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韓国における重度障害者自立生活における介助サービスの提供方法に関する研究

ライフヒストリ調査による利用者の介助サービス認識比較と自立生活移行モデル

鄭 鍾和 20070917
障害学会第4回大会 於:立命館大学

last update: 20151224

 鄭 鍾和:三育大学校社会福祉学部助教授

◆要旨
◆報告原稿

■要旨

〔キーワード〕自立生活、重度障害者、韓国、事例研究、自立生活移行モデル、提供方法、介助サービス

1.はじめに
 地域における重度障害者の自立生活に関する施策は、介助サービスの提供やサービス提供のインフラー(民間事業団体の自由参加)構築により、自立生活の理 念である自己決定や自己選択がある程度可能になっていることは喜ばしいことである。特に、2000年の介護保険の実施や2003年からの支援費制度の実 施、更に、2005年10月の「障害者自立支援法」制定により2006年4月からは身体、知的、精神障害者の向けの介助サービスが提供できるようになり、 地域での自立生活支援施策が一層充実されるようになっている。このような日本の動向を見習えるように隣国の韓国においても重度障害者の自立支援施策に大き な変化が見られるようになっている。韓国における最近の動向としては、2008年7月からの老人スバル(介護)保険導入に向け、モデル事業が実施されてお り、関連法案が2007年3月国会で法律が成立されている。さらに、障害者施策に関しても、2005年4月から全国的に自立生活センターモデル事業を実施 しており、2007年2月には国会において、「障碍人福祉法」の全文改正が行われた。この全文改正では、従来のリハビリテーション中心の施策を改め、地域 での自立生活支援パラダイム転換を促すものになっている。注目すべきは、この法律制定と同時に、「障害者差別禁止法」が制定されたことである。従って、韓 国においても日本と同じような高齢者と障害者施策における新たなパラダイム転換を講じられていることに注目し、本研究では「介助サービス提供方法」に焦点 を絞って考察を行いたい。

2.研究目的と対象及び方法と倫理的配慮

◆調査目的:本研究における事例研究は、韓国における重度障害者の介助サービス提供方法のあり方について行う基礎研究であり、自立生活センターから提供さ れている活動補助サービス(PAS:Personal Assistance Service) と民間の事業団体から派遣されているホームヘルパー(有料ドウミ又は家庭奉仕員制度)サービスとの比較を行い、サービス       図-1 事例調査の プロセス
利用者である重度障害者は、どのような面で違いを認識しているかを明らかにすることを目的にしている。また、重度障害者の自立生活を果たすまでのライフヒ ストリを通して、そのプロセスを明らかにし、関連要因の分析により「自立生活移行モデル」を導き出し、これに関わる影響要因を明らかにすることである。さ らに、これらの研究結果から韓国における今後の介助サービス提供における研究課題を明らかにすることが目的である。

◆調査対象:他人介助が絶対的に必要な四肢マヒ、脳性マヒ、ALS、重複障害者の24人の重度障害者
◆調査期間:2006年10月25日〜12月15日(2ヶ月間)
◆調査データーの分析方法:「KJ法」 を用いて分析を行った。つまり、24人のライフヒストリをデジタルレコーダーに録音し、それを文書化し、事実を中心にカテゴリー化(コーディング)する。 その後、24人の事例から同じ内容をカテゴリー別に分類し、概念的なグルーピングを行う。コーディングをしたものを統計ソフトのSPSS.v12やエクセ ル2003、アクセス2003などのプログラムを用いて分析を行った。また、録音した内容の文書化したものを本人宛にメールで発送し、本人の了解を得る確 認作業を取っている。この内容確認のプロセスで本人の意志とは反する内容については削除されており、今回の報告内容は客観的な事実と論者の分析視点による 課題を中心に整理されている。また、ヒアリング調査プロセスに関しては前項の図-1で示す通りである。

