4日(火) 立命館大学衣笠キャンパス以学館

last update:20111129

加藤 有希子 「留学のススメ」


@海外留学とは
デメリットはいろいろあるが、結論から言えば、それでもしたほうがいい。なぜか?

●海外留学のメリット
1)就職に有利である(教員公募)

○教員公募では目立たなければならない
:教員公募に応募する100人超は皆間違えなく頭がいい。その中で目立つには?

○履歴書に花を添えるには・・・
i. 留学する
ii. 大型の奨学金、研究費をとる
iii. 単著を出版する
iv. 賞をとる(かなりすごいやつ)
v. 将来の研究教育に役立ちそうな仕事をする(非常勤、大学事務等)
※この中で最も簡単なのは、留学です!

2)日本語ではない言語が身に着き、研究・人脈が豊かになる
○研究の幅が広がり、厚みが出てくる
:日本語だけでは、日本の学界に一石を投じることはできない
○コミュニケーションが広がる
:研究者の人脈ができる。友達も増える。発表の場が広がる(海外の学界、研究誌)
○仕事が増える(→採用の可能性が高くなる)
:その語学や地域関係の仕事が回ってくる。典型的には、海外で知り合った研究者の翻訳本を出す。来日講演を手伝う。通訳・翻訳をする。その他、国際学会の手伝いをする。

3)差異は力である
中にいる人が見えない部分が見えることで、オリジナリティのある考えを発表できる。文化的差異が生み出したオリジナリティは随所で力を発揮する。

○日本→外国(留学)
:日本人の発想・経験が重宝される
○外国→日本(帰国)
:外国での発想・経験が重宝される

4)自分の中の価値観を批判的に見つめられる
○日本は病的なほどに閉じられた社会
:みんなが同じだから、細かいことが気になって仕方がない。人生に一度や二度は、外に出てみることが必要。
○自分にとって大切なものとそうでないものが分かる
:地球の裏側に行っても捨てたくないものが何なのかが見えてくる


A海外留学をするためのスキル
1)語学力
:習得のための時間とお金をケチってはいけません
2)熱意・説得力
:海外の受け入れ先教授、奨学金スポンサー、日本の指導教授、自分の家族に留学の必要性を説得しなければなりません
3)計画力・実行力
:夢物語で終わらせてはいけません

→基本的に、この三つがあれば留学できます。難しいことではありません。日本の大学院でちゃんとやっていければ、海外でも大丈夫です。 B渡航までの準備(アメリカ留学の例)
→今から準備すると2013年8月の渡航となります
(秋学期8月−12月/春学期1月−5月)

1)語学力をつける/TOEFLを受ける(2011年10月〜2012年5月まで)
:受けたい奨学金と学校の基準点を満たすまで
足切りライン:iBT80点(CBT213点)
理想ライン:iBT100点以上(CBT250点以上)
※短期語学留学やTOEFL予備校などに行くことも時には必要。

2)出願する学校を決める/先方の受入教授等と連絡をとる(2011年10月〜2012年12月)
:自分の専門分野で面白い研究をしている教授を探す
:数人の教授(一人でもいい)にEmailでコンタクトを取る(例配布)
:突然メールを送ることは全然失礼ではない。むしろ相手は喜ぶはず。

:履歴書(CV)をつけるのが普通

3)日本国内の奨学金に出願する(2012年5月〜12月)
:フルブライト(5月末)、CWAJ(9月)など
【大学院奨学金リスト】:http://www.fulbright.jp/study/res/shokin_c.html(配布)
【研究者奨学金リスト】:http://www.fulbright.jp/study/res/shokin_d.html

※お勧め:No.C05「フルブライト奨学金 大学院博士論文研究プログラム」
博士課程大学院生の6ヶ月から10ヶ月の短期留学をサポートしてくれる(全額給付:学費、生活費、渡航費、保険などぜんぶカヴァーしてくれる)

※合格のポイントは研究の面白さ、重要さ。学振などで苦心して書いていることを、英文で書けばいい。指導教授や先輩など、数人に見てもらうとよい。

4)GREを受ける(2012年5月〜12月)
:英語で行われる知能テスト。アメリカ人も含め、大学院受験者全員に課される。外国人に関してはこのテストのスコアはあまり重視されない。
※過去問(英語版)を一冊買って、やればいいでしょう。私は夏休みにやりました。

5)奨学金の面接を受ける(2012年9月〜12月)
:たいてい行く国の言語で課されます。ここが勝負の本番です。
:かなり専門的で厳しい質問が課されます。自分の研究は何がオリジナルで、どういう意義があるのかを問い直しましょう。

【私の対策法】
:自分の申請書を読みながら、想定される質問を100くらいブレインストームする
:答えを日本語で考える(得意な言語のほうが論理が明確になる)
:それを英語などの面接で課される言語になおす(これは面接直前でもいい)

6)アメリカの大学院に出願する(2012年11月〜2013年1月)
【提出する書類】
○履歴書
○出願書類
○推薦状3通(最低でも三週間前には、依頼しましょう)
○Writing Sample(論文サンプル)
○TOEFLスコア(直接送る形式)
○GREスコア(直接送る形式)

※一番大切な書類:Writing Sample(論文)。基本的にこれで合否が決まります。自分の自慢の論文を英訳しましょう。
※必ずネイティヴ・プルーフリーディングを受けましょう
参考:英語オンライン編集サイトEditAvenue:http://www.editavenue.com/

7)キャンパス・ヴィジット(可能であれば)(2013年1月〜2月)
:合格するためのもうひと押し。先生との相性や、キャンパスの様子などを見るのも重要。合否は2月〜3月。

8)合格した場合、渡米準備(ビザ取得等)(2013年3月〜7月)

9)渡米(2013年7月〜8月)


Cお金の話
●お金をどう工面するか
1)日本国内でとる奨学金
:フルブライト、国費留学等
2)アメリカの大学からもらう奨学金
:私立大学の正規のPh.D.過程に入ると、学費、生活費を支給してくれるところが多い。ただし短期留学で可能かは不明。交渉次第。
3)私費
:仕事で貯めたお金や親の援助など

●実際にどのくらいお金がかかるか
○アメリカ(年間)
学費50万円(市立、州立、国立)〜500万円(私立)
生活費120万円(地方)〜300万円(大都市)

○ヨーロッパ大陸(年間)
学費2万円〜50万円(ドイツ、フランスは基本的に学費はタダ)
生活費120万円〜200万円

○イギリス
学費100万円〜200万円
生活費140万円〜350万円



*作成加藤 有希子
UP: 20111129 REV :
アカデミック英語研究会
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