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同性愛者への社会的権利と政策

RY(立命館大学政策科学部3回生)
掲載:20020721



同性愛者について

 最初になぜテーマを同性愛者への社会権利と政策に設定したかを述べたい。それはレポートのテーマが『女性/男性と社会そして政策とに関わることについて』であることから、対象が男性または女性であり、そして社会的に立場が弱いが潜在的な人数は以外のほかに多いという特徴をもち、各国政府からの政策に特徴が見受けられる「同性愛者」に設定した。ちなみに同性愛者の割合は、アメリカにおいては、男性の約8%は3年間の同性愛経験、一生の同性愛者は4%、同じく女性では、一時的同性愛者20%、一生は2〜3%(1990年発行の報道誌ニューキンゼイレポートによる)であり、日本においては、「同性と性的接触をしたことがある」と答えた割合が中学生男性3.3%女性4.4%、高校生男性2.6%女性4.3%、大学生男性5.0%女性3.5%(財団法人日本性教育教会の「青少年の性行動第4回」報告書による)とのことである。私としては、この割合は想像をはるかに多いものであり、もはや同性愛者は一概にマイノリティーであると位置付けできるものではないと感じた。それに対して、世の中においては以外のほか理解されていないように考えられる。という私自身、このレポートをまとめるまでは同性愛者に対しての理解が不足していたことは事実であり反省している。同性愛について調べていくうち、同性愛は特別なものではないことを深く感じた。人間を色に例えれば、異性愛者を青として同性愛者を赤としたところ、人間のほぼ全員は純粋な青や赤には染まらないで、どちらの色も混ざった人間がほぼ全員だそうである。そのなかでたまたま赤が濃くなった人間が同性愛者となる可能性があるだけとのことである。だから特別なものではなく、たまたま人体の中で同性意識が他の人間より濃くでただけであることを知った。さらに人間が動物の一種である以上、同性愛者がでることは当然であると知った。なぜならば、どのような動物においても数%は同性愛の思考を持って生まれてくるというデータがあり、人間も動物の一種である以上この傾向が現れて当然といえるからだ。このようなことをこのレポートをまとめて行くうえで学んだ。
 現在、アメリカと日本においては法律上同性愛者間の結婚が認められていない。法律で同性の結婚が認められることが、同性愛者が社会的権利を得る重要な要素であると考えられる。しかし、それらの法律の改善より重要なことがある。世の中に生きる人間の、心の問題である。同性愛者が法律的に認められるか等の世論調査においては、多数の人間は好意的な意見で答えている。ただ実際には、普段人々は会話の中で同性愛者を傷つける言葉を発したりしている。このような矛盾をなくすことが本当に同性愛者が社会的権利を得られた瞬間といえるのではないか。つまり、法律より人々の心の方を変えることが、特に日本人にとって大切なことといえる。

エイズと同性愛について(アメリカ)

