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『福祉国家崩壊から再生への道――21世紀生活大国ニッポンへの提案』

芝田 英明 編 20010201 あけび書房,201p. 1800


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■芝田 英明 編 20010201 『福祉国家崩壊から再生への道――21世紀生活大国ニッポンへの提案』,あけび書房,201p. 1800
 他の著者:田邊隆聖 戸嶋哲也 江本淳
・この本の紹介の作成:E(立命館大学政策科学部3回生)

第一章
「社会保障の歩みと運動の歴史」
・社会保障前史…産業革命期の救貧行政、貧困への関心
・社会保障への歩み…社会問題の発見、社会保障成立の客観的条件の確立と社会保障の成立。
・第二次世界大戦後の社会保障の発展…労働組合運動と社会保障、社会保障の発展と運動。

第二章
「社会福祉法成立がもたらすもの」
・社会福祉基礎構造改革の狙うもの…措置制度の解体、契約制への転換、地域福祉権利擁護事業、社会福祉事業への営利企業の参入、福祉の市場化
・社会福祉基礎構造改革と社会福祉のあり方の変容…粗雑な「措置制度解体論」、企業参入と福祉の市場化、社会福祉協議会の役割
・社会福祉における公的責任とは何か…神野直彦グループによる「ワークフェアー原理」と供給における公的責任

第三章
「迷走する介護保険とその展望」
・公的介護保険の本質的問題点
・高齢者福祉の再生に向けて…利用者参加の施設運営、職員の定年延長、施設の情報公開

第四章
「年金の変質経緯とその将来像」
・国民年金、厚生年金の問題点…基礎年金導入の意味、国民年金の2000年改定とその問題
・確定拠出型年金「401K」の問題点…アメリカ合衆国における「401K」、「401K」と企業経営。
・公的年金制度の課題…国民議論の必要性、「基本年金」による「皆年金」の実現

第五章
「高齢者医療構造改革のあるべき姿」
・高齢者医療保障の歩み…老人福祉法制定から老人医療費無料化までの時期、老人法制定以後の時期
・介護保険と高齢者医療保険…介護保険登場と意味、高齢者医療保険のデザインと論点
・高齢者医療保障の観点…是正されるべき構造と目指されるべき構造

第六章
「社会保障の財源を考える」
・消費税はなぜ導入されたか…一般消費税、売上税の提案、消費税の導入
・消費税アップと福祉目的税への道程…国民福祉税構想、福祉目的税化の動き
・消費税の福祉目的税化の狙い
・社会保障の財源

第七章
「福祉国家再生へのプログラム」
・福祉国家の具体化…社会保障に関する公的諮問機関と私的諮問機関、有識者会議は何を語ったか?
・新しい社会保障制度の枠組み…社会保障の統合化を目指す、福祉国家再生の新社会保障、
福祉国家は再生するか


第一章
  この章では社会保障の歩みと運動の歴史を追っていく。「社会保障」はだれかに与えられたものではなく、働くものが長い歴史の中で闘いとり、充実させてきたものである。この章では「社会保障とは何か」を正しく把握することができる。15C末、イギリスで行われた、本源的蓄積気の救貧法から、産業革命、相互扶助組織が発展する19C中期、最終的には第二次世界大戦後の社会保障までの社会保障の歩みを追っていける。

第二章
  この章では95年以降の審議会文書や「社会福祉法」を整理し、社会福祉基礎構造改革が何を狙い、またそのどこに問題があるのか、さらに社会福祉における公的責任とは何かを考察し、最後に社会福祉における公的責任を踏襲した国民のための真の「社会福祉改革」とは何か、を述べている。措置制度の意義、措置制度の批判と縮小など、措置制度の問題点についても言及している。

第三章
  この章では介護老人福祉施設の運営にかかわり、利用者のケアマネジメントを行い、さらに社会福祉士・介護福祉士としての生存権擁護に携わる筆者の立場から介護保険制度の問題点を指摘し、高齢者福祉再生の道をさぐる。介護老人福祉施設運営の現状と問題点としてあげられる事業所収入の減収の例を挙げておく。
@地方自治体の補助金削減
Aショートステイ、デイサービス、在宅介護支援センターなどの付随施設の利用が減少して減収になる。
B 利用者の要介護認定が全体的に低い。
C 借入金返済に伴う財政の圧迫。
D 人件費の増加

