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障害者自立支援法:『季刊福祉労働』2006

障害者自立支援法  『季刊福祉労働』


 製作:堀田義太郎

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各論文からの引用と簡単な論点整理(論点の重複あり)
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■■111号(2006夏)

■「「障害者自立支援法」成立から施行一ヶ月――広がる波紋」尾上浩二(111、2006:Summer、134-139)

地域生活への影響
「移動支援事業等で活用すべき点が盛り込まれる一方、重度訪問介護や包括支援に関連して重度障害者の地域生活に深刻な影響を懸念せざるを得ない内容も出されてきた」(135)

○ 障害程度区分
・区分1〜6の六段階(介護保険の要支援〜要介護5に相当)
・ベースは介護保険の79項目
・知的障害や精神障害で、79項目では非該当や区分1などになってしまうケースには+行動障害やIADL(調理等)の関連項目
・区分2〜4については介護保険の79項目だけで事実上一次判定結果が出る。
・79項目――「「できる、できない」のADLをl基軸にしており、知的や精神障害の場合、概して実際の支援の必要度に比べ軽く判定結果が出る傾向がある。」(135)

○ 移動支援事業
・移動支援事業の対象者は「「市町村が必要だと認めた者」となり、自治体の姿勢次第では、支援費制度では対象外だった者も利用できるようになる可能性がある」(136)
・同時に、「実施内容には「社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等の社会参加のための外出の際の移動の介護」と記されており、「社会生活上必要不可欠な外出」の解釈をめぐって相当幅が出てくることにもなりかねない」(ibid.)

○ 重度障害者向け介護サービス
・重度訪問介護の対象者=「区分4以上で二肢以上の障害+歩行・移乗・排泄・排便で“できる以外”に該当する者」
・「区分3と判定されてしまえば、重度訪問介護がそもそも使えない」
・そのサービス内容―― 「コミュニケーション支援や様々な見守り介護が不可欠」
・行動援護―― 一日五時間まで、という時間制限が継続されている。知的障害者の地域生活の見通しは不透明なまま
・報酬単価―― 支援費制度に比べて二割近く低い(136-7)

○ 応益負担
・障害が重いほど負担が増える――負担が家族に求められる⇒ 家族の意向でサービス利用が左右され障害者の自己決定に反する事態がもたらされうる。
・「授産工賃で得られる収入よりも、負担額が上回る場合が多くなる」(138)

■ 「障害者自立支援法の影響」三石麻友美、(111、2006:Summer、92-93)

精神障害者の通院―― 「今までは、通院医療費公費負担制度(精神保健福祉法三十二条)によって医療費の五%の自己負担だったが、法の施行により一割の自己負担となる」(92)
所得調査―― 「負担軽減措置として、所得区分をいくつかに分け負担上限学が設けられている。所得区分を明らかにするためには、世帯全体の収入が求められる。」(92)

グループホーム―― 居住に関する事業は日中活動と夜間の居住の場に再編成され、居住の場としては、共同生活援助、共同生活介護、施設入所支援の三類型となる。事業の基本方針としては日中活動が義務付けられ、人によっては、日中も居住の場でも利用量負担が発生することになる。特に日中活動の義務付けは、地域で暮らす障害のある人の多様な暮らしを保障しないことになりかねない」(93)

グループホームの事業費―― 国の義務経費である自立支援給付の訓練等給付に位置づけられ、報酬単価が設定され、世話人の配置も大幅に緩和される。報酬単価も日払いで設定され、加えて入院や外泊など居住の場以外で宿泊する場合、その間の報酬は発生しない」(93)

■■112号(2006秋)

■「障害者自立支援法の影響――暮らしの現場から」白石直己、(112、06:Autamun、90-91)

グループホーム――「日払いの仕組みになり、日々の入居の状況を印鑑を押すことで確認する作業が始まっている。利用者からは「住まいなのになぜ出勤簿のようなものが必要なのか」という声も上がっている」(90)

運営難―― 「四月から精神科病院へ再入院している利用者もいる。入院している日数は、グループホームを利用しているなとして給付費が法人に支払われないことになった。入院中も職員がさまざまな支援を行っているが、その分は一切給付日に換算されな90>91いのである。支援を行っているのに認められない、むしろ減収になるという事態が既に発生している」(90-91)
「運営する側からすると、三六五日グループホームに居てもらわないと減収になる仕組み」⇒ 「運営だけを考えれば、利用者の自由な外泊や旅行も制限するようになる恐れが出てくる」