 本研究は、上記で述べられているように韓国における重度障害者の介助サービス提供方法について行う基礎研究であり、今回の事例研究においては、介助サー ビスに対して利用者の意識を明らかにすることである。つまり、実際に地域で自立生活をしている重度障害者が自立生活センターから提供されている活動補助 サービス(PAS) と民間の事業団体から派遣されているホームヘルパー(有料ドウミ又は家庭奉仕員制度)サービスとの比較を行い、サービス利用者である重度障害者はどのよう な面で違いを感じているかを明らかにすることである。また、サービス提供における様々な問題(今後の課題)についても明らかにすることが研究の目的であ る。
研究方法は、韓国の全国自立生活センター協議会の協力 により、サービス利用者の重度身体障害者の名簿から無作為で抽出 し、調査依頼状を送付し、本人が協力すると回答した方のみインタービューを実施している。調査目的が重度障害者の介助サービス提供方法なので、今回の調査 対象も障害程度1級の人が殆どであり、現在介助サービスを利用し、地域で自立生活をしている人である。また、現在の韓国では、介助サービス提供は施行事業 の段階であり、介助サービスの量的不足から自立生活センターから派遣されている活動補助サービス(PAS)と民間の障害者福祉館や在宅福祉奉仕センターか ら派遣されている家庭奉仕員派遣制度や有料ドウミ(ホームヘルパー)制度を合わせて利用していることである。従って、今回の調査対象は、この両制度を合わ せて利用している対象者を中心にヒアリングが行われ、そのサービスに対する利用者の満足感や問題点等を調査した。対象者のヒアリング調査期間は、2006 年10月〜12月であり、調査方法は、書面によるヒアリング内容を事前に送付し、それに沿ってインタビューが行われた。また、書面によるヒアリング以外に もライフヒストリについてヒアリングを行い、施設や親元から地域での自立生活を果たすまでのプロセスについてヒアリングし、利用者の話をノートテイク及び 録音し、その内容を分析した。調査や分析に際しては、個人情報及び個人の倫理的配慮を行い、研究目的以外には使用しないことを書面で約束し、調査が行われ た。
更に、分析の方法としては、「KJ法」 を用いて分析を行った。つまり、24人のライフヒストリをデジタルレコーダーに録音し、それを文書化し、事実を中心にカテゴリー化(コーディング)する。 その後、24人の事例から同じ内容同士を分類し、概念的なグルーピングを行う。それから、カテゴリー別にコーディングを行い、SPSS.v12やエクセ ル、アクセスなどのプログラムを使い、分析を行った。
また、録音した内容の文書化したものを本人宛にメールで発送し、本人の了解を得る確認作業を取っている。この内容確認の過程で本人の意志とは反する内容に ついては削除されており、今回の報告内容は客観的な事実と論者の分析視点による課題を中心に整理されている。また、ヒアリング調査プロセスに関しては図- 1で示す通りである。

3.結果と考察
1)調査対象の基本的概要
今回の調査対象の24人は、平均年齢が40歳であり、四肢マヒ、脳性マヒ、ALS、重複障害者が殆どであり、他人の介助無しではADLが困難な人である。 また、月収入は60万ウォン 程度であり、一般世帯の平均収入の180万ウォンに比べれば半分も満たない劣悪な経済状況での生活を営んでいる。また、介助サービスの月平均利用時間は、 123時間であり、介助サービス必要希望時間の平均である最低207時間に比べれば、半分にも満たないサービス提供に止まっている。
また、親元や施設から自立生活するまでにかかった期間は平均にして2年7ヶ月と比較的に早期移行の結果が見られた。この背景要因には、自立生活運動の成果 と地域での自立生活センターの役割、活動補助サービス(PAS)などの介助サービスの提供が考えられる。

2)施設や在宅から地域での自立生活移行プロセスと成功要因
調査対象者のヒアリングで、彼らが施設や親元での保護的生活を強いられたのは、非常に長く、平均30年もの歳月を費やしている。重度障害者は地域で介助 サービスや基本的インフラーがなかったために、30年もの歳月を施設や親元で過ごし、彼らは「失われた人生」とも言われた。青春時代を殆ど施設や親元で過 ぎし、地域に出ることなく過ぎってしまったのである。このような長いトンネルから光に導き出したのが自立生活運動であり、地域で展開されている活動補助 サービス(PAS)の提供である。
親元で生活している人も親を気にせず、自由に外出ができ、収容施設の施設から出て、地域で生活保護を受けながら在宅暮らしができたのは、地域で介助サービ スが提供されていたからである。つまり、ヒアリング調査で彼らは、生活保護制度と介助サービスが最も重要な自立生活の必須要素であり、介助サービスなしの 今の自立生活は成り立たないと語っている。

