Daniel Fisher
ダニエル・フィッシャー
last update:20210204
■著書
◆Fisher, Daniel, 2016, Heartbeats of Hope: The Empowerment Way to Recover Your Life,National Empowerment Center,308p. =20190915,松田博幸(訳)『希望の対話的リカバリー――心に生きづらさをもつ人たちの蘇生法』,明石書店.
■論文
◆Fisher, D.B., 2008, "Promoting Recovery". Stickley, T. and Basset, T. (Eds ), Learning about Mental Health Practice, Chichester: UK John Wiley and Sons. =2011,松田博幸(訳)「リカバリーをうながす」大阪府立大学人間社会学部松田研究室, 119-139.
cf.)引用
p. 1
世界各国の精神保健領域においてリカバリーということが注目されるようになってきましたが、そのことは多くの意味をもっています。精神病というラベルを貼られ、十全な(full)生活への希望を取り上げられてきた私たちの叫びや訴えから、リカバリー運動は生じてきました。〔中略〕私たちは、社会における誰もが求めているものを求めてきたのです。私たちは、十全で意味のある生活や人生を求めてきたのです。つまり、リカバリー運動は、人びとの生活や人生という現実から生み出される、希望に基づいているのです。〔中略〕以下では、人びとが精神病のもっとも重篤な状態にあってもリカバーする原理について、そして、どのように、そのような原理を使って、人びとのよりよいリカバリーを支えていけばよいのかについて、科学的な記述だけでなく個人的な記述も交えて、述べたいと思います。
pp. 5-6
人びとがどのようにリカバーしたのかを解明するために、アメリカ合衆国のNEC(ナショナル・エンパワメント・センター)は、これまで10年間の間、質的研究をおこなってきました。そのインタビューを通して、リカバリーについて一定の諸原理が浮かび上がってきました。それらの原理は、困難にあるひとたちを支える、リカバリー志向のアプローチに向けての基盤を形成するものです。NECはそれを「コミュニティで暮らすためのパーソナルな支援」(Personal Assistance in Community Existence)あるいはPACE(Ahern and Fisher 2001; Fisher and Ahern 2001)と呼ぶことにしました。リカバリーの原理は以下の通りです。・・・・・・11.深刻な情緒・感情的苦痛の意味を理解することが助けになります。12.リカバーするには、人びとは自分自身の夢を表現し、追求する必要があります(p.5-6)。これらの研究から、私たちは、リカバリーを発達的な文脈においてとらえるモデルを構築しました。私たちは、それを、「発達とリカバリーのエンパワメント・モデル」と呼んでいます。
p. 12
エンパワメントは、リカバリーの重要な側面です。なぜならば、それ(エンパワメント)は、精神病のもっとも中心的な特徴、すなわち、人が、その人をとり囲む世界のなかで声を失い、自分の人生に対するコントロールを失うことに目を向けているからです(Chamberlin 1997; Fisher 1994)。人びとは声を得ることで、ひきこもりや不動性を克服します。NECは、「私たちの声を発見する」(Finding Our Voice)というワークショップを始めました。〔中略〕エンパワメントがこのように強調されているということは、リカバリーが、主として、本人が自分自身でできることを重視しているのだということを表しています。一方、治療やリハビリテーションというのは、専門職者が、本人に向けて、あるいは、本人のために、おこなうことです。「私たちの声を発見する」は、「エンパワメントのための11のP(Fisher & Chamberlin 2007)に基づいています。
p. 15
リカバリーした人びとの間でもっとも頻繁にいわれるのは、「誰かが私を信じてくれた」ことが(リカバリーの)要因だったということです。その人たちがいっているのはこういうことです。私が私自身を信じることが困難だった時期に、誰かがいて、その人が私を信じてくれたことで私が支えられたということです。〔中略〕この深いレベルでの人間関係は、たいてい、情緒・感情的なレベルにおいて生じます。ですから、コミュニケーションの非言語的要素がもっとも重要です。
p. 25
リカバリーのプログラムというのはありません。なぜならば、あなたが援助するそれぞれの人は個別的な存在だからです。「プログラムではなく、)それぞれの人に対して用いる必要のある、リカバリーの原理があるのです。それぞれの人にとって、あなたがリカバリーのプログラムなのです。あなたがどんな人であるのかということ、そしてあなた自身について何を学んでいるのかということが、援助者/セラピストとして、もっとも重要なのです。あなたが、「居る」ことができればできるほと、あなたは、あなたが支援している人とともに深く「居る」ことができるのです。
*作成:伊東香純