「安定した地域生活を送るうえでも、数週間から数ヵ月の精神科病院への入院は起こりうる。その場合も運営だけを考えれば、入院した時点で退所にし、新しい利用者を入居させたほうがよい」⇒ 「社会的入院を経てせっかく退院してグループホームに入居したのに、再入院すると変える場所がなくなってしまう」(91)


■■113号(2006冬)

■「早急な出直し求められる「自立支援法」――「地域生活を直撃」が障害当事者アンケートで浮き彫りに」尾上浩二・山本創(113、06-07:Winter、12-21)

@負担の影響、A支給決定に関する調査

「地域生活をするために多くのサービス料が必要となる重度障害者ほど、思い負担が課せられている」(15)

支給決定方式――介護保険の医療モデルにもとづいたコンピューター上での一次判定と二次判定の関係が不明 ⇒ だがコンピューターによる「点数化」や判定プロセスの「マニュアル化は個別性を十分に反映できない仕組みとなっていくことにも注意が必要である」(18)

■「障害者自立支援法に立ち向かうために――当事者主権/〈必要〉本位の福祉のかたちを求めて」岡部耕典(113、06-07:Winter、22-28)

「在宅福祉の義務的経費化」のからくり―― 「サービスごとの国庫補助基準額が、介護保険の要介護認定に倣って導入された障害程度区分に応じて設定された上での義務的経費化」(24)

■「なんで審査会委員やらなアカンの?」佐野武和(113、06-07:Winter、29-33)

審査会認定の問題

滋賀県――「半日で三〇件近い認定作業をこなすこと」もある⇒ 一件八分のペース

「精神障害者や視覚障害者に低い区分が認定される傾向があり、常態化した障害状況に比べ突発的や、変化のある障害状況に対応していない」(30)
「ケアホームが利用できない区分1の知的障害者が続出して、グループホームとケアホームとのあわせ申請を急遽おこなわなければならない事態が発生」(31)

■「障害者自立支援法は、地域に何をもたらすか?――障害者自立支援法の完全施行に思う」中島哲朗(113、06-07:Winter、34-46)

「制度に従って事業を運営するということ、それ自体」が負担
「それぞれの事業に設けられた「基準」を充たすことが、事業の目的のように思えてくる」⇔ 本来「一人ひとりの障害者が自分らしく暮らせる社会と、それを支えるサービスの実現をめざしていたはず」(40)

居宅介護――06年10月〜 「「家事援助」が一・五時間まで、「身体介護」が三時間までと報酬基準時間が設定」された。

行動援護――「五・五時間以上の報酬単価の設定」がない(41)。

■「グループホーム・ケアホームのあり方」高山和彦(113、06-07:Winter、47-53)

通所施設――食費実費負担(月七千円前後)――「預貯金を引き下さなければ暮らしが成り立たなくなってきた」(47)

「ホームへのヘルパー派遣が十月以降廃止されたため、重い障碍をもつ人たちの入浴回数を減らし、身体介護ケアを行うパート補充も適わない実情にある」(48)

■「共に学び、共に働くための支援が問われている」山下浩志(113、06-07:Winter、54-64)

○ 「障害者自立支援法では「福祉、雇用、教育等の連携による就労支援の強化」を大きな柱として掲げている。そして、「福祉施設から一般就労への移行を進めるための事業『就労移行支援事業』を創設」、「福祉と雇用がネットワークを構成して、障害者の適性にあった就職のあっせん等を行う」などを打ち出し、その結果「障害者がその適性に応じて、より力を発揮して働ける社会へ」近づいてゆくとしている(厚労省プレゼン「『地域で暮らす』を当たり前に」)。
 こうした枠組みをもって、「平成二十三年度中に、福祉施設から一般就労に移行する者を現在(全国:年間二千人)の四倍以上(全国:年間八千人以上)とする」という数値目標が、それを裏付ける根拠なしに出されてきた。そして、「障害福祉計画に盛り込むべき就労関係の目標について」という文書が出され、都道府県、市町村の計画策定の目安として、「平成二十三年度までに、現在の福祉施設利用者(全国:三八万人)の二割以上(全国:七万六千人以上)の者が就労移行支援事業を利用することを目指す」、「福祉施設から一般就労へ移行する者の三割が障害者委託訓練を受講する事を目指55>56す」、「福祉施設から一般就労へ移行する者の五割がトライアル雇用の開始者となることを目指す」、「福祉施設から一般就労へ移行する者の五割がジョブコーチ支援を受けられるようにすることを目指す」、「福祉施設から一般就労へ移行するすべての者が、障害者就業・生活支援センターによる支援を受けることができるようにすることを目指す」などの目標が示されている(かっこ内は筆者要約)。」