3)調査対象者のライフヒストリから明らかになった自立生活移行プロセス
調査対象の24人のヒアリング調査から、彼らが自立するまでの過程を分析し、自立生活移行プロセスが明らかにされたのである。つまり、彼らが入所施設や親 元の保護から自立生活を果たすまでには、次の図-2で示しているようなプロセスを経ていることが明らかにされており、このプロセスを明らかにすることでど のような要因が自立生活成功をもたらしたのかが明らかになった。

◆自立生活移行プロセス
「出会い(動機付け)」→「決心(心理的同動揺と葛藤)」→「自立生活体験(フィールド・ライフ)」→「エンパワーメント」→「パワーレスとパワーアッ プ」→「フィードバック」である。これは、今回の事例分析から導き出された段階モデルであり、このようなプロセスを経て彼らは、ロールモデルを発見し、主 体的に生活を営んでいる。そして、次なる目標を発見し続け、地域で普通の市民として生活       図-2 自立生活移行段階モデル
するのである。特に彼らが親元や施設から出て、地域で自立生活をしようと決心した背景には、地域にバックアップ体制があったから決心したと語っている。

◆自立生活の成功要因
地域に出れば、強力にバックアップしてくれる自立生活センターや自立生活体験アパート、介助サービス及び生活保護による基本的な生活保障があるから決心に 結び付いたと話している。しかし、実際にそうであるか、どうか彼らは何十回に及ぶ葛藤と動揺を経験している。そして。自立生活体験アパートでのフィール ド・ライフを通して確信し、介助サービスや地域で仲間が支援していることを確認し、決心をするものであった。このような過程を経て地域で自立生活をしても 引き続き、自立生活センターによるピアサポートやセルフヘルプ活動を通してエンパワーメントを促進し、彼らのパワーレスを側面から支援し、パワーアップを 図らなければならない。その結果、彼らは、ピアモデルを発見し、主体的に地域生活への参加と活動を展開するプロセスを経ている。また、彼らの決心に重要な 動機付けとなったのは、フォーマルな介助サービスが地域に存在していることであり、インフォーマルなボランティア活動に頼ることは決して決心の要因にはな らなかったと語っている。
4)介助サービスの提供による生活への効果
介助サービスを受けるようになって、健康的に以前よりも回復し 、病院に緊急治療にかかる回数も少なくなっている という。また、心理的・情緒的にも安定して生活をしていることが語られている。特に、家族関係については、介助サービスを受ける以前より、親子関係や兄弟 関係が仲良くなっており、気持ちを自己コントロールすることにより、対人関係も満足しているという。さらに、活動補助サービス(PAS)は、社会参加・活 動に自由に使うことができるので仲間との交流拡大やセルフヘルプ活動を通してエンパワーメントを図る上で有効であると分析した。
5)自立生活センターの支援と役割
 調査対象の殆どがCILの支援は大変重要であると認識している。その理由として、当事者組織として信頼性があることやピアサポートがきちんと得られるこ と、活動補助サービス(PAS)を提供してくれること、当事者の立場から理解し、正確な情報が得られることなどを挙げている。

 6)自立生活センター提供の活動補助サービス(PAS)とホームヘルパーや有料ドウミとの比較
 韓国では日本と同じように老人や障害者及び低所得や生活保護世帯を中心に始められた、家庭奉仕員派遣制度や有料ドウミ(ホームヘルパー)派遣制度があ り、重度障害者はこれらのサービスを当然受けられることができる。しかし、これらのサービスは、かつて日本が経験しているような様々な問題を合わせもって おり、重度障害者の介助サービスとしては、適していないことが度々指摘されていた。そこで障害者特有のニーズを反映すべく、海外で実施されているパーソナ ルoアシスタンスの理念を取り入れた活動補助サービス(PAS)を2005年から政府の支援で自立生活センターから提供されている。今回の調査対象者はこ の二つのサービスを合わせて利用しており、そのサービスの違いを試みた。

 @サービス派遣主体:ホームヘルパーや家庭奉仕員(以下ホームヘルパーと統一する)は、地域福祉館や在宅福祉奉仕センターから派遣されており、提供主体 は市郡区である。一方、活動補助サービス(PAS)は、政府の支援を受けている自立生活センターが当事者組織としてサービスを提供している。

