東田 全央
ひがしだ まさてる
last update:20210204
■著書
■論文
◆東田全央,2007,「米国の精神障害がある当事者における『リカヴァリ』の浸透」『響き合う街で』42:21-25.
p. 21
欧米のメンタルヘルス領域においては,少なくとも過去200 年,リカヴァリという言葉は医療モデルの中で用いられることがあった5).その一方で,1980 年代以降,医療モデルにおける支配的な言説に対抗する新しい意味を含むものとしてリカヴァリが主張されてきた(p.21).1992 年以前と比較して,1993 年以降掲載の手記には「リカヴァリを知るきっかけ」,「リカヴァリとしての体験の意味づけ」等が質的により広範に見られた.そして,リカヴァリの浸透によって,それまで当事者にとって馴染みのなかった体験が馴染みあるものになるという可能性が示唆された.また,リカヴァリが浸透することにより,当事者等の希望を喚起し,そのこと自体が当事者にとってのリカヴァリを促すことも示唆される.その一方で,否定的な意味で,リカヴァリは一種のラベルとなりうることを示すものがあった.
pp. 23-24
次のような記述があった.「私は,リカヴァしたとは本当に呼ばれたくない.狂気の経験から,私の人生を変える傷を負った.それによって,私が他者を助け,私自身を知ることができた。[中略]私はリカヴァしたのではない.私は乗り越えてきた(overcome)のである.」15) これは,リカヴァリがラベルとして他者等によって用いられてしまう可能性を示唆する(p.23). 日本では,リカヴァリという言葉は外来語である.また,リカヴァリは専門家を中心に知られる状況にあり,専門家によるトップダウン的な紹介になりがちである.そのため,当事者の言葉ではなく,専門用語としてのみ広がりうるという危惧がある.そうなれば,リカヴァリという名の新しいラベルが生まれるということにもなりかねない(p.24).
*作成:伊東香純