第四章
  この章では公的年金制度における問題の所在を、年金財政と2000年3月の年金改革法および「401K」に関する議論から明らかにし、あわせて、憲法25条(生存権)に基づく基礎年金制度を、1977年社会保障制度審議会建議「皆年金下の新年金体制」を参考にしながら見ていっている。

第五章
  この章では医療構造改革の中でも「高齢者医療制度」を中心に、高齢者医療保険の登場が目されるまでの政策の経緯を歴史的に見ていって、公的介護保険との関連も踏まえながら整理をする中で、高齢者医療保険の持つ「性格」や担わされる「役割」を明らかにしつつ、改革の方向提示を行っている。

第六章
  この章では最近の「福祉目的税化」の議論を踏まえ、もともと、消費税導入の目的が「社会保障の財源確保」であったのか、また、そもそも消費税収を「社会保障の財源に充当すべき」なのか、を消費税導入からの経緯を振り返って検討し、社会保障の財源を何に求めるべきなのかを論じている。

第七章
  今まで見てきた福祉国家崩壊に対抗するものとして、この章においては、私たち国民が「生活のよりどころとして信頼できる社会保障」とは何かを具体的に提示されている。結論から言えば、その新しい社会保障は、社会保障全体の統合化を目指し、新しい執行機関によって運営される。具体的には、政府から一定独立した機関として「社会保障金庫」を創設し、地方には「社会保障事務所」が必要だと述べている。すべての国民は、社会保障に関する相談から申請、給付までを社会保障事務局で完結できるというものである。
  さらにどのようなプログラムで福祉国家は再生されるのかを具体的に提示していっている。



はじめに

  私はこの「福祉国家崩壊から再生への道」という本を紹介します。
  2000年7月に、神奈川県大和町の無認可託児所における幼児虐待・死亡事件が発覚しました。私はこの時まだ高校生だったのですが、この本で少し触れられていて、調べてみたところ、この託児所では、1999年2月の開所以来23人の幼児が怪我をし、二人が亡くなっていました。これは現在、そしてこれからの日本の社会保障状況を予見するものだったのではないのでしょうか?何故なら、日本の社会保障は、所得保障に特化され、基本的には対人社会サービスは商品として購入しなくてはならなくなっているからです。98年度で保育所待機児童が約4万人もいます。父母の心理としては、質を問うよりも就労のために「子供を預ける場」を確保せざるをえません。そしてそれが悲劇を呼んだのです。
1996年に発表された社会保障関係審議会会長会議『社会保障構造改革の方向(中間まとめ)』は、「社会保障分野の規制をできる限り緩和するなどして、民間事業者によるサービス提供を促進」するとして、社会保障の市場化を打ち出しました。また、「1999年版厚生白書」は、「社会保障は個人の自立自助を基本に、社会を構成する各人がお互いに助け合うという社会連帯の考え方により支えられている」として、社会保障の公的責任制を捨象しようとしています。これは、疲弊した現代資本主義に新たな利潤追求の場として社会保障分野を開放することが目的だと思われます。
このように、このままでは21世紀の日本の福祉は崩壊の道を進み続けます。それに対して警鐘を鳴らしたのがこの本です。

コメント:

  今、福祉国家日本の再生が叫ばれています。しかし、そんな中、この本ではまだ言及されていなかった方向に日本は進みつつあります。支援費制度が2004年4月より導入され、賛否両論の物議がかもし出されました。国は福祉(この場合は障害者福祉)の問題は民間に投げ出した、というのが本当のところでしょう。
私たちの進むべき福祉政策はこうあるべきである、こうあるべきだった、ということがこの本には書かれています。年金、税金の問題の解決策もこの本には書かれ、今、日本に必要な改革が痛感されます。このままでは、日本の福祉はだめになってしまいます。この本を読むことによって福祉国家の再生をもう一度考え直すことができます。


UP:20040210
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