 Aサービス提供の時間:ホームヘルパー派遣は、平日9時から17時まで週に2-3回の派遣で一回2-3時間派遣されているが、活動補助サービス (PAS)は、必要な時間に必要な場所で時間や場所を問わず、利用することができる。早朝、夜中、休日も利用することができることからホームヘルパーサー ビスよりもメリットが大きい。

 B費用の問題:ホームヘルパー派遣は基本的に無料又は、応能負担になっている。しかし、活動補助サービス(PAS)は基本的に有料であり、お金を支払う 主体が本人であるために、権利性が保たれる。特にパーソナルoアシスタンスの場合は、本人に政府から介護程度判定により、現金同様のバウチャーが支給され ており、このバウチャーを介助者に直接支払うことで当事者主体の権利性を持ったシステム運営が期待できる。

 C問題の解決:ホームヘルパー派遣については、行政に苦情処理を依頼し、長い時間がかかる。特に、ホームヘルパーに問題がある場合には、直接言えること がなかなか難しく、ストレスの原因になっている。そのため、重度障害者が殆ど対応不可能であり、ヘルパーさんも殆どが主婦なので同性介助も頼めない、ま た、女性の体では、体重の重い障害者の身体介護は無理であり、介助事故も度々報告されている。特に、入浴などの場合は、深刻なプライバシー侵害にもなりう ることから入浴を諦めてしまう場合が多いとホームヘルパー制度への不満を話している。一方、活動補助サービス(PAS)は、同性介助が得られることや問題 がある場合は、直接介助者に言えることができるし、最終的には、障害利用者の判断で契約解消や解雇もできるので当事者の権利性が保たれている。

 D利用領域:ホームヘルパーは、規則制限が多く、当事者の意向通りにやってくれない。例えば、窓吹きや代筆、集会場への付き添いもできない。主に、家庭 内の仕事で掃除、洗濯などの家事援助に絞られている。しかし、活動補助サービス(PAS)は、場所や時間を問わず、必要なニーズに沿って自由に使うことが できる。それによって、障害者の社会参加や活動の場が広がることは大きなメリットである。

 Eトレーニング:ホームヘルパーは機関主導なので研修をきちんと受けており、プロ意識も育てられている。そのため、様々な規則でしか動いてくれない。活 動補助サービス(PAS)は、主体が本人なのでトレーニングも本人による指示と訓練で行われている。障害者の介助サービスニーズは様々なので一人ひとり個 人に見合ったトレーニングを障害当事者が行うことにより満足感も高く感じている。

 F依存と自立:ホームヘルパーの殆どは、主婦層が多く、家事や洗濯、調理、買い物などに当事者が一々意見を出すことが少なく、決められた時間の範囲で一 連の仕事が片付けられてしまう。ある意味では、家政婦のような存在として受け取る障害者も多く、いつの間にか、依存してしまうことが多い。しかし、活動補 助サービスでは、主体が当事者なので障害者が一々言わなければ何事も始まらない。そのため、障害者は介助者に何を頼むか、どんな食事を作ってもらうか、味 見をしながら共に食事を作り、洗濯に対しても自己流の洗濯方法を選ぶ、例えば、下着と靴下は別に洗うことなどである。買い物についても自ら出向いて自分の 好きなものを選び、お金を直接支払うことで消費者としての生活を送る。このように自立生活を自らの選択と決定をすることでエンパワーメントが向上され、よ りストレングス的な自分と出会うのである。

 G介助者の身分:ホームヘルパーの多くは主婦層であり、市町村から行政委託の事業所に所属されており、社会保険や基本給が補償されている。また、平日9 時から17時までの勤務なので勤労条件としては公務員並みの処遇を受けている。一方、活動補助サービス(PAS)における介助者は、個人契約や自立生活セ ンター所属の登録介助者が多く、殆どがパート介助者であり、学生が多くを占めている。また、専従介助者以外は、社会保険や労働賃金の保証がないのも課題で ある。しかし、利用者の満足度側面からは主婦層よりも学生層に満足している結果である。
 H主なサービス提供対象:ホームヘルパーサービスは、低所得者や生活保護世帯、老人や障害者世帯への家事援助を主に提供しているものであり、サービス提 供対象も殆どが生活保護世帯の高齢者や障害者世帯である。一方、活動補助サービス(PAS)の対象層は、重度障害者で地域で自立生活している人を対象に サービス提供が行われている。韓国では、地域障害者と身体障害者を主なサービス提唱にしており、今後精神障害者への拡大を検討している。

