『男女共生社会のワークシェアリング』
鎌田 とし子 19950710 サイエンス社
・鎌田 とし子 19950710 『男女共生社会のワークシェアリング』,サイエンス社
・この本の紹介の作成:三澤成之(政策科学部3回生)
■鎌田 とし子 19950710 『男女共生社会のワークシェアリング――労働と生活の社会学』,サイエンス社,女性社会学者による新社会学叢書,226p. ISBN: 4781907717 1700+ [amazon]/[boople] ※,
目次
1章 労働とは何か
2章 労働の歴史規定
3章 労働過程
4章 日本的労使関係
5章 労働者諸階層
6章 労働過程と生活過程
7章 総労働と社会的分業
8章 社会化された人間
1章 労働とは何か
1日、24時間を「全生活過程」とよび、生活に必要な諸物資を手に入れるために働く部分を「労働過程」とよび、それ以外の部分を「狭義の生活過程」とよぶ。生活のため欠かせない労働の技術的、組織的過程の人間に及ぼす影響を労働の本質としている。
2章 労働の歴史規定
資本主義的生産様式、単純再生産、拡大再生産のモデルの解説がされている。また、その成立過程で、前章の労働の技術的、組織的過程の人間に及ぼす影響が失われていったとしている。
3章 労働過程
科学技術の進歩による労働のオートメーション化が進んだことで、労働の技術的、組織的過程が変化していったことを書き、そこから生まれていった科学的管理法、官僚制組織、人間関係管理に触れている。
4章 日本的労使関係
日本の大企業、官公部門の終身雇用、年功序列と、中小企業での雇用の不安定さ、企業自体の不安定さに触れ、それに対比させる形でスウェーデンの4、5年単位で職場を変えていく現状、それを可能にしている会社文化と再教育制度の充実具合、それらを成立させていった政治背景を書いている。
5章 労働者諸階層
現代を大企業中心の構造で、その論理が社会のあり方を規定する企業社会であるといい、
そのなかに生まれた大企業と下請け孫請け企業、正社員と派遣労働者、パートタイムの2重構造があるとしている。また前章のスウェーデンの現状を踏まえての年代別就職率の変化の比較や、女性の企業での役割の変化についても触れている。
6章 労働過程と生活過程
様々な世帯のモデルケースを提示し、所得階層の違いが生む世帯、家族構成、男女の役割の変化を書いている。また主婦の家事労働が所得に結びつかない点、社会的欲求についても触れられている。
7章 総労働と社会的分業
前章で触れられていた所得に結びつかない家事労働について、各人が元々行わなければならない衣食住に関わることとは別に、育児と介護の二つを社会的な労働として捉え、財政によって社会的に解決しなければならないことだといっている。スウェーデンは生活の単位が個人であり、福祉を受けるときも個人単位である。そのため男女が平等に働けなくてはならない。ゆえに育児や介護で休暇をとるときも、所得補償を受けることができ、また行政サービスを受けることもできる。これが、女性を家事労働に追いやっていたものを社会全体で分かち合うことであるとしている。
8章 社会化された人間
近い将来の日本において、少子高齢化社会に対応していくため、スウェーデンのように生活単位を個人に設定し、女性の社会進出を助け、生活を行いつつ働くことのできるようにするべきであると述べている。
・コメント
本書はやや発行年が古く、資料も90年代初頭か80年代のものが使われていて現在の状況に則していない事もあるかもしれない。しかし『本書の狙いの第一として、人が生きている限り「関係ない」ではすまされない「労働」のことを、最低限これだけは知っていて欲しい、これくらいなら読んでもらえそうなことがらを選んで、書いてみた』と巻頭にあるように、基本的なことに関して本の大部分が使われている。ときにはこのような本で基本を確認…[再録にあたり切れてしまいました。近々なおします。]