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『障害者の権利条約――国連作業部会草案』

長瀬修・川島聡編著 20040430 明石書店


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長瀬 修・川島聡 編著 20040430 『障害者の権利条約――国連作業部会草案』,明石書店,95p. 1200 [amazon][kinokuniya] ※ **
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■目次

まえがき

第1章 日本における現状と障害者の権利条約の可能性(金 政玉)
はじめに
1 国際人権基準からみた日本の障害者法制の問題点
 1 自由権規約との関係  2  社会権規約との関係
2 障害者の権利条約の意義

第2章 第2回特別委員会までの到達点(川島 聡)
はじめに
1 第56回国連総会
2 第1回特別委員会
 1 NGOの参加手続   2 条約内容の討議   3 総会決議案
3 第2回特別委員会
 1 条約作成の明確な合意   2 条約内容の討議   3 作業部会の設置決
定    4 作業部会の構成員
むすびに

第3章 作業部会と条約草案−画期的なNGO、障害者の参画(長瀬 修)
1 作業部会の開催
2 障害者・NGOの大きな役割
3 会議の進行
4 条約草案の概要
5 主な論点
 1 国際協力   2 自己決定   3 差異の権利   4 定義   5 
差別の定義と「合理的配慮」
 6 統計とデータ   7 社会権の漸進的実現義務と救済   8 特別措置 
  9 生命に対する権利  
 10 身体の自由、強制的治療・強制的施設収容   11 教育
   12 モニタリング
6 日本政府とNGO
7 今後に向けて

資料1 障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国
際条約草案
    作業部会報告・付属書1 長瀬 修・川島 聡(訳)
資料2 特別委員会において検討されるべきである国際協力の論点に関する討議要約
    作業部会報告・付属書2 長瀬 修・川島 聡(訳)

http://www.akashi.co.jp/home.htm

*依頼されて書いた「帯」の文(指定100字・立岩 真也

「国連の条約だからとただ拝領することはない。どうせ国連の条約だからと脇に置くこともない。何事かを決めていくその過程を追い、そこに働く政治を知り、困難について思考し、そして参画すること。そのためにこの本を使うこと。」

●まえがき
  私たちの社会には障害者に対する多くのバリアがある。障害者の尊厳と権利が十分に尊重されていない。必要な人的・技術的支援を障害者に対してきちんと提供することもできていない。しかし、あらゆる人間の多様性を認め、障害者の自己決定権を保障し、平等な機会を保障することは、私たちが目指す豊かで、活き活きとした社会にとって欠かせない。
  そうした問題認識を国際的に生み出したきっかけが1981年の国際障害者年であることは間違いない。「完全参加と平等」という同年の理念は現在も通用する。その理念を実現する1つの有効な方策が障害者の権利条約である。そうした認識のもとに、障害者であるか否かを問わず、誰もが暮らしやすい社会を創り出すために、障害者の権利条約の策定過程が2001年12月の国連総会決議以来進められている。
「障害者の条約は国際障害者年からの取り組みの論理的な着地点である」とは国連総会決議に基づいて開かれた第1回特別委員会での、障害者の機会均等化に関する基準規則の特別報告者(当時)のベンクト・リンクビスト氏の発言である。
  2002年6・7月の第1回特別委員会で条約が果たす役割が認められ、2003年6月の第2回特別委員会では条約作成の手順が定められた。そして今年、2004年1月の作業部会で、障害者の権利条約の草案が作成された。
  この条約草案を議論のたたき台として、2004年5月下旬から第3回特別委員会が開かれ、本格的な条約交渉の幕がここに切って落とされる。その直前という、このタイミングで本書を出そうと私たちが考えた2つの理由がある。
  1つは、できるだけ多くの人に、この条約に対する関心を持ってもらいたいという願いである。残念ながら、本当にごく一握りの人にだけしか、この権利条約策定過程に関する情報が届いていない状況がある。このままでは、ある日突然、「国連で障害者の権利条約が作られた」というニュースに大多数の人が接することになってしまうだろう。少しでも多くの人に、この社会的に重要な動向を現在進行形で共有してほしい。国際的なテーマとして、障害者の権利が取り上げられることに少しでも多くの人に思いを寄せてほしいのである。
  もう1つは、第1点とも密接に関連しているが、どういった内容の条約が必要かという実質的な議論の基盤となる資料―作業部会条約草案―を広く提供したいという願いである。すでに政府、そしてNGO(非政府組織)を通じて、日本からの影響が条約策定過程に及んでいる現実がある。いっそう充実した内容の条約にするために、より多くの人にこの条約草案に触れてほしい。権利条約は、日本国内での今後の動き、たとえば障害者基本法改正、障害差別禁止法制定、精神保健福祉法改正、国内人権機関設置、次期科学技術基本計画策定等とも密接に関係していくからである。
  以下、本書の構成について述べたい。第1章の金論文は、日本国内の現状と国際人権基準との関連を取り扱い、障害者の権利条約への期待を述べている。金は2004年1月の作業部会では、日本政府代表団にNGOからのオブザーバーとして加わった。
  第2章の川島論文は、第56回国連総会、第1回特別委員会、第2回特別委員会までの動きを取り上げ、分析するものであり、条約実現に向けた第2回特別委員会までの到達点を明らかにする。
  第3章の長瀬論文は、障害学の観点を交え、2004年1月に開かれ、NGOが正規の構成員として発言権を確保して条約草案をまとめた作業部会の動向を記述し、条約草案の主な論点を分析している。
  最後に資料として、作業部会がまとめた条約草案(作業部会報告・付属書1)、国際協力に関する討議の要約(同報告・付属書2)両方の翻訳を掲載している。
  読者の皆様に、2つお願いしたい。1つは、障害者の権利条約に関する情報交換を行っている「障害者の権利条約メーリングリスト」への参加である。2001年12月に長瀬と川島が主宰し、開始したMLであり、障害者の権利条約研究会の活動の一環として位置づけられている。無料で自由参加である。
  もう1つは条約草案の翻訳、また、私たちの分析に関してお気づきの点がある場合、是非、編集部までご連絡をお願いする。
  本書の刊行に当たっては、明石書店の石井昭男社長、高橋淳取締役、堀史恵さんにご尽力いただいた。権利条約の現況を社会的に伝える意義に共感していただき、出版を実現してくださった。感謝の気持ちで一杯である。
  本書が障害者の権利条約への関心を高める一助になれば、これにまさる喜びはない。

2004年4月
長瀬 修
川島 聡


UP:20040414 REV:0512(目次掲載),0611(まえがき掲載),0702
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