表-1 ホームヘルパーサービスとパーソナルoアシスタンスの比較
カテゴリー ホームヘルパー及び家庭奉仕員 パーソナルoアシスタンス
@サービス派遣主体 市郡区からの行政委託事業 国が指定した自立生活センター
Aサービス提供時間帯と提供時間 平日9-17時まで、土日夜間は休み
週に2-3回の派遣、1回2時間 時間、場所を問わず派遣
月80時間上限、他制度利用可能
B介助料の支払い 基本的に無料又は応能負担 有料、個人のバウチャー支払い
C介助者の問題解決 行政に苦情処理依頼 直接解決又は契約解消、解雇
D利用領域 主に家庭内でサービス受給 場所や時間を問わない
Eトレーニング 一定の研修後ヘルパーとして採用 当事者がトレーニングを行う
F自立と依存性 ヘルパーに依存性が高い 当事者の自立性が高い
G介助者の身分 公務員に準じる(基本給+手当) 個人契約のパート又は専従者
Hサービス提供対象 低所得や生活保護世帯の老人と障害者などの限られた対象 重度障害者(身体、知的、精神)で地域で自立生活している障害者
Iメリット @ヘルパーの多くは、主婦であり、家事援助に関わる調理などがうまく、多様な食事メニューを作られる。また、社会経験が多いことから多様な話題との交流が でき、様々なヘルパーさんと触れ合うことで多様性が経験できる。
Aヘルパーさんの多くは40代以上の人であり、人生経験豊富な方なので子育ての経験などの人生相談もできることが嬉しい。 @当事者の意見を直接言えることで利用者のニーズを優先して介助してもらうことができる。
A介助を頼む場面で柔軟性が多い。物事を自由に介助者に言えることで介助者との心理的負担が少ない。
B専従介助者や自己推薦介助者の場合、介助内容を毎回説明しなくても良い。社会参加・活動において利用しやすい。
C自立生活の理念をよく勉強しているので当事者の意向を理解してもらいやすい。
Jディメリット @職業プロ意識が強いために障害者の言うことよりも自分の判断で行うことが多く、障害者を子ども扱いし、説教が多い。
A同性介助を選べないために、入浴なども遠慮してしまうことが多い、また、自分専従の介助者ではないために、個人のプライバシーが守れないようで不安だ。
B介助を頼む上で、ヘルパーマニュアル通りにやるので柔軟性に欠けており、ヘルパーが毎回変わるので一々介助内容を説明しなければならないので疲れる。
C社会参加などの活動には使いにくいものであり、自立生活についての理解も乏しく、ヘルパーとのトラブルの原因にもなっている。さらに、ヘルパーを自分で 選定することはできず、土日など利用や緊急時にも対応できない。 @社会経験が少ない大学生が多いので話題の交流面では狭い。
A食事をおいしくつくる技術が不足で美味しく食事を作ってもらえない
B社会保険などがきちんと保障されていないので事故などが起こると利用者が責任をとる恐れがあり、そのような面では不安定だ。
C専従介助者の場合、気まずくなるとストレスが溜まりやすく、多様な介助者と触れ合う機会が少ない。
D現在の安い介助料では、安定した介助者確保が難しく、緊急の場合に備え、代替介助者確保が容易ではない。
E長期的に介助者として働く意志が薄く、短期的アルバイト感覚の人が多いので不安定が残る。

4.まとめ
1)介助サービスの提供主体による違いの比較 から明らかにされたもの
 今回24人の事例分析から自立生活を果たすまでのプロセスを明らかにし、その成功要因として地域における自立生活センターのような強力なパックアップ組 織や生活保護や活動補助サービス(PAS)のような公的対人援助サービスの存在が重要であることが明らかにされた。特に、重度障害者が地域で自立生活して いくためには、サービスの提供だけでなく、どのようなサービスをどのような提供方法によって支援するかによってその結果が大きく異なると言えよう。
 事例でも明らかになっているように、単に介助サービスを提供することであれば、従来の提供者中心のサービス支援に過ぎず、サービスを受けている当事者の エンパワーメントや主体的地域生活への参加効果は、期待できない。しかし、自分で介助内容を決め、日程を調整し、セルフマネジドケアすることによって、よ りストレングス的な自分と出会うのである。
即ち、今回の場合、自立生活センターから購入している活動補助サービス(PAS)と行政から委託を受けて民間で派遣されているホームヘルパーサービスとの 比較を通して、これらの違いが明らかになったのである。

