Baby Jane Doe Case|ベビー・ジェイン・ドゥー事件
以下,立岩『私的所有論』第5章注06(pp.206-207)より
ベビー・ジェイン・ドゥー(Baby Jane Doe)のケース
一九八三年一〇月、ニューヨークに生まれた女の子、レイチェルズによれば「脊
椎披裂、脳水腫、および――これが最も重度の障害だと思われるが――小頭症等の
複数の障害を合わせもっていた」(Rachels[1986=1991:111])、
両親は手術を拒否、看護婦が弁護士に救援を求め、弁護士が訴訟を起こす、第一
審で勝利、第二審・第三審では他人の子どもの手術を要求するのは法廷を侮辱する
行為として罰金刑を受ける、これと別に政府は医療記録の提出を要求する訴訟を起
こす、州第一~三審、連邦第一~二審で敗訴、連邦最高裁に控訴中、両親は手術に
合意、手術、政府は控訴を取り下げた。
このケースについてのレイチェルズの「結論は、次のようなものである。…彼女
は1)人間であり、2)無実であり、3)生きており、ずっと世話をすればおそらく二十
歳まで生きることができるであろう。さらに彼女は4)生を営んでいないし、これか
らも決して営むことはないであろう。このうち最初の三つの事実は、一つずつであ
ろうが全部一緒であろうが、彼女の「生命」に何らかの価値を与えるのに十分なも
のではない。そして四番目のことは、道徳的に重要な意味での「生命」が彼女には
決してないだろうということを意味している。そこで残念なことだが、道徳的観点
からすると、われわれが関心を持つべきものは何もないということになる。」
(Rachels[1986=1991:144-145])
他にSinger ; Kuhse[1984]
Kuhse ; Singer[1985]
秋葉[1987:289ー293]
手術して子供が助かれば,もらいうけて養子縁組をしたいと申し出た夫婦が十数組いた。(マシア[1985:59-][1987:61])