→「障害に応じた支援をするという基本パターンそのものには何ら手を着けようとしていない。また障害者雇用促進法が障害者の企業への受け入れを促進する者ではあっても、障害のない人々も含めた共に働くことへの支援ではないことについても、何ら見直しはされていない」(56)

○ 施設 ⇒ 2006年4月から、「日割り計算」となり、「1日でも通所を休むと施設の報酬が減る仕組み」になった(56)。

就労継続支援事業 ―― 
就労移行支援事業 ―― 標準利用期間二年、延ばせて三年 ⇒ 就職できなかった人々はその後は就労継続支援事業の利用者となるか退所するか。(57)

その発想―― 「社会から分けられた場において、さらに少数の社会に出て行けそうな人と出ていけそうもない人を分ける」(ibid.)

「障害者が職場に適応する」、職場に適応できる障害者/できない障害者の選別/差別 ⇔ 職場が障害者に適応する、という発想はもとよりない。

■「地域生活支援事業の展望――地域活動支援センターを地域の相談支援拠点に」木村俊彦(113、06-07:Winter、65-72)

「障害者自立支援法では通所施設からの一般就労者を増やすことが目玉となっているが、これまでそれができなかった理由を詳しく分析することもなく、従来どおりの職業リハビリテーションの訓練メニューを上塗りしても本質的解決にはつながらない」(69)
「障害の程度によって生活・活動の場が分けられていく」(71)

■「精神障害者から見た自立支援法」塚本正治(113、06-07:Winter、73-84)

認定調査―― 歩ける、義足で移動する、車椅子で移動する ⇒ すべて「移動できる」

「認定調査は、介護保険の要介護認定に使われる七九項目の身体機能に重きが置かれていますので、いわゆる「問題行動」と呼ばれる所にどれほどチェックが入ったとしても、なかなか区分が上がらないのが実態です。たくさんのいわゆる「問題行動」があるならば、解除する人や見守る人は凄い力量を問われるはずであるが、区分としては低い区分しか出ません」(76)

審査は一人当たり五〜七分

■「障害者自立支援法における障害程度区分等認定調査員として」はらだいすけ(113、06-07:Winter、141-143)

・認定調査の内容

「障害」という項目――「「左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他」のうち当てはまるものにチェック」
→ 「「間接の拘縮」は他人が動かそうとしても動かないことをいい、動くが痛みのある人や、意思とは関係なく動いたり、動くけれど思うようには動かない場合も、問題なしという結果として出てしまう」(142)

「寝返り」――「片側だけでもできると、「できる」になってしまう」

「飲水」――全介助/一部介助の違いが不明――「介助者の手が副えられていても、コップを預けて口に入れているかどうかだけの違い」(ibid.)

「移乗」――「本人の身体を支えていれば「一部介助」」だが、「本人の動きに合わせておしりの下に車椅子を持っていくのは「できる」とされ、解除がいらないことになってしまう」

「歩行」や「立位」――「歩けるとか立っていることはできても、それだけで精一杯で何もできなければ、実生活においては車椅子や椅子を使って作業することになる」にもかかわらず、細かい部分は無視されてしまう。

・調査項目そのものの問題性

「「嘘をつくことがある」とか、「暴言や暴力を振るうことがある」など、普通、相当の関係性がない限り本人にこんなことは聞けないと思える項目もたくさんあ」る(ibid.)

・詳細な部分を反映できない

「座位にしても胸にも腰にも足首にもベルトがしてあるにもかかわらず、車椅子なら座れるとしか多くの人は答えません。「支えがあれば座れる」ということにはなりますが、背もたれがあれば座れるのと、ベルトが必要なのとでは大きな違いがあり、それは特記事項に書かなければ審査会で皆同じに扱われてしまいます。」(143)


*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p1/2004t.htm

UP:20070417 REV:
障害者自立支援法
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