2)今後の課題について
 本研究は「介助サービス提供方法」に関する継続研究であり、今回の事例研究は提供主体による違いを中心に分析を試みた。上記でも明らかにしたように、重 度障害者が地域で自立生活をすることは、単にサービスを提供することのみならず、地域で主体的に生きる存在としてアッピールしなければならないことから、 当事者のエンパワーメント視点は重要であり、よりストレングス的な自分に出会うためにも、サービスを自分で選択・決定していけるような仕組みにしなければ ならない。それによって、リスクを負う権利が保障されることになる。このような観点から今後の課題としては、韓国でモデル事業として実施されている活動補 助サービス(PAS)は、老人スバル保険とは別枠で運営し、今のパーソナルoアシスタンス仕組みを継続して維持し、自立生活センターとの連携を強めるシス テムのあり方について研究しなければならない。更には、費用効果分析は今回実施していないが、今後の研究としては、直接支給のパーソナルoアシスタンスと 行政委託派遣のホームヘルパーシステムとの費用比較分析も今後の研究課題である。


 
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報告原稿

  皆さん! こんにちは! 韓国の三育大学校の鄭鍾和(チョン ヂョンハ)と申します。
  私の研究テーマは「韓国における重度障害者の介助サービスの提供方法に関する研究 -ライフヒストリ調査による利用者の介助サービス認識比較と自立生活移行モデル-」です。
  それではごらんのパワーポイントを見ながら研究成果を発表いたしますのでよろしくお願いいたします。まず、研究背景ですが、日本と韓国の背景を説明しますと次の通りです。

1.研究の背景(Back Ground)

◆経過(日本-Japan)
2000年介護保険制度の実施
2003年から障害者支援費制度開始
2005年10月「障害者自立支援法」制定
2006年4月から障害者自立支援制度実施

◆経過(韓国-Korea)
2005年度から自立生活センターモデル事業実施と活動補助サービス(PAS:パーソナルoアシスタンスoサービス)提供及びCILに対する公的助成開始
2007年2月「障碍人福祉法」全文改正、自立生活パラダイム転換を促す法律全文改正
2007年2月「障害者差別禁止法」制定、第7条において自己決定と自己選択の権利保障と必要なサービスの提供
2007年4月「老人長期療養保険法」制定、2008年7月実施予定、現在第3回目のモデル事業実施中

2.調査の目的と方法(Purpose & Method)

◆調査目的
  第一、韓国における重度障害者のパーソナルoアシスタンス提供方法のあり方ついて行う基礎研究であり、自立生活センターから提供されているパーソナルoアシスタンスoサービス(PAS:Personal Assistance Service) と民間の事業団体から派遣されているホームヘルパー(有料ドウミ又は家庭奉仕員制度)サービスとの比較を行いました。
  第二、利用者のライフヒストリ調査を通して自立生活移行プロセスを明らかにします。
  第三、介助サービス提供における今後の研究課題についても明らかにします。
◆調査対象:他人介助が絶対的に必要な四肢マヒ、脳性マヒ、ALSの地域で生活している重度障害者24人です。
◆調査期間:2006年10月25日〜12月15日(2ヶ月間)
◆調査方法:パワーポイントで示している図-1のように行いました。つまり、全国自立生活センター協議会の協力により50人に調査依頼をして28人から同意して頂きました。調査の過程で4人が辞退し、24人を対象に調査が行われました。

3.調査データーの分析方法

  「KJ法」を用いて分析を行った。つまり、24人のライフヒストリをデジタルレコーダーに録音し、それを文書化し、事実を中心にカテゴリー化(コーディング)する。その後、24人の事例から同じ内容をカテゴリー別に分類し、概念的なグルーピングを行いました。
コーディングをしたものを統計ソフトのSPSS.v12やエクセル2003、アクセス2003などのプログラムを用いて分類し、分析を行いました。また、録音した内容の文書化したものを本人宛にメールで発送し、本人の了解を得る確認作業を取っています。この内容確認のプロセスで本人の意志とは反する内容については削除されており、今回の報告内容は客観的な事実と論者の分析視点による課題を中心に整理されています。また、ヒアリング調査プロセスに関しては先ほどのパワーポイントで示した図-1の通りです。