 エイズは1981年に、それまでに前例のない病気として報告された。おもにアメリカにおける3つの大都市、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコで、男性の同性愛好者(ホモセクシャル)にこの病気が広まっていることが報告されたのだ。
第一発病者はアメリカのロサンゼルスに住む31歳の男性同性愛者であった。原虫ニューモシティス・カリニに感染し、「カリニ肺炎」と呼ばれる肺炎になっているのが確認されたのである。また、彼は口や消化器官に白いカビが繁殖する、カンジダ症にもかかっていた。これらの感染症は、通常なら人体に入っても免疫系が抑え込むはずで、免疫力の強い若い男性には見られるはずのない症例であった。さらに同じロサンゼルスで、この男性患者と同じような症状を示す若い同性愛患者が、4人もたて続けに発見された。調べてみると、彼等の体の中ではいろいろな微生物が活発に活動していた。こんな珍しい病気が同時にあちらこちらで見つかることは、それまでの常識では考えられないことであった。ニューヨークなどでも類似の感染症が相次いで見つかり、これらも同じ若い同性愛の男性で、ロサンゼルスの患者と同じカポジ肉腫という症状が出ていた。カポジ肉腫は皮膚がんの一種だが、これらはそれまで老人にごくまれに見つかる病気で、よほど免疫力が低下していなければ起きないはずの病気だったのある。しかし、このような異常な病気の多発に対して、当時のアメリカ政府は同性愛者に対する偏見的な対応でしかなかった。1981年に発足したレーガン政権は、急速に増えるエイズ患者に対して、同性愛者のうちでしか発病しない病気としか見ていなかった。当時、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、エイズを確認した当初から、この感染症を重視して政府に警告し続けていたにもかかわらず、レーガン政権の政策案は保守的で偏見的なものでしかなかったのだ。このためアメリカ疾病対策センターは、エイズがどんどん増えていることがわかっているのに、わずかな研究費でエイズと格闘しなければならなかった。このようなアメリカ政府の政策は、同性愛者に対する差別と偏見であり許されるものではない。また、血清投入等によるエイズ感染被害者に対しても、精神的においやり告白をためらう原因となった。また、結果的にエイズに対する世論を誤った方向に向けることになるなどの悲劇も発生した。このような理由から同性愛者のみならず、感染被害者全体に対する政府の政策が誤っているといえる。
 当初は同性愛者にだけ発病される意識されていたエイズだが、1982年になると、麻薬常習者の間に広まっていることがわかりだした。麻薬を静脈注射する時、回しうちが儀式のような形になっており感染者と同じ注射針を使うことによって広がっていったのだ。また、麻薬常習者の子供たちにも免疫力の低下が確認されだした。さらに、血友病患者にも同じ症状が見られるようになってきた。アメリカの血液製剤は、売血された血から作られていて、その血を売る人々の中には麻薬常習者が多く含まれていたために、その血を通して病気が広がっていったことがわかってきたのである。もはやこの病気は、男性同性愛者だけのものではないことが明らかとなった。そしてついに、ウィルスによる感染症であるということが推定されるようになったのである。
 そこで、なぜ男性の同性愛者から病気が出て、同性愛者の病気であると噂される原因となったのかが検討されだした。その結果、元をたどっていくと、ある航空会社の国際線の非常にハンサムなパーサーに行き当たった。彼は同性愛者であった。彼が1980年にウィルスをアフリカからアメリカ大陸に持ち込み、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、さらにカナダのトロントにおいて、男性の同性愛好者にばらまいたということがわかったのだ。もちろん、その背景にはアメリカ政府をはじめとする同性愛者に対する差別と偏見があったのはたしかなことである。
 このように徐々に同性愛者間だけの問題ではないと知られるようになってきたエイズは、1985年に人々からより深刻で国民的問題であると報道されるようになる。それは、1985年7月ハリウッドの大スター、ロック・ハドソンがエイズによって重体になっていることが判明したからである。この報道によって、アメリカでは大パニックが起きた。人々はエイズがすぐ身近に迫っていることを感じ、エイズ対策に力を入れろ、という世論が盛り上がり、アメリカ政府もようやくエイズを政治課題とするようになったのだ。ただ、キリスト教が文化の根底にあるアメリカでは、同性愛は宗教的罪であるとする考え方が強く残っていた。聖書等に「同性愛は罪である」と書いてあることから、「同性愛は罪であり絶対に容認できない」と決めつける人が少なくなかった。だから、アメリカの男性同性愛者の中で流行が始まったエイズも、「同性愛に対する神の裁きである」とされて、キリスト教徒等に理解されなかったのも事実である。こうした中で、アメリカでは同性愛者団体が徐々に社会的発言権を持つようになってきた。エイズをとうして1980年代中頃から同性愛者に対するアメリカの世論は大きく変わったことも事実であろう。1992年になると、就任後のクリントン大統領が軍における同性愛者の存在を容認している。また以前は同性愛を異常と見なしてきた心理学の世界においても、同性愛は異性間の愛となんら変わりがないという考え方になってきた。さらに、アメリカの司法界はすでに、同性愛者に対する差別を、人種差別や異性間差別と同じように、基本的人権を無視するものととらえている。
 このように、エイズを通して同性愛者は差別と偏見にあった。ただし、そこからエイズを通してアメリカ社会では同性愛者がより受け入れられたことも事実であろう。今後は、アメリカの同性愛者にとって同性愛のカップルが法的夫婦として認められるようになることが真の平等への道であろう。たしかに、同性愛者を完全に認めてしまうと同性愛者からの異性愛者へのレイプ等が増加することが予想される。アメリカにおける同性愛者に寛大な地域では実際に、他の地域と比べて同性間においてのレイプ事件が多く起こっているとの事実もある。このような問題を解決しなければアメリカの同性愛者に社会的権利が真に与えられるのは難しいであろう。だが、すでにヨーロッパではイギリスやベルギー、ハンガリーなど多数の国で男女カップルとほぼ同じ結婚の権利が認められており、オランダにおいても世界で初めて、同性カップルにも男女と全く同じ結婚の権利を認める法案が可決されたのである。いくつかの問題点を解決できるのであれば、アメリカにおいてもこのような権利獲得が同性愛者の人権上必要なことだと考えられる。

