林 輝男
はやし てるお
last update:20210204
■論文
◆林輝男,2019,「精神障害者の『働きたい』を実現するために――IPS個別就労支援の効果と可能性」『精神神経学雑誌』121(2),91-106.
p. 92
これからの精神医療の治療・支援ゴールの1つにパーソナルリカバリーを明確に打ち立てられるかが問われていると言える。一般就労は、リカバリーの促進にコミットメントしたいと願う治療者・支援者にとって、最も有効で効率的な介入対象の1つである。
p. 94
以前は、米国においても社会保障法に基づく保護的就労(sheltered workshopと呼ばれる)が障害者の就労支援の中核であった。さらに、1973年には就労リハビリテーション法が施行され、各州に障害者の就労リハビリテーションを主導する公的機関 Vocational Rehabilitation Officeが設置され、税制上の優遇策を含む障害者雇用も推奨された。しかし、障害者給付金や生活保護を受給する者の減少は思うように進まず、優遇策の恩恵を受けた者の就労復帰率はむしろ低下するという皮肉な結果を招いた。それを受けて、就労リハビリテーション法が1986年に改正され、援助付き雇用(supported employment)が施策に加えられることとなった。この施策は主として税金で支援される人を納税者へ転換すること、障害者の自立と差別解消を促進することを目的とした(佐藤 1989)。
p. 103
ここでIPS普及における問題点をまとめる。第一に支援制度として確立していないため長期安定した運用を担保する資金を確保しにくい点である。医療機関単体でIPSを導入した場合、デイケア、訪問看護、計画相談などを活用することは可能であるが、運用資金をIPSのサービスのみで確保することは容易ではないだろう。第二の問題は他機関との連携強化制度の整備がまだ不十分な点である。特にハローワークとの連携をいかに円滑にするかは課題である。第三の問題点は、専門家向けの就労支援に関する教育、学習の機会が乏しいことである。
*作成:伊東香純