4.結果と考察(Result)

表-1 24人の事例の集計                          (N=24)
----------------------------------------------------------------------------
性別 男性54%、女性46%
平均年齢 40歳(39.8歳±7.2歳)
障害種別 重度四肢マヒ、脳性マヒ、重複障害、ALS、重度小児マヒ者
障害の等級 1-2級(障碍人福祉法の対象障害者)
月の平均収入 60万ウォン(一般世帯の3分の1に該当)
月の平均支出 57万ウォン程度(日本円にして7万円程度)
介助利用時間 月平均123時間(2006年12月現在)
介助必要時間 月平均207時間(2006年12月現在)
1日に最低必要な介助時間 毎日最低平均10時間絶対必要(2006年12月現在)
----------------------------------------------------------------------------

◆介助サービスの月平均利用時間:123時間であり、介助サービス必要希望時間の平均である最低207時間に比べれば、半分程度のサービス提供に止まっている。 更に、2007年4月からのモデル事業では、月80時間上限を設けています。しかし、当事者たちは上限撤廃を厳しく要求しています。この10月からは180時間に上限が延ばされる予定だと言われていますが、まだ確定ではありません。

◆自立生活移行期間:平均2年7ヶ月と比較的に短く、 地域でのサポート体制の存在が要因として考えられます。例えば、生活保護制度、永久賃貸住宅の提供、自立生活体験アパートの利用、CILや地域でのPAS提供などが自立生活移行を早める要因として考えられます。

5.ホームヘルパーサービスとPASの比較

表-2 ホームヘルパーサービスとパーソナル?アシスタンスの比較表

 カテゴリー / ホームヘルパー及び家庭奉仕員 / パーソナルoアシスタンス
@サービス派遣主体 / 市郡区からの行政委託事業 / 国が指定した自立生活センター
Aサービス提供時間帯と提供時間 / 平日9-17時まで、土日夜間は休み
週に2-3回の派遣、1回2時間 / 時間、場所を問わず派遣
月80時間上限、他制度利用可能
B介助料の支払い / 基本的に無料又は応能負担 / 有料、個人のバウチャー支払い
C介助者の問題解決 / 行政に苦情処理依頼 / 直接解決又は契約解消、解雇
D利用領域 / 主に家庭内でサービス受給 / 場所や時間を問わない
Eトレーニング / 一定の研修後ヘルパーとして採用 / 当事者がトレーニングを行う
F自立と依存性 / ヘルパーに依存性が高い / 当事者の自立性が高い
G介助者の身分 / 公務員に準じる(基本給+手当) / 個人契約のパート又は専従者
Hサービス提供対象 / 低所得や生活保護世帯の老人と障害者などの限られた対象 / 重度障害者(身体、知的、精神)で地域で自立生活している障害者