エイズと日本政府の対応

 日本においても1980年代からエイズ感染者が現れる。輸入非加熱血液製剤が原因である。輸入非加熱血液製剤とは、主にアメリカから輸入されていた血液製剤で、血友病の治療に使われていた薬のことである。1983年3月、アメリカ政府は血液製剤を作っている日本の製薬会社に対して、エイズに感染している可能性のある人たちの血液を使わないように勧告したにもかかわらず、日本ではこのごも輸入非加熱製剤が使われつづけることとなる。この原因は、輸入非加熱製剤の危険性がアメリカそして患者サイドからも指摘されているにもかかわらず、適切な手を打とうとしなかった専門家たち、それを後押しする利益団体、そして自国では危険性が指摘され始め売れなくなり始めた非加熱製剤を、日本という国に売りさばき始めたアメリカの製薬会社といったところにある。こうして血友病患者へのエイズ大量感染が生じだした。ただ、ここにおいて最も重要な過ちは政府の情報操作ではなかろうか。1985年3月21日、朝日新聞は「エイズ1号患者」は血友病患者であるとスクープしたにもかかわらず、1985年3月23日、厚生省はアメリカ在住の男性同性愛者を「1号患者」と発表して、あきらかな情報操作を行った。象徴的意義をもつ「1号患者」が非加熱血液製剤による感染者であるということが広く知られると、厚生省は自らの責任を問われることがはっきりしているからである。それと同時にエイズ=同性愛者という印象を国民に植え付け、同性愛者に対して差別と偏見を持たせたのである。これは同性愛者を侮辱するだけでなく、非加熱製剤による感染者の告白を遅らせ、社会的権利を奪ったといえ、重大な政府の政策ミスといえ追及されるべきである。このようなことから日本のエイズ問題は波紋を広げていく。それと同時に同性愛者に対する差別と偏見も広がっていく。このことにいてアメリカと日本の大きな差は、アメリカではエイズをきっかけに良くも悪くも同性愛者の社会的権利が保障されだしたことの対して、日本では逆に差別と偏見が広がったことである。両国の国民性ともいえるが日本人として残念でならない。今後日本において同性愛者が正しく理解され、エイズとの関係が理解されるためにも、薬害エイズ訴訟が解決されることを望む。
 ちなみにエイズの正しい知識として、エイズがエイズを持たない異性間の性交渉で感染する危険性はない。それと同様にエイズを持たない同性間での性交渉においても感染の危険性はない。同性愛者の感染率が高いのは、肛門性交を行うことと関係がある。肛門や直腸粘膜は、膣粘膜に比べて強度が10分の1程度しかないため傷つきやすく、血管も集中しているため、粘膜からウィルスが容易に血管内に侵入してしまうからである。ただしその場合、どちらかがエイズにすでに感染していた場合の話である。

最後に

 ここまでおもにエイズ問題を中心として同性愛者に対するアメリカと日本政府の対応、そして両国の同性愛者に対する政策等を述べてきた。両国ともに真に同性愛者に社会的権利があるとはいえない。また同性愛者に結婚が認められたイギリスやオランダ、ベルギーやギリシャ等の各国においても人間の心の問題としては、同性愛者が理解されているとは言い切れない。また同性愛者を完全に認めてしまうと、アメリカにおける同性愛容認派のカリフォルニア州などのように同性愛者から異性愛者へのレイプ事件等が拡大するかもしれないという問題がある。また日本においては法律で認めてしまうと、偽装結婚による外国人労働者の合法的滞在が多発するといった問題点も考えられる。このような問題をある程度解決する政策が整えたうえで同性愛者に法律上、社会的保証をするべきである。また、心の問題としての相互理解が望まれると強く感じた。

参考文献
広河隆一『日本のエイズ---薬害の犠牲者たち』(徳間書房1993年)
櫻井よしこ『エイズ犯罪---血友病患者の悲劇』(中央公論社1994年)

参考URL
〇クリスチャンのための同性愛についての資料と牧会的指針
 http://homepage1.nifty.com/PLJNAGOYA/next/douseiai1.htm
〇アメリカにおける同性愛者の奮闘
 http://www.geocities.com/kubozemi11/utikawa.htm


……以上、以下はホームページの製作者による……

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