香田 真希子
こうだ まきこ
last update:20210204
■著書
■論文
◆香田真希子,2013,「リカバリーを促進する人材育成のあり方に関する研究」東洋大学審査学位論文.
pp. 11-12
わが国においては、1998年に加藤〔36〕と濱田〔37〕がはじめてリカバリーについて紹介している。(加藤は精神障害者リハビリテーションセミナーの報告の中でアンソニーの発言を引用し、濱田は精神障害者のリハビリテーション誌のアンソニーの論文の全訳を掲載している)
p. 17
リカバリーという概念が生み出された歴史的背景について、リカバリー発祥の地であるアメリカと、90年代後半以降にそれを導入し始めた日本について文献調査を行い、考察する。
p. 37
【リカバリーの定義の多様性】様々なリカバリーの定義、原理、解説を年代順に列挙(p.34-37)→このように、リカバリーの定義について様々に表現されているが、これらに共通する要素は、「回復ではなく再構築」「目的ではなく過程」「観念ではなく生活」「一般ではなく個別」に4点にまとめることができるだろう。
p. 49
【リカバリー概念の多様性】本項では、定義からさらに視野を広げ、リカバリーの重要な構成要素やリカバリーに求められるもの、リカバリーを阻害するものなどについて、精神障害をもつ当事者による言説(ディーガンのみ)と精神保健領域の研究者(12名+野中)などによる言説を取り上げて検討(p.39-49)。→本章ではこれまで、様々な論者による、リカバリーの経験、構成要素、阻害要因などについて言説を見てきた。リカバリーを表現する言説がなぜこのように多様であるのか。これには、先述のように、リカバリーの本質が、個別的で主観的で、実体験に即した人生の意味づけの過程であることに関係するのだろう。つまり、リカバリーは客観的で操作的な定義付けができないということのみならず、このように自らの体験をもとに、自らの言葉で語り直し、意味を紡ぎ出す過程こどがリカバリーの本質的な要素であり、このような言説の多様性こそがリカバリーの特徴といえるだろう。
p. 43
Fitzpatrickは、リカバリーの定義を1)医学モデル、2)リハビリテーションモデル、3)エンパワーメントモデルに分けて検討した。医学モデルによるリカバリーは、症状がなくなることで、診断名によって可能性がかわってくる。リハビリテーションモデルによるリカバリーでは、技能訓練と周囲からの支援によって障害に影響なく生活できることである。エンパワーメントモデルによるリカバリーは、精神疾患を環境による外相ととらえ、ピアサポートなどを通して回復される全人的な健康のことである〔76}
p. 105
ACTのプログラムは1970年代初頭に始まった。これは、脱施設化の時代であり、州立精神科病院の閉鎖に伴い多くの精神疾患を抱える人々がケアシステムの整っていない地域での生活を始めた時期に当たる。当時の精神科地域ケアは、それぞれのサービスが統合化されておらず、サービス間の連携が困難な状況にあった。そのような時代背景の中で、米国ウィスコンシン州のメンドータ州立病院(1974年にメンドータ精神保健研究所に改名)のレオナルド・スタインやマリー・アン・テストが地域ケアプログラムを開発する。これは当時、TCLプログラム(Training Community Liveing : 地域生活訓練)やマジソンモデルとも呼ばれていたACTプログラムの原型であり、当時においては急進的な改革が、後の地域精神保健の歴史に最も大きな影響を与えるサービス提供手法の一つへと発展していく(Stein and Test 1985)
p. 107
ACTの効果に関して、「入院期間の短縮」「地域生活の安定」「患者の満足度」などの効果が、北米や欧州を中心に、多くの無作為割付比較試験やメタ・アナリシスで明らかにされており、わが国でも2003年度より千葉県市川市国府台地区で、ACTの日本への導入プロジェクトであるACT-Jプロジェクトが開始された。近年、北海道から九州にいたる全国20カ所以上で実践が始まり、徐々に日本におけるACT実践が、それぞれの地域・システムの中で模索されつつある。
*作成:伊東香純