Iホームヘルパーサービスのメリット:第一に、ヘルパーの多くは、主婦であり、家事援助に関わる調理などがうまく、多様な食事メニューを作られる。また、社会経験が多いことから多様な話題との交流ができ、様々なヘルパーさんと触れ合うことで多様性が経験できる。第二に、ヘルパーさんの多くは40代以上の人であり、人生経験豊富な方なので子育ての経験などの人生相談もできることが嬉しいことなどを挙げています。
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Jパーソナル・アシスタンスのメリット:第一に、当事者の意見を直接言えることで利用者のニーズを優先して介助してもらうことができる。
第二に、介助を頼む場面で柔軟性が多い。物事を自由に介助者に言えることで介助者との心理的負担が少ない。第三に、専従介助者や自己推薦介助者の場合、介助内容を毎回説明しなくても良い。社会参加・活動において利用しやすい。第四に、自立生活の理念をよく勉強しているので当事者の意向を理解してもらいやすいなどです。
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Kホームヘルパーサービスのディメリット:第一、職業プロ意識が強いために障害者の言うことよりも自分の判断で行うことが多く、障害者を子ども扱いし、説教が多い。第二、同性介助を選べないために、入浴なども遠慮してしまうことが多い、また、自分専従の介助者ではないために、個人のプライバシーが守れないようで不安だ。第三、介助を頼む上で、ヘルパーマニュアル通りにやるので柔軟性に欠けており、ヘルパーが毎回変わるので一々介助内容を説明しなければならないので疲れる。第四、社会参加などの活動には使いにくいものであり、自立生活についての理解も乏しく、ヘルパーとのトラブルの原因にもなっている。さらに、ヘルパーを自分で選定することはできず、土日など利用や緊急時にも対応できない。
----------------------------------------------------------------------------
Lパーソナル・アシスタンスのディメリット:第一、社会経験が少ない大学生が多いので話題の交流面では狭い。第二、食事をおいしくつくる技術が不足で美味しく食事を作ってもらえない。第三、社会保険などがきちんと保障されていないので事故などが起こると利用者が責任をとる恐れがあり、そのような面では不安定だ。第四、専従介助者の場合、気まずくなるとストレスが溜まりやすく、多様な介助者と触れ合う機会が少ない。第五、現在の安い介助料では、安定した介助者確保が難しく、緊急の場合に備え、代替介助者確保が容易ではない。
 第六、長期的に介助者として働く意志が薄く、短期的アルバイト感覚の人が多いので不安定が残る。
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6.自立生活成功要因と移行プロセス

  自立生活移行プロセス図をごらんください。

  施設や在宅から地域での自立生活移行プロセスと成功要因:生活保護制度と介助サービス提供が最も重要な自立生活の成功要因として回答しており、ライフヒストリ分析でもこの要因が最も大きな成功要因として導き出されました。

自立生活移行プロセス :「出会い(動機付け)」→「決心(心理的動揺と葛藤)」→「自立生活体験(フィールド・ライフ)」→「エンパワーメント」→「パワーレスとパワーアップ」→「フィードバック」

◆介助サービスの提供による生活への効果:介助サービスを受けるようになって、健康的に以前よりも回復し 、病院に緊急治療にかかる回数も少なくなっているという。また、心理的・情緒的にも安定して生活をしていることが語られている。特に、家族関係については、介助サービスを受ける以前より、親子関係や兄弟関係が仲良くなっており、気持ちを自己コントロールすることにより、対人関係も満足しているという。さらに、活動補助サービス(PAS)は、社会参加・活動に自由に使うことができるので仲間との交流拡大やセルフヘルプ活動を通してエンパワーメントを図る上で有効であると分析しました。
◆自立生活センターの支援と役割:調査対象の殆どがCILの支援は大変重要であると認識しています。その理由として、当事者組織として信頼性があることやピアサポートがきちんと得られること、活動補助サービス(PAS)を提供してくれること、当事者の立場から理解し、正確な情報が得られることなどを挙げています。

7.まとめ

◆介助サービスの提供主体による違いの比較:地域における自立生活センターのような強力なパックアップ組織や生活保護や活動補助サービス(PAS)のような公的対人援助サービスの存在が重要であることが明らかにされた。特に、重度障害者が地域で自立生活していくためには、サービスの提供だけでなく、どのようなサービスをどのような提供方法によって支援するかによってその結果が大きく異なると言えよう。単に介助サービスを提供することであれば、従来の提供者中心のサービス支援に過ぎず、サービスを受けている当事者のエンパワーメントや主体的地域自立生活への参加効果は、期待できない。しかし、自分で介助内容を決め、日程を調整し、セルフマネジドケアすることによって、よりストレングス的な自分と出会い、主体的な生活管理者として成長していくのです。

8.今後の課題について

  韓国でモデル事業として実施されているパーソナルoアシスタンス(PAS)は、老人介護保険とは別枠で運営し、今のパーソナルoアシスタンス仕組みを継続して維持し、自立生活センターとの連携を強めるシステムのあり方について研究しなければなりません。
更には、費用効果分析は今回実施していないが、今後の研究課題としては、直接支給のパーソナルoアシスタンスと行政委託派遣のホームヘルパーシステムとの費用比較分析を行う必要がある。また、今回の事例調査から導き出された「自立生活移行モデル」 の実証のための継続研究が必要です。


UP:20070807 